日本共産党区議団の近藤なつ子です。
私は、移動困難者対策と総合的な交通対策について一般質問します。
1986年に結成された「交通権学会」は、人が生活する上で必要不可欠な交通を権利として捉え、日本国憲法、第22条 居住・移転および職業選択の自由、第25条 生存権、第13条 幸福追求権など関連する人権を集合した新しい人権を「交通権」と定義しています。私は、この「交通権」の考え方を様々な区の施策に反映をすべきと考えます。
政府は今、「交通基本法」案を国会に上程し、現在継続扱いとなっているところです。その内容は必ずしも充分とは言えませんが、いよいよ地方自治体でも交通基本条例を検討する時期ではないでしょうか。これまでの交通施策を検証し、「交通権」の考えを踏まえ、車優先から人と環境を優先に転換していけるような新宿区交通基本条例の作成に着手すべきと考えますが、まず最初にご所見をうかがいます。
移動困難者対策については、国の法制定や条例待ちにせず、ただちに取り組まなければなりません。これまで私は何度となく、移動困難者対策の1つとしてコミュニティバスの運行を求める質問を区長にしてきました。ちょうど2年前、2009年の第4回定例会でも、区長は私の質問に「移動困難者を移動させる施策は必要と考えている」、その手段については「コミュニティバスに限らず乗合タクシーやデマンド型交通など様々ある」とし、「新宿区地域公共交通会議の場などで検討」すると答弁されました。
この「新宿区地域公共交通会議」は2008年3月13日に、道路運送法の規定に基づき設置され、以来今年の10月24日まで計10回開催されています。私は全部の議事録を読んで見ましたが、会議の半分は「新宿駅周辺循環型バス導入対策協議会」と一緒に行われ、その他も含め実質WEバスを運行するための内容となっていました。地域公共交通会議の設立趣意には、「都市における公共交通の役割を一層高め、バスの利便性の向上を促進するために、地域のニーズに即した運行形態、サービス水準、運賃等について協議する場として」設置するとあるのに偏ったテーマでしか議論されていないと言わざるを得ません。
新宿区内は鉄道や路線バスが整備され、他の都市と比べ相対的には公共交通の利便性が高いと言えます。しかし、大事なのは住民の移動手段として買い物や病院などの日常生活を支える公共交通が充分に整備されているかどうかです。2000年12月に大江戸線、2008年6月に副都心線が開業し地下鉄は拡充されましたが、その一方で地上を走るバス路線が縮小されてきました。階段や長い連絡通路を歩くことが困難な方にとって地下鉄はとても便利だとは言えません。また、都営バスなどの路線バスがあっても、早大行きの学バスなどのように1時間に10本近く出ていて時刻表を見る必要がない路線と、渋谷行きや大久保通りを走る新橋行き・飯田橋行きなどのように1時間に1〜2本しか走らない路線とでは便利さが全く違います。十分な交通手段がないと足腰が弱っている方は買い物や病院も含めて外出の機会を減らさざるを得ないのです。病院や商店街、スポーツ施設があっても、そこへの移動手段が整わなければ、住み慣れた地域で安心して快適に暮し続けることはできません。逆に人が移動しなければ商売も観光も成り立たず、移動の確保は、まさに生活・経済の土台です。
そこで、伺います。区は地域公共交通会議の趣旨である「都市における公共交通の役割を一層高め、バスの利便性の向上を促進するために、地域のニーズに即した運行形態、サービス水準、運賃等について協議」する気はないのでしょうか。また、この間少なくとも検討すると言っていた移動困難者対策や関東バス百人町線については協議を始めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、2001年3月に地域密着型バスの検討の結論を出し、区は交通の利便性が高い新宿で事業採算が採れるバス路線の運行は困難とし、区が運行補助を行う事業ではないと位置づけました。あれから10年経ち、高齢化は更に進行し、区内の公共交通の状況も変化しています。改めて区民の移動の実情、移動困難者の実態を調査すべきではないでしょうか、お答えください。
次に、総合的な交通対策についてです。
区は、陸上交通に関する交通安全対策の総合的かつ計画的な推進を図ることを目的とする「第9次交通安全計画」素案のパブリックコメントを先日行いましたが、区民からは意見は1団体1件のみでした。私は、区民にとって安全で安心できる交通対策はもっと重視して進めるべき課題だと思います。計画案の施策はほとんど箇所名や目標値が明確にされておらず、物足りなさを感じます。そこで具体的にいくつかお聞きします。
1つ目は、自転車レーンの整備です。
自転車の利用者が増え、歩道でも車道でもトラブルの元になり、環境にやさしく便利な乗り物の行き場が危うくなっています。マナーの問題もありますがハードの整備が決定的に遅れています。国や都にただ設置を要望するだけでは、本当に活用される、利用しやすい形態になりません。条件のある国道や都道に対して、地域住民と道路管理者が一緒にどういう専用レーンをつくるのか協議をする場を持つよう申し入れるべきではないでしょうか。また、区道については触れていませんが幅員のある箇所は部分的にあります。区道の整備計画を立て進めるべきです。
2つ目に歩車分離式信号の整備です。
交通事故を防ぐ有効な手段の1つにも関わらず計画にありません。交通事故が多かった早稲田駅前交差点は昨年度、一定の時間が歩行者と車が分離され安全性が向上しました。区として整備計画を持ち、警察と調整すべきです。
3つ目は歩道の拡幅計画です。
主要な交差点の付近でも大変歩道の幅が狭く、信号待ちで溢れているような状況を見ます。区としても調査し、仮に車道幅を狭くしても歩道の確保をすべきところをきちんと洗い出し計画すべきです。
4つ目は信号機の表示です。
自転車は原則車道を走ることになっています。しかし、これまでの車社会のなかで信号は歩行者と車を対象に設置されていますが、自転車はどちらの指示に従う所があり、迷います。安全上から言えば歩行者と一緒にすべきと思いますが、警察とよく実態について協議し、プレートをつける等の対策を講じるよう要望すべきです。以上4点について、見解をお聞かせください。
交通安全計画は国や都との整合性を考慮した中身になっていますが、区民にとって交通安全対策は命と生活に関わる大事な課題です。現在のように、年1回の交通安全協議会で事故等について検証するだけではなく、もっと区民とともに総合的な交通対策の計画を作成する必要があると思います。岐阜県岐阜市や可児市、長野県栄村や木曽町、兵庫県神戸市などは、住民参加を徹底するため、住民、行政、事業者などを交えた地域ごとの会議やワークショップなどを設置し住民とともに計画を作り上げています。新宿区でも、現在ある交通安全協議会や地域公共交通会議等とともに、先進自治体の手法にも学んで住民参加で交通問題を議論すべきではないでしょうか。その際、区のサポート体制も交通対策課任せにするのではなく、道路課、高齢者サービス課や地域福祉課、環境対策課など横串を指した総合的な対応が必要です。この点も踏まえて、区長の見解をお聞かせください。
◎みどり土木部長(野崎清次) 近藤議員のご質問にお答えします。
移動困難者対策と総合的な交通対策についてのお尋ねです。
初めに、新宿区交通基本条例の制定についてです。
現在、国会に上程されている交通基本法案は、交通を取り巻く社会経済情勢の変化に対応するため、交通に関する国、地方公共団体、事業者等の責務を明確にすることとしています。
現在のところ、地方自治体の役割などが不明確な状況であることから、交通基本条例を制定することは考えていませんが、今後も法案の審議状況を注意深く見守っていきます。
なお、この法案にある、高齢者や障がい者の方の円滑な移動のための施策や交通に係る環境負荷の低減に必要な施策については、区ではすでに、駅施設や道路などのバリアフリー化、ISO14001の推進等を行っており、今後も積極的に取り組んでいきます。
次に、地域公共交通会議についてのお尋ねです。
新宿区地域公共交通会議は、道路運送法第9条第4項に基づき、バス路線の運賃等を事前に協議するために設置したもので、これまでは、主に新宿WEバスの運行計画やその変更について、協議してまいりました。今後、ご指摘の移動困難者対策や関東バス百人町線のうち、地域公共交通会議で協議すべき項目について、関係者で検討していきます。なお、関東バス百人町線については、地元の皆さまに運行状況等を周知することは利用促進のためにも必要なことと思いますので、バス会社と周知方法等について、別途調整していきます。
次に、区民の移動の実情、移動困難者の実態を調査するべきではないかとのお尋ねです。
区内の公共交通網に関しては、平成20年6月に新たに地下鉄副都心線が開通しました。それに伴って、東京都交通局は明治通りを通るバス路線の一部を減便しましたが、同路線の利用者からの要望を受け増便した経緯があります。この他には、平成13年度の調査以降、区内の公共交通の状況は大きく変化していないため、改めて調査をすることは考えていません。
次に、総合的な交通対策についてのお尋ねです。
初めに、地域住民と道路管理者が協議をする場を持つよう申し入れてはどうかとのお尋ねです。
自転車の安全な利用には、自転車レーン等の整備が必要であることについては認識しています。以前、山手通りの整備に際しても、東京都及び首都高速道路公団に沿道の声を聴く機会を設けるよう申し入れた結果、沿道の町会から出された意見が道路整備に反映されました。今後も、新たに自転車レーン等を整備する際には、国や都に対して、区民の声を聴く機会を設けるよう要望していきます。
次に、区道の整備計画についてです。
区では、今年度、「自転車等利用環境の整備促進」事業を行っており、この中で、自転車歩行者専用道等の整備方針を定めることにしています。現在、国道、都道、区道に整備されている自転車歩行者道の現況について調査を行い、問題点を把握し、課題の整理を行っているところです。今後、区道の限られた道路幅員の中で、自転車歩行者道などとしての整備が可能な路線をモデル路線として2路線選定し、整備方針を策定していきます。
次に、歩車分離式信号の整備についてです。
警察では、歩行者の安全を確保するために必要な交差点には、歩車分離式信号機を設置することとしており、すでに区内の41箇所の交差点に、歩車分離式信号機が設置されています。区としては、今後も必要な交差点への設置を警察に対し要望していきます。
次に、歩道の拡幅計画についてです。
区道においては、直ちに歩道を拡幅すべき場所はないと考えていますが、今後、ご指摘のような、歩道の幅が狭く信号待ちで歩道に人があふれているような箇所があれば、歩道拡幅を含めた安全対策を講じます。
次に、信号機の表示についてです。
自転車は、道路交通法で軽車両に分類されているため、車両用信号機に従うことになりますが、例外として歩行者用信号機に「自転車・歩行者専用」の標識が設置されている信号機では、歩行者の信号機に従うことになります。いずれにしましても、自転車利用者にとってわかりづらい信号機もあると思いますので、区内の信号機の実態について、警察と協議してまいります。
次に、交通安全計画の作成についてのお尋ねです。
はじめに、住民参加で交通問題を議論するべきとのことについてです。
区は、現在、第九次新宿区交通安全計画の策定を進めています。
この計画を策定するにあたっては、パブリックコメントを実施し、区民の方からご意見を伺うことができました。引続き、町会連合会代表や高齢者クラブ連合会会長などが委員となっている新宿区交通安全協議会でもご意見を伺ったうえで、交通安全計画としていくこととしています。
また、交通安全総点検では、PTA、町会、警察や区が合同で交通安全施設等の点検を行って通学路などの交通安全対策に取組んでいます。
今後も、住民参加で交通問題を議論していきます。
次に、交通対策における総合的な対応についてのお尋ねです。
交通問題を議論し、対策を講じるためには、ご指摘のように、庁内の様々な組織が連携して取組むことが重要であると考えます。第九次交通安全計画の策定にあたっても、この考えに基づき、庁内の交通安全に係る組織からの意見を取りまとめて策定しています。
◆20番(近藤なつ子) 御答弁ありがとうございました。
これで一般質問終わります。
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