(映像版)200系を探せ!
新幹線「200系を探せ!」のコーナーに、もし映像版があったら・・・ということで、おかしな新幹線の出てくる映像作品を、裏サイトでご紹介します。
ブレット・トレイン
「BULLET TRAIN(ブレット・トレイン)」は、アメリカで2022年8月に発表された映画作品。
ブラットピット主演のアクション・コメディで、簡単に言ってしまうとB級映画。
運の悪い殺し屋が、ブリーフケースを盗んで一駅で降りるつもりが、各駅でいろんな殺し屋に遭遇しながら降りる機会を逃して、終点まで行ってしまうというストーリーです。
舞台は日本の異世界
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原作は日本の伊坂幸太郎「マリアビートル」で、舞台は東北新幹線で東京から盛岡に行くというもの。映画の方は行き先を京都に変えていますが、真田広之など日本の俳優も出演させ、舞台も日本(と言ってもセットですが)です。
設定も原作通り新幹線(東北から東海道に変えていますが)です。実はその新幹線の描き方が曲者で、ここでは、そんな新幹線に焦点を当てて突っ込みを入れてみます。
(画像は日本版パッケージ)
新幹線はJR東日本E956形もどき
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登場する新幹線は、JR東日本の高速運転試験車E956形とそっくりな顔をした車両。側窓レベルが黒く塗装され、非常にクールでカッコいい外観。
これが京都に向かって走るのですが、原作が東北新幹線だからJR東日本に義理立てしたか・・・。
(画像は、公式予告編より。以下同じ)
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夜の東京を出発する新幹線。マツモトキヨシやSONYのネオンなど、煌びやかな東京の街を、窓周りの黒いE956形が走り抜けてゆきます。
車内は欧米テイスト
自由席
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まずは自由席から。車端の表示灯には「ECONOMY」の文字が。日本の新幹線では「No Reserved」と書かれるところです。号車番号が大きく書かれているところは、実物よりも親切。
この新幹線は、JRではなくて「日本高速電鉄」(略称NSL)。よく見ると「NIPPON SPEED LINE」という英語表記も書かれています。Japanではなく、NipponとしているところがGood!
座席配置は2列+2列ですが、座席そのものはFRPの枠に硬めのシート生地という欧米風シート。
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ちょっと気になるのは、場所場所に向かい合わせのシート配置があること。真ん中に大きなテーブルがあり、窓のパーツも2個セットになっているので、転換式シートではなく、固定式だと思われます。
登場人物が、向かい合って話をするのに都合がいいからでしょう。実際、この場面でも、テーブルの下で銃口を向けています。
ファーストクラス
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こちらはファーストクラス。独立シートで背摺りも高く、テレビモニタも付いているので、グリーン車より上級クラス。でも、グランクラスほどではありません。
日本の新幹線なのに日本人ではないし、英語の本を読んでいます。
ファンタジー車両
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変な車両も1両くっついていました。座席に東京オリンピックのキャラクターみたいなカバーがかけられていて、着ぐるみまで乗っています。こんな鬱陶しい車両が日本の新幹線にあると思っているんでしょうか・・・。あ、西の方にあるか・・・。
確かに、日本では、色んな所で「ゆるキャラ」と呼ばれる着ぐるみが出没しているので、日本の人混みのイメージというのはこういう感じなんでしょう。
食堂車(ラウンジカー)
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日本の新幹線ではとうに姿を消した食堂車、或いはラウンジカーのようなものも連結されています。「楽園」という名前で、壁面は木を多用した和の雰囲気です。
右側はカウンターのようで、左側は外向きを含むソファーが置かれています。
闘いの場面をマンネリ化させないためにも、色々な車両を用意しているんでしょう。今も、扉のガラスを割りながら、二人がこの車両になだれ込んでくるところです。
車販準備室(?)
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どう考えても業務用スペースですが、車両の幅フルで使っているので、誰でも出入りできるスペース。右にちらっと見える棚には、ファーストクラス朝食とかエコノミークラス飲料とか書かれていますが、通りがかった乗客が勝手に持ち出せそうな感じです。
闘いの途中で車内販売がやってきましたが、普通に商売しています。
運転室
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かなり開放的な運転室。
これより前の場面で、後部の運転席に外から入ろうと、素手でガラスを叩き割るシーンもありました。その程度のガラスだと、鳥が突っ込んできたとき、簡単に割れてしまうでしょう。
「ゆかり」号は夜行列車
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列車名は「ゆかり」号。この列車は米原にも停車するので、「ひかり」号とはよく似たタイプの列車。1字違いの列車名で日本風。上手な命名です。
ちなみにストーリーでは、この列車は京都が終点なのですが、車内の表示には大阪と出ていました。
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車窓から見えた富士山。もっとも、富士山が見えたのは、だいぶ京都に近づいた場所。やはり欧米の方々から見ると、狭い日本、富士山も京都もそんなに離れてはいないのでしょう。
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夜に東京を出発した新幹線が、京都に到着するころには夜が明けていて、朝陽が横から差し込んでいました。つまり、「ゆかり」号は夜行列車だったのです。
出演者の乗客の皆様、寝ないでよく頑張りました。
ブレット・エクスプレス 弾丸特急
「BULLET TRAIN DOWN(邦題:ブレッド・エクスプレス 弾丸特急)」は、アメリカで2022年12月に発表された映画作品。
少し前に出た「ブレッド・トレイン」の便乗作品だと思われます。新幹線の車内外で闘いを繰り広げるという点は同じですが、ストーリーは全くの別物。時速200マイル以下になると爆発する、というのは、1975年に日本で作られた映画「新幹線大爆破」を下敷きにしているようです。
しかし、突っ込みどころは「ブレット・トレイン」以上。B級映画に便乗した超ド級B級映画。
パッケージに騙されるな!
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画像はオリジナルのパッケージと日本語版パッケージ。両方とも、欧米の高速列車のようなスタイルの列車が描かれています。それなりにリアルな高速列車ですが、本編にこんな車両は出てきません。さらに、こんなにリアルなCGでもありません。
ただ、オスプレイや戦闘機は出てきます。
モデルは新幹線700系
700系もどき
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実際に本編に出てくるのはこんな電車。どこから見ても、東海道新幹線の700系。もっとも、CGというにはちょっと雑な感じです。
さらに、この物語は、新しいリニア新幹線がロサンゼルスからサンフランシスコまで開通した初日の出来事。そう、この車両はリニアモーターカーなのです。
え?
(画像は、公式予告編より。以下同じ)
パンタグラフもあればレールもある
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下敷きにした700系についていたパンタグラフや台車は、このリニア新幹線にもちゃんとついています。
この写真だと、先頭車の中央部にパンタグラフがありますが、架線とは接していません。また、隣りの線路には枕木とレールがあります。
これがリニア新幹線だとすると、建設中の中央リニア新幹線のような浮上式ではなく、地下鉄で実用化されている鉄輪式のリニア新幹線であると思われます。
名前はN800A
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なんとこの列車、N800Aというそうです。
架線と架線柱
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この場面では、パンタグラフは架線に接しています。また、架線柱と思われる太いゲートのようなものがたくさん立っています。ただし、ゲートは架線より下にあるようにも見えます。だいぶ雑なCGです。
キャプションにあるように、FBIが戦闘機を現場に向かわせるというスケールの大きい作品。これは高速鉄道の社長が直接交渉をした結果であるわけですが、国を巻き込んだ大事件になるあたりは「新幹線大爆破」にも通じます。
架線がない区間もある
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この場面では、車両の上には架線も架線柱もありません。
もしかすると、高速運転区間になると、鉄輪式から浮上式に変わるのかも知れません。そういう点ではハイテクなリニア新幹線です。
よく見ると屋根の上に人がいます。屋根上に仕掛けられた爆弾を撤去するために、主人公(?)の元軍人が屋根上に上がったという設定。時速200マイル以上(時速300km/h以上)で走る新幹線の屋根です。
時速200マイル以下で爆発する
管制室
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時速200マイル以下に速度が落ちると爆発するという脅迫があり、列車は止まることなく終点に向かう必要が生じます。
ここは管制室。管制官は一人だけ。
6号車が爆発
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金銭の要求を断ったところ、爆弾が本物であることの証明に6号車が爆破されます。その瞬間がこれ。
この後、6号車は完全に爆破されるが、残った5両は平然と走り続けます。
動力集中方式のリニア新幹線
切り離し作戦
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屋根上のダミー爆弾、床下の爆弾は、いずれも主人公の元軍人によって取り除かれます。しかし、今度は運転システムがリセットされて、減速できない状況に。
打開策として、2号車から後ろの車両を切り離し、乗客を守るという作戦が決行されます。
切り離された車両には、ちゃんと車輪がついています。繰り返しますが、この車両はリニア新幹線です。
動力車は先頭車だけだったらしい
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切り離された車両は、動力も操舵力も失い、左右に振られながらも減速してゆき、最終的には停車することで乗客の安全は守られました。
ということは、動力車は先頭車のみ。つまり欧米のTGVなどと同様に、この列車は動力集中方式だったようです。やはり屋根上のパンタグラフも床下の車輪も単なる飾りだったのです。
コンピューター制御の新幹線
オスプレイで引っ張るの失敗
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残された先頭車と2両目は、オスプレイが後ろから引っ張って止めようとしますが大失敗。都合よく、この場面では架線柱はありません。
ところで、車内のエンジニアが持っているタブレット端末が高性能。編成のどの辺に爆弾が仕掛けられているかをセンサーで特定できるし、車両の切り離しやドアの開閉もタブレット端末ひとつで可能なのです。
その一方で、運転システムがリセットされると停車できなくなるなど、安全性能は最低です。
駅にぶつかる!
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結局列車を停止させることができず、駅に突っ込んでいく700系もどきです。
ここに至るまでに、システムエラーを、床下機器を足で蹴って直す、などという昭和テクニックを駆使して解決してきたにもかかわらず、残念ながらこの結果です。
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