牧の戸〜星生山(ほっしょうさん)久住山(くじゅうさん)牧の戸

 妻と二人で登る  2005.10.9
青く澄み渡る秋の空,星生崎の下。後方は久住山
場所 大分県九重町
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標高 星生山 1762m
久住山 1787m
歩く標高差 .累積786m 歩行距離 約10Km
所要時間 大人
約5時間半
牧の戸登山口〜沓掛山〜扇ヶ鼻分岐〜星生山〜久住分かれ〜久住山〜〜久住分かれ牧ノ戸登山口
駐車場 牧の戸登山口に駐車場。
データ  さあ,3連休だ。
 
今年の3連休は,子ども達2人だけで対馬のジジババのところに
行かせることになった。
 息子はジジ二人と釣り三昧,娘はババと芋掘りに。そして,私たち夫婦はせっかくなので,二人でどこか山に登ろうとなった。妻初めての久住山登山である。
 
「私にも歩けるやろうか?」
 「大丈夫,大丈夫!(星生山のことはまだ黙っておこう・・・),
  でも少しは歩いておかないときついやろね。(きつくても,はってでも歩くしかないぞ・・・・)」

 こうして,数日前から,妻の夜の歩きトレーニングは始まった。

 当日は,天気がどうなるか心配だったが,晴れの予報。きっと日頃の行いがいいのだと勝手にお互いが思いこむ。天気なんて偶然でしかない気もするが。

 
3連休であることも考慮して,牧の戸駐車場に7時前に着く。ところがどっこい,車だらけだ。すげえ,この時間なら普通の日曜はがらがらなのに。朝の天気は曇り。黒岩山の方には山頂付近にガスがかかっている。しかし,今日の予報だと,ガスのかかった山なみと,青い空をバックにした美しい山の両方を見ることができそうだ。

 よし,出発しよう。

 晴れると陽射しが痛いので,妻に愛用の帽子を貸す。風で飛ばないように帽子に服の留め具が着いた私のお気に入りだ。しばらく妻は服に留め具を着けようと四苦八苦していた。しょうがない,つけてやるか。恋人のようにやさしく「貸して」と微笑んで,留め具を手に取る。
 「!!!!」
 「留め具,折れとるやないけえ!!!」

 お前,愛用の帽子になんちゅうことすんねん!ああ,そうだった。妻はこういう奴である。何をしでかすかわからない。おまけにそういう自覚がない。今日一日,子どもを引率する気持ちでいなければと気持ちを引き締めた。

 
さあ,出発しよう。あっ,その前にトイレ。そのとき,妻が,
 「ねえねえ,このザック背負ったまま,すると?」
 「俺は男だから,ザック背負ったままするけど・・・・ 女の場合は・・・知るか!自分で考え〜い!」 

 思わず,まじめに答えそうになった。背負ってできるものなら試してみるのも一興かも。

 
最初の急坂。とにかく,ゆっくり登ることにする。妻の安全のためと私の精神安定のためである。風は冷たいが,息を切らして登る妻は暑いようだ。「暑い,暑い」と言いながら,一枚,一枚と着ているもの減らしていく。半袖は焼けるぞぉ〜。

 もともとは山歩きに慣れていない妻なので,久住山だけの往復と考えていた。しかし,みるみる天気はよくなる。山はどこまでも済んで姿をはっきりと際だたせている。
せっかくなら,星生山からの眺めも見せてあげたい。扇が鼻分岐で,しばし休憩しながら,妻に語りかける。

 
「ここからまっすぐも行けるけど,星生山に登ってから行こうか。ちょっと岩場が後にあるけど,まあ,どうにかなるやろ。眺めは最高!」
 実は妻は高いところが苦手である。しかし,あの眺めを見ないのはもったいない。万が一,落ちたときには,他人のふりをして帰らないことを固く約束して,星生山に行くことにした。

 
星生山の尾根へのとりつきは,笹や草が繁り,朝露でズボンがびしょぬれになる。妻にレインスーツのスボンを着けさせ,登り出す。一歩あがるごとに眺めがよくなる。「きれい!きれい!」を連発し,振り返りながら道を進む。笹場を抜けると,陽射しと登りで体が暑くなる。
 「レインスーツのズボンをもう脱いでいいよ。」
 と妻に言うが,下半身があったかいので,着ておくという。こんなあたたかな晴天の中,オレンジのレインスーツを履いた妻を連れてあるくのはしのびないが,しょうがない。
 
 
星生山かの眺めは素晴らしかった。たくさんの人が休憩している。硫黄山からの蒸気はいつもに増し多く感じ,迫力があった。ゆっくりと休んで眺めを楽しむ。

 
さて,行こうか。妻が立ち止まる。
 「うそぉ,ちょっと待って・・・ この道を進むの?」

 妻の目の前には,岩尾根が続いている。
 「いやいや,見た目ほどない。」
 と,いい加減な返事をし,考える間を与えず進むことにする。

 
「うそぉ。あっ,足が届かん! え〜,こわあ・・・」
 一人でにぎやかである。後方の方にちょっと迷惑をかけながら,ゆっくりと慎重に進んでいく。
 妻の顔はだんだんと疲労の度合いが強くなっていった。その度,夫は,
 
「いやいや,見た目ほどない。」
 と呪文のように同じことばを繰り返していた。

 
岩尾根を過ぎ,星生崎へ。後は,普通の道である。妻とやっと一安心。眺めを楽しむ余裕が出てきたようだ。久住山分かれと久住山,星生山に肥前ヶ城を一望する。高いところが嫌いな妻もこの眺めのよさには,そのことをつい忘れているようだ。

 
久住分かれを経て,久住山へ。山頂は多くの人たちでにぎわっていた。360度の眺めを楽しんで,おにぎりを食べる。こんなにいい天気と眺めにはそう巡り会えないかもしれない。妻は,すっかり久住連山の美しさに魅入っていた。私も久住山には何回か来たが,こんなに天気のよい日は私も初めてだ。夏と秋への変わり目の最後の緑色が,目を楽しませてくれた。あと,数週間で冬枯れの山へと変貌してしまうだろう。

 帰りは,ゆっくりと話しながら歩く。夫婦二人の話題は,やっぱり,子どものことばかりである。息子は対馬で鯛を何匹か釣り上げたようだ。娘は芋をたくさん掘った。家族それぞれに秋のよき日を楽しんだ。

 やっぱり秋の山はいいなあ。
 家族揃って,登るにも絶好の季節となってきた。
 
 
 
 
朝,7時前。牧の戸駐車には車がいっぱい。
妻の初めての久住登山の始まりである。
 
 
最初の急坂,もう暑い。岩場は慎重に慎重に。
 
 
あれが星生山。あの尾根をずっと行こうか。
しまった。眺めがよすぎて,ギザギザとした岩尾根の概要まではっきり見えている。
尾根道の後半部分の説明ははしょってコースの説明をする。
 
  
尾根に取り付き,振り返りながら登る
 
 
 
扇ヶ鼻もくっきり見える。
レインスーツがすっかり気にいったようだ。

 
 
星生山山頂。ここからの眺めには感動していた。
 
 
「岩場になるからレインスーツ脱げば?」
「これ,あったかいから気に入った。」
「お前,破るなよ。それ高かとぞ。」
「私とスーツとどっちが大事やと」
「・・・ス,スー・・・・擦るなよ(汗)」

よく考えると,岩場を歩くことにおいて,スーツを脱いでも安全面には関係ないじゃないか。
だまされた。
 
 
岩場を歩いていると,突然立ち止まる。
何をするかと思ったら,レインスーツのズボンを脱ぎだした。
「やめろ!こんな岩場で何をする!!」
「だって暑いもん。」
「脱がしてやるけん,つかまっとけ。」


岩場の尾根で命をかけての介助が続く。

俺は訓練登山か?
 
 
岩尾根を過ぎ,星生崎へ。久住山が見えてきた。
 
 
 最後の登りをがんばれば,いよいよ久住山。
 
 
久住山,山頂は多くの人たちで大にぎわい
 
 
久住山から稲星側へ。
中岳,稲星山が眼前に。大船山もくっきりと見える。

子ども達と来たときは,こっちの広場がいいねと話す。
話題の中心はやっぱり子ども。

 
 
天高く,我・・・肥ゆる秋・・・
星生崎が美しかった。

 
こんなに天気のいい久住山は初めてだ。
 
 
 初めての夫婦登山。いろいろあったが無事済んでよかった。
妻もがんばって歩いて,久住山の魅力を満喫できた。
たまには,夫婦で登るのもいいもんだ。

ただ,ふと,気が付くと,俺はなぜ妻の特集のような山行レポを書いているのだろう・・・?

まっ,読み直すと特集というより,いいネタなのでよしとするか。
 
 

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