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走る劇場での会話

HHJ

          

 

 

 

〈走る劇場での会話〉に関する

マス・メディアへのアンケート

 

HHJ  VOL.75  2000.8.12

 

報道機関への何でもないアンケート

 

     6月の衆院選の前後、北秋田地方の立候補者と大館市に係わる報道機関に次のようなアンケートを送った。

 

1 同封の雑誌HHJ74号)の〈無意味な破片拾遺集〉を読んで、会話をしている登場人物(特派員・半分半分放送局長)についてどう思いますか?

 

A  精神分裂症の疑いがある。

 B 反社会的な行為とお喋りにすぎない。

C  了解に苦しむ。

D 現代的な社会状況の真実に迫ろうとする勇気と知恵がある。

E  その他(ご自由に書いてください)

 

2 〈無意味な破片拾遺集〉第2節の冒頭で、環境サインがテーマになります。半分半分放送局長は、さまざまな事件や社会不安を減少させるために、こういう提案を出します。これは生活環境に深く係わる問題です。〈目の前の問題をどうするか考えると、まずCMを番組の終わりに回すとか宣伝時間帯を決めること、ポスターの大きさと掲示場所を規制することだな。個人の了解と意思を越えて視覚と聴覚に入る宣伝広告は、もう時代遅れにしなければならない。〉

 

A  何を言いたいのか、理解できない。

B  表現の自由を侵害する恐れがある。

C  受取り手の精神を尊重する考え方なので、改善策を探りたい。

D  民放その他の関係者と協議して立法で規制するべきだと思う。

E  その他(ご自由に書いてください)

 

3 あなた自身は、環境サインでノイローゼになった経験がありますか?

A  ある。 

B ない。 

C  その他(ご自由に書いてください)

 

衆院選立候補者(自民党野呂田芳成、社民党畠山健治朗、自由党工藤富裕、共産党菊地時子)は一人も回答しなかった。前大館市長の畠山健治朗宛てには、市町村で実施される県事業のいわゆる内訳書の問題について特別な質問を記した。住民と愛読者の期待は無残に裏切られたわけである。報道機関へのアンケートは、意外なことに反応がなかった。回答できない理由を知るのは重要な意義があるので、なるべく直接会って聞いた。

 

1秋田魁新報大館総局  堀井洋一総局長  723

―おっしゃることがよく分からない。会社として回答すればいいのですか?

好きなように、と言った。

 

2 大館新報  斎藤佐武郎編集長       24

―(回答を出せるかどうか)分からない。(理由は?)どういう趣旨か分からない。聞かれる側にない。我々がリードするのがいいのかどうか。(アンケート内容について?)まあ、おもしろいでしょうねえ。

聞く側にいるだけでは半分しか理解できない、ということだろう。

 

3 北鹿新聞  木村正明編集長        24

―私には内容が難しい。対話という書き方に慣れない。(内容に興味がないか?)なぜアンケートをぽっと持ってきたのか、と。何のことか分からない。

環境サインでノイローゼになったことは、〈ない〉とアンケート用紙を見て。返事は出すそうだ。

 

4 朝日新聞大館通信部  高山修一記者       25日 電話

―答えたくない。(HHJ編集長に対して)失礼なので。(どこが失礼か、という問いには無言。もう一つの理由は)世間の常識から見て問題がある。会って話す必要はない。会話が成立しない。一人で喋っているので。

刺々しい口調。世間の常識とは朝日新聞の常識か日本の常識か世界の常識か、と訊いた。沈黙。そうではないはずだ。

 

5 読売新聞大館通信局   斎藤司記者      28日 電話

―何だかよく分からない。(HHJが)何を目的に、誰に向かって書いているのか、分からない。公共性もない、という当惑がある。アンケートの使用目的も分からない。

いつものように新米記者だが、この理由はナンセンスだと思った。〈誰に向かって〉という問題意識はどこから来るのか?

 

6 毎日新聞大館通信部  村川正夫記者      29日 電話

―(アンケートを)受け取っていない。私の名前を聞いてどうするのか?(会ってアンケートを渡したいが?)な、何。いや、結構です。(市役所の記者クラブに置くのは?)結構です。

恐怖感が出ていた。

 

7 NHK大館報道室  七尾秀明記者     29日 電話

 ―(HHJが)どんな読者を想定しているのか分からない。公的な機関に対しては回答できる。時間的な余裕がない。他の報道機関の対応を見てから、考えたい。こちらの立場や、どういう状況で仕事しているか、分かってほしい。

 アンケート用紙がどこかに紛れてなどと苦しい言い訳をするので、再び郵便受けに入れた。問い語められると、かなり率直に話した。

                

■匿名牲が強い現代社会の不安な状況がテーマである。批判する側が声だけの対話をするのは正当でないので、顔を合わせて話したいと思った。しかし、3大新聞とNHKの記者はこの申し出を拒絶した。民主主義を支える基盤の一つだと言っても、無駄だった。入口の陰に権力機関的な壁がある。これは行政機関とは対照的だが、問題の深刻さと複雑さがそんな壁を作らせたのだろうと考えたい。もしジャーナリストと組織が弱味につけ込んで《どうせ住民はテレビや新聞を本気で敵に回すことはできないんだから、傍観していてもこっちの言い値で売れる》と無責任な態度を取ったら、住民を生殺しにするようなものだ。この非難にジャーナリストがどんな言い逃れを用意するか、ぼくは知っている。《憲法は言論と表現の自由を保障している。ある事実や出来事を無視するのも我々の自由だ》            

報道機関はそれぞれ理念と規則にしたがって行動しているに違いない。ぼくはそれらを読んだことも聞いたこともないが、民主主義から逸脱した内容ではないだろう。自由を免罪符にするとしたら、自ら民主主義の形骸化に手を貸すことにならないか?多くの人間がTVや新聞を見たり読んだりして明日の行動を決める。その人たちの感覚器官と思考機能である新聞とマス・メディアはもっと深く報道の義務と責任を自覚するべきである。そのためには、互いに鋭く批判することも有効な手だろう。惰性を離れて、《自由な表現》を試してみるのも悪くない。日本的な知性の在り方では一人で考えて行動することが難しく、敗戦から半世紀過ぎても、その欠点は変わらない。戦争協力に対する観念的な反省が皮肉な事態を招いたのではないか?

 

 

                                                  ■  ■  ■

 

HHJ  VOL.76  2000 10.12 

 

報道機関への何でもないアンケート

 

8 北鹿新聞  木村正明編集長        821

―あれで精一杯じゃないですか。

 通りで会ったとき約束の回答を求めたが、解説者のような返事。

 

9 河北新報大館通信部  安井良典記者     922日 電話

―どのようなアンケートか、記憶していない。(HHJについて)市役所で見た覚えはある。(記者クラブで?)ええ。

仙台の広瀬川の北に本社があるらしい。言い訳の仕方は役人的である。

 

10 秋田朝日放送秋田本社  岡部和春総務部長    22日 電話

―事実に関する報道はするが、この人の行動をどう考えるかなどというアンケートには答えかねる。(回答するかどうかは)アンケートの中味による。

アンケートを読んだと思える受け答えだが、本人は否定した。郵送したアンケートが届いていないという。すると、郵便局に疑惑を向けさせることになるが、と浅薄なエゴを非難した。配達証明で送らなければなるまい。

[郵便局は後日調査して配達不明を謝罪した。]

 

11 月刊誌KEN(秋田市) 市川雅由編集人 102日 電話

―おっしゃることはよく分かるが、難しい。アンケートの意図が分からない。答えにくい内容だ。考えていることは紙面で出す。(アンケートに答えるという)システムは取っていない。(HHJの記事は)考え方が真面目で硬質なので、無責任な答えは出せない。

雑誌は重要なマスコミなので、秋田県内の代表誌を一つ選んだ。アンケートとは人がどう考えるかを対比的に調べることだろう。

 

12 秋田さきがけ新報大館支局  薄田(営業)     2日 電話

 堀井は10月から本社に転勤した。整理部です。

食糧費などの公費乱用の際連携しようとした記者も、やはり会社の命令で関係を切られた。今回は、さきがけ本社の薄汚れた窓を遠景に眺めるだけにしたい。

 

13 秋田テレビ大館支局  吉尾忠春支局長       5

―(秋田市の)本社に送った。(一般のアンケートには)回答していない。たぶん。別に規則はない。民放連などのアンケートには答える。仕事上の繋がりがあるので。

ドアに挟んだアンケートを受付け嬢が知らなかったので、郵送した。〈たぶん〉に無責任さが滲み出ていた。

 

14 秋田放送大館支局  小畑剛支局長         5

―アンケートには答えられない。趣旨が不明で、どういう形で使われるか分からない。(秋田市の)本社に送った。(回答する側の)責任が明確にならない。

 前号の例を挙げて説明した。一般国民は素朴な信頼をマス・メディアに寄せている。

                 □

     アンケートに対する14の反応をどう分析するべきか?

 

▼ アンケートの内容と質問の設定がフィクションを破壊するので、嫌われた。

▼ 社会の悪い変化の原因ではありえないと信ずる傾向がある。

▼ 考え方が型に嵌まって、しかも、それで満足している。

▼ 国家並みに会社組織の維持を優先する本能が強い。

 

 

 

 

 

 

 

 

煙 草 の 火

 

 

 

 


煙草に火をつけると、吸わなくても、途中で消えることがない。煙草の葉をすべて燃やして煙にしてしまう…ぼくは最後まで丁寧に吸って棄てるが、精神と現実の関係も、そうありたいものだ。ぼくが生きているこの世界をそのまま捉えて、曖昧さや問題を残さないで、きれいに灰にしたい。

 これは実現されえない、しかし、思考する人間の夢だろう。人間の感性も知性もきわめて限られているという事実を、彼はよくわきまえているが、それでも自分が係わる現実に燃え残りがないように努力することを止めない

 

ジャーナリズムとマス・メディアには、個人の感覚と頭脳の代わりに彼が生きている世界を捉えるという役割がある。TVのニュースを通して、あるいは新聞の記事を読んで、今、どこで、何が、誰が、どのように起きているか、個人は間接的に知る。自分の感覚と頭脳で直接的に把握した世界は、思っている以上に少ない。そんな経験も、新聞・雑誌・TV・ラジオによって作られた感性(イメージ)と知性(言葉)のフィルターで濾過されているからである。世界をそのまま正確に認識することは非常に難しい。それが現実というものだ、と言ってしまえば、話は先に進まない。ジャ一

ナリストは、信頼を暗黙の前提にしているからには、読者に代わってその難しい作業を怠るべきではないだろう。

 

重要なのは、自覚することである。三木清という哲学者は戦時中コミニュストをかくまったという罪状で投獄され、敗戦後その存在を忘れられて豊多摩刑務所で死んだが、自覚とは場における認識である、と《哲学入門》に書いている1。自分が生きている環境(世界)との行為的な関係を通して考えなければ、言葉は一枚の織物を適確に仕上げることができない。 

 地方のジャーナリストに欠けているのは、何よりも自覚である。彼はいったいどこに住んでいるのかと疑いたくなるような記事を載せたり、書かなかったり、型に嵌まった陳腐な裁断の仕方をしたり、という場合が少なくない。それでも住民は読まないわけにはゆくまい、と商売人のように考えているとしたら、困ったことだ。地方新聞の理念・目的は何なのだろうか?民主主義が地方の底辺から腐敗して行かないために、仕事に対する自覚を持ってほしい。

 

HHJ  VOL.28  1994.5.20

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1 岩波新書

 

ジャーナリストへのアンケートから

▼ 逃げる報道機関

受信料と情報公開

▼ NHKと会計検査院の馴れ合い

マス・メディアの裏側を見る

▼ アンチロマン、ポスター、記号の現象学

 

 

 

 

 

 

 

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