盟三五大切 期待の顔合わせ 2005.6.10 | ||||||||||||
4日、歌舞伎座夜の部を見てきました。
「盟三五大切」のあらすじはこちらをご覧下さい。 「盟三五大切」は二年ぶりの上演で、前回は時蔵初役の小万のあでやかで古風な面差しがとても印象に残りました。今回も芸者姿の瑞々しい美しさ、おろくの生世話の雰囲気などがよく出ていて、まさに当たり役だと思います。 仁左衛門と吉右衛門は一昨年「国姓爺合戦」で共演する予定でしたが、仁左衛門が体調を崩して休演したため実現せず、今回は待ち望まれた共演です。 源五兵衛は前回は幸四郎で、暗い持ち味がぴったりとこの役にあっていてぞっとする凄みがあり、印象に残りました。 今回の吉右衛門は初役の上にまだ3日めということもあったためか、プロンプターがついていて、源五兵衛の家の場面のかけあいが、つかえつかえだったのは残念でした。生世話の場は南北の芝居では特に面白いところだと思うので、なおさらそう思いました。(8日にもう一度観た時はかなり流れが円滑になっていました。) しかし二軒茶屋の場で小万に裏切られ、大事な金を三五郎に騙し取られたとわかってからは、ぐっと調子がでてきて、ことに無念の情を必死でこらえる源五兵衛の花道の引っ込みには、ひきつけられました。 最初はお人よしとさえ見えたのに、騙されたと知るや酒に毒とかげをしこんで夫婦を殺そうとしたり、赤子を母親自らの手で殺させるほど冷酷無慈悲な殺人鬼になる源五兵衛ですが、家臣の息子(実は三五郎)が仇討のための金を用立ててくれたと判っても、やはり小万夫婦を殺さずにはいられないという気持ちが花道七三の独白によく表れていて、理解しやすい源五兵衛でした。 ところで8日に観た時には、小万の切首を懐にいれ、破れ傘をさした源五兵衛が花道を引っ込んでいく時に「人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢まぼろしのごとくなり」と幸若舞の「敦盛」の一節を謡っていました。こういう細かいところがちょっとずつ変化するのが、お芝居の面白いところでもあります。 三五郎の仁左衛門は、このお芝居が復活上演された昭和51年に三五郎をつとめ、今回は20年ぶり3演目とか。悪いことはするけれど親孝行で忠義者の三五郎を実に小気味よく演じていました。幕切れでは鮓屋の権太を髣髴とさせるこの役は、仁左衛門の上手さが十二分に発揮されている役だと思います。 舞踊劇「良寛と子守」と「教草吉原雀」は短い場面転換の時間をはさんで続けて演じられました。 肝心の初お目見え・富十郎長女の愛子ちゃんが幕があくなり泣き出し下手に引っ込んでしまって、富十郎がさかんに手招きしても、清元の山台の陰からどうしても出てこず、愛子ちゃんが出たり引っ込んだりするたび笑いが起こっていました。 他の子供たちが手をたたいて踊ったり右近の子守およしが踊り始めると、そのまねをして山台の陰で踊りはじめるのには、大爆笑。 この間見た時は赤ちゃんだった長男の大ちゃんもすっかり大きくなり、大ちゃんの大吉が良寛様が落とした鉄鉢を拾ってもってくると、良寛様は大吉を高いところへ立たせて、舞台に額をつけるようにして仏様のように拝んでいたのが印象的でした。 吉原雀は梅玉・魁春兄弟の鳥売り(実は雀の精)、それに歌昇の鳥刺し(実は鷹狩りの侍)の三人で踊りました。これは以前見た「吉原雀」とは違うなと思いましたら、昭和59年に考えられた趣向だということです。 雀の精の本性を現した二人が同じ二段に一緒にのってぶっかえる最後は、なかなか華やかでした。 |
||||||||||||
この日の大向こう | ||||||||||||
土曜日の夜だったので、声を掛ける方はたくさんいらっしゃいました。会の方は3人いらしていたようです。 今日は上手い具合に掛かっているなと思ったら、突然三階上手からわれ鐘のような大声が掛けられたのにはびっくりさせられました。 「盟三五大切」では染五郎さんに「染高麗」と二度かかっていました。が残念ながら一回目は台詞にかぶってしまっていました。 ところで8日にもう一度「盟三五大切」を観たのですが、田中さんがいらしていましたのでよく注意して聞いていました。佃沖の場は主役3人の出と柝頭だけに掛けられていたようです。 次の場で富森助右衛門の東蔵さんが、笠を被って登場した時は、笠を取るまでは声を掛けられませんでしたので、やはりそうなのかと納得。 仁左衛門さんと吉右衛門さんが二人揃ってツケ入りの見得をした時は、最初に「松嶋屋」続いて「まやっ」と掛けられました。五人切のところでは源五兵衛が静かに窓から入ってきた時はお掛けにならず、三五郎と小万が羽目板をやぶって出てきた時に掛けられました。 窓からこっそり入ってきた源五兵衛に大きく「播磨屋」と掛けた方がいらっしゃいましたが、ここは掛けないほうが良いのではと思いました。 |
壁紙:まなざしの工房 ライン:「和風素材&歌舞伎It's just so so」