古バス民族学
マクドナルドのパーティーバス
かつて、全国のマクドナルドの店先に置かれていた「ロンドンバスのようなもの」を記憶している方もおられると思います。マクドナルドの店舗で、予約制でのパーティをしたり、多客時間帯のイートインスペースとしていたり、色々な使い方はあったようですが、いつの間にか姿を消してゆきました。本物のロンドンバスだと思っていた人も多いというこのバス。実は、バスボディメーカーの北村製作所が製造した動かないバス=建物だったのです。
私自身は、ついでにちょっと撮っただけで、体系的な記録もしていませんが、貴重な遺産の記録を少しでも残しておくことにします。
ドナルドバス
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撮影:新潟市(2012.8.25)
BIGMAC-002
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撮影:新潟市(2012.8.25)
北村製作所の本拠地である新潟市内のマクドナルドにも、パーティーバスはありました。フロントに何気なく北村製作所の楕円形のプレートもついています。「LONDON BIGMAC-002」と番号が入っており、遊び心を感じます。(注1)
ヘッドライトは、いすゞのBUなどに使われていたものを縦位置に配置したもの。フロントバンパーは、小型バスのいすゞジャーニーQ(いすゞMR)と共通パーツです。
よく見るとボディの鋼体も、前後とも北村製作所のボディの最終形態と共通した形状なので、バス製造の技術を最大限生かして作られたことが分かります。リア面上部に細い窓があるように見えますが、黒塗りのダミーのようです。
(2018年6月に撤去)
ドナルドバス
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撮影:足立区(2007.12.1)
BIGMAC-005
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撮影:足立区(2007.12.1)
東京の環七大谷田店に置かれていたパーティーバス。
側窓はメトロ窓ですが、固定窓と開閉窓を交互に並べるなど、本物のロンドンバスを意識しています。出入口も後部にあるなど、本物に近い配置です。
後ろ面には、エアコンの室外機でしょうか、突起と丸い穴が見えます。かつてのリアエンジンバスには、リアにエンジン通気孔がありましたので、これもバスの標準パーツに見えてしまいます。
外装の文字やイラストは、店によるのか時代によるのか、様々なバリエーションがあるようです。
ナンバープレートには「LONDON BIGMAC-005」と番号が入っています。
(ストリートビューによると、2009年9月時点で撤去済み)
ドナルドバス
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撮影:船橋市(2007.12.1)
BIGMAC-014
千葉県のマクドナルド南船橋店に置かれていたパーティーバス。
バスの置場と店との位置関係から、ドアの設置場所には2パターンがありますが、これは左側面に設置されています。ロンドンバスとしてはこれが正位置です
他の物件もそうですが、ダミーの運転席のハンドル位置が、ドアと同じ側にあります。通常のバスなら、ドア位置とハンドル位置は逆側になるわけですが、ドナルドバスはそうでないところが個性かも知れません。
ナンバープレートには「LONDON BIGMAC-014」と番号が入っています。
(2016年4月に閉店により撤去)
ドナルドバス
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
BIGMAC-015
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
京都府の27号舞鶴店に残るドナルドバス。このバス、パーティーバス、マックバス、ドナルドバスなど、様々な通称がありますが、このボディには「ドナルドバス」の名前が大書きされていますので、これが公式名称の一つだと考えることができます。
この時点で、恐らく生き残っている唯一のドナルドバスではないかと思われるこの物件、バスの脇では寛いだ感じのドナルドがベンチに腰かけています。
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
店に背を向けて置かれていますが、ドアは左側にあります。通常のバスなら折り戸になる扉も、建物としての取り扱いやすさから、開き戸になっています。
この店でもドナルドバスの現在の使い方は、店内が混雑する際の増席の役割のようで、土日の日中にのみ室内を開放すると書かれていました。
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
ドナルドバスの2階です。片側にロングシートが並び、テーブルとイスで何人連れのグループにも対応できるようになっています。
天井の中央の室内灯は観光バス用でしょうか。側窓のうち、開閉可能な窓は、観光バス用のメトロ窓と同一パーツに見えます。
後ろを振り返ると、1階に降りる階段があります。側面が上部に向かうにつれてすぼまっている形態も、バスを製造していたメーカーならではのリアル感です。
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
こちらは1階です。4人掛けと2人掛けのテーブル席になっています。
前方にはダミーの運転席があり、子供たちが奪い合いながら遊ぶ人気スポットになっています。これを見れば、誰もが本物のバスだと思うでしょう。
後ろを振り返ると、水道があり、手を洗って清潔に飲食できるような構造になっていることが分かります。
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
運転席には椅子もあり、アクセルペダルも用意されています。
ハンドルは、いすゞのマークこそ外されていますが、He526様によると、いすゞの中型トラック・フォワードの中期型(1980〜84年)のものだとのこと。また、メーターパネルは、ブラック様によると、いすゞの大型トラック810のもの。いすゞ車とのかかわりが多かった北村製作所ならではのパーツ調達に思えます。
タイヤを見てみると、トヨタマークUのエンブレムがついたホイールキャップ。動かないバスなので、大きなバスタイヤを使う必要はなく、それでもリアル感を出すために、乗用車の部品を再利用(多分)したものと思われます。
どこまでも本物志向なのには頭が下がります。
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
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撮影:舞鶴市(2019.11.30)
室内を眺めていると、コンセントの上に北村製作所のプレートがありました。住所のほかに、企画サービス部という部署名が書いてあります。アフターサービスを担当する部署でしょうか。
また、スピーカーはクラリオン製でした。音響関係にもバスの純正部品を使用する徹底ぶりです。
本物のロンドンバス
パーティバス
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撮影:栗原大輔様(青梅市 2010.5.23)
AECルートマスターRM
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撮影:栗原大輔様(青梅市 2010.5.23)
マクドナルドのパーティバスの中で、唯一の本物のロンドンバスを使用しているのが、青梅街道新町店のバスです。
これは、廃車体は生きている>ロンドンバス2との重複掲載になりますが、登録番号WLT632のAECルートマスターRMです。
(のむ様によると、2024年12月に現地解体)