−− 2004.10.15 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2009.10.20 改訂
{このページは、元々「私の昆虫アルバム・日本編(My photo album of INSECTS in Japan)」というページの中で全ての昆虫を同一ページに扱っていたのを、数が増えたので06年9月15日に分類学の「目」毎にページ分割し、構成を一新しました。その後は個々の「目」毎に個別に改訂されて居ます。}
蝗虫/飛蝗の仲間は昆虫綱バッタ目・カマキリ目・ナナフシ目(旧:直翅目)に分類されます。蛹を経ない不完全変態です。
鈴虫や松虫やコオロギなどは好いですね、これらは蝗虫(バッタ)の仲間です。しかし、あのゴキブリ −現在はゴキブリ目ゴキブリ科− も私が幼少の頃は蝗虫と同じ直翅目に分類され蝗虫の近縁種です。蝗虫類ではカマキリが表情豊かで好きです。しかしカマキリ女は怖いですよ!
<撮影日=04.10.15:撮影場所=奈良県大和郡山市>左下はご存知カマキリ、それもオオカマキリです(♂♀不明、ほぼ実物大)。カマキリ類は現在はカマキリ目(←旧は直翅目)カマキリ科です。
鎌の様な大きな前肢がカマキリ科の特徴で、鎌切という和名の由来です(中国名は蟷螂又は螳螂、「とうろう」です)(※1)。
多くのバッタ類が草食性なのに対してカマキリは肉食性 −しかも大食漢− で、この前肢で蜻蛉や蝉などの大物の獲物を捕らえてバリバリと食います。顔も目玉が大きくエラが張って、如何にも我の強い人相(虫相か?)です。性格も攻撃的で、舗道を歩いて居るのを私が見付けカメラを向けると、ご覧の様に鎌を持ち上げて挑み掛かり、正に「蟷螂の斧」(※1−1)の諺通りです。
この向う気の強さは子供の遊び相手にピッタリで、又、猫のライバルです。”吾輩なる猫”がカマキリをとことん弄んだ挙句に最後は食って仕舞う話を読んだことが有ります(△1のp9〜11)が、その場面をじっと眺めていた漱石先生は相当な閑人・変人に違い無いと思って居ます。
ところで、トノサマバッタを”殿様”とすると、カマキリは宮本武蔵の様な”無頼の剣豪”と言えます。♀は更に質(たち)が悪く交尾中又は交尾後に♂を食って仕舞う”魔性の猛女・妖女”ですので、大人の男はカマキリ女に呉々もご用心!!
<06.08.15:大阪市>左は「私の庭」にしてトンボの生息地である淀川左岸入江(都島区毛馬町)の岸に居た未成熟なカマキリです(ほぼ実物大)。
幼虫の最終段階で、専門用語では終齢幼虫と言います。頸(実は胸部)の後部から小さな翅らしき物 −翅芽(しが)− が生え掛けて居ますが、未だ細い腹部が剥き出しに成って居ます。しかし前脚の鎌だけは既に一人前で、翅が伸び胴が太れば成虫の形に成ります。
実はバッタ類は蜻蛉や蝉と同じ不完全変態ですが、終齢幼虫が成虫に近い体形をして居るのです。
これが竹藪の中に居たら見分けが付き難いですね。カマキリは周囲に合わせて色を変える体色可変の保護色昆虫です。
日本から東南アジア/熱帯アジアに分布します。
<06.09.03:大阪市>右下は淀川左岸で撮影したツチイナゴ(土蝗)で、実物の約2倍です。バッタ目バッタ科です。
頭胸部の背面中央に黄白色の帯が有る(←ここには短い白毛が生えている)、頭胸部側面に水平に黒条が有る、翅の付け根に薄緑色の線が入る、逆三角形の横顔(=イナゴ顔)の眼の下に涙の様な隈(くま)が有るのが特徴です。自分の体と同じ様な色の石の上に居るので、見分けが付き難くかったですが、私は草叢からここに飛んで来た所を見て仕舞いました。灰色の眼がこちらを見詰めて居ます、トノサマバッタを”殿様”とすると”在野の浪人”です。
日本の平地の水田や草原で夏・秋に極普通に見られ、季語も秋です。成虫で越冬し広くアジア全域に分布します(△2)。
イナゴは漢字で稲子とも書き、大群を成して稲や穀物畑を食い荒らす害虫として悪名高いですが、一部の種は佃煮として食用されます。私もイナゴの佃煮を食べた事が有りますが、パリパリして旨いでっせ!
<06.09.08:大阪市>左下は桜之宮公園の北端の春風フラワーガーデン入口の石に飛来したイボバッタ(疣蝗虫)で、実物の約3倍、距離1m位からズームで撮りました。実物は目測25mm位でバッタ目バッタ科です。
胸部背面前部の大疣(いぼ)と後肢脛節の白斑が特徴とのことですが翅以外全身疣だらけです。成虫は初夏から表れ地面の上などに止まりますが、それは正しい隠蔽行動です。
右がイボバッタの顔(=頭部と胸部前部)の拡大です。顔も疣(いぼ)だらけですが、眼が人間似で口から白い牙の様な物が出て居ますが草食性です。東アジアに分布します。
しかし、こうして写真で見ると爬虫類的な怪獣みたい、トノサマバッタを”殿様”とすると”路上の乞食”ですね。
<06.09.11:大阪市>左は中央区の合同庁舎前の舗道に居た褐色のショウリョウバッタ(精霊蝗虫)の♀ −♂はこの半分位の大きさしか無い− の褐色型で、ほぼ実物大です。この様に鋭角の三角形の頭部が前に突き出して居るのが特徴です。バッタ目バッタ科に属し、トノサマバッタを”殿様”とすると”家老”的存在です。
ショウリョウバッタは日本の草原では夏・秋に良く見掛け、分布は中国東北部に及びます。緑色又は褐色をして居て草原では事前に存在に気付くことは稀で、♂は飛び立つ時に前翅と後翅を打ち合わせてキチキチと鳴く様な音を立てるのでキチキチバッタと俗称されます。地方に依ってはこの種と似たショウリョウバッタモドキも同じ俗称で呼ばれますが、モドキの方は音を立てません。
何故こんなビル街の中に居たのか解りませんが、私はこの写真を撮った後で合同庁舎の生け垣の中に逃がして遣りました。
以下はトノサマバッタ(殿様蝗虫)の特集です。
<06.09.20:大阪市>左は例のトンボ生息地の入江の岸で見付けたトノサマバッタの♂です(ほぼ実物大)。別名はダイミョウバッタとも言い、バッタ目バッタ科です。こうして澄まして居ると名前の通り”バッタの殿様”に相応しい風格が有りますが...。
ご覧の様に頭胸部と脚が緑色なのは緑色型と呼びます。翅は薄茶色地に独特の褐色斑が有り、これは後出の褐色型と共通です。
この様な場所に居ると体色が保護色の役割を果たし事前に見付けるは非常に困難ですが「念ずれば通ず」、私が入江を通り掛かった時、草叢の中から岸の方に飛んで来たのです。そもそもこの入江は「トンボのシマ(=領域)」で、「バッタのシマ」ではありません。
この後私は「バッタのシマ」 −イネ科の草が生えていて人が来ない所− に行きました。居ます居ます、ちょっと脚を踏み入れると数匹のバッタが羽音を立てて飛び去ります。
<06.09.20:大阪市>下の2枚がトノサマバッタ(殿様蝗虫)の♂♀(負んぶバッタ)です。左下が♀が♂を背負っている姿で、ほぼ実物大です。ショウリョウバッタに形が似たオンブバッタ(負蝗虫)という種が別に有りますが、バッタ類は交尾の際に♀が♂を背負います。その為かバッタ類は一般に♀の方が♂より大分大きいのです。
という訳でこの♂♀は夫婦なのですが一見すると親子の様に見えますね。この様に負んぶされると”殿様”の風格も何処へやら、です!
♂の白い腹部が見えていて、雌の腹部も少し見えて居ますが薄茶色です。♂♀共に脚の”膝頭”が白く脛から下が橙色なのが判ります。
右が♂♀の顔の拡大。象の様な顔立ちです。
<06.09.20:大阪市>右が同じ場所に居たトノサマバッタの♂です(ほぼ実物大)。褐色型は一層象顔です。
トノサマバッタは日本では初秋に集中的に現れ、日本から中国東北部、アフリカに分布します。イネ科を始め多くの植物を食べ、生息密度が高く成ると飛蝗(ひこう)(※2)と化して大群で移動し作物に大害を与えますが、日本で群生したことは有りません。そこで日本で俗に「イナゴの大群」と言われますが、実は飛蝗化したトノサマバッタ類のことです。
大阪ではバッタ類はこの様に初秋、特に秋の彼岸頃に一番多く見ることが出来ます。
バッタ(蝗虫)類も中々面白かったですね。特にトノサマバッタ(殿様蝗虫)の♂♀(負んぶバッタ)やイボバッタ(疣蝗虫)が良かったですね。ところが私は2009年の秋にカマキリ女が♂を食う所を撮影しましたので、その写真を追加しましょう。
<09.10.15:豊橋市葦毛湿原>カマキリ女が恍惚とした表情で旨そうにムシャムシャと♂を食べて居ました。私は接写でカマキリ女の顔を大写ししました(右の写真)。
カマキリの♀は交尾(=セックス)した後の♂を食うのです。前に述べた通り”魔性の猛女・妖女”です。ワァ〜、怖わ〜、カマキリ女!!
この写真のオリジナルは▼下▼のページです。
2005年・年頭所感−幸せ保存の法則(Law of conservation of HAPPINESS, 2005 beginning)
{この写真及びリンクは09年10月20日に追加}
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【脚注】
※1:鎌切/蟷螂/螳螂(かまきり、[praying] mantis, rearhorse)は、この場合、カマキリ目の昆虫の総称。頭は逆三角形、複眼が大きく、前肢は鎌状の捕獲肢と成り、他の虫を捕えて食う。緑色、又は褐色(保護色)。草原や樹上に棲み、熱帯産には紫紅など美しいものが在る。とうろう(蟷螂/螳螂)。鎌虫。蠅取虫。疣虫(いぼむし)。疣じり。疣むしり。季語は秋。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
補足すると、カマキリの雌は交尾した後の雄を食うことから、怖い女性をカマキリ女(鎌切女)と呼ぶ。
※1−1:蟷螂の斧(とうろうのおの)とは、自分の微弱な力量を省みずに強敵に反抗すること。儚い抵抗の譬え。平家物語7「―を怒らかして隆車に向ふが如し」。
※2:飛蝗(ひこう)とは、バッタ科のトノサマバッタ/サバクトビバッタなどが、多数群飛して移動する現象、及びその個体。広大な草原地帯で発生し、通過地域の農林作物は惨害を受ける。生息密度が低い時は群飛しないが、高密度に成った世代では形態上・生理上に著しい変化が起って飛蝗化する。飛びばった。
補足すると、飛蝗化した種を群生相と言い、翅が長く成ります。
(以上、出典は主に広辞苑です)
【参考文献】
△1:『吾輩は猫である(下)』(夏目漱石作、岩波文庫)。
△2:『学研生物図鑑−昆虫III バッタ・ハチ・セミ・トンボほか』(石原保監修、学習研究社)。
●関連リンク
@参照ページ(Reference-Page):昆虫の分類学と特徴▼
資料−昆虫豆知識(Insect Trivia)
”吾輩”とカマキリ▼
漱石の猫、即ち”吾輩”を追って
(Pursuing the SOSEKI's CAT, namely, 'Wagahai')
「私の庭」とは▼
ここが「私の庭」だ!(Here is the territory of Me !)
「私の庭」の淀川や春風フラワーガーデン▼
私の淀川(My Yodo-river, Osaka)
怖〜いカマキリ女▼
2005年・年頭所感−幸せ保存の法則
(Law of conservation of HAPPINESS, 2005 beginning)