「あなたが心電図を読めない本当の理由」というタイトルの本があります。
心電図を読めない理由として挙げているのは
この本は、”日常診療に必要なのである程度の心電図判読のエッセンスとそれを取り巻く知識を楽に吸収したいかたを念頭に置いた”と書いています。
肺高血圧症を日常診療で見つけ出すのにも大いに役立ちます。
<参考文献> 江森哲郎:右室負荷と右室肥大,村川裕二編.新目でみる循環器病シリーズ,1心電図.メディカルビュー社,2005.p38-43
年月日 | カルテに記載されている所見 | 医師の判断 | ||
1998/12/15(循環器内科初診日) | 洞性頻脈 | II,III,aVFにsmall q波 | 有意な所見ではない。 | |
1998/12/26(救急外来・T医師) | 洞性頻脈 | II,III,aVFにsmall q波 | III,aVFに陰性T波 | 心電図変化はなし。 |
1999/06/29 | 右軸偏位 | 心室性期外収縮 | 下記参照 |
裁判で、順天堂は「胸部誘導(V1〜V6)の波形は電極位置によって大きく異なる」と主張しました。この認識には唖然として言葉も出ませんが、カルテに記載されている所見を見ると胸部誘導の所見はありません。あながち裁判だけの主張とは思えません。この発言について、心電図検査の技師たちは尋ねてみたいと思います。
また順天堂は「右室肥大の所見は右軸偏位である」とも主張しました。裁判官はこの主張に簡単に騙されました。
1998/12/15及び1998/12/26 | 1999/06/29 | 1999/07/29 |
肺高血圧症の専門家については、私の陳述書(甲A13号証・31項)を参照してください。
1998/12/15 | 1998/12/26 | 1998/12/15 | 1998/12/26 |
1998/12/15(循環器内科初診日)
担当医師は、母が亡くなって4ヶ月くらい後、「右心負荷のサインとしてP波が尖っていた。」と言いましたが、誰かに教わったのでしょうか?
肺高血圧症の専門家の判断
一応肺高血圧症を疑う。P波はある。先ず肺疾患を疑う。胸部X線写真の所見と合わせて精査するすれば70〜80%の確率では徴候ある。
1998/12/26 (救急外来)
救急外来を受診した理由は、12月16日から服用したβ遮断薬です。
肺高血圧症の専門家の判断
12月15日に比し異常が急激に進んでいる。
急性肺塞栓症。急激な心負荷。V3〜V4,V5?の陰性T波
血栓が原因である。
めづらしい症状である。
心室の変化がないのは急激に進んでいる証拠でよくない。
12月26日の診断で精査する必要があり入院の必要があった。
早ければ2〜3ヶ月の余命の場合もある。
担当医師の判断
右軸偏位が強くなっており右心負荷を考えさせる所見の一つですが、通常右心負荷の場合、胸部誘導の変化を伴うことが多いとされます。この時点で胸部誘導の変化ははっきりせず右心負荷とは判断しませんでした。
肺高血圧症の専門家の判断
誰が見ても、症状はわかる様になっている。
担当医師が右心負荷とは判断しなかったのは、左側胸部誘導のS波について知らないからだと思います。
右心負荷について (「あなたが心電図を読めない本当の理由」 p.82)
1.P波に気づいて、肺疾患の存在を疑って、β遮断薬の投与を行わない。
2.胸部誘導(V1〜V4)の陰性T波および左側胸部誘導(V5,V6)の深いS波について、学び直す。
3.肺高血圧症を見つけ出すために、またリスクのある治療を回避するためにも、心電図を覚えて忘れない。