岩手県の私鉄保存車両
岩手県の鉄道車両の保存車というのは、残念ながら貧困と言わざるを得ません。そもそも岩手県内の私鉄自体が、松尾鉱業(1969年廃線)、花巻電鉄(1972年までに廃線)、岩手開発鉄道(第三セクター、1992年旅客営業廃止)及び三陸鉄道(第三セクター)しかなく、このうち松尾鉱業と岩手開発鉄道は専用線的性格が強く、一般的な旅客鉄道とは性格を異にします。
ここでは、そんな岩手県内の保存鉄道車両と、関連物件を紹介します。
保存車
撮影:長谷川竜様(松尾歴史民俗資料館 2013.6.1)
松尾鉱業 ED25形1号
花輪線の大更駅と松尾鉱山の入口屋敷台とを結んでいた鉱山鉄道の電気機関車。東芝製の凸形25t電気機関車で、1951年に2両が作られ、主に構内入替用に使用されていました。
1969年に松尾鉱山の閉山とともに廃線となり、所属車両もそのまま廃車となりました。この機関車は、盛岡市内の個人商店で保管されていたものを、1993年に当時の松尾村が譲り受け、保存に至りました。
保存車(近代化産業遺産)
撮影:長谷川竜様(材木町公園 2015.10.4)
花巻電鉄 デハ1形3号
花巻と西鉛温泉を結んでいた花巻電鉄鉛線(軌道線)は1969年に廃止となりましたが、ここで使われていた電車が1両だけ、花巻駅近くの公園で保存されています。花巻電鉄には花巻温泉に向かう鉄道線もありましたが、両路線ともに軌道幅は762mmです。
保存車は1931年製の半鋼製車で、最大幅1,600mmと狭く、「馬面電車」などと呼ばれた車両です。
2008年に経済産業省の近代化産業遺産に指定されました。
花巻駅跡地
撮影:長谷川竜様
西花巻駅跡地
撮影:長谷川竜様
西公園駅跡地
撮影:長谷川竜様
2009年に花西地区まちづくり協議会により、花巻電鉄の駅跡地に看板が立てられました。それぞれ当時の貴重な写真と、各駅の丁寧な説明が書かれており、電車があった歴史を風化させないよう、今に伝えています。とりあえず上記3駅のみ確認できたとのことで、ほかにも立てられているかも知れません。
西花巻駅は、花巻駅(国鉄花巻駅の西口)と中央花巻駅(国鉄花巻駅東口)との分岐点にあった駅ですが、1965年の中央花巻駅廃止後、スイッチバック解消のため1966年に駅を移転しています。この跡地看板は、移転前の場所にあります。移転後の駅は現在の税務署付近にあったそうです。
岩手軽便鉄道 花巻駅跡
撮影:長谷川竜様(花巻市 2015.10.4)
岩手軽便鉄道 花巻駅跡
撮影:長谷川竜様(花巻市 2015.10.4)
岩手県で過去に存在した私鉄の一つに岩手軽便鉄道があります。花巻から遠野を経て釜石(仙人峠)に至る現在のJR釜石線の前身にあたる軽便鉄道で、1913(大正2)年に花巻側から開通、1936(昭和11)年に政府に買収されました。
この過去の鉄道が、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」や「シグナルとシグナレス」のモデルになったということから、宮沢賢治による地域振興の一つのテーマとして活用されています。花巻駅東口には、岩手軽便鉄道の花巻駅跡を示す石碑とモニュメントが立てられています。