判 決 文


4 β遮断薬を投与した過失について(争点(2))

(1)  β遮断薬は,肺高血圧による右心不全,うっ血性心不全のある患者には禁忌とされている(甲B8,9)。 
(2)  悦子に対するβ遮断薬の処方について 
 悦子に対しては,降圧薬として,平成10年12月15日からβ遮断薬のアーチストが処方され,12月26日からはβ遮断薬のテノーミンが処方された。平成11年1月5日にはいったんテノーミンの服用は中止されたが,1月19日には再びテノーミンが処方され,1月26日いカルシウム拮抗薬に変更されるまで,β遮断薬が処方されている。
 平成10年12月15日の時点において,悦子には右心不全の症状は認められない。
裏付けのないJの主張を採用。
 そして,悦子の主訴であった動悸や頻脈は,それまで処方されていたエマベリンLの副作用として認められることもあるから(甲B23),この日に降圧薬をβ遮断薬のアーチストに変更した被告Sの判断に,不適切な点があるとはいえない。
私たちが提出した証拠(甲B23)をS医師に有利になるように利用してS医師を擁護。裁判官が認めたエマベリンLの副作用は動悸0.5%、頻脈0.1%未満。「動悸や頻脈の原因を調べなかった」という私たちの主張を、裁判官は無視。
 平成10年12月26日の悦子の主訴は下肢の脱力感,動悸,j若干の呼吸困難であり,下肢の浮腫が認められた。
 しかし,この日の心エコー検査の結果では,右心系に明らかな異常所見は認められなかった。また,胸部の聴診上も特に異常は認められていない。GOTが82,GPTが89と上昇しているが,軽度の上昇であって,右心不全に基づくうっ血肝が生じているとはいえない。
下肢の浮腫が右心不全の症状であることは、S医師に都合の悪い証拠なのでひたすら無視。「軽度の上昇」は裏付けのないJの主張を採用。
 したがって,12月26日の時点において,悦子に右心不全が生じていたとは認められないから,この日に医師がテノーミンを処方したことが不適切な点があったはいえない。
「悦子に右心不全が生じていたとは認められない」は事実誤認。
 平成11年1月19日の時点おいても,悦子に右心不全があったとは認められないから,この日に再びテノーミンを処方した被告の判断に,不適切な点があったはいえない。
「悦子に右心不全があったとは認められない」との証拠はない。証拠なきの主張を採用。
 原告らは,β遮断薬が肺高血圧による右心不全に禁忌であることについて被告が一切説明を行わなかったことを指摘するが,β遮断薬が投与されていた段階では悦子に右心不全は認められなかったのであるから,被告にはその説明をすべき義務はない。
私たちは「被告が説明をしていたら、β遮断薬を服用していない可能性が十分ある」と主張したのを、後半は無視して、裁判官はS医師を擁護。
β遮断薬が投与されていた段階で右心不全は認められていたのに、S医師に都合の悪い証拠である下肢浮腫を無視してS医師を擁護。これは明らかな事実誤認である。

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