その頃
のびぞう 「ノラざえもん! ショックだよ。今日、シズミちゃんに『のびぞうさんって、男らしくないから嫌い』なんて言われたんだ」
ノラざえもん 「ふうん。でもなんでシズミちゃんはキミのことを『さん』づけで呼ぶんだろう。男の子ならクン付だろ」
のびぞう 「え? 何言ってんの? 知らないよ、そんなこと。シズミちゃんはずっと前からそうだよ」
ノラざえもん 「もしかしてシズミちゃんて、常識的なことが分かってない気持ち悪い女の子かもしれないよ」
のびぞう 「そんなことないよ。かわいい女の子だよ」
ノラざえもん 「いや、結構危ないよ、彼女。声はバカ高いし、そもそものびぞう君なんかに思わせぶりな態度をとること自体が普通じゃないよ」
のびぞう 「だからシズミちゃんに対して変な評論するのやめてよ。それより、僕が男らしくないって言われた問題についてコメントしてよ」
ノラざえもん 「まあ、そりゃ仕方ないよ。その通りなんだから」
のびぞう 「諦めちゃってどうするんだよ。ボクを男らしくするものを出してよ」
ノラざえもん 「男らしくするものか。じゃあ、♣プロテイン!」
のびぞう 「何? プロテインって」
ノラざえもん 「プロテインを飲んで正しく筋トレをやると、すごく男らしい筋肉隆々の身体になるよ。タンパク質もしっかり入っているよ」
のびぞう 「ええ? ただこれを飲めばいいだけじゃないの? 筋トレをするの?」
ノラざえもん 「おっと、忘れてた。これだけじゃ不十分だったね。じゃあ、♣鉄アレー! それから♣バーベル! さらに♣ダンベル100kg分! これに♣あっという間に九州男児になれる。熊本弁マスター用ソフトwindows版!も付けちゃう」
のびぞう 「通販番組じゃないんだよ。そんなに色々なもの付けないでよ。大体、最後のソフトって何なの」
ノラざえもん 「このソフトをのびぞう君にインストールすると、のびぞう君が男らしい九州男児になれるんだ」
のびぞう 「ボクにインストールするって、ボクの身体にはCDドライブは付いてないんだよ。ロボットの自分と一緒にしないでよ」
ノラざえもん 「しまった! 気がつかなかったよ。それなら・・・♣あっという間に熊本弁がしゃべれる注射!」
のびぞう 「やだやだ。ボクは注射が大嫌いなんだ」
ノラざえもん 「じゃあ・・・♣あっという間に熊本弁がしゃべれる胃カメラ!」
のびぞう 「うわあ、胃カメラ飲むなんてまっぴらだよ」
ノラざえもん 「それなら・・・♣1日1ページずつ読むだけで熊本弁がスラスラしゃべれる本!」
のびぞう 「ちょっと待ってよ。ボクは熊本弁が喋りたいわけじゃないんだよ。男らしくなりたいんだよ」
ノラざえもん 「だって、熊本弁をしゃべれば、九州男児みたくなって、男らしいじゃないか」
のびぞう 「そんなんじゃなくて、見た目を男らしくしてよ」
ノラざえもん 「見た目の問題なのか・・・♣太っとい付け眉毛! それから♣大きな付け鼻! それから♣立派な付け髭! これに♣高級羽毛布団!も付けちゃう」
のびぞう 「高級羽毛布団なんていらないよ。それに、そんな付け眉毛とか付けたら、逆に笑われちゃうじゃないか」
ノラざえもん 「そうかなあ。男らしい顔になるんだけどなあ」
のびぞう 「もう、21世紀から来たネコ型ロボットなんだから、もっと21世紀らしいもの出せないの?」
ノラざえもん 「21世紀とかって言うけど、21世紀がどんな世紀か知ってるの?」
のびぞう 「知ってるよ。自動車が空飛んでて、みんなテレビ電話で会話して、宇宙ステーションで乗り換えて月で生活してるんだ」
ノラざえもん 「そんなの20世紀に書かれた絵本の世界じゃないか。くだらない」
のびぞう 「何開き直ってるんだよ」
ノラざえもん 「仕方ないだろ。21世紀なんて、20世紀と大して変わらないよ」
のびぞう 「嘘つき。21世紀は明るい未来なんだ」
ノラざえもん 「あ・・・そうだ。一つだけ、21世紀になって変わったことがあるんだ」
のびぞう 「え、それ何? 教えて」
ノラざえもん 「うん。21世紀になるとね、のびぞう君のようにナヨナヨしてて、意思がはっきりしなくて、色白で、頭がそんなによくない男性がモテるようになるんだ」
のびぞう 「本当?」
ノラざえもん 「本当さ。だからのびぞう君はそのままでいればいいんだ。そのうちモテる男性の最先端になれるよ」
のびぞう 「やったー。ノラざえもん、ありがとう。ボク、このままでいるよ」
ノラざえもん 「やれやれ・・・これでよかったのかなあ。よくはないけど、よかったことにしておこう」
岩手県のバス“その頃”