日野自動車(観光バス)
日野の観光バスは、1967年のRVから始まり、1977年に日本初のスケルトンボディを持つRSを発売することで観光バス界の頂点に立ちました。その後、エアロバスを発売した三菱との間でモデルチェンジ、マイナーチェンジを繰り返すことによって、業界のフラッグシップの役割を担っています。ここでは、「セレガ」にモデルチェンジする前の1990年までのモデルを対象にします。
表5-3 日野観光バスの系譜
日野RV 1969−1982
表5-3-1 日野RV
年式 | 1969-1972 | 1972-1978 | 1978-1979 | 1979-1982 | ||||
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原動機型式 (出力) | EA100 (280PS) | EF100 (280PS) (350PS) | EG100 (305PS) | EF300 (295PS) | EF500 (315PS) | EF350 (295PS) | EF500 (315PS) | |
軸距 | 5670mm | RV100P | RV730P | RV530P | ||||
5700mm | RV731P | RV531P | K-RV732P | K-RV531P | ||||
6130mm | RV741P | RV541P | K-RV742P | K-RV541P | ||||
6500mm | RV750P | RV550P | ||||||
6600mm | RV762P | RV561P | K-RV762P | K-RV561P | ||||
備考 | 青文字=ターボ付 |
日野RV 第1期 1969−1972
箱根登山鉄道 日野RV100P(1969年式)
撮影:BA10-2407291様(沼津市 1985)
立川バス 日野RV100P
撮影:砂川車庫(1981.9.27)
路線タイプのRE系に続いて、V8エンジンを搭載した観光バス専用シャーシのRV100Pが登場。日野の観光バスの第1歩となりました。
後面のエンジン通気孔が中央に1枚あるのが外観上の特徴です。
この時期、路線タイプの高出力型RCの方が好まれていたようで、この型式はあまり普及しなかったようです。
ボディの組み合わせ・・・帝国、金産、富士
日野RV 第2期 1972−1978
富士急行 日野RV730P(1976年式)
撮影:河口湖駅(1986.8.19)
岩手県北自動車 日野RV730P(1973年式)
撮影:西根営業所(1985.7.29)
1972年にモデルチェンジを図り、出力が2種類、長さが2種類のバリエーションになり、選択肢が広がりました。これまで観光用にRCを導入していたユーザーも、これを機にRVに移行しました。
後面のエンジン通気孔は、左側に縦長のものが2個並ぶ配置になりました。
後面のエンジン通気孔は、1975年には1個に減っています。
ボディの組み合わせ・・・帝国(日野)、金産、富士、西工
東交バス 日野RV550P(1977年式)
撮影:OKMR様
日野RV 第3期 1978−1982
自家用 日野RV732P(1979年式)
撮影:山梨県(2011.7.23)
大川自動車 日野K-RV732P(1981年式)
撮影:藤田智和様(かがわバスまつり会場 2014.4.6)
1978年に出力強化のマイナーチェンジを行い、型式末尾の数字が1になりました。車長にこれまでの中間サイズの3種類目のバリエーションが加わりました。同じ頃、日野車体工業のボディが、ヒサシの薄いタイプに変わっています。
昭和54年排ガス規制に対応して、1979年から型式の頭にK-が付くとともに、RV700系列の末尾数字が2に変わっています。また、このとき後面の通気孔がなくなりました。
この時期、日野ではスケルトンバスRSも並行生産していましたが、信頼性があり、価格の低いRVのほうが普及度は高かったようです。1982年にスケルトンバスの後継RUに発展的解消を遂げました。
ボディの組み合わせ・・・日野、富士、西工
日野RS スケルトン 1977−1982
表5-3-2 日野RS
年式 | 1977 | 1978-1979 | 1980-1982 | |||
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原動機型式 (出力) | EF300 (295PS) | EF300 (295PS) | EF500 (315PS) | EF350 (295PS) | EF500 (315PS) | |
軸距 | 5600mm | RS120P | RS120P | RS320P | K-RS121P | K-RS320P |
6100mm | K-RS141P | K-RS340P | ||||
6600mm | RS160P | RS360P | K-RS161P | K-RS360P | ||
備考 |
日野RS 第1期 1977
自家用 日野RS120P(1977年式)
撮影:BA10-2407291様(東京都 1991)
自家用 日野RS120P(1977年式)
撮影:BA10-2407291様(東京都 1991)
1977年に日野自動車が発表したスケルトンバスは、バス業界に大きな影響を与えました。これまでのモノコック構造に代わり、スケルトン構造を取り入れたことで、直線的なスタイルになり、窓も大きくなりました。
登場当初は、低出力の標準床車のみの設定で、ボディが上に向かってすぼまったスタイルでした。
ボディの組み合わせ・・・日野
日野RS 第2期 1978−1982
伊那バス 日野K-RS340P(1981年式)
撮影:伊那本社(1988.11.23)
京都交通 日野RS360P
撮影:京都市(1979.5.20)
1978年に高出力車や長尺車を加えるモデルチェンジを行い、直線的な角張ったボディスタイルになりました。このときフルデッカーを追加しています。
後面左側には通気孔がありましたが、RVと同様、1980年以降なくなりました。
日野車体のスケルトンボディのみの架装で、デラックスな観光バスとして納入される所が多かったようです。
ボディの組み合わせ・・・日野
日野RU ブルーリボン 1982−1990
表5-3-3 日野RU
年式 | 1982-1983 | 1984-1985 | 1985-1990 | ||||
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原動機型式 (出力) | EF550 (300PS) | EF750 (330PS) | EF550 (300PS) | EF750 (330PS) | EF550 (300PS) | EF750 (330PS) | |
軸距 | 5600mm | K-RU606A | K-RU636A | P-RU606A | P-RU636A | P-RU606B | P-RU636B |
6100mm | K-RU607A | K-RU637A | P-RU607A | P-RU637A | P-RU607B | P-RU637B | |
6600mm | K-RU608A | K-RU638A | P-RU608A | P-RU638A | P-RU608B | P-RU638B | |
備考 | 上記に加え、車軸懸架はA、独立懸架はBが末尾につく(例:RU638BA、RU638BBなど) |
日野RU 第1期 1982−1985
京王帝都電鉄 日野P-RU638AA(1985年式)
撮影:双葉SA(1986.8.18)
日本国有鉄道 日野P-RU606A(1984年式)
撮影:盛岡支所(1985.5.18)
1982年に、これまでのスケルトンRSとモノコックボディのRVを統合し、モデルチェンジを図ったのがRUです。長さや出力のバリエーションはそのまま引き継いでいますが、出力は全体的にパワーアップしています。また、ボディは日野車体のスケルトンボディを標準としながら、他メーカーでも架装できます。日野ボディの場合、標準床車とフルデッカーの間にミドルデッカーが設定されています。
外観的なRSとの相違点は、ヘッドライトが丸型から角型になった点などに見られます。また、昭和58年排ガス規制により1984年から排ガス記号がP-に変わりましたが、ボディの一部をその際にマイナーチェンジしています。
商品名として、1950〜60年代に日野センターアンダーフロアエンジン車に用いられていた「ブルーリボン」が復活しました。
ボディの組み合わせ・・・日野、富士、西工
日野RU 第2期 1985−1990
川中島バス 日野P-RU638BB(1985年式)
撮影:長野営業所(1989.3.26)
大沼交通 日野P-RU638BB
撮影:本社営業所(2012.4.21)
1985年にボディを中心としたモデルチェンジを行い、型式末尾の記号がAからBに変わりました。三菱エアロバスなど丸みのあるボディへの時代の変化に対応したものと思われます。同時に2軸スーパーハイデッカーがボディバリエーションに加わりました。
平成元年排ガス規制に対応したフルモデルチェンジが1990年に実施され、セレガに生まれ変わり、ブルーリボンの生産は終了しています。
ボディの組み合わせ・・・日野、富士、西工
日野の型式の付け方
BHからBTまで
例:BD14P
1950年代の日野の型式には、Bで始まるものが多く見られますが、これらはバス(Bus)の頭文字をとったものと思われます。BHと並行してTHというトラックが生産されているあたりは、いすゞと同じ事情です。
その後、センターアンダーフロアエンジンバスはBD,BK,BN,BTと続きます。いすゞの型式とは、ほぼ重複を回避しているように見えます。2文字目の意味は不明です。
数字部分は、単純に10から始まり、一の位がバージョンを示すようです(マイナーチェンジにより、BD10→BD11→BD12→BD13→BD14→BD15)。
その他の記号としては、エアサスがP(pneumaticの頭文字)という記号になります。
RBからRSまで
例:RE120P
1960〜70年代のリアエンジンバスには、Rで始まる型式が用いられます。Rはリアエンジン(rear engine)の頭文字だと思われます。RA,RB,RC,RD,RE,RL,RM,RS,RVなどがあります。
数字部分は、当初の2桁から3桁に変わります。やはり当初は単純に10から始まり、3桁の場合100から始まります。モデルチェンジにより300に飛んだりしますが、RVやRSでは百の位で出力を区別しています。特にRVでは、数字の大小と出力の大小は一致しません。
十の位は系列内での相対的な長さを表しています。一の位はマイナーチェンジで変化します。(RV730P→RV731P→RV732P)
スケルトン世代
例:RT223AA
スケルトン世代の車両から、型式の付け方が変わります。1981年に登場した中型バスRJがこれに当たります。1文字目のRはやはりリアエンジン(rear engine)の頭文字のようですが、リアアンダー車はHになります。
2文字の記号は、RK,RJ,RR,RT,RU,RYなどがあり、エアサスとリーフサスの区別などにも使われています。前世代の型式との重複はないようです。
数字は3桁で、十の位は出力を表します。エンジン出力の十の位とリンクしているように見えます(RU638A=330PS、RJ170A=170PS)。一の位は全系列での相対的な長さを表すようです。HT226AとRU606Aの長さはほとんど同じです。
末尾の記号はバージョンを示し、A→B→Cと進むようです。その後に、懸架方式などの識別記号もつきます。
なお、1990年の平成元年排ガス規制に伴うモデルチェンジの際、型式の付け方が一部変わり、数字は1桁のみとなりました。数字は出力、続く記号が、エンジン型式、長さ、バージョン、懸架方式と続くようです。