白浪五人男 ライバルの競演 2005.10.26 | ||||||||||||||||||||||||
22日、名古屋御園座で行われている「十八代目中村勘三郎襲名公演」夜の部を見てきました。
「白浪五人男」ー「青砥稿花彩画」のあらすじはこちらをご覧下さい。 「白浪五人男」の通しは、昨年4月に歌舞伎座で上演された時とほとんど同じ配役でしたが、今回は大変楽しめました。弁天小僧の勘三郎は、信田小太郎に化けて出てきたときから神妙に役になりきっていましたし、がらっと悪の本性をあらわすところではいかにも17歳くらいの、何をするかわからない危うさを持った若者という感じがよく出ていました。 弁天小僧が「浜松屋の場」で娘に化けて出てくるところでは、普通よりも声を高くしていましたが、ぽっちゃりとして全く今風でないところが勘三郎の魅力。 男と見破られてから、番頭に煙草盆を借りるところを見ていると、「しれたことよ。金がほしさに騙りにきたのだ。秋田の部屋ですっかりとられ・・」の長セリフに入る前の短い間に、ぴったり合うように重要な小道具のキセルに火をつけ吸ったのにはびっくり。いつもあまり気がつきませんでしたが、こういうところは実は寸法を測ったようにやることがきまっているのだなぁと感心しました。 ゆすりのネタの緋鹿の子を仕込むところを前回は見逃してしまい、釈然としませんでしたが、今回ははっきりと確認できました。緋鹿の子がたくさん入った箱が、弁天小僧の前に運ばれてきたその瞬間に紛れ込ませてしまうのです。 ことに「浜松屋の場」では三津五郎の南郷との掛け合いがすばらしく生き生きとしていて、話が展開するにつれどんどん白熱してきました。三津五郎の南郷は弁天小僧の名セリフに続いての、「その相ずりの尻押しは・・・」と自己紹介する長セリフがくっきりと際立っていて、南郷ってこんなに良い役だったのかと思ったほどでした。 自他共に認める親友であり、ライバルでもある勘三郎と三津五郎の競演はじりっと深みをまし、ますます面白くなってきているようです。 仁左衛門の日本駄右衛門は「蔵前の場」で、浜松屋の息子こそ自分が捨てた子だったとわかって今の自分を恥じ、幸兵衛に感謝するところに真心が感じられました。しかし以前も感じましたが、「勢揃いの場」では、「掛川」とか「金谷」「義賊」などの現代風のアクセントがどうにも気になりました。これは團十郎が駄右衛門を演じた時も同じでしたが。しかし山門の場では、さすが堂々たる風格ですっかり魅せられました。 「勢揃いの場」の傘の模様は、花道でも本舞台でも見事に上手から「志ら浪志ら」となっていて、やはりこの方がだんぜん素敵です。弁天小僧と南郷の間が開いていましたが、どうも弁天が傘をぐるっとまわして担ぐためにそのスペースをあけてあるようです。しかしそう判ってみても、あそこだけ妙に開いているのは美しくないと思いました。 五人の着物はそれぞれ違う模様ですが、おそろいの青に白の模様の煙草入れとキセル入れを腰につけているのを発見。銀の金具だけがそれぞれ違った模様でした。「勢揃いの場」でセリフ廻しが一番きまっていたのは三津五郎の南郷で、昔ながらのアクセントを忠実に守って、気持ちよく聞かせてくれました。 橋之助の忠信利平も無骨な感じが出ていて良かったと思います。扇雀の赤星は「勢揃いの場」でのセリフ廻しで高音をあまり張らなかったのが赤星らしさに欠け残念でした。 「谷底稲瀬川の場」の最後では三津五郎、勘三郎、芝翫、仁左衛門の四人で劇中襲名口上をし、その後だんまりを見せました。 浜松屋の最後、四郎五郎の番頭がお店の金をとって逃げようとするのを鶴松の丁稚が止めるところでは、中村屋の部屋子になった鶴松のお披露目の劇中口上があり、本来は敵役の番頭と二人で「おててつないで」の下座にのって奥へ入って行ったのはご愛嬌でした。 「極楽寺屋根立腹の場」の弁天小僧の立ち廻りは大変スピード感あふれていて、捕り手を演じた役者さんたちの揃ったきびきびした動きが素晴らしかったですが、少しばかり長かったようにも思いました。 |
||||||||||||||||||||||||
この日の大向こう | ||||||||||||||||||||||||
襲名公演とあって、大変華やかにたくさんの声が掛かっていました。 地元八栄会の方6人に、東京からの遠征組と関西からもいらしていたようで、花火のように尾をひく特徴のある掛け声が聞こえていました。 花見の場では笠を被って登場した忠信の橋之助さんが笠をとるとき、初めて「成駒屋」と声が掛かりました。例外はあるものの、顔を隠して登場した人物には、被り物をとって顔を見せたときにかけるのがやっぱり普通ではないかと思います。 |