その頃
のびぞう 「大変だ! ヒネ夫が落っこちちゃったよ!」
ノラざえもん 「え? そりゃ大変だ。でも、危険物取り扱い主任者の試験なんか、落ちたって大丈夫。ガソリンスタンドのアルバイトなら資格は要らないよ」
のびぞう 「違うよ、試験に落ちたんじゃないよ。空から落っこちたんだ」
ノラざえもん 「空から? そらどうして」
のびぞう 「つまらない駄洒落言ってる場合じゃないんだよ。頭につけてた竹トンボが外れたんだ」
ノラざえもん 「そりゃ大変だ。竹トンボを人に貸してたことがばれると、未来世界の時空裁判に掛けられちゃうよ」
のびぞう 「え? 何? それと、どうして部屋の奥の方に歩いていくの」
ノラざえもん 「うん。ちょっと未来世界に帰らなきゃいけない用事を思い出したんだ」
のびぞう 「そんな用事あとでいいよ。ヒネ夫のところに行かなくていいの?」
ノラざえもん 「何しに?」
のびぞう 「何しにって、ヒネ夫がどうなったか心配じゃないの?」
ノラざえもん 「ヒネ夫、どうなったの?」
のびぞう 「分からない」
ノラざえもん 「じゃあ、行ったって意味ないでしょ。ボクたちが行ったら元気になるとかって言うんなら、喜んで行くけどね」
のびぞう 「なら行こうよ。何とかなるかもしれない」
ノラざえもん 「空から落ちたんだから、生きてはいないでしょ?」
のびぞう 「そんな簡単に言うなよ。友達なんだから心配しなよ」
ノラざえもん 「のびぞう君。いいかい。心配したからって、死んだものが生き返るわけじゃないんだよ」
のびぞう 「ノラざえもんは人間じゃない!!」
ノラざえもん 「・・・う、うん。否定しないよ」
のびぞう 「もういいよ。ノラざえもんのことは当てにしない。一人で行くよ」
ノラざえもん 「あ、ちょっと待って。ボクが貸していた竹トンボ、返してくれないか」
のびぞう 「ああ、返すよ。こんなもの」
ノラざえもん 「それから、悪いんだけど、ついでに、シズミちゃんとジャイアントに貸していた竹トンボも返してもらってきてくれないかな」
のびぞう 「分かったよ。でも、その前にヒネ夫の様子を見てくるよ」
ノラざえもん 「いや、まず最初にシズミちゃんとジャイアントに貸した竹トンボを回収してきてくれないかな」
のびぞう 「そんなの二の次だろ」
ノラざえもん 「そうでもないんだ。だって、竹トンボをつけてシズミちゃんが空を飛んで、もしヒネ夫と同じように落っこちたらどうする?」
のびぞう 「あ・・・シズミちゃんが危ない」
ノラざえもん 「そうだろ。だから早く回収してきてよ」
のびぞう 「わかった。今すぐに返してもらいに行くよ」
ノラざえもん 「頼んだよ。・・・ふう。これで他人に貸した証拠を隠滅することは出来そうだな。のびぞう君、しっかりやってくれよ」
岩手県のバス“その頃”