誘致カードの部
とうとう東北新幹線も全線開通し、北陸新幹線も北海道新幹線も開通してしまいました。多分、誘致看板の部で紹介した新幹線看板は、そのほとんどが役割を終え、消え去ってしまったことでしょう。
しかし、幻となった誘致看板と同じデザインを今も身近に見ることができることを知りました。それは、新幹線の誘致のために発行されたプリペイドカードの数々です。もちろんこれも役割を終えて久しいのですが、コレクターなどの手によって、今もこの世に存在していたのでした。
北海道新幹線
青函トンネルを越える200系
北海道新幹線建設促進期成会・青函トンネル建設期成会(1980年代)
まだ200系しかなかった時代なので、北海道新幹線に200系が描かれるのは当然なのですが、この車両はちょっと進化(退化)しています。
屋根の肩部分に通風口があるのは0系の特徴ですし、側窓が広窓です。窓周りの緑色はなぜか屋根までつながっている新デザイン。スノープロウがあるので200系であることは間違いないのですが、何を見て描いたのでしょうか。
北海道へ200系
北海道新幹線建設促進期成会(1990年)
JR北海道のオレンジカードで、1990年発行のものだそうです。
北海道と青森県が手をつないでいますが、その下のほうに200系が描かれています。時期的にまだ次世代車両は登場していないので200系で当たり前だったいい時代のものです。
時計台と100系
札幌商工会議所(1985年頃)
時計台の前を横切る100系ですが、側窓が小窓なので、量産先行車であることが分かります。
しかし、こういう感じで時計台を大きく見せるので、本物の時計台はかなり大きいものなのだと勘違いする観光客が続出してしまうのだと思います。
北の大地に100系
北海道新幹線建設促進後志・小樽期成会(1992〜96年)
春の羊蹄山を背景に、当時の東海道新幹線の主役だった100系のホーム撮り写真を配置したテレホンカード。
菜の花とヘッドライトの黄色が同じです。
海を越えたスペーシアやまびこ
政経セミナー開催記念(1993年)
「新幹線の青森・函館同時開業実現を」という結果的に叶わなかったことを謳ったテレホンカード。
木古内駅にあった看板と同じ、「スペーシアやまびこ」のデザインです。
このあと数ヵ月で与党の座を追われる政党の函館支部が発行しています。
青函トンネルのWIN350
今別町(1998年)
北海道新幹線の途中駅として青森県今別町に奥津軽駅(仮称)が設置されることが決まったことを記念して発行された「献血ありがとう」のテレホンカード。
青函トンネルから試作車のWIN350が出てくる(入っていく?)イラストは、現地の駅前にあった看板の元絵と思われます。
よく見ると側面の塗り分けはJR東日本のSTAR21と似ています。
お馴染みの北海道新幹線500系
北海道新幹線建設促進期成会(2006年)
北海道新幹線の誘致看板でおなじみの500系グリーンラインです。札幌市内の地下鉄やバスなどで使用できる「共通ウィズユーカード」で新幹線招致です。
東北新幹線
北へ向かうMAX
東北新幹線建設促進期成同盟会(1990年代前半)
東北新幹線盛岡以北の早期完成と北海道新幹線の早期着工を訴えるテレホンカード。1990年代前半のものです。
「21世紀はすぐそこです」という言葉がくすぐったいですが、絵は当時の最新型E1系MAXです。新幹線誘致の際に最新型を描くのは常識です。
E2系変態進化
東北・北海道新幹線建設促進三道県協議会(1996年)
東北新幹線と北海道新幹線の両方の建設を訴える「北の新時代へ!」というメトロカード。地下鉄国会議事堂前駅にあったのと同じ絵柄で、E2系でありながらヘッドライトは正面窓下にあります。
青森・北海道行 早期実現
東北新幹線建設促進期成同盟会(2000年)
東北新幹線盛岡以北の早期完成と北海道新幹線の早期着工を訴えるオレンジカード。
タイトルで北海道新幹線ではなく「北海道行」と謳ったのは、1997年に開業した「長野行新幹線」の影響でしょうか。
2階建てのE1系MAXは多少扁平になっています。
みんなの力で新幹線直行特急停車を
上ノ山駅利用・整備促進協議会(1990年)
まだ「山形新幹線」とかいう名前はなかったんでしょう。蔵王の拠点上ノ山駅に「新幹線直行特急」の停車を促進するためのオレンジカード。イラストは後の400系の予想イラスト。
1992年に開業した山形新幹線には、晴れて「かみのやま温泉駅」が設定されています。
東北リニア新幹線
東日本リニア鉄道建設促進協議会(1993年)
東北地方にリニアを誘致するという協議会のメトロカードです。ルートや建設主体などは不明ですが、リニア試作車と現実の新幹線の間をとったような11両編成の車両が描かれています。
北陸新幹線
オレンジ色の200系
亀岡市・北陸新幹線口丹波建設促進協議会(1982〜85年頃)
東北・上越新幹線が緑色を採用した時点で、北陸新幹線は赤系統になるのだという暗黙の了解がありました。その証拠物件がようやく見つかりました。
新宿の超高層ビル街から走ってくる200系は、鮮やかなオレンジ色です。
ちなみに、京都府口丹波地区では、北陸新幹線のルートの誘致を古くから続けています。
北陸新幹線の個室ひかり
北陸新幹線建設促進石川県民会議(1988年頃)
北陸新幹線の早期開通を望む石川県のテレホンカードです。発行は1988年ごろと思われます。
この年代だと200系も100系も登場していたのですが、このイラストは1982年に国鉄の手によって発表された「個室ひかり」のイラストのようです(注1)。
0系のテイストを色濃く残していますが、ヘッドライトは1980年代に流行った角型で、直線的な斜めラインの塗り分け線なども当時の流行です。
スーパー雷鳥と0系
小松市職員互助会(1990年)
小松市制50周年記念のオレンジカードで、小松市の未来と題して新幹線が描かれています。北陸新幹線の北陸部分は当初スーパー特急方式で建設という話もありましたが、それをイメージしてか在来線と新幹線が同じ高架を並んで走っています。(実際のスーパー特急方式というのは、新幹線並みの路盤に狭軌のレールを敷くのであって、広軌の新幹線が走ることはありません)
時代を反映して、新幹線は狭窓の0系、北陸本線は「スーパー雷鳥」です。
長野五輪とフル規格
作成者不詳(1990年頃)
1998の冬季五輪の長野への招致に合わせて、北陸新幹線の軽井沢以北をフル規格で着工するよう訴えるテレホンカード。1990年ごろの発行と思われますが、当時軽井沢以北は在来線を標準軌化して新幹線が乗り入れるいわゆるミニ新幹線構想が浮上しており、議論を呼んでいました。
写真の電車は当時JR東日本では最新の200系2000番台です。
北陸のWIN350
北陸新幹線建設促進石川県民会議(1992年頃)
北陸新幹線が「早く、速く」開業することを願って発行されたテレホンカード。
写真になっているのはJR西日本が500系の先行試作車として製造した通称WIN350。新幹線誘致にはそのときの最新型をデザインすることが多いので、1992年頃の発行と思われます。残念ながらこの車両は試作車のみに終わってしまいました。
長野の新400系
JR東日本長野支社(1994年)
シンプルに「北陸新幹線」と書かれたオレンジカード。描かれているのはメタリックなボディを持つ新幹線ですが、正面スタイルは山形新幹線の400系のようです。もしかして400系のイメージパースの流用でしょうか。
金沢駅にあった誘致看板の原形のようです。
北陸の500系
富山県北陸新幹線対策連絡協議会(1994年)
「1日も早く、全線整備を」と北陸新幹線の建設を促進するオレンジカード。JR西日本のカードなので、図柄もJR西日本が開発を進めていた次世代新幹線です。これが若干形を変えて500系として登場することになります。
長野の400系ひかり
長野県食品営業共済協同組合(1996年ごろ)
券面に「新幹線」の文字は見えませんが、新幹線を誘致していた長野県で発行されたテレホンカード。
描かれている車両は正面の連結器のふたの形状などから山形新幹線の400系をイメージしますが、カラーは東海道新幹線です。
長野新幹線は当初ミニ新幹線(在来線の軌道を標準軌化)案もありましたが、90年代後半には既にフル規格で建設が進んでいました。
北陸新幹線に300系
富山県北陸新幹線対策連絡協議会(1997年)
「のぞみ」300系の疾走するイメージ写真を使用したメトロカード。1997年といえば、長野新幹線が開業し、E2系が運行を始めた年。あえて東海道・山陽新幹線の300系を使った意図はどこにあるのでしょうか。やはり富山県としてのJR西日本への敬意の表明でしょうか。
九州新幹線・長崎新幹線
鹿児島に0系
発行者不明(1980年代後半)
噴火する桜島の火口から新幹線0系が飛び出してくるという衝撃的なデザインで、更に「新幹線着工に燃えろ鹿児島!」の燃えろを掛けているテレホンカード。
絵本に出てくるような新幹線の作風が素敵です。
九州に登場した「スーパーひかり」
JR九州(1989年)
九州新幹線の第3紫尾山トンネルの着手を記念して作成されたJR九州のオレンジカード。九州新幹線の経路図の中から飛び出してきたのはカーブドガラスの大きな新幹線。1987年ごろにJR東海が計画していた「スーパーひかり」をJR九州仕様にモデルチェンジをした感じの車両です。やはり九州新幹線は赤という想定だったことが分かります。
長崎リニア
長崎新幹線建設期成会(1991年)
「みんなの力で長崎新幹線」というオレンジカード。シンプルなデザインですが、描いてあるのはリニアモーターカーのようなスタイルの車両。軌道の形状も鉄軌道ではなさそうです。それでも白地にJR九州のイメージカラーである赤いラインを入れているあたりは、若干の現実味も加味されています。
天井にまで伸びている大きなカーブドガラスの強度が気になります。
原始つばめ
熊本県新幹線県民運動本部(1990年代中盤)
熊本に新幹線を誘致するテレホンカードで、1990年代の発行。
正面のV字形ラインが特徴のメタリック塗装の電車を、4人分の手が触っているのか持ち上げているのかといった図柄です。
この電車のノッペリ具合からして、これが進化して実際の九州新幹線の「つばめ」になったということができるでしょう。
長崎竜踊りと新幹線
長崎新幹線建設期成会(1996年)
長崎新幹線を「熱烈待望」するメトロカード。1996年発行だそうです。
東京の地下鉄のSFカードということで、長崎のまつりをメインに据え、新幹線車両はついでといった感じです。ついでの車両らしく、単純な傾斜形スタイルです。
蛭子版の原形
長崎新幹線建設期成会(1998年ごろ)
長崎新幹線の実現を謳うテレホンカードで、1990年代終盤のもの。
描かれている車両は蛭子能収氏がイラスト化した看板で有名なスタイルですが、こちらが原形。長崎市内で数多く見られた看板です。マンガ版に比べるとそれなりにかっこいい電車ですが、運転台窓がないので無人運転を前提に設計されたのかもしれません。
中央新幹線
リニアモーターカーを山梨へ
リニアモーターカーモデル線建設促進期成同盟会(1980年代後半)
山梨県にリニア実験線を誘致するというテレホンカード。これまで宮崎県にリニア実験線がありましたが、新実験線候補地を北海道、山梨、宮崎の3ヵ所に絞った時期。リニア中央新幹線にはまだ遠い段階です。
車両もまったくフリーデザイン。一見、E2系を逆さにしたようなカラーデザインですが、まだE2系登場前。先見性のあるデザイナーが描いたのでしょう。