(撮影は一部を除き2017年12月2日)
「廃バス見聞録1」が刊行された
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今年の「お台場旧車天国」は、目ぼしいバスが出展されないという話なので、私は行かないことにしました。
しかし、その会場でしか販売しないという本を、キュリアス編集部の赤木さんが企んでいたとは、私も迂闊でした。
その表紙から中に掲載された写真の一つ一つまで、バスの廃車体で塗り固められたという、決して書店で並べても買う人がいないのではないかという、“超”マニアックな本なのでした。
これは「信州古バス見聞録」の裏本なのか
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この本は、その体裁、内容どこを見ても、4年前に発行された「信州古バス見聞録」の延長線上にあると思わざるを得ません。
「どうせなら、信州廃バス見聞録にしてしまえばよかったではないですか?」
私のそんな問いかけに対し、赤木さんは、なぜか言葉を濁すのです。
そう。よく見ると、「廃バス見聞録」のタイトルの下に「1」という文字が。この本は、飽くまでも序章にすぎず、その後には「2」だって「3」だってあるはずなのです。
まだあるDangerous Zone
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ページをめくると、5ページ目にして登場するのが、富士五湖の一つ西湖畔のオートキャンプ場に置かれていた5台ものゲームバス。
ありきたりの廃バスではいけないのだ。
「第2巻は“信州廃バス見聞録”になるんだろうから、第3巻は“富士山麓”ですね。で、第4巻は、赤木さんが行きやすい“駿河路”ですね。じゃあ、第7巻あたりで“みちのく岩手”をお願いします」
いまだ日本各地、いや日本の一部地域に存在する廃バスの集積エリアを、衝撃的な画像とともに紹介するシリーズの始まりを予感させるのです。
静岡県の奥地に廃バス集積地があるらしい
そんなちょうどいいタイミングで、当サイトにも情報をお寄せいただいているKjさんから赤木さんへ、「Google Earthを見ていたら、静岡県の奥地に、気になる影がたくさん集まっている地帯がある」との連絡がありました。
確かに、ちょうどバスくらいの大きさの白い四角形が見えます。
私もGoogle Earthによる上空からの探索に参加し、森の陰にいくつかの怪しい白いものを発見しました。
「赤木さん、今回のネタはこれで決まりじゃないですか。2巻と3巻を飛ばして、4巻の駿河路廃バス見聞録から先に出しましょう」
週末の決行が決定
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山の中の廃バス探索には、葉っぱが落ち切った11月下旬以降がベストです。さらに、雪が降る前に決行しないといけません。
「12月2日の土曜日に行くことにしました」
赤木さんから、心強い返事が返ってきました。
「よろしくお願いします。Google Earthに写ってたのがほとんどコンテナハウスだったなんてことがないことを祈ります」
私も力強いエールを送りました。ところが・・・。
なぜか私も同行することに
赤木さんから「“その頃”さんも一緒にどうですか」とお誘いを頂いてしまったのです。
「いや、実は前日、東京出張で」
「ちょうどいい。東京から静岡は1時間で来れます」
「いや、スーツと革靴じゃ、山歩きできませんよ」
「着替えを持ってくればいいじゃないですか」
「いや、そんな大荷物、出張先で怪しまれます」
「ウチに宅配便で送ってください。当日持ってきます」
「いや、宅配業界も人手不足で大変だし、静岡県と言えば春日野部屋の和錦という関取がいたけど、今相撲界も大変なんだよね」
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写真はイメージです
結局、私は「メイキング・オブ・廃バス見聞録」とでもいうべき、赤木さんの取材の取材をするために同行することになってしまったのです。
集合は、12月2日の朝8時ごろにJR身延線富士駅前。赤木さんがジープで迎えに来てくれることになりました。
冬の撮影行は、なるべく朝早く始めて、なるべく夕方になる前に終えるのが鉄則なのです。
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そして、当日・・・。
新静岡ICからスタート
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新東名高速道路を降り、北へ向かいます。
しょっぱなから、ホンダN360の現役車に出会いました。
フロントがマイナーチェンジされた後期車ですが、逆にこれの方がレアかもしれません。オーナーはその辺にこだわりのある方でしょうか。
この種の顔は、クーペタイプのホンダZの方が有名になってしまっています。
藁科街道を北へ
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自転車で走る人たちを追い越して、藁科街道を山へ向かいます。
「この人たちは、こんな山道に向かって自転車こいで、何が楽しいんでしょうね」
「本当に、世の中には訳の分からない趣味の人たちがたくさんいますよね」
「休日なんだから、家でのんびりしてればいいという発想がないんですかね」
「全くその通りですよ」
日熊神社に寄って
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富沢というバス停があったので、そこで小休止です。
日熊神社という神社があります。山の散策では、冬眠前のクマに出くわす危険があるので、そういうことを防ぐ神社なんでしょう。(多分違います)
ちょうど、しずてつジャストラインの路線バスが通り過ぎてゆきました。
エルガを追って
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そこからしばらくの間、丸みのあるいすゞエルガのお尻を追尾します。
「こういう山間部にもエルガが当たり前に走る時代なんですね」
「でも、20年もすれば、あの丸いお尻を懐かしんで追いかけちゃうんでしょうね」
「だから今はまだ真面目に撮らなくてもいいですね」
湯ノ島温泉まであと2q
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県道60号線に入ってしばらくすると、「湯ノ島温泉まであと2q」というイラスト看板を見つけました。
Vサインと2kmをかけていて、おまけにポロリのイラストは昭和40年代の作品とお見受けします。
その時代なら、ドリフなどの子供が見るテレビでもポロリがあったから、いいんだと思います。
湯ノ島温泉に到着
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山あいにある湯ノ島温泉に着きました。
ただのドライブとかツーリングとかなら、ここで日帰り入浴を楽しんでゆくのでしょうが、この先に重要なミッションがあるので、ここは素通りします。
その間にも、地元のおばちゃんとかが、日帰り入浴にやってきていました。
いすゞエンジンの大型ウィンチ
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山道の途中で、屋根を付けられて保存されているかのような状態の機械を見つけました。
赤木さんによると、斜面に張り巡らされた索道のワイヤを引っ張る大型ウィンチのようです。この場所が地滑りで崩れ、その補修工事がほぼ終わった状態ですが、機材を運搬するためのワイヤーを引くクレーンなのでしょう。
「いすゞLTと同じエンジンですよ」
赤木さんが奇声を上げました。
山あいの集落
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いきなりダート
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こんなところも走ってみます。
でも、時期的に紅葉が綺麗だったりして、車窓を楽しむにはいい場所です。運転している赤木さんの苦労はよく分かりません。
Dangerous Zone に踏み入れる
さて、ジープは最終目的地への分岐に足を踏み入れます。
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魔界への入口
もうそこから廃バスゾーンが始まるという場所に来たとき、これはありました。
『ククリ罠に寄る狩猟を行っています。注意お願いします』と書いてあります。
自らククリ罠に寄っていくという、罰ゲームのような狩猟が行われているようです。
更によく読むと、小さな文字で『イノシシとニホンジカに限り』と書いてありました。
動物たちに対して、狩猟をしていることを知らせる親切な注意書きだったのです。
ホッとした私たちは、こうして未知の無人集落へと足を踏み入れて行ったのです。
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次回の予告
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しかし、この開拓地には人影が全くなく、家畜の鳴き声さえ聞こえてこない。にもかかわらず、常に誰かが我々を監視しているような、不気味な感覚から逃れることはできなかった。