-- 2015.07.07 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2015.07.16 改訂
私は2001~02年の中国の旅では、中国の「掛け軸」を買い集めましたのでご紹介しましょう。中国は何と言っても水墨画とか山水画とか、又、中国の書も有名ですので、中国の「掛け軸」が有っても好いなと思った訳です。掛け軸は合計3本買いました。
それでは早速紹介します。
清明上河圖
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この掛け軸は01年10月15日に麗江の白沙村で買いました。これは大変大きな掛け軸で、189cm(縦)✕83.5cm(横)有ります。リンク先のページで私が右手と右肩で持っているのが、この掛け軸です。これは大阪の家の床の間に掛けて置きました。これは清明上河図(※1~※1-3)です(←掛け軸の右上に「清明上河圖」と書いて在ります)。
麗江は納西族(ナシ族)が住んで居ます。
麗江の街は所謂観光客相手の四方街よりも、観光客が余り来ない白沙村や束河村とか獅子山の頂上付近とかに麗江の本当の良さが在ると思います。獅子山の民宿のテラスから見た玉龍雪山は最高でした。
右が画題の「清明上河圖」と書かれている部分の拡大です。
清明上河図は張択端筆の絵(北京の故宮博物院蔵)が有名ですが「清明上河」は非常に親しまれた画題なので、清明上河図は多数の絵師に依って描かれ、この掛け軸の絵の様に無名の絵師に依る作品が沢山在ります。
私が買った掛け軸は上手く絵をコピーして有ります。中国人が”得意の技”です。
【脚注】※1に在る様に北宋(960~1276年)の庶民が清明節(=新暦の4月4日頃)の春の祭を祝い楽しんでいる様子を見て戴く為に、掛け軸の絵の一部を拡大したのが右の絵です(←少しコントラストと彩度を上げてます)。子供も描かれて居ます。
掛け軸は大きく分けて二つ在り、「書」と「絵」が在ります。私は絵の掛け軸に決めて在りましたが、土産物屋の掛け軸を色々見て居たら親爺さんが「これなんかが良いとおもうよ」と言って紹介してくれたのが、この掛け軸でした。清明上河という画題は私も知って居ました。
値札は800元(日本円の1万千円位)です。しかし麗江の白沙村の物価から考えると、日本円の1/10位ですので、日本へ持って帰ったら10万円位の価値は在ると思います。私は「高いな」とジェスチャーして”帰る振り”をすると、親爺さんは「じゃあ780元でどうか」というパターンに成り、...<中略>...、到頭600元で落札しました。概算で700元≒1万円ですので日本円で約8500円強です。
日本の古道具屋へ持って行き10万円位で売って遣ろうかいな、ブワッハッハッハ!!
雲南省中甸県は、2002年1月に香格里拉(シャングリラ)県と名称変更されました。私は雲南桃源倶楽部の有志と2001年10月17~20日、即ち名称変更の1.5ヶ月前に中甸を訪れました。
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赤と黄色の布 │
は覆い ─┤
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掛け軸の上辺→
01年10月19日は中甸でラマ教の世界観を描いた極彩色の掛け軸を買いました。赤と黄色の覆いを取ると極彩色の仏画が現れます。これの大きさは83.5cm(縦:掛け軸の上辺~下辺)✕66.5cm(横)です。中甸はチベット族が住んで居ます。店の親爺さんは200元と言いましたが、”値切り癖”が付いている私は160元に値切って買いました、日本円で約2200円強です。中甸は麗江より更に物価が安いので日本に持って帰ったら15倍位の価値が在ります。
蓮の花に囲まれた仏の下には、天上界と地獄が描かれて居ます(下の絵は拡大)。地獄は憤怒相をして居ます。
ラマ教(=チベット仏教)(※2~※2-3)は密教(※3)の要素を多分に含んで居ます(△1のp152~158)。実際、密教に特徴的な曼荼羅(※3-1)が数多く存在しますが、一方で【脚注】※2に在る様に顕教(※3-2)である大乗仏教との混交宗教なのです。
更にエジプトで有名な「死者の書」がチベットでも存在します(△1のp40~41)。これはバルドゥ(中有)(※4、※4-1)という顕教の考え方が元に成って居ます。我が国でも「四十九日」と言いますが、これが次への輪廻転生先が未だ決まって無い、言わば”宙ぶらりん”の状態を指します。チベットの「死者の書」は「死にゆく人にとってのトリップ・ガイド」(△2のp204)、「死後の世界のガイドブック」(△2のp24)なのです。
年が改まり02年10月31日は桂林漓江下りの船着場の陽朔に泊まりました。小池/松岡/私の”食み出しトリオ”は漓江下りは昨日の午前中に行い、その後で興坪という小さな街に泊まり、今日の午前中に陽朔に着き午後は桂林市陽朔県を散策しました。陽朔は国際的な街で、中国人では壮族(チワン族)や漢族も多く、外国人では欧米系やブラジル人などが多いですね。
私は桂林なら良い掛け軸が在るだろうと思って居ました、何しろここは四方見渡しても「掛け軸のネタの宝庫」です。確かに量は”仰山(ぎょうさん)”有りますが、どれも「青い目の外人向け」で明るく解り易いのですが、くすんだ感じの玄人受けする様な -例えば麗江で買った「清明上河図」の様な- 掛け軸は皆無で、私はがっかりしました。
(>v<)
陽朔の目抜き通りの西街通りにはカフェやピザの店が何軒も在り、土産物屋が通りの両側にぎっしりと並んで居ます。左下の写真は欧米系の外人さんです。
この外人さんの後ろを見て下さい。それを拡大したのが右下の写真です。この写真を注意深く見ると、掛け軸が見えます。上から山水画の掛け軸、次の段にカラーで花を描いた掛け軸、その次の段に笹の葉を描いた掛け軸が見えます。この様に掛け軸は沢山在るのです。
私はこの店に入って見ました、それが下のお姉さんが桂林の絵を指差している写真です、これは横長の掛け軸です。しかし、上にも書いた通り、如何にも”外人向けの解り易いもの”ばかりで、私には全然興味を惹かれないのです。私は掛け軸を買わずに、この店を出ました。
猛
虎
↓
私は掛け軸を買うのはよそうと思ったのですが、西町通りの”とある土産物屋”に入ったら「猛虎」と書いた掛け軸に出会(くわ)しました(右の写真)。
実は私は猛烈な阪神タイガース・ファンなのです。この絵も「青い目の外人向け」の解り易い構図ですが私はこれに決めました。寸法は116cm(縦)✕83.5cm(横)です。
この絵もチャチで安っぽいですが仕方有りません。で、幾らかと聞いたら店のお兄さんは500元と言ったので、思わず「高あ~」と日本語が漏れて仕舞いました。私は値切りに掛かりましたが、480元なら値引きするが後はダメだ、他の店に行ってくれと強気です。そうです、ここは天下の桂林の漓江下りの船着場です。私は480元(=約6800円強)で渋々手を打ちました。
「猛虎」と書いて在る「書」は右から読み、略以下の様に読めます。
安 㐂 行 揩 醒 肉 猛
国 人 ...... 應 時 □ 虎
盆 苛 □
◇◆◇◆◇
ところが皆さん、2003年の阪神タイガースは1985年(←吉田義男監督、バース/掛布/岡田/真弓で日本一)から18年振りにセ・リーグで優勝しました。この時の監督は星野仙一です。この猛虎の「掛け軸」は御利益絶大だったのです。いやぁ、世の中何が起こるか判らないものですねェ!!
貴方(貴女)が阪神タイガース・ファンなら、リーグ優勝した星野阪神の御堂筋パレードを是非▼下▼からご覧下さい。
2003年・阪神、御堂筋パレード(The victory parade of HANSHIN Tigers, 2003)
又、本も出版して居ます(△3)。この本は関西の方は大阪市立中央図書館又は大阪府立中之島図書館で、東京の方は国立国会図書館でご覧に成れますゾ!!
以上が私が中国で掛け軸を買った顛末の全てです。掛け軸は、転売もせずに、今は沖縄の私の家に在ります。しょうもない話に付き合って戴いて、どうも済みませんでした。それでは御機嫌よう、さようなら!
m(_^_)m
{この章は2015年7月16日に追加}
【脚注】
※1:清明上河図(せいめいじょうかず)は、中国の風俗画の画題。清明節で賑わう北宋の首都の汴京(べんけい)(=開封)の風物を描いたもの。北宋の張択端筆の画巻(北京の故宮博物院蔵)が有名。→清明節。
※1-1:汴京(べんけい)は、中国河南省の開封(かいほう)の古称。
※1-2:開封(かいほう、Kaifeng)は、中国河南省中部の都市。黄河の南方平野に在り隴海(ろうかい)鉄道に沿う。戦国時代の魏の都(大梁)、五代の後梁の都(東都)、後晋/後漢/後周/宋の都(東京(とうけい))、金の都(汴京(べんけい)/南京)と成る。民国時代の省都。絹の刺繍は特産。人口79万6千(2000)。
※1-3:清明(せいめい)とは、(清く明るい気が満ちる意)二十四節気の一つ。太陽の黄経が15度の時。春分後15日目、即ち3月の節(せつ)。太陽暦の4月4日頃に当たる。清明節。
※2:チベット仏教(―ぶっきょう、Tibetan Buddhism, Lamaism)とは、仏教の一派。吐蕃王国時代にインドからチベットに伝わった大乗仏教と密教の混合形態。チベット大蔵経を用いる。後にモンゴル・旧満州(中国東北地方)・ネパール・ブータン・ラダックにも伝播した。主な宗派はニンマ派(紅教)・サキャ派・カギュー派・ゲルク派(黄教)の4派。俗称、ラマ教。
※2-1:ダライ・ラマ/達頼喇嘛(Dalai Blama)は、(ダライはモンゴル語で「大海」、ラマはチベット語で「師」の意)チベット仏教ゲルク派の法王。代々転生者が相続する。歴代法王の名がギャンツォ(大海)で終るので、ダライ・ラマと称される。1642年のダライ・ラマ政権樹立以後、チベットの首都ラサにポタラ宮を造営し、観音菩薩の化身として政教両面に亘るチベットの法王と成る。現在の14世テンジン・ギャンツォは、1959年以来インドに亡命中。ギェルワ・リンポチェ。
※2-2:転生(てんせい/てんしょう、reincarnation)とは、[1].[仏]迷いの生死を繰り返すこと。輪廻。「輪廻転生(りんねてんしょう)」。
[2].生まれ変わること。生活を一変させること。
※2-3:活仏(かつぶつ)は、[1].活仏(いきぼとけ)。
[2].チベット語のトゥルク(化身)の訳。仏/菩薩/聖僧などの生れ変りと信じられている者。→ダライ・ラマ。
※3:密教(みっきょう、esoteric Buddhism)とは、仏教の流派の一。深遠で、凡夫に窺い得ない秘密の教え。悟りの境地は曼荼羅(又は曼陀羅)に象徴される。インドで大乗仏教の発展の極に現れ(7~8世紀)、中国・日本の他ネパール・チベットなどにも広まった。日本では、真言宗系(空海)の東密と天台宗系(最澄)の台密とが在る。秘密教。秘密仏教。←→顕教。
※3-1:曼荼羅/曼陀羅(まんだら、mandala[梵][英])とは、(輪円具足・道場・壇・本質などと訳す)諸尊の悟りの世界を象徴するものとして、一定の方式に基づいて、諸仏・菩薩及び神々を網羅して描いた図。四種曼荼羅・両界曼荼羅など多くの種類が在る。元々密教のものであるが、浄土曼荼羅や垂迹曼荼羅、日蓮宗の十界曼荼羅の様に、他にも転用される。おまんだら。
※3-2:顕教(けんぎょう)は、〔仏〕言語文字で説き示された釈尊の教え。密教と対比して、密教以外の全ての仏教を含む。顕宗。←→密教。
※4:中有(ちゅうう)とは、〔仏〕四有の一。衆生が死んで次の生を受ける迄の間。期間は一念の間から7日或いは不定とも言うが、日本では49日。この間、7日毎に法事を行う。中陰。七七日(なななぬか/しちしちにち)。「―の旅」。バルドゥ。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※4-1:四有(しう)とは、〔仏〕衆生が生れ、生き、死に、次に再び生れる迄の間の4時期(生有・本有・死有・中有)の称。
(以上、出典は主に広辞苑です)
【参考文献】
△1:『チベット密教の本(死と再生を司る秘密の教え)』(学研編・発行)。
△2:『原典訳 チベットの死者の書』(川崎信定訳、ちくま学芸文庫)。
△2-1:『チベットの死者の書 99の謎』(おおえまさどり著、二見文庫)。
△3:『2014年トホホの阪神タイガース ~ストライキとプロ野球の大変革を経て~』(エルニーニョ深沢著、蛙ブックス)。
●関連リンク
@参照ページ(Reference-Page):雲南省の麗江と
中甸(現:香格里拉)の地図▼
地図-中国・雲南省北部(Map of Northern part of Yunnan, -China-)
@参照ページ(Reference-Page):桂林漓江下りの船着場の陽朔の地図▼
地図-中国・桂林地方(Map of Guilin region, -China-)
@参照ページ(Reference-Page):中国の少数民族▼
資料-中国の55の少数民族(Chinese 55 ETHNIC MINORITIES)
2001年の麗江の白沙村で掛け軸を買う▼
2001年・麗しの麗江(Beautiful Lijiang, China, 2001)
2001年の中甸(現:香格里拉)で掛け軸を買う▼
2001年・紅葉の中甸(Red leaves of Zhongdian, China, 2001)
2002年の広西チワン族自治区の桂林の旅▼
2002年・桂林の漓江下り(Go down the Lijiang of Guilin, China, 2002)
松岡/小池/私の”食み出しトリオ”、
2002年の桂林地方の陽朔で掛け軸を買う▼
2002年・”脱雲南”桃源紀行(Escape from Yunnan, China, 2002)
2002年の広西チワン族自治区の小村の興坪の旅▼
2002年・桂林の興坪(Xingping of Guilin, China, 2002)
2003年にリーグ優勝した星野阪神▼
2003年・阪神、御堂筋パレード
(The victory parade of HANSHIN Tigers, 2003)
私が沖縄に来た経緯▼
2013年・大阪から那覇へ(From Osaka to Naha, Okinawa, 2013)
中国の少数民族について▼
外部サイトへ一発リンク!(External links '1-PATSU !')