恵那山(百名山)(単独行)

2008年5月3−5日

 今年も最初は九州方面の山に行きたいなどと漠然と考えていたが、ゴールデンウィーク前半は飛び石だし、金銭面などから、近畿圏の山に予定変更。そして、近畿圏の中でもさらに、東よりの恵那山を選んでみました。この時期登るのに、この緯度でこの標高がちょうどよかった。ところが、恵那山は百名山の中では評判の悪い山のようです。きっと登るだけだからダメなんで、登る以外に、その山の持つ歴史・その山を遠景から見る眺めなどを考えれば面白い山行きになるだろう。

今回の山行のトラックログ(登り:赤、下り:黄)(ウェストン公園〜神坂峠間)

 恵那山には登るのに4つのルートがあります。登りに宮前ルートを選んだのは、理由(1)ゴールデンウィークなので人混みの中は避けたかったので、ガイドブックなどにあまり紹介されていないルートを選んだ、理由(2)明治26年にウェストンが登ったルートでもありながら昭和34年の伊勢湾台風で崩壊し、2001年に復活した歴史的なルート、だからです。下りに、神坂ルートを選んだのは「展望・花」などが良いルートだからです。

5月3日
15:32 八王子駅発→17:38 塩尻駅着
              18:03 塩尻駅発→19:07 中津川駅着

 中津川は「伝統の町」という感じで、吉野家とか、安そうなラーメン屋とかはなく、ただ立ち食いそばが一軒あるのみでした。その他、コンビニも市が運営しているようなのが一軒あるのみでした。もう少し遅く来ていたら、おにぎり・サンドイッチの類はなかったかもしれません。

夜の中津川駅

 近くのビジネスホテル?に泊まりました。

5月4日
天気:晴れのち曇り

中津川駅から見える恵那山・あの山に登る ウェストン公園・胸像

5:55 中津川駅発(タクシー)→6:10 ウェストン公園着・発
 宮前ルートというのは登山口からで、ウェストン公園からではありません。ただ、ウェストン公園からでも歩いて行けない距離ではないし、タクシーの予約の時に間違って「駅からウェストン公園まで」と言ってしまい。そしてウェストン公園より先に行くとタクシー代が3000円以上かかるので、ウェストン公園でタクシーを降りました。しかし、ウェストン公園はウェストンの胸像があるだけで他に何もない空間、やってしまった…
 気を取り直して、先へ行きます。恵那神社にもせっかくなので寄ります。が、境内に入らず鳥居の写真を撮っただけです。この後、登山者がよほど珍しいのか? 放し飼いの犬に100mほど吠えて来られました。狂犬ではないので咬みつかれはしませんでしたが、「相手にせんといで」近くにいたおばちゃんの言葉。
6:50 宮前ルート・登山口着(下のトラックログで丸数字1(@))

宮前ルート・登山口 増水時には引き上げられるという丸木橋
(登山口すぐ)

 沢沿いの林道を進んだところに登山口はありました。登山ポストに、登山届を入れて出発です。ちょっと気になっていた「増水時には引き上げられる」という丸木橋が、何事もなくすぐそこにありました。難なく渡り、一息入れて恵那山の中へ入ります。
7:00 登山口出発
7:17 対東沢
 対東沢を渡る所が水場であったということは、その後知りました。少なくとも水場らしい水場でないということです。基本的に、この頃は薄暗い植林(標高が1400mあたりまで植林があったと記憶)の中です。視界も悪いです。

対東沢(水場)を渡った所 五合目の標識(新しいのもすぐ隣にあり)

7:50 五合目(下のトラックログで丸数字2)
 (それまではなかった)ようやく由緒正しそうな遺物が出てきました。歴史を感じさせる標識です。この辺りは、咲き終わりのヤシオツツジが、点々と見られました。

枯大桧 ようやく眺めが良くなってきた

 この辺りからようやく眺めが良くなってきました。その他、大きな枯れた木があり、その先に「枯大桧」の看板がありました。ずいぶん前から枯れているヒノキなんですね。
9:00 中ノ小屋跡(下のトラックログで丸数字3)
 中ノ小屋跡は、ここに小屋があれば楽だし、テントが3張りぐらい張れるスペースがあります。ここに宿泊設備があれば、もう少し前宮ルートも盛り上がるのでは?

中ノ小屋跡 右下が「中ノ小屋跡の不動明王像」です
自画自賛 目指す恵那山山頂

 左後ろを振り返ると、木曽御岳の白い頂が見えてきました。木々にさえぎられてなかなか写真を撮る場に出会いませんが、かっこよく見え、「来て良かった」です。その他、恵那山山頂もたまに姿を見せてくれます。登りはつらいけど、眺めが良いのでそれほどつらくはありません。

木曽御岳 里が見える
これから進む道 通ってきた道

9:45 八右衛門ノ頭(下のトラックログで標高1801m)
 八右衛門ノ頭の前で、後ろを振り返ると宮前ルート初の「人」に出会いました。男性の単独行者です。結局、神坂の分岐に行くまでこの人一人しか会いませんでした。ゴールデンウィークで、天気予報晴れの日でも、百名山でも静かなところは静かです。ちなみにこの宮前ルートですが、踏み跡ははっきりしています。読図で苦労するほど、藪ルートではありません。4−5ヶ所崩壊しかけている所がありましたが、息を止めて行けば通過できると思います。

八右衛門ノ頭 バイカオウレン(白い花)

 天気が良かったのはこの頃までで、この後、ガスが出てきて視界が悪くなりました。少しずつガスに覆われていったので、少しは写真も撮れましたが…。その他、この辺りにバイカオウレンが多く咲いていました。小さくて、大したことないといえば大したことないですけど、ないよりはあった方が良いです。

だいぶ雲が出てきた恵那山 木曽御岳(左)が雲の中へ、隣は中央アルプス?

10:10 行者越(下のトラックログで丸数字4)
 行者越の右にある役小角の小さな石像は不思議な顔をしています。ガイドブックには「平成14年に掘り出された」とあり、埋まっている間浸食を受けたせいだろうか? この少し後、10時16分、標高1850m付近で雪が登山道わきに、現れました。1週間前は八右衛門辺りから「雪が現れた」と聞いた。ついに現れたかという感じ。

行者越 ガスが恵那山を覆う
大川入山だと思います 登山道が雪に覆われる

 雪が現れてから、30分後ほど(標高が2000mになった頃)、ついに登山道も雪に覆われるようになりました。この日、基本的に雪は締まっていて、靴が沈み込むようなことは少なかったですが、たまに雪の薄い所を踏み抜いてズボッと地面までいくことがありました。この頃から、手袋をして、こういうこともあろうかと持ってきたストック(ダブルストック)を使用しました。雪が氷状になっているところは下りの一部を除いてほとんどなかったので、これも念のために持ってきた軽アイゼンは使用しませんでした。トレースは基本的にありました。
10:55 十六合目(下のトラックログで丸数字5)

雪に覆われた登山道

 実は今回余計な荷物を持ってきすぎました。小屋泊まりとビジネスホテル泊まりだから寝袋の類はいりません(頂上の避難小屋に泊まる場合のみいりますが)。ガスとコッヘル、食器も4日の夕食だけだから省こうと思えば省けました。ま、「トレーニングだ」などとも思っていたのですが、トレーニングならいざという時捨てられるものが良いですね。逆にいえば今回、水をもっと持って行っても良かったです。途中でガスが出てきたから助かったものの一日中晴れだったら、相当きつかったと思います。ということで(?)、この頃だいぶバテていました。余計な荷物を持ちすぎたせいです。
11:40 一ノ宮(下のトラックログで標高2127m)

一ノ宮の社 「岐阜県の山」より、一ノ宮を間違えた

 今回、一ノ宮の位置を間違えました(上右の、「「岐阜県の山」より一ノ宮を間違えた」参照)。何をどう間違えたかというと、上右の地図を見ると、神坂峠との分岐のちょうど上に一ノ宮の文字があります。そのため、「神坂峠との分岐=一ノ宮」と思いこんでしまったのです。実際はそうではなく、一ノ宮の左に2127の数字がありますが一ノ宮はそこなのです。なぜ分岐の所に一宮の文字があるかというと全くの偶然です。カラーでコピーしておけば違いがわかったかもしれない。
 そもそも、バテて余裕がないから、こういうミスをする、とも言えます。ゆっくりと腰を据えて地図を読んでいれば…。ちなみに、2万五千図には、地形は出ていますが、宮前のルートは示されていません。それにしても、一ノ宮からの尾根の出方を考えればこんなミスはありえない。自分に、地図読みが把握できていない証拠である。
11:50 神坂峠との分岐着・昼食(空身でピストン)

神坂峠との分岐

 八右衛門ノ頭にいた頃は12時までに山頂に着けると思っていた。しかし、この時間になってしまった。「とりあえず、落ち着こう、時間も時間だし、ここで昼食!」である。昼食をしている間、5−6人の人に出会う。時間的に余裕もないし、要らない荷物を神坂峠の分岐に置いて、必要なものだけ持ってピストンです。

ウェストン公園から神坂峠との分岐点までのトラックログ

12:05 神坂峠との分岐発
 途中で、1ヶ所トレースを見失う。「こういう時こそコンパス!」である。講習で教わったようにコンパスを使ってしばらく歩いていると、再びトレースに出会いました。さらに、しばらく進んだところで先ほどの一ノ宮と同じくらいの小さな社発見。だが、ここに人が大勢いるわけでもないし、ここは山頂ではない。いくらなんでも山頂には人は大勢いるだろう。それに、トレースの先を見ると行き止まり。何が何だか分からなくて、しばらく迷走する。少し戻ってルートを確認すると、右側にトレースが、それを下っていくと建物が、ついに到着!
12:30 山頂・避難小屋着

山頂・避難小屋 山頂・トイレ

 山頂の避難小屋は見つかりましたが、肝心のピークを示すものが見当たりません。「恵那山て、地味目の山だからどかーんと『百名山 恵那山』のような看板はないのかな?」などと勝手に考え、(実は違います。それは後述)時間もないので、山頂・避難小屋の写真を撮って変えることにしました。それにしても、避難小屋には20数名の人がいました。いるところには人はいる。

合成写真を作ったらちょっと怪しいものに…
恵那山山頂小屋(ピーク写真のつもり)
ほんのわずかな瞬間、晴れ間が
山頂小屋近くの岩場 避難小屋とトイレ

12:50 山頂・避難小屋発
 先ほど、トレースを見失ったので、今度はきちんと行けるか不安でした。しかし、何事もなく、すんなり元の神坂峠との分岐に戻れました。置いておいた荷物もきちんとあり。
13:10 神坂峠との分岐に戻る
 とりあえず、一安心。休憩しよう。
13:25 神坂峠との分岐発(神坂ルート)
 登りではそれほどでもないですが、下りでは下りた分を登り返すのが大変なので、間違ったところを下りていないか、何度も地図を見ました。特に今回は、登山道が雪に覆われているので、とても不安でした。たまに、トレースが二つに分かれている時などやっぱり地図を出します。トレースがある時期でこうですから、トレースのない時期に、「山スキーで行く時は慎重に下降しなければ スキーだとさらに下降したら登り返すのが大変」です。
 13時40分頃、登ってくる家族がいました。思わず下りるのをやめて見入ってしまいました。父親と男の子二人、大した装備も持たず(避難小屋で泊まる装備は持っていないだろう)この時間帯を登ってきます。バテてはいないようですが、「大丈夫ですか?」思わず聞いてしまいました。「大丈夫。あっははは」と父親。山頂まで行ったら、下に下りるのは何時になるのだろう。この後はさすがに、登ってくる人には会いませんでした(下りる人にも会いませんでした)。父親は良いけど息子は山が嫌いにならないことを祈る。登るよりも下る方が何倍も神経を使うし。

晴れていれば… 大判山

 14時10分(標高1950m程度)雪がない所も出てきたのでストックをしまいます。この後「天狗ナギ」(下のトラックログで丸数字の6)を通過しているはずですが、気がつかず通過してしまいました。崩壊している地図記号があるので、気をつけて見ていればわかるはずですが、読図というものが頭ではわかっていても体感できていない、ということ(あまり人(先ほどの家族)のことを言えないかもしれない)。その他、この辺りのみアイスバーン状になっている所が多々あり、通過には気を使います。14時45分頃(標高1820m程度)登山道にほとんど雪がなくなりました。
 このルートは道標はあるが、「恵那山ー富士見台」の道標ばっかり、そしてエアリアには富士見台がどこなのか載っていない。本当にこのルート正しいのか、不安でしょうがなかった。視界も悪かったし…。その後、ガスが晴れてくる、「あの正面にあるのが大判山でなかったらどうしよう。あんなに登るのだろうか。」やはりエアリアは読図には不向きだ。
15:20 大判山(下のトラックログで標高1695.9m)
 無事、大判山に到着。小さなプレートであるが、山頂にあったプレートを見てほっとする。

大判山 ショウジョウバカマ街道

 大判山周辺はこの時期、ショウジョウバカマ(ピンク色の花)が点々と咲いていて、(それほどきれいな花ではないのですが)、来て良かったと思います。もう、雪もないし、現在地もきちんと把握できたし、遅れた分を取り戻そう、ということでペースUpです。
15:55 鳥越峠(下のトラックログで丸数字の7)

鳥越峠 神坂峠(登山口)

 やっぱりエアリアは起伏を読みずらい。自分の読図能力が低いというのもあるが、後になって事実を知った身で見ると「なるほど!」と思えるが、「こんな起伏あったっけ」と、鳥越峠から出ているヘブンスそのはら方面の道に入ってしまったのではないかと気が気でならなかったです。
16:35 神坂峠着
 ようやく着いた! ヘブンスそのはら方面の道にも入っていなかった。一安心、16時50分まで休憩しました。さて、宿泊先である万岳荘は? 神坂峠から右側に行ったところに入り口があるようですが、それが見当たりません。「神坂峠から50分もかかるのに どこだろう」と思って、看板もあることはありますが、右へ行ったところとしかわかりません。しかたない、右へ右へと行けば何かあるだろうと思って、歩いたところ、ありました万岳荘。「神坂峠から50分」というのは見間違いでした。神坂峠からすぐです。

神坂ルート

17:05 万岳荘
 万岳荘は「岳人」向きではないし、「山と渓谷」向きではないし、「ヤマケイJOY」でもないし、「BE-PAL」向きかもしれません。

万岳荘


5月5日
天気:曇り
 万岳荘から中津川までタクシーだと8000円かかるそうです。とりあえず、歩けるところまで歩いてダメなところでタクシーを呼ぶ予定でした。しかし、そのことを管理人さんに話すと「良ければ3000円で駅まで送る」とのこと。自分下山時にはあまり機嫌がよくないので、人といるのは何となく苦手。どうしようかと迷って、自分の出した結論は「雨だったら送ってください」でした。いくらなんでも雨の中、中津川駅まで歩く気にはならなかったので
5:55 万岳荘発(管理人さんの車)→7:05 中津川駅着
 朝起きると、見事な雨だったので、送っていただくことになりました(その後雨は止む)。管理人さんの車に乗っている最中、管理人さんに「そうだピークと言えるものがなかった恵那山山頂のことを聞いてみよう」と思い、聞いてみました。すると、「ちゃんとあるよ」とのこと。ということは

矢印が山頂でした

恵那山の最高地点には行きましたが、いわゆる「山頂」にはたどり着いていなかったということでした。山頂・避難小屋から10分歩いたところに山頂はありました。落ち着いて考えれば、「なんで気がつかなかったんだ」ですが、いまさら戻れません。一ノ宮を間違えて冷静になれないまま…

7:20 中津川駅発→8:33 名古屋駅着
              8:57 名古屋駅発→11:47 東京駅着(こだま)

 最初はせっかく名古屋まで来たから、名古屋城とか熱田神宮などよるつもりでしたが、5月3−5日の間は、りそな銀行からお金が引き出せなくって、お金に余裕がなくって、名古屋城とか熱田神宮はあきらめました。

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