源氏店 歌舞伎フォーラム 2006.2.27 W140

21日、日本橋公会堂で歌舞伎フォーラム公演昼の部をみてきました。

主な配役
与三郎 又之助
お富 京紫
蝙蝠安 松之助
番頭・藤八 緑三郎
和泉屋多左衛門 瀧二朗
下女・およし
下男・権助
獅一

「源氏店」のあらすじはこちらをご覧下さい。

花道を出てきた又之助の与三郎は、意外なほどすっきりとシャープな印象。声が二枚目にしてはちょっと粘り気があって太すぎるかと思いましたが、「しがねえ恋の情が仇」のせりふ廻しも余裕をもってたっぷりと聞かせ、なかなか良かったです。天水桶のそばで待っている時、与三郎はやはり足でおはじきをしながらひまをつぶしていました。(^^♪

京紫のお富は現代的な容姿に少し違和感があったのと、だれないようにという配慮のためかもしれませんが、藤八とのやりとりがせわしなく聞こえました。世話をされて何不自由なく暮らしている女という雰囲気は薄かったです。

藤八を演じたのは見たことがある松之助の蝙蝠安は、今までに見たなかでは一番強面の安で、けちな小悪党というにはドスが効いていましたが、芝居の進め方がベテランの役者さんらしく上手いなぁと思いました。お富の亭主が実は恩ある人だと判ったときの態度の変わりようがくっきりとしていたら、もっと良かっただろうと思います。緑三郎の藤八はさらっとあまりしつこくなく演じていたようでした。

今回は初めに歌舞伎の美のコーナーでは「助六ができるまで」というタイトルで、國矢がまずむきみ隈をとるところから見せました。次に着物を着ましたが、あらかじめ上身ごろにキルティングの前だけのベストのようなものをつけていて、体型を補正していました。

着物は後ろ中心に穴があけてあり着物の前についているひもを通すようになっていて、帯は三枡に寿の字海老の模様の幅が太めのものを一文字という文庫結びのような結び方をしていました。そして紫のはちまきは鬘についていて後ろで止めるのだということがわかりました。國矢はこの後助六の出端を舞踊化した「助六」を踊りましたが、前回見た時より色気があってよかったと思います。

この後で客席から一人舞台にあげて、揚巻の衣装をきせて記念撮影。シェードのように打掛の裾をたくし上げる仕掛が面白かったです。たまたま知人の女性がこの役を志願したのですが、「良い思い出になった!」ととても喜んでいました。

20分の幕間をはさんで舞踊劇「二人袴」。又之助の父親、國矢の息子、松之助の舅、獅一の嫁という顔ぶれ。以前「根引きの門松」の与五郎を演じた時にも感じましたが、國矢にはこういうつっころばしのような役が実に似あい、はんなりとした良い味を出していました。全員テンポもよくて楽しめる演目でした。

今回の出し物は全て過去の歌舞伎フォーラム公演で見たことがあるものばかりで、楽しくて充実した公演ではあったものの、一つくらいは新しいものに挑戦して欲しかったというのが正直な感想です。

ところで歌舞伎フォーラム公演は東京では江戸東京博ホールと日本橋劇場で行われるようですが、日本橋劇場でやる時に限ってなぜかいりが悪いようなのは、残念なことです。

日本橋劇場を作るのにあたっては、邦楽演奏家の意見がかなり取り入れられたそうで、半蔵門線水天宮駅から2分と近いですし、すっぽんのついた花道もあるちょうど良い大きさの劇場なのにもかかわらずこうも人気がないのは、ひとつにはこの劇場が公営のものなので、宣伝が充分に行き届いていないことにあると思います。

それともう一つは、幕間の食事がこの劇場では大事に考えられていないということです。公営の劇場にありがちな、席で飲食してはいけないというルールは歌舞伎上演するのに全く向いていない規則で、そうかといって国立劇場のように飲食スペースが他に充分あるわけでもありません。

浅草公会堂のように、歌舞伎のときは席での飲食を許可するという臨機応変な対応が求められます。せっかく良い劇場なのに、このままではもったいないことだと思います。

この日の大向こう

この日は歌舞研の仲間と一緒の観劇でしたが、席は一階の真ん中。でも声を掛ける方が全くいらっしゃらなかったので、うちの師匠が声を掛けました。又五郎さんのお弟子さんである又之助さんに「又播磨」と掛けられていましたが、長老となられた又五郎さんには軽すぎるように感じるこの掛け声も、若い又之助さんにはピッタリだと思いました。

松羽目物には声はあまり掛けないものだけど、一生懸命やっている役者さんのためにと「二人袴」にも声を掛けられましたが、なかなかいい雰囲気でした。又之助さんが屋島の件に掛かる時には、「まってました」と声がかかりました。

「源氏店」になると二階からもいい声が掛かり始めました。二階の方が「まってました」と掛けられると師匠が続いて「たっぷりと」と掛けたり、きちんと掛ける方が複数いる場合は呼応した掛け方も出来て面白いなと思いました。

歌舞伎フォーラム2月公演の演目メモ

●歌舞伎の美―助六のできるまで 舞踊「助六」 國矢
● 二人袴(ふたりばかま) 國矢、又之助、松之助、獅一
●源氏店  又之助、松之助、京紫、緑三郎


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