図書紹介:『100歳の美しい脳 アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち』
著者スノウドン博士はミネソタ大学で疫学の博士号を取得した疫学研究者であり、加齢と健康を研究テーマにしたいと考えていた。 その対象として修道士や修道女を詳しく調べたら面白い手がかりが得られるのではないかと考えた。 なぜなら、信仰組織は会員の名簿や過去の記録がきちんと整備され、生活様式も統一されているので、 疫学研究には理想的な対象だからである。 スノウドン博士は、1986年にノートルダム教育修道女会に所属する修道女の絶大なる協力を得てナン・スタディの予備調査を開始した。 ナンとは修道女(nun)のことである。その後、1990年には国立老化研究所の資金提供を受けて、いくつもの領域にまたがった大々的な科学・ 医学プロジェクトに発展した。ナン・スタディ参加者は年齢が75歳から106歳までで、年に1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けるほか、 修道院に保管されている個人記録や医療記録が提供される。また、死後に脳を取り出して解剖することも同意している。 脳提供プログラムには、対象者1027名中678名が参加した。 これらの膨大なデータから得られた研究成果の中には、アルツハイマー病に関する定説をくつがえすものもあり、 アルツハイマー病を避けるための有望な手がかりも見つけることができた。本書ではそれらの成果が紹介されているが、 いくつかの例を以下に示す。
[コメント] 本書を読んで、アルツハイマー病への対策に二つの方法があることが分かった。 一つは、アルツハイマー病の根本原因を探り、治療方法を見つけ出すことである。これは多くの医学者、科学者が挑戦している方法である。 二つ目はアルツハイマー病になるのは仕方がないとしてアルツハイマー病が顕在化することから「逃げおおせる」方法を見つけることである。 ナン・スタディは後者の有効性と方法を具体的に我々に示してくれる。もちろん、第一の方法は大切であり、本質的であるが、 しかしその成果が出るまで手をこまねいてはいられないので第二の方法も並行して進めることは大切である。 ナン・スタディの今後の研究に期待したい。 | ||||||
(2004年8月24日) | ||||||
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