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「 こころ現代民家研究所 」 の木造建築

省エネルギーな家を造る 

ココロが提案する省エネは、ちゃんと温熱計画することです。ちゃんと断熱することです。それによって、無駄に消費するエネルギーを減らすことです。
ココロで実践している断熱工法は、それぞれの環境、建物の違いやコスト等によって、トータル的に良い方法を選択しています。

「繊維系外張り断熱」

桟を取り付け、間に断熱材を入れる。その外側には必ず通気&防水層を設ける。
「外張り断熱」とは、木造の構造部分・・つまり柱や梁、土台の外部壁側(外側)に断熱材を施行する方法を言います。一般の地方で従来とられているのは、柱や土台の間に断熱材を詰め込む「充填断熱」といわれるものです。そしてよく耳にする「外断熱」と違うのは、断熱材で囲む構造部分の素材や性質の違いによるもので、コンクリートのように熱容量が高い(温まると冷めにくい・・蓄熱性)素材を囲む際には「外断熱」。木造のように熱容量があまり高くならない素材の場合は「外張り」として区別されます。
外張りの最大の利点は、断熱材の欠損(断熱材同士の隙間)が少なく、ぐるりと建物全体を断熱材で囲むような形態が可能なことです。これにより、かなり効率的な温熱環境や換気計画が可能になります。一般に行われてきた不完全な充填断熱の場合、そのほとんどが断熱材や防湿層の隙間から壁内に湿気が進入し、結露してそのまま構造体の柱や土台を腐らせる・・という例が多く見られます。構造体から外に断熱材がある・・ということは、万が一、断熱材の欠損等で結露が発生するとしても、結露が落ちるのは構造を外れた部分・・ということになります。しかし一方では、外張りするということは、断熱材の外側に重要な外壁材やサッシなどの重い部品を装着しなければならない・・・ということにもなります。これには保持力が高く、折れ難いビスなどで対応しているのですが、厚い壁になると、50ミリ以上もビスだけで外壁を支えることになり、経年変化による影響が懸念されます。また、今普及している断熱材は発砲成型もしくは押し出し成型の所謂、プラスチック断熱材(原材料が石油の断熱材)です。夏場にはかなりの高温にさらされることや、下地の変形に対する追随性が低いこと、石油資源の節約等から考えると永いスパンで考えると少々不安があります。
ココロで採用している「外張り」は柱の外側に断熱材受けと言われる横桟を取り付け、そこで外壁やサッシなどの加重を受けるようにし、その桟の間を追随性がある繊維系の断熱材で埋める方法です。(繊維系外張り断熱)断熱的に考えますと、確かにその桟部分は断熱欠損ということになりますが、その欠損部分を見込んで断熱材の性能を設定すれば、充分な温熱環境を得ることができます。変形や収縮をしやすい「木」ですから外張りを行う場合もその木の性質を踏まえた施行方法をする必要があるワケです。


「調湿系断熱」

外壁周りや浴室など温度差がでやすい部分にフォレストボードを隙間無く入れる。
日本の古民家にはもともと断熱という考え方は無く、とにかく通気をして湿気を溜めないことだけが重視され、暑さ、寒さは我慢する・・という家の造りになっていました。しかしその分、湿気をコントロールする「調湿」という点においては多くの工夫がみられます。また、土壁や漆喰、木材などそのものが湿気に強く、自らが湿度を調整できる機能を持った素材が多く使われています。そんな、日本的な「調湿」を主体にした断熱方法はないか??ということで、ココロでやっているのは「調湿系断熱」。正直いいますと、これは断熱という部類には入らないのかもしれません。ですが他の温熱保持方法と比較してわかりやすいようにそう呼んでいます。壁内に湿気が進入することは想定して、とにかく湿気に影響が少ない、むしろ湿気を吸収、排出できるような素材だけで壁内を構成するというモノです。壁の内側は板などの木材か漆喰などで仕上げ、防湿層といわれる湿気を遮断するビニールシートを設けません。湿気が壁面を通過する際にある程度湿気を調整します。そして壁の中には杉皮でできた断熱材(フォレストボード)を隙間無く詰め込みます。杉皮ですから、湿気や熱にも強く、防虫性もあります。外壁側には透湿防水シートを張り、必ず通過した湿気を排出する通気層を儲け、その外に外壁材を張ります。板倉構法の場合、外壁を木板で仕上げれば、まさに内から外まで木の部材だけで構成する・・ということになります。ただし気密性からみますと、気密層=防湿層が無いワケですから、壁の隙間としては多く存在することになります。ですので、開口部などの断熱的弱点対策をしっかりすることが重要です(太鼓障子や断熱性の高いプリーツスクリーン、木製雨戸などを設置する等)。 また内部に面する部分を全て厚さ3センチ以上の蓄熱性のある木材などで仕上げて壁面や床面の温度が下がりにくいよう、輻射熱利用も考慮した計画が必要になってきます。
また、ココロでは内側に充填する方法だけではなく、土壁パネル(荒壁パネル)を使って外張り断熱と同じような形で調湿性のある素材だけの外張り工法も試みています。この場合、繊維系の充填断熱と組み合わせれば次世代基準をクリアできる性能をだすことも可能です。
環境的な視点から考えると、温暖化が進み、気温と湿度がさらに上昇する可能性があるこれからは、調湿を主体とした家づくりがもっと見直されることになるかもしれません。


「屋根通気層・外部通気層」の確保

断熱層の上に防水シートが張られ、通気垂木が取り付けられる。
ココロでやっている梁を出す方法では、見た目は天井がありません。ですので、「雨の音がうるさくないんですか?」とか「屋根裏がなくって暑くないのですか?」というようなことを良く聞かれます。当然、屋根の下地板がそのまま部屋の中に表れていれば、雨はうるさいですし、夏は暑く、冬は寒いことは間違いありません。実は、薄い屋根の中が屋根裏や天井裏のようになっているのです。部屋の内側に厚さ3センチの仕上げ板があり、その外に断熱材→防水層→通気層→屋根下地板→防水ルーフィング→屋根材 というようにいくつもの層になっています。そして通気層は、軒先か若しくは、外壁内部から空気を入れ、屋根のいちばん高い部分(棟)で外に放出されるように計画されています。また、この通気層部分は、万が一、屋根の防水が切れたり、隙間などから雨が進入してきた場合でも直接内部に浸透するこ無く、この通気層でシャットアウトすることができます。通気目的の空間なのですが、防水の面でも重要な役割を果たしているのです。


「南面は軒を深く、窓を大きく」

大きく張り出した軒。日差しをさえぎり、雨を凌ぐ。日本建築は軒が命
ココロでは、南面に面する部分に、縁側やウッドデッキなど、内部空間と外部空間を繋ぐ要素をできる限りプランに盛り込み、そこには大きな開口部(吐き出し窓)を設けています。そしてその外側には必ず大きな軒(屋根)を張り出します。最低でも90センチ~1メートル。用途によっては1.5メートル位出す場合もあります。高断熱住宅でしばしば問題となるのが、夏場の日射です。断熱性が高いと、冬場は日射熱をうまく利用すれば大変暖かくすごせますが、夏場に日射熱が入った場合、熱が逃げにくいので、熱気がたまります。こうなると、換気設備だけではどうにもなりません。軒をしっかり出すことで、日射をコントロールすることが不可欠です。この日射を考慮してはじめて断熱住宅の意味があるのです。また、万が一熱気がこもってしまった場合は、南面の大きな窓を開放して、即座に通気&換気が行われるような計画とします。その時の気候によって窓を開閉し、自分で調整することが何よりの温熱対策といえると考えています。
そして、掃除、洗濯、布団干し・・など、軒と大きな吐き出し窓は日本人の生活にも欠かせないモノなのです。