四谷怪談 福助のお岩 2008.5.13 W216 | ||||||||||||||||
7日、新橋演舞場で五月大歌舞伎夜の部を見てきました。
「東海道四谷怪談」のあらすじはこちらです。 福助初役のお岩。今回は小仏小平と小平女房お花の三役を演じました。裏田圃で手拭を吹流しに被り、まるめた糸立をもって花道から出てきた姿はほっそりとしていて、いかにも落ちぶれた武家の娘が夜鷹になっているという程よい風情。 伊右衛門浪宅でも蚊帳の前に座って登場したところもかなり頬を青く塗っていたのにもかからわず美しく、伊右衛門がお岩に執着したのも納得できる気がしました。伊藤家からもらった薬を毒薬とも知らずに深く感謝しながら飲む件も丁寧で哀れを誘い、宅悦に不義を仕掛けられるときっとなって懐剣を構えるところも良かったと思います。 また宅悦の歌六が素晴らしく、鏡をのけぞるお岩に突きつけるところなど、見ているこちらも気がつくと息がとまってしまっていたほど。 前半は良かった福助ですが、幽霊にはなりきれていないように思いました。提灯抜けをした後、勘三郎のように宙乗りには移らず下に一度下りて歩いて庵に入っていましたが、入ってからずっと小首をかしげているは、そんなところで可愛らしく見せてどうするのと思いましたし、不気味な笑い声のはずが奇声のように聞こえるのも気になりました。徹底して恐ろしく演じて欲しかったなぁと思います。 芝雀のお袖はいかにも寂しげで生真面目な若い娘らしく見えました。今回もカットされましたが、お袖が本当の夫婦になってしまった直助と死んだとばかり思っていた許婚・与茂七の間で絶体絶命の立場に追い込まれる「三角屋敷」を見てみたかったです。 伊右衛門の吉右衛門は貫録がありすぎて色悪とは言えないと思いましたが、なんといっても台詞廻しが上手く伊右衛門の人物像が鮮明に浮かびあがってくるので、それはそれで充分楽しめました。 直助権兵衛の段四郎はまだ台詞が完全には入っていなくて残念でしたが、線が太くねっとりとした存在感がありました。 序幕で「藤八、五文!奇妙」と薬売りの台詞を言いながら直助がでてくるところでは、もう一人薬屋藤八(橘三郎)と二人で出てきて、掛け合いでこの台詞を言いながら「奇妙!」で胸の前に広げた扇をくるっと裏返すという珍しいやり方で演じていました。 与茂七の染五郎はすっきりとした二枚目ぶりでしたが、悪役も見事にこなす染五郎にはやはり伊右衛門が似合いそうです。 最後は仇討の場で雪景色の中、与茂七と小仏小平の女房お花(福助)が伊右衛門を討ち取り、三人揃っての切り口上で幕となりました。 |
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この日の大向こう | ||||||||||||||||
数人の方の声が聞こえていましたが、会の方はいらしてないということでした。(もしかしたら後半お一人か?)怪談ですから元気の良い掛け声は似合わないとは思うものの、なんとなくピリッとしない感じの声が多い日でした。 しかし伊右衛門の「はて、恐ろしき執念じゃなぁ」の柝の頭などではドッと声が掛かっていました。 |
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5月演舞場夜の部演目メモ | ||||||||||||||||
●通し狂言「東海道四谷怪談」 吉右衛門、福助、染五郎、芝雀、歌六、錦之助、段四郎、由次郎、桂三、京妙 |
壁紙:「まさん房」 ライン:「和風素材&歌舞伎It's just so so」