ボンネットバス(トヨタ・日産・日野・三菱)
撮影:シンコー様(福山自動車時計博物館 2007.12)
福山自動車時計博物館に並んだ4台のボンネットバス。シャーシメーカーによってボンネットのグリル形状やライト配置が異なるほか、ボディメーカーによってスタイルは全く異なります。ボンネットバスの並びというだけでなく、珍しいボディメーカーの車両という意味でも貴重なショットです。左から渡辺車体、西日本車体、東浦自工、呉羽自工です。
ここでは、いすゞ以外のボンネットバスの保存車をご紹介します。
トヨタ自動車
保存車
撮影:トヨタ博物館(2005.7.9)
トヨタ博物館 トヨタFB80(1963年式)
富士重工製ボディを持つトヨタ製ガソリンエンジン車。
トヨタのボンネットスタイルは、1957年から丸みのある独特のフロントグリルになりました。ガソリンエンジン車は、1965年までディーゼル車と平行して生産されました。
カタログカラーに復元され、屋外展示されており、構内走行も可能。
久重号
撮影:小野澤正彦様(アクトランド 2015.5.15)
技研製作所 トヨタDB90(1964年式)
撮影:小野澤正彦様(アクトランド 2015.5.15)
トヨタシャーシに松本車体という組み合わせのボンネットバス。非常口が後部ではなく側面にあるため。後面スタイルが変わっています。
元九州産業交通であることは容易に想像がつくのですが、説明板によるとその前は北海道にいたとのこと。最終的には、幾多の波乱を経て、1998年に技研製作所の手で修復を終え、車検を取りました。
久重号の名前は、現役時代の阿蘇の九重に「久」の字を当てた造語のようです。
アクトランドには展示されず、この時点ではPR用に使われているとのことです。
動態保存車
撮影:小野澤正彦様(高梁市 2012.11.24)
高梁市 トヨタDB100(1967年式)
撮影:小野澤正彦様(高梁市 2012.11.24)
トヨタシャーシに呉羽ボディというボンネットバス。呉羽ボディのボンネットバスというのは現時点では唯一で、正面窓やリアスタイルもこの車両がなければ実物は拝めません。
愛知県の知多バスで定期観光に使用されていたことで知られ、その際にリクライニングシートに改装されています。シンコー様によると元々は富山県の温泉旅館の送迎用とのこと。なるほど呉羽ボディの理由が分かります。
2011年から岡山県高梁市で吹屋の観光巡回バスとして使用されています。備北バスに運行委託され、同社のカラーに塗り替えられました。
日産自動車
四万夢太号
撮影:ぽんたか様(アクトランド 2016.3.5)
技研製作所 日産U592(1959年式)
元高知県交通のボンネットバスで、四万十川沿いで廃車体となっていたものを技研製作所がレストアし、1996年に再登録したもの。発見場所と、アイヌ語の「大きい」の意味をかけて、「四万夢太(しまむた)号」と名付けられたそうです。
正面で左右に分かれた独特のグリル形状と、新日国ボディはいずれも現存車としては珍しく、あまりお目にかかれないスタイルです。
イベントなどで使用されているようです。
動態保存車
撮影:旅男K様(福山自動車時計博物館 2005.5.22)
福山自動車時計博物館 日産U690(1963年式)
日産自動車の最終期のボンネットバス。このモデルから縦目4灯になりました。型式のUは、日産ディーゼルから供給を受けた2サイクルUDエンジンを示します。
車体は渡辺自動車工業という福岡のローカルメーカーだそうです。
元は地元のニコニコバス(後に中国バスに合併)の車両で、復元に当たって当時のカラーを再現しました。
保存車
撮影:置戸町(2012.6.24)
日産U690
廃車体をレストアしたもので、元は自家用。現役時代のピンストライプ塗装をそのまま復元しています。
日産の縦目スタイルは1963〜66年のスタイルです。ボディは新日国工業が日産車体工機に名称を変えてからのもので、現存する数少ないスタイルです。
置戸町のイベントに出展中の姿。その後、所有者が変わったようです。
動態保存車
撮影:小野澤正彦様(佐原市 2008.11.15)
自家用 日産U690(1964年式)
元備北バスのボンネットバス。中ドア後ろに側面方向幕の跡があります。富士重工製ボディで縦目の日産ボンネットバスは、動態保存車では唯一の存在です。
備北バスカラーのまま個人所有となっており、写真は「佐原町並み号」として一般運行されているときの姿。
大見号
撮影:アクトランド(2022.8.6)
技研製作所 日産U690(1965年式)
元高知県交通のボンネットバスで、西日本車体製のボディで残る数少ない車両。説明板によると、廃車になった後、店舗や倉庫として利用されていましたが、1989年に技研製作所が引き取り、復元を開始。1995年に車検を取得したとのこと。
廃車体が発見された大野見村にちなんだ愛称となりました。
ボンネットバス博物館の展示車両3台のうちの1台。
日野自動車
動態保存車
撮影:小野澤正彦様(福山市 2010.7.26)
福山自動車時計博物館 日野BA14(1958年式)
元土佐電気鉄道のボンネットバスの廃車体をレストアしたもので、珍しい東浦自動車工業製のボディを持つ車両。連続窓風の正面窓が特徴です。
2006年にレストアが完成した後、コンサートPR用にブリキのおもちゃのようなカラーリングに改められました。
なお、日野BAは、主力のBHよりショートサイズのボンネットバスです。
動態保存車
撮影:小野澤正彦様(福山市 2010.7.26)
福山自動車時計博物館 日野BH15(1961年式)
元羽後交通のボンネットバス。帝国自工製で、正面窓は連続窓なので、年式よりも新しく見えます。このスタイルは帝国自工の箱型ボディのモデルチェンジに合わせたもので、当時としては斬新に見えたものと思います。
2010年にレストアが完成し、そのお披露目の際の写真です。方向幕に「羽後交通」とありますが、カラーデザインは別個のものです。
弁慶号
撮影:海さん様(信州バスまつり会場 2012.9.9)
元岩手県交通 日野BH15(1964年式)
岩手県交通が「弁慶号」として使用してきたボンネットバス。一時期は「現存唯一の日野ボンネットバス」「現役最古のボンネットバス」だったこともあります。
「弁慶号」として2度の復活を遂げてきたボンネットバスですが、2007年3月にとうとうナンバーを外されました。その後、2010年にNPOバス保存会に譲渡され、イベントなどに使用されています。
保存車
撮影:日野オートプラザ(2005.3.26)
元上毛電気鉄道 日野BH15(1966年式)
珍しい前後ドア仕様のボンネットバス。
上毛電鉄が一旦廃車した後、1988〜93年の間、復活運転していたことで知られます。これを日野自動車が引き取り、2002年の東京モーターショーを機にかつてのカタログカラーにリメイクされ、現在は屋内保存されています。
ボディは帝国製なので連続窓の近代的なスタイルですが、日野のボンネット形状は伝統的なスタイルを最後まで残していました。
三菱自動車
おけとバス
撮影:置戸町(2012.6.24)
元札幌市交通局 三菱B25(1950年式)
撮影:ぽんたか様(置戸町 2017.6.27)
現在、動態保存車、静態保存車含めて、唯一と言える三菱のボンネットバス。三菱のボンネットバスは大型で、それゆえ早くに生産を終了しており、貴重な存在です。この車両はその中でも初期の車両で、フロントのフェンダの形状が独特です。
ボディは、新三菱にも似ていますが横浜造船車輌製であるとのこと。非常口は側面にありますが、年式からいうと製造時には非常口はなかったことから、後の増設と思われます。
長らく廃車体として置かれていたものを、旧車保存会の方がレストアしたとのこと。元札幌市交通局の車両なので、同局のカラーに塗られています。現在の地元である置戸町のイベントに顔を出します。写真も、イベントで展示されている姿。
(注1)
過去の保存車
動態保存車
撮影:シンコー様(福山自動車時計博物館 2007.1.25)
元千曲バス 日産G590改(1958年式)
日産自動車の初期のボンネットバスで、富士重工製ボディ。方向幕の大きさやその両脇の明かり窓が時代を物語ります。
元の所有者である千曲バスのカラーに復元されましたが、撮影会社へ譲渡されたとのことです。
(注2)
ボンネットバス
撮影:ぽんたか様(加賀市 2015.5.5)
自家用 日産UG690(1965年式)
西日本車体製の独特のボディスタイルを持つボンネットバス。鞆シーサイドホテルなどで使用され、福山自動車時計博物館でレストアの後、2008年に石川県の温泉施設の送迎用に譲渡されて来ました。
2009年から休車状態になっており、ホテルの玄関で記念撮影用になってしまいました。
(2018年に売却されました)