“その頃”のバス関係書籍
私が岩手県のバスを追いかけていた1980年代。まだバス趣味が世間に認知されるには程遠く、同好者を見かけることがなかったのはもちろん、バスを扱った書籍を見かけることもほとんどありませんでした。
その数少ないバス関係書籍も、岩手県内の書店で取り扱うかというとそれは別問題です。せっかく出版されていても、当時私が知ることなく、当然入手することもなかった本もあります。
ここでは、そんな1980年代に発行されていた数少ないバス関係書籍をご紹介します。書店で入手できない種類のものは別項とします。
二玄社(1981)「別冊CAR GRAPHIC 世界のバス'81-'82」
1981年に発行されていた年鑑本。前年は「世界のトラック・バス」だったのですが、バスとして独立しています。しかし、まだ日本のバスだけでは商品価値がなかったのか、巻頭の新車カタログを除くとほとんど外国のバスについての記事で埋められています。ただ、そこに出てくる外国のバスのボディスタイルやカラーデザインが、数年後に日本で登場するものと酷似しているのが、興味深い事実です。日本のバスがスケルトン化される直前を切り取った資料です。
九段書房(1981)「モータービークル臨時増刊 日本のバス1982」
「モータービークル」の臨時増刊として発行された年鑑本で、日本のバスを体系的にまとめた恐らく初めての本。最新型のバス、バスメーカーのバリエーション、最新トレンド、古い写真、保存車両、バスの歴史など盛りだくさんな内容ですが、その後のバス年鑑の原点となったことがよく分かる内容です。富士重工ボディが特集されています。
九段書房(1985)「モータービークル臨時増刊 日本のバス1986」
前作から4年ぶりに発行された年鑑本。最新のバスのカラーグラフから、国産バスカタログ、そしてバスのトレンドを解析した特集など、後の「年鑑バスラマ」の原形であることが分かります。車両関係では、呉羽コーチの歴史や1950年代の三菱バスのカタログなどが目を引きます。このシリーズは、以後しばらく2年ごとの発行となります。
バスジャパン刊行会(1986)「季刊バスジャパン No.1」
1986年に都営バスの表紙で鮮烈なデビューを図った日本で初めてのバスの定期刊行誌。事業者ごとの車両カタログを中心にルポや歴史、特集記事をはめ込むスタイルで、以後何回か形を変えながら現在の「BJハンドブック」につながります。初回の特集号が東京都交通局というのも、需要を睨んでのことと思いますが、今では伝説化した創刊号といえると思います。ちなみに表紙写真の「グリーンシャトル」は、この当時バスの近未来の形といわれた都市新バスシステム。私もわざわざ乗りに行った覚えがあります。
さすがに盛岡市の書店にも常に並んでいるわけではなく、私も歯抜けに何冊か入手できたに過ぎません。それでも、バス趣味者を目覚めさせる引き金としては十分な役割を果たした本だと思います。
芸文社(1987)「ボンネットバス」
ムックと言うタイプの本です。1980年代では珍しいバスの本ですが、全国的なボンネットバスブームに対応して出版されたのだと思います。バスメーカーや事業者の提供による貴重なボンネットバス写真が豊富に掲載されており、ボンネットバスがどのように進化してきたかがよく分かります。
巻頭のグラフページに、岩手県交通の「まきば号」と「弁慶号」、岩手県北自動車のボンネットバスの活躍が美しく記録されています。
九段書房(1987)「モータービークル臨時増刊 日本のバス1988」
前作から2年ぶりの年鑑本。基本的な構成は1986年版と同じですが、特集記事一つあたりのボリュームが増しています。この時期、各地で脚光を浴びネットワークを広げていた都市間高速バス。国鉄バスから民営化されたばかりのJRバス(鉄道会社の自動車部門であった当時)。そういった特集記事が目を引きます。また、古いバス車両関連では、日野車体工業の歴史が特集されています。当時、書店に並ぶバスの本としては初めて目にしたもので、宝物のように書棚に飾っていた覚えがあります。
バスジャパン刊行会(1988)「季刊バスジャパン No.8」
季刊バスジャパンは、地方都市ではそう簡単に入手できるわけではなく、私も不定期に5冊ほどを購入したに過ぎません。その中で、創刊号以外で紹介するとしたら「津軽海峡バス紀行」と題したNo.8でしょう。厳冬の雪道に挑む青森県のバスの乗車ルポと、「さいはての三菱博物館」と題した下北交通の車両カタログがメイン。シリーズ終点と題した見開きコラムは羽後交通の乳頭温泉です。
このあと同誌は不定期化、年刊化、休刊の道を辿ったあと、ハンドブックシリーズとして復活を果たします。