十種香 奥庭狐火 楽しい演出 |
15日に歌舞伎座夜の部を見てきました。 本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)のあらすじ 実はこの蓑作は本物の勝頼。死んだのは濡衣の恋人で、勝頼の身代わりとなったのだ。濡衣は姫に武田家の家宝で長尾家が借りたまま返そうとしない「諏訪法性の兜」を盗み出してくれたら仲立ちしようと申し出る。そこへ謙信が登場し、蓑作実は勝頼を使いに出す。勝頼の正体を見破っていた謙信は、家来の白須賀六郎と原小文治を討手に差し向ける。 奥庭狐火の場 「十種香の場」というのは動きがほとんどなく、見ているほうは辛抱を強いられる場です。大体「本朝二十四孝」というのは難解な話で、筋を解って見ていても良く解らないと言う代物。この前にある「筍掘り」なども「実は〜実は〜」の連続で、筋を説明するのも大変なややこしさ。なんでこんなに複雑な話を作ったんだろうと思うくらいです。 そういう場合、歌舞伎では筋などにあまりこだわらないほうが良いと私は思っています。歌舞伎はあくまで楽しむもの、見物しながら頭が痛くなるような事を考えてみても楽しむと言う事からは遠ざかる一方。ここでは見たとおりをお話する事にしましょう。 昨日見た席では残念な事にお香をたく八重垣姫の後姿が柱の陰になって良く見えなかったのです。三大赤姫のうちでも一番難しいといわれる八重垣姫。その後姿だけで姫としての品格をあらわさなくてはいけない、八重垣姫を演じる役者の最初の難関ということですが・・・。教訓:八重垣姫を見るときは少し上手のほうが良い。 それでも舞台中央にでてきた雀右衛門は蓮っ葉なところのないお姫様で、とくに「柱巻き」の時、柱を袖で抱くようにして正面を向いて極まった姿はとても可愛らしかったです。こういう何にも知らない深窓のお姫様がびっくりするような大胆な事をいったりしたりするのが面白いところなのでしょうか。 今回の「十種香の場」は三代目雀右衛門七十五年祭追善狂言ということで、八重垣姫が雀右衛門、勝頼が菊五郎、濡衣が芝翫、白須加六郎が團十郎、原小文治が仁左衛門という大幹部ばかりの出演で、さすがに時代物らしく重厚な感じでした。 その後「奥庭狐火の場」では雀右衛門の次男の芝雀が八重垣姫を演じ、途中から人形ぶりになって長男の友右衛門が人形遣いを演じました。木戸から出てきた芝雀は前よりふっくらとした感じで上気したような顔がきれいでした。この場の八重垣姫は本当に大変です。人形ぶりに加えて宙乗りまでしなくちゃなりませんので。 狐は7〜80センチ位の縫いぐるみを黒子が遣うのですが、後ろ足で頭をかいたり、尻尾を歯で噛んだりします。やはり狐が出てくる「葛の葉」と同じように瑠璃燈(小さなローソクのような照明)が上から背景一面におりてきます。焼酎火という人魂のような緑色の火を黒子が差し金で使ったり、兜を持って姫が池を覗き込むと狐の顔が水に映る仕掛けも、いかにも芝居と言う感じで楽しいものでした。 人形ぶりのときの八重垣姫は眉の線にそってピラピラがついた花簪をさらに重ねて着け、後ろの方にも黄色の紐の飾りがつきます。それが踊っているうちに取れてしまうくらい激しい動きでした。最後に引き抜いて火炎の模様の衣装になった姫は、二匹の狐と共に凍った湖を渡って行きます。花道をひっこむ芝雀の顔は汗びっしょりで「ご苦労様!」と声を掛けてあげたかったです。 その他、「松浦の太鼓」は仁左衛門の愛嬌をたっぷり見せる芝居で、万年お坊ちゃまの様な殿様を至極楽しそうに演じていました。山鹿流の陣太鼓のリズムを指を折って数えるところがヤマですが、先月忠臣蔵を見た時、あの太鼓は七拍子だなと思ったのを思い出しました。三津五郎の大高源吾が格好がよく、はまり役です。左團次もとぼけた持ち味をいかせる基角の役。「鞍馬獅子」の菊之助と染五郎が若々しく爽やかに踊って大切りを締めくくりました。 |
この日の大向う |
やはり普段の日とあって大向うは少なかったです。大向う屋さんはゼロと言う感じでしたが、雀右衛門さんの大ファンがいて、「京屋!」と盛んに絶叫していました。もしかしたら女性かも・・・と思うくらい甲高い声でしたが、いい所で掛けていらしたようです。「松浦の太鼓」になったら、帰ってしまったのか全くその声はしなくなりましたけど。^^;同時に掛かっていたヘナ〜っとした声より私はずっと良いと思いましたが、周りの方は大迷惑だったかもしれません。 |
壁紙&ライン:「和風素材&歌舞伎It's just so so」