シェフズ・スペシャル



カレー伝道師特製オリジナル・レシピ集

第1回 バター・チキン



 バター・チキンは、現地ではムルグ・マッカーニーMurg Makhaniなどとも呼ばれる。もともとは香ばしく焼き上げたタンドーリ・チキンを一口大にカットし、トマトやたっぷりのバターあるいはギー仕立てのソースで煮込むパンジャブ地方の料理。基本的にたまねぎを使わないのがちょっと変わっている。
 ムンバイやデリーの一流レストランや高級ホテルのダイニングのみならず、日本のインド料理店でもよく見かけるメニューのひとつだが、たいていは生クリームやカシューナッツがきいて、ヘビーな印象のことが多い。
 このレシピはそうしたバター・チキンとは明らかに一線を画するもの。インドの首都デリーにある「カリム・ホテル」(ホテルといっても宿泊施設はない。ムグライ料理の名店として現地の食通にもファンの多いレストランだ。URLはこちら)風の味つけで、みなさんに本場の味を伝道しよう。
 タンドーリ・チキンを用意するのはご家庭では無理だから、ここでは下味をつけた生のムネ肉を使う。できあがりは、日本で食べられるものより色味が濃いめ。トマトの酸味をより強調した仕上がりで、切れと軽さのある風味となる。たまねぎなしでできるおいしいカレーの好例だ。

 
 

バター・チキン

材料(4皿分)

骨なし皮なしの鶏ムネ肉400グラム、にんにくのすりおろし 小さじ1、しょうがのすりおろし にんにくと同量、しょうがのみじん切り 大さじ1、ホールトマト400グラム程度のものを1缶、塩 適宜(小さじ1程度)、ギー(なければバターで代用可)大さじ6〜8、お湯 ホールトマトの半量程度、青唐辛子2本(なければししとう4本で代用)、 レモン汁 少々、生クリーム 大さじ3、香菜 少々(なければ省略)
《ホール・スパイス》
グリーン・カルダモン2粒、ビッグ・カルダモン1粒(なければ省略)、シナモン・スティック2センチ、クローブ1〜2個、ベイリーフ1〜2枚、カスリ・メティ 大さじ1(なければ省略)
《パウダー・スパイス》
鶏肉のマリネ用として:ターメリック 小さじ1/4、カイエン・ペパー 小さじ1、ガラム・マサラ 小さじ1
グレービー用として:パプリカ 小さじ1/2(本来はカシミリ・チリと呼ばれる、辛味が少なく色がたいへん鮮やかな赤唐辛子粉を使う。ふつうのカイエン・ペパーを使ってもいいが色味がよくない)、ガラム・マサラ 小さじ1

 

下準備

・皮をとった鶏ムネ肉を一口大にカットし、レモン汁とマリネ用のスパイスをふりかけたら、手で軽くもみ込むようにしてまぜる。そのまま冷蔵庫で1時間ほど放置しておこう。
・青唐辛子は縦半分にスライスするか、同じく縦にスリットを入れておく。ししとうを使うときは3〜5ミリ程度の輪切りかななめ薄切りにしておこう。
・香菜があれば、みじん切りに。

 

調理パート1 

グレービー (カレーソース)のベースをつくる
@厚手の鍋を火にかけ、大さじ3〜4のギーかバター(用意した分量の半分ということだ)を落としたら、カルダモン2種、クローブ、シナモン、ベイリーフを加えて熱する。火加減は中火。スパイスはこがさないように。
Aカルダモンやクローブが心持ちふくれてきたら、にんにくとしょうがのすりおろしを加えて、サッと全体をかきまぜる。こげつきとはねに気をつけよう。
Bにんにくやしょうがのいい香りがしたら、ホールトマトとその半量のお湯を加える。
Cトマトをつぶすようにしてかきまぜたら、ふたをしてしばらく煮込む。火加減は沸騰するまで強火、後は弱火で。
D15分ほど煮込んだら、網やこし器を用意して鍋の中身をいったんこす。トロリとしてきれいな色のソースのできあがりだ。


 

調理パート2 

鶏肉をサッと煮込んで完成へ
@ふたたび厚手の鍋を火にかけたら、残りのギーかバターを入れ、みじん切りにしたしょうがとカスリ・メティのそれぞれ半量ずつを加える。火は弱めの中火。こがさないようにかきまぜよう。
Aいい香りがしてきたら、先につくったグレービーを鍋に入れて沸騰させる。
B沸騰したらパプリカと塩を加え、かきまぜながら1分ほど煮る。
Cマリネしておいたチキンを加え、ふたをしてさらにしばらく煮る。火加減は沸騰を維持できるくらいの弱めの中火。
D10分ほどして鶏肉に十分火が通ったら、カスリ・メティとしょうがの残り、ガラム・マサラ、青唐辛子かししとうを加え、さらに2〜3分煮る。
E火を止める直前、生クリームをまわし入れ、香菜をふりかければできあがり


 
おいしくするコツ

・この料理にはカスリ・メティが威力を発揮するので、ぜひ使いたい。手のひらでもみ込むようにして砕いてから入れると、いっそう香りが際立つ。
・風味と色は最後に加える生クリームの量にかなり左右される。私はあまり入れすぎずトマトの酸味を出すのが好きだ。それが上記の分量である。
・白いごはんにはあまりマッチしないインドカレーの典型だ。やはりナンやチャパティといったインドのパン、あるいはバケットやカンパーニュといった西洋式のパンもよく合う。バターライスやピラフっぽいごはんでもおいしい。


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