入門その頃のバス

いすゞ自動車(9m車)

シャーシ 大型バスと同じ2.5m級の車幅を持ちながら中型バスと同じ9m級の全長であるという小さいサイズの大型バスは、市街地の路線バスや自家用バス、更には教習所のバスなどの用途として、一定のニーズがありました。
このクラスのバス市場で最大シェアを誇ったのがいすゞです。もともといすゞでは初期のリアエンジンバスBA系でこのサイズを主力にしていましたが、1960年代に入って、後継であるBU登場後、BA系を短いサイズに特化し、更に短い8m車やナローサイズなど他メーカーにないバリエーションを展開しました。
なお、1980年代以降に生産が始まった観光タイプの9mサイズ大型バスは、観光バスのところで取り上げます。


いすゞBA系(重複掲載) 1956−1978

山梨交通 いすゞBA20(1971年)
山梨交通

撮影:長坂出張所(1985.3.6)

大井川鉄道 いすゞBR20(1965年)
大井川鉄道

撮影:新金谷車庫(1980.8.31)

いすゞBA系は、いすゞが終戦後から製造を始めたボンネットバスBXを改良して登場させた縦置きエンジン形の本格的リアエンジンバスで、昭和30年代のベストセラー車両の一つです。
当初は観光用にも使える前ドア対応車と、ツーマン路線車用の中ドア専用に分かれていました。1960年には上級車種という位置付けでBRが登場しています。しかし、1963年にリアアンダフロアエンジンのBUが登場した後はその立ち位置を変え、ショートサイズの路線バスの位置づけが強くなります。更に、車幅を狭くしたナロー車の設定や、8mサイズのショート車両の設定など、独自の市場を開拓した系列でもあります。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士、帝国、北村、西工ほか

いすゞECM/EDM 1978−1984

表4-11-1 いすゞECM/EDM
年式1978-19791980-19821982-1984
原動機型式
(出力)
6BD1
(160PS)
6BD1
(160PS)
6BF1
(170PS)
軸距4300mmECM430K-ECM430(N)K-EDM430(N)
備考記号の末尾N=ナロー車
船木鉄道 いすゞECM430(1979年)
船木鉄道

撮影:宇部新川駅(1980.8.6)

岩手県交通 いすゞK-ECM430(1980年)
岩手県交通

撮影:千厩営業所(1985.8.11)

通常の大型車BUに先駆けて、エンジンが旧態化していたBAは1978年にモデルチェンジを図ります。ボディは大型9mサイズながら、中型バスCCMと同じエンジンを搭載したもので、長さはBA20を引き継ぐ1種類に集約されました。型式のECM430の数字部分はホイールベースをセンチメートルで表した数字です。
外観的には、後面のエンジン通気孔がなくなったことが特徴です。
最初期の車両はBAと同じボディスタイルでしたが、1979年に川崎車体がモデルチェンジを行いました。
昭和54年排ガス規制に対応し、1980年以降は型式の頭にK-がつきます。また、一旦カタログから外れたナローサイズがこの時に復活しています。
1982年にはエンジンをモデルチェンジし、K-EDM430になりました。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士、西工、北村

いすゞLT 1984−2000

表4-11-2 いすゞLT
年式1984-19881989-19901990-19951995-1999
原動機型式
(出力)
6BG1
(175PS)
6BG1
(180PS)
6HE1
(195PS)
6HH1-S
(210PS)
軸距4300mmP-LT312JP-LT312J/P-LT212JU-LT332J/U-LT232JKC-LT333J/KC-LT233J
備考数字300番台=リーフサス、200番台=エアサス
最初期 P-LT 1984
いすゞP-LT312J
LT312J

画像:いすゞ自動車カタログ(1984)

昭和58年排ガス規制に対応して1984年に大型路線バスLVとともに9m車もLTにモデルチェンジされました。
最初期の車両は、このサイズでの車体のモデルチェンジが間に合わず、前世代のボディをそのまま引き継いでいます。
また、このボディの時期にはナローサイズが残存しており、京浜急行などに導入例があります。

頸城自動車 いすゞP-LT312J(1984年)
頸城バス

撮影:BA10-2407291様(能生出張所 1985.8)

北村製作所製は、頸城自動車と山形交通で見られます。1984年製は前世代のモノコックボディです。
(当初、北村製作所製は1両と記載していましたが、BA10-2407291様・sakaisuji66613様(掲示板2022-8-16)のご指摘により、記載を修正しました)

前期 P-LT 1985−1990
岩手県交通 いすゞP-LT312J(1990年)
岩手県交通

撮影:盛岡駅(2009.10.4)

越後交通 いすゞP-LT312J(1989年)
越後交通

撮影:樋口一史様(本社営業所 2004.9.11)

川崎車体(IKコーチ)のボディはキュービックボディ、富士重工は5Eボディになります。富士重工では通常の大型車が7Eボディに移行した後も、9m車はこのボディでの生産が続いています。引き続き4メーカーで架装しています。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士、西工、北村

頸城自動車 いすゞP-LT312J(1985年)
頸城バス

撮影:BA10-2407291様(新井営業所 1986.8)

北村製作所も1985年製は大型バスLVと同じスタイルのキュービックボディになりました。

中期 U-LT 1990−1995
山梨交通 いすゞU-LT332J(1991年)
山梨交通

撮影:県立中央病院(2018.12.11)

山梨交通 いすゞU-LT332J(1991年)
山梨交通

撮影:鰍沢営業所(2018.12.10)

1990年に平成元年排ガス規制に対応して型式が変わり、U-になりました。
同じエンジンを搭載する中型バスのU-LRと同じくエンジン配置が変わり、側面のエンジン通気孔の位置が左から右に変わりました。
IKコーチのボディは、大型バスのLVと同様に、側窓や後面スタイルなどが変更されています。

越後交通 いすゞU-LT332J(1994年)
越後交通

撮影:栃尾営業所(2018.7.2)

頸城自動車 いすゞU-LT332J
頸城バス

撮影:本社営業所(2014.11.16)

富士重工は、これ以降7Eボディに変わっています。この変化のタイミングは、日産ディーゼルの中型バスと同じですが、大型車より遅く、いすゞ中型車より早いという時期になります。

後期 KC-LT 1995−1999
糸魚川バス いすゞKK-LT333J1(1999年)
糸魚川バス

撮影:本社営業所(2018.12.25)

羽後交通 いすゞKC-LT333J(1995年)
羽後交通

撮影:横手営業所(2019.7.21)

平成6年排ガス規制に対応して1995年にモデルチェンジされました。IKコーチのボディは、大型バスLVと同様に、窓の形状が変わりました。
1999年に中型バスが「エルガミオ」にモデルチェンジされたため、共通エンジンのLTは、車体はそのままで平成10年排ガス規制に対応したKK-LT(エアサス車は平成11年排ガス規制対応のKL-LT)に変わりました。
2000年に「エルガ」にモデルチェンジされた後、2005年までにこのサイズの製造は中止されています。

ナロー車 1966−1984

表4-11-3 いすゞナロー車
年式1965-19721973-19781980-19821982-19841984
原動機型式
(出力)
DA640
(130PS)
DA640
(135PS)
6BD1
(160PS)
6BF1
(170PS)
6BG1
(175PS)
軸距3900mmBA01N(1966〜)
BA05N(1966〜)
BA05N
4300mmBA10N
BA20N
BA20NK-ECM430NK-EDM430NP-LT312J(H)
備考緑文字=中ドア専用シャーシ

いすゞでは、1965年にBAに車幅2.25mのナロー車を設定しました。当初は全長も8m級という中型バス以下のサイズからスタートし、翌1966年に9mサイズが加わりました。
これらは、あらゆる狭隘路に路線を拡大する時代であったことと、ボンネットバスなどを使用していた路線の車両代替やワンマン化を推進する目的があったことなどから、都会田舎問わず導入が進みました。
1970年代後半には中型バスが普及したことにより、一旦カタログから外れましたが、1980年代に短期間復活した後、1984年を最後に中止されました。

BA-N(前期) 1965−1973
岩手県北自動車 いすゞBA10N(1968年)
岩手県北バス

撮影:板橋不二男様(宮古主幹営業所 1977.3.19)

全長9mクラスのナロー車は、1965年に登場しました。これまでのBA741/743と同じ長さで、系列全体のモデルチェンジを前に数字部分を2桁にしています。
手前が中ドアシャーシのBA10N、奥が前ドアシャーシのBA20N

北陸鉄道 いすゞBA01N(1972年)
北陸鉄道

撮影:板橋不二男様(金沢市 1975頃)

全長8mクラスの中ドア専用シャーシのナロー車は、1966年のBA系モデルチェンジとともに設定されました。狭隘路線のツーマン運行に用いられる車型です。
写真は富士重工製ボディ。

BA-N(後期) 1973−1978
山梨交通 いすゞBA05N(1974年)
山梨交通

撮影:板橋不二男様(湯村営業所)

1973年のマイナーチェンジで、中ドア専用シャーシは姿を消しました。
写真は短尺のBA05Nで、前ドア設置可能ですが、中ドアツーマン車となっています。

ECM/EDM 1980−1984
南部バス いすゞK-ECM430N(1980年)
南部バス

撮影:左党89号様(五戸営業所 1996.1.13)

1980年のECMからナローサイズが復活しました。
この時期になると、中型バスが普及し始めたため、大型バスのナローサイズを選択する例は多くはありません。写真は南部バスの車両ですが、元は京浜急行が購入した車両です。

LT 1984
いすゞP-LT312J
LT312J

画像:いすゞ自動車カタログ(1984)

モノコックボディを引き継いだ最初期のLTはナローサイズが残存していました。京浜急行などに導入例があります。

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80s岩手県のバス“その頃”