外国切手の部
外国でも新幹線は有名です。中でも0系は人気者。でも、よく見るとなんかおかしな外国切手の新幹線。最近では現世代車両も頻繁に登場するようになった外国切手の新幹線をご紹介します。
日本の誇り「0系」関係
赤いひかり
モンゴル(1979)
モンゴルで国際交通博覧会記念に発行されたという切手。富士山と0系新幹線という構図は決まっていますが、いかんせん青い部分が赤く塗られています。車両自体はきっちりと描かれているだけに不思議な気がします。恐らく元になった写真が白黒写真で、色は想像を働かせたのだと思います。 もし国鉄のままだったら、青い東海道、緑の東北の次はこんな赤い新幹線が現実に走ったのかもしれませんが。
緑のひかり
グレナダ諸島
この丸っこいスタイルは0系そのものですが、緑色に塗られてしまいました。背景の富士山や左下の1964の数字も0系であることを裏付けています。
もっとも、側面のボディマウントスタイルや正面のスノープローは200系の特徴を表現しており、東北新幹線に転属した想像上の0系が頭をよぎります。
モノレール
チャド(1973)
チャドで発行された「世界の鉄道切手」というシリーズ物のひとつのようです。左上に「OSAKA EXPRESS」と書かれ、背後に富士山があるので紛れもない新幹線ですが、高架橋に比して大きすぎるボディはまるでモノレール。新幹線独特の丸い鼻がなく、ライトが二つ並んだスタイルもモノレールチックに見えてきます。
ハートカクテル
グレナディーン諸島(1982)
グレナダ領グレナディーン諸島の切手です。世界の有名な鉄道を集めた中の1つのようです。
ボンネットの丸い部分への映り込みなどの描写が、わたせせいぞう氏のイラストを思い出させます。
アフリカの0系
ルワンダ(1984)
やはり外国で思い描く新幹線は、このくらい変身してくれないと面白くありません。赤茶色の地色が日本離れしたこの電車、本当に新幹線のつもりで描いたのかは分かりませんが、正面下部のほうからちょこんと出た連結器がチャーミングです。
赤鼻の0系
パラグアイ(1979)
せっかく写真を下敷きにしてリアルな切手を作ったのに、自国の(?)田園風景をかぶせたためアンテナの上部が消えてしまいました。更にボンネットの丸い蓋を赤く塗ってしまったため、ゲテモノ新幹線の仲間入りを果たした切手です。
小窓
マダガスカル(1998)
マダガスカル発行の切手で、世界の鉄道車両をデザインしたものの中の1枚。写真ベースで、背景などを画像処理しています。
外国切手界では人気の0系ですが、ここでは後期の小窓の車両をモデルにしており、またパンタカバー取り付け後という最終期の姿です。発行年からしても0系が間もなく東海道から姿を消す頃です。
いつもの場所で
ブータン(1988)
富士山と新幹線という定番の組み合わせを絵で表現したブータンの切手。単純な青でなく樹木の緑がかった色を表現した富士山の絵にこだわりを感じますが、新幹線の0系のほうは、客用扉が1両に1ヶ所しかなく、スカートの下に台車らしきものが見えないなどちょっと手を抜いたようです。
右下の説明文章には「Bullet Train」つまり「弾丸列車」と書かれています。
引き立て役の0系
モンゴル(1997)
メインはフランスのユーロスターですが、背景画の中になにやら日本の新幹線らしきものが走っています。正面の単純な流線型は0系とは似て非なるものですが、背景の富士山ぽい山とのコンビネーションから作者の意図は新幹線を表したいのだと思われます。
上空を行くJALっぽい飛行機や桜っぽい花も日本のイメージです。
いつもの場所のトリックアート
グレナダ(1999)
ちょっともう特別な説明をつけるのも難しいくらいに有名になった富士山と東海道新幹線0系のコラボ。
実物や写真がベースなのではなく、他国の切手とかイラストをベースに描いたと思われるのは、まず富士山が険しすぎるという点。それからトリック絵画のような架線柱。手前側と向こう側に立っていますが、どの架線をどのように支えているのかよく分かりません。
比叡山とトリックアート
リベリア(2001)
なぜかグレナダのトリックアートと同じような架線柱ですが、向こう側の架線柱は線路と平行になっています。
発行年はこっちが遅いので、コピーの可能性がありますが、小窓の0系をはっきり表現しているので、どこか別に原画があるのかも知れません。
しかし注目すべきは、富士山とは似ても似つかない尖った山です。比叡山でしょうか。
いつもの場所で裏焼き
セリアレオネ(2004)
蒸気機関車の200年記念というような切手ですが、お馴染みの富士山と新幹線0系が、綺麗なお花畑を横目に通過してゆきます。
写真なのですが、残念ながらこれもダウト。宝永山が左側にあるので裏焼きです。よく見れば、新幹線も先頭車にパンタグラフがあるので、本来は東京向きの先頭車。
更にもう一つ気付いたのは、小窓の0系であることと合わせて、グレナダのトリックアートの元絵である可能性があります。右に見える架線柱が、確かに変な角度に錯覚します。
トンネルから出る0系
モンゴル(1992)
トンネルの中から見た新幹線という絵柄。
東海道新幹線の英訳か、New Tokaido Lineと説明書きがあります。
粗を探すわけではないのですが、左側通行の日本の鉄道としては、これは後追い写真になるわけで、本来はテールライトが赤くなっているはずです。
20世紀の輸送機関と科学技術
ガイアナ
20世紀の技術をテーマにした切手のようです。スペースシャトルやコンコルドなどと並んで、日本の新幹線が取り上げられています。コンピューターから飛び出してくるというイメージだったのだと思いますが、赤いテールライトを描いてしまったため、コンピューターに飛び込んで行く設定になってしまいました。
窓もなく、つるんとした新幹線です。
200系の兄弟関係
東の国からこんにちは
ラスアルハイマ(1972)
日本の鉄道100年を記念して、アラブ首長国の一つであるラスアルハイマが発行した切手。新幹線「ひかり」と弁慶号の並びという絵柄ですが、新幹線は結局営業運転には至らなかった試作車951形が描かれています。後ろの方の屋根の形状だけは0系ですが。
また、下の方で富士山をぐるりと回って走っているのは、1970年の大阪万博で模型が展示された国鉄のリニアモーターカー。ちょっと火星人っぽいですが、夢のあるスタイリングです。
この時代にはこれが21世紀への夢でした。
東北カラーの951形
ジブチ(1981)
日本の新幹線とフランスのTGVが描かれた鉄道切手。アフリカ大陸北部に位置するジブチ共和国のものです。
描かれている新幹線は、富士山を背景にしていますが緑色。説明書きに962形(東北新幹線試作車の形式)との記載がありますが、車両そのものは、運転席後ろの三角のカラーデザインや広窓から、山陽新幹線試作車951形です。
東海道新幹線の961形
マリ(1980)
西アフリカのマリ共和国の切手。地元の蒸気機関車と世界の高速鉄道という組み合わせの記念切手のようです。紙幣に見られるような精密な線画ですが、新幹線はモノトーン。そして「東海道」という表記はあるものの、車両は角ばっているので全国新幹線網対応の試作車961形のようです。
東海道カラーの200系
ネイビス
世界の先進技術(?)をテーマにした切手のようで、日本の新幹線が取り上げられた2枚セット物。上の図面は0系ですが、下のイラストは綺麗な仕上がりである上、ハンサムな電車に仕上がっています。まるで200系を青く塗ったみたいです。それとも試作車両の961形でしょうか。
東海道新幹線に100系が登場する前、こんな車両が走っていたら・・・そんな想像をかき立てます。
961形量産車
シエラレオネ共和国(1995)
これも外国切手では珍しくない試作車両961形を東海道新幹線で走らせているデザイン。「世界のカラフルな列車」というような切手の中の1枚です。
西アフリカのシエラレオネ共和国の発行。
200系、東海道新幹線へ転属
ブータン(1996)
色は青ですが、角ばったスタイルやスノープローが200系の特徴を示しています。小さな字の説明の中にも「Series 200」とありますので、200系で間違いないでしょう。雪切室などの細かい描写もされていますので、写真を下敷きに描いたのだと思いますが、色だけは選択を間違えたようです。
ただ、1980年代に国鉄特有の車両共通化により東海道新幹線にも200系を増備していれば、こんな光景を見ることはできたと思います。或いは国鉄が分割されなければ、両線間の車両配転により、こういうこともあったかもしれません。
大阪城と200系
ジブチ共和国
世界の列車を集めた切手で、ここでも200系が登板です。スノープローもしっかり描かれていますが、緑色の濃度がちょっと低く草色系。そして背景は富士山。そこに添えられた絵は大阪城。狭い日本の中の東京も大阪も仙台も盛岡も、アフリカから見れば同じなんだと思います。そう思うしかありません。
ライトが赤いので、後ろ姿です。
富士山と200系
レソト王国(1996年)
上の切手とよく似た角度の200系が富士山を背景に走ります。赤いテールライトをつけているところも、ジブチ共和国発行のものと共通しています。こちらの方が色が実物に近い点から、オリジナルはこちらかもしれません。発行は南アフリカのレソト王国。
世界の高速列車
アンゴラ(1997)
6種類の高速列車が交差する線路を行き交うというダイナミックな絵が描かれた切手です。右上に日本を代表して200系新幹線が登場しています。1997年と言えば、もっと近代的な車両が登場していたはずですが、それらを制して200系が選ばれた理由は何でしょうか。
雪かきが可愛い200系
ギニアビサオ(2006)
速い列車というようなタイトルの付いた4枚組みの切手。2006年という発行年の割には、日本代表には200系が選ばれています。細かい特徴がよく描かれていますが、スノープローが控えめでちょっと可愛くなっています。
東北新幹線、山梨県内を行く
リベリア(2001)
綺麗に描かれた100系タイプのシャークノーズの200系の切手です。小さい字の説明書きだと221-204と車番まで指定してあります。
それにしても、こんなに富士山の近くを200系が走っている絵に新鮮さを覚えます。また、本来日本のフル規格新幹線が走ることのない草原の中の単線区間を走っている場面も新鮮です。
東北新幹線、非電化区間を行く
ギニア
発行年が分からないので、上の「東北新幹線、山梨県内を行く」とどちらが真似をしたのかは不明ですが、屋根上のアンテナがなかったり、線路のデッサンが狂っていたりするあたりから、こちらの方がトレースしたのだと想像します。
山梨県を走っていた200系は、更に富士山も見えず、架線もない線路へとその足を進めていきます。
やはり小さい文字で221-204と車番が書いてあります。
超特急はかり号
モルディブ(1994)
「アジアの列車」という切手の中に、日本の新幹線。
「ひかり号」のところに「Hakari」と書いてあるのがご愛嬌ですが、よーく見ると、東海道新幹線100系なのに狭窓で、スカートにはスノープロー、ドア脇には雪切室の通気孔。そう。東北新幹線の200系2000番台のイラストを青く塗ってしまった代物でした。外国切手の新幹線は、なぜか色を間違えることが多いようです。
トーホコ新幹線の200系
モルディブ
色が青っぽいし、背景に京都の平安神宮みたいなものがあるので100系かと思ったら、緑色の200系でした。下のほうの文字にも「Tohoko」の文字が見えます。・・・トーホコ。
カンボジアの100系
カンボジア(1989)
先の尖った100系のスタイルが上手に描かれた切手。1989年発行なので、100系が最も美しく輝いていた頃です。
まるで図面のような綺麗な絵なのですが、よくよく見てしまうと台車の位置や大きさが変です。切手の幅に抑えるため、寸詰まりにしたようです。
いつもの場所の100系
ネイビス(1991)
まだ「ひかり号」が東海道新幹線の主役だった時代、富士山を背にしたいつもの場所を行く100系。
しかし、富士山の形がちょっと荒々しい感じです。
JR世代車両関係
韓国のMAX
モザンビーク(2009)
「アジアの高速鉄道」というような切手シートの中に、E1系初代MAXが旧塗装で描かれていました。
しかし、背景にあるのは韓国の崇礼門のようです。よくよく見てみると、画面の左下にKTXの文字。KTXとは韓国高速鉄道で、フランスのTGVの技術により製造されたもの。日本の新幹線とは似てはいないはずなのですが・・・。
広島あたりのMAX
モザンビーク(2009)
上で韓国高速鉄道と間違われたE1系ですが、同時期に同じモザンビークで発行された切手シートでは、新塗装で「新幹線E1系」というキャプションつきで登場しています。
ただし背景にあるのは厳島神社と思われる鳥居です。
そして、この切手で上段の中央にいるのが、本物のKTXだったりします。
のぞみ300系
モルディブ
東海道新幹線の「のぞみ」をデザインした切手には300系。乗務員扉と客用扉を極限まで共通化したイラストです。
東方見聞録
ニジェール(1998)
あふれんばかりの消費者金融の看板と、下の方にはお決まりの富士山と東海道新幹線0系電車という日本を象徴する風景に囲まれて、選択基準のよく分からない4車種の写真が入った切手です。
上の二つ(東武スペーシアと300系新幹線)は同じようなスタイルの電車の色違いを並べてみたということでしょうか。そして下の2枚(小田急ロマンスカーと国鉄DE10形機関車)は違う車両なのに同じような色使いだから並べてみたのでしょう。
お金持ちの日本の鉄道マニアは、こんな切手でも買うのだと勘違いされているようです。
庇を貸して母屋を取られる
ギニア(2008)
「中国の列車」というタイトルの6枚組みの切手です。中国の高速列車は世界各国の技術を集めた展覧会状態。日本の新幹線をベースにしたCRH2(上中央) 、ドイツのボンバルディア社製をベースとしたCRH1(下左)、ドイツのシーメンス社製をベースとしたCRH3(下中央)、イタリアの振子電車をベースにしたCRH5(上左)などが走ります。ただ、中国政府はいずれも「自国技術」だと主張しているとの報道が気になります。なお、下右の車両にはCRH1との説明書きがありますがCRH3の登場時カラーのようです。
そんな中、上右にはCRH2の原型となったJR東日本のE2系が日本の技術を誇示しています・・・と思ったら「SHINKANSEN」の文字はあるものの「CHINE」の文字だけで「JAPAN」とは一言も書いてない。これでは中国のみならず、世界に「新幹線は中国のもの」と大誤解を与えてしまうのでは。
ピンクっぽい400系
セントヴィンセント(1991)
国際切手展フィラニッポン91に合わせて発行された切手のようです。時期的に最新型だった山形新幹線400系がデザインされたということのようです。
裏焼き富士山と縦長「MAX」E4系
ドミニカ
何の200年を記念したものだかよく分かりませんが、日本の新幹線をデザインしてくれています。
メインとなるのはJR東日本の2階建て「MAX」E4系。下の方には東海道新幹線の300系が2編成走っています。いずれも画像の左右を縮めた感じです。
そして日本の象徴でもある富士山ですが、よく見ると左右が逆の裏焼き画像です。本来右側に見える宝永山が左側にあります。
なぜか軌道検測車
ソマリア(2004)
「日本の列車」というようなタイトルがついた4枚組みで、新し目の特急列車を集めてみたという意図が見て取れます。しかし、新幹線2種については、右上がJR東日本の「East i」E956系、左下がJR東海の「ドクターイエロー」923系で、いずれも軌道総合検測車。わざわざ事業用車両を取り上げたとは考えにくいので、「綺麗な色だから」くらいの理由でしょう。
しかし、ここで言うことでもないですが、せっかく「ドクターイエロー」という通称が一般化していたにもかかわらず、違う色にしてしまうJR東日本の独自性もどうかとおもいます。
鉄道切手
新幹線を描いた外国切手を集めたりしてみて、使いもしない切手を手にするのは何年ぶりだろうかと思いました。思い返せば小学校1年生のとき、何の意味か友達がくれた1枚の切手を見て、1か月間くらいの間、ひたすら切手を収集してみて以来のことです。そのときは、集めようとしても無限に存在する切手を集めきれるはずもないことに気づいて、嫌気が差してやめてしまいました。今回私が切手を手にするきっかけは、「200系を探せ!」のコーナーを始めて、おかしな新幹線を探しているとき、このページの一番上で紹介した「赤いひかり号」の切手を見つけたことです。外国人は日本をどう見ているんだろうかというのは、新幹線に限らず興味があります。そういうずれた世界が展開している外国切手の中の新幹線を、ちょっと眺めてみたくなりました。
しかし、調べてみると日本の新幹線を描いた外国切手の数があまりにも多いことに驚きました。それだけ日本の新幹線が成功した高速鉄道として全世界に認知されているという証拠なのでしょう。そしてその多くが、日本の象徴でもある富士山を背景画として使用しています。富士山と新幹線の組み合わせは、日本の技術革新を象徴する風景なのでしょう。
もっとも、このページでそういった外国切手のすべてを紹介しているわけではありません。やはり、看板などと同じように、実物とズレがあったり突込み所が多かったりするものを中心に取り上げました。探し始めてみると、単に写真を配置しただけのものも少なからずあることが分かりました。その写真も切手にふさわしい美しい図柄のものではなく、とりあえず写っているというだけのようなものさえありました。
これらは恐らく、純粋に郵便事業のためではもちろんなく、日本の鉄道を図案にすれば日本の収集家に売れると言う外貨獲得を目的にしたもののようです。動機が不純なだけに内容も吟味されずに作られているということのようです。