現代農業 

  2006/5月号

月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん

こんなこと思いついた
青木恒男さん

ブロッコリー カリフラワー
目からウロコの2本植えでラクラク40%増収

青木恒男

 10年ほど前まで先代がブロッコリーを作付けていたのですが、当時は1.5mウネに2条植えでした。その時感じた問題点は、条間の中耕除草・培土作業に機械が使えずに重労働だったことと、葉が通路に繁茂し、収穫作業の邪魔になったことでした。

 同時に、ブロッコリーやカリフラワーはふつう頂花蕾を収穫して終わりますが、その後も適度に追肥しておけば、結構大きな側枝が収穫できます。その姿を見ながら、いろいろと考えて辿り着いたのが2本植えです。やり方は図の通りです。

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ブロッコリー、カリフラワーの植え方
10a当たり6000本。収量が上がる!施肥量も減った!
定植直前のブロッコリー苗
128穴の根巻防止トレイ(セルトレイ)に2粒まきした定植直前のブロッコリー苗。通常は秋作だが、今年は春どりにも挑戦。3月中旬定植で、収穫は5月中旬予定

 「2本植え」のメリットとしては、まず、単位面積当たりの収量が上がります。従来の1ウネ2条植えでは4000本(10a当たり)ほどですが、2本植えでは6000本です。

2本
トレイから引き抜いてみると…たしかに2本。ブロッコリーやカリフラワーの場合は、2本の苗が競合しながらしっかり育っていく

 また、この植え方だと条間がないので、中耕除草や土寄せなどの手作業が減り、管理がしやすくなりました。

 生育中は、2本の苗が競合しながら生育するためか、肥料の利用効率がよく、施肥量も少なくなりました。畑は水田裏作なので、あとのイネのことを考えると残効を極力減らしたいのですが、その点も好都合です。

 そして、育苗トレイやスペース、管理の手間など、育苗コストも半減しました。

(三重県松阪市久保町)






 2005/10月号

月刊 現代農業
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トマト
水稲育苗後のハウスでの不耕起栽培。ほとんどかん水していないが、梅雨明け後の真夏の暑さでも葉が萎れるようなこともなく、秋まで元気に収穫が続いた
不耕起で変わった

泥沼→ガチガチ畑が耕さないことで変わった

不耕起にする場合、半不耕起がいい場合
──ウネ立てから施肥まで大公開

青木恒男

野山に育つ植物を見て

 堆肥を充分に投入して丹念に耕され、草一本生えていない畑を見るのは気持ちのよいものです。しかし、人為的にフカフカに耕した土に植えられた作物は、本当に気分よく過ごしているのでしょうか?

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 よく考えてみれば、身のまわりの野や山には深く耕された場所などありませんが、砂漠や災害跡地ででもない限り、石垣や岩の割れ目から、道路の舗装を突き破って……ほとんどどんなところにも植物は生えています。もともと植物は、そのような厳しい環境に適応して生きてきたものなのだと思います。

 わが家の裏山には、今は人が通らなくなった古い道路があります。人通りが絶えてしばらくすると、疎らに弱々しい草が生えはじめ、枯れてはまた生える世代交代の繰り返しで30年ほど経た今、その場所は背丈を越す藪に覆われ、地面は畑よりもフカフカの肥沃な土になっています。本来土壌というものは、様々な生物を生産しつつ、それらの生命活動によって自ら耕され、降り積もり、痩せることなく自然に肥沃になってゆく力を持っているのではないでしょうか。

水との上手な付き合い方

著者
筆者

 私は現在、田畑やハウスのほとんどの作物を不耕起または必要最低限、浅く耕すだけの半不耕起で栽培しています。というのも、私のハウスはいろいろな事情から、昔遊水地だった粘土質の半湿田に建っており、砂地や畑を選んで建てたハウスとは違った「水との上手な付き合い方」が必要だからなのです。

▼よく耕した土は水を含むとダンゴになる

 この場所で営農を開始したころには、人から言われるままに毎作ごとに堆肥を投入し、できるだけ深起こしを心掛け、フカフカのベッドに定植できるよう努力していました。でも、年に1〜2回はハウス内まで冠水するような環境です。フカフカのウネが一夜にして代かきをしたような泥沼に変わり、何日か後にはレンガを敷き詰めたようにガチガチの土に返ってしまったことが何度もありました。

 それでなくともよく耕起した土は、水を含むと扱いにくくなります。歩いただけで長靴に泥がついて大きなダンゴになってしまったり、かん水ホースが重くなって引っ張れなかったり……そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。

▼耕さない畑はメドを打たなくなる

 しかし、これらの土や水にまつわる問題は、耕さないことで多くが解決できます。

 不耕起栽培を続けると、まず、ウネ内部の水分分布が安定してきて、地表面近くまで均一にしっとりと湿り気を帯びるようになります。そして、かん水を繰り返しても地表面がメドを打たなくなり(クラスト化しなくなり、水が土にしみこんでいく)、排水性がよくなってきます。土壌がほどよく締まるとともに、団粒構造と毛細管が発達してくるということでしょうか。

 また、通路が冠水した時などにも、濁り水が出たりぬかるんだりすることがなくなるのです。

青木恒男さんの不耕起・半不耕起のやり方

A

夏作→冬作へ平地にウネを立てる場合
(例:春〜夏 水稲苗、果菜類⇒冬 ストックなど)

土の表面が硬くない場合は、トラクタで走り回るなどして適度に土を締めた後、通路になる部分のみ管理機で砕土耕耘

必要な資材・肥料などがあれば(白っぽく写っているのは有機石灰)ウネの中央部にのみ散布した後、培土機を付けた管理機で谷上げ。このとき雑草や残渣もウネ中央に集めて乾かしておく

ネギの土入れ機などで谷上げした土を内盛りし、トンボでウネ上面を平らに仕上げた後、たっぷりかん水して土を落ち着かせてから播種・定植

B

夏作→冬作へ前作物やウネがある場合
(例:夏 果菜類⇒冬 ストックなど)

残渣や雑草は、草刈り機で刈って谷に落とし、乾燥させておく

必要な資材・肥料は谷に散布し、Aの場合とは逆にウネ上面だけを管理機でごく浅く耕したあと、谷を埋めて整地してから播種・定植

C

冬作→夏作へウネをそのまま利用する場合
(例:冬 ストックなど⇒夏 果菜類)
前作の残りや茂った冬草はその場に刈り倒して3〜4日乾燥させ、草マルチに。ウネにたっぷりかん水したら、シャベルで穴を開け、すぐに定植。不耕起のまま次作へ。雑草の量が少なく地表がむき出しの場合には、堆肥の表面施用や敷きワラで乾燥防止

D

冬作→夏作へ水稲の育苗ハウスとして利用する場合
(例:冬ストックなど⇒ 春 水稲苗⇒夏 果菜類)

冬作の残渣を谷に落とし、ウネ上面をごく浅く耕起してウネの土を通路へ

ハウス内全面を平らに整地し、水稲の平置き発芽のためのスペースとして、春の1カ月間使用

平ウネにシャベルで穴を開け、夏作のトマトなどを定植

密植する作物は半不耕起で定植をラクに

 では、私が行なっている栽培法を、ハウス中心に紹介したいと思います(上図参照)。私のハウス利用のサイクルは、冬の切り花ストックと、春夏のシシトウ・スイートコーン・ナスなどの半促成・雨よけ栽培の組み合わせが基本となり、一部に水稲の育苗が加わります。 

 夏作から冬作(ストック)に切り替え時のおもな作業パターンに、平地(水稲育苗の跡地や夏にスイカ・カボチャなどを作った圃場)にウネを立てる場合(図A)と、前作物やウネがある場合(図B)があります。ストックや葉物野菜など密植する作物は、まったくの不耕起では定植の穴掘りが大変なので、このA・Bのような半不耕起の方法なのです。

パターンCの畑
パターンCの畑。ウネは不耕起のまま次作を植えるので、採花中のストックと冬草、次作のシシトウが同居することもある
パターンD
パターンD。水稲育苗の作業場として使用したハウスの、運動場のように硬く締まった場所にトマトを定植。手作業は無理なので、シャベルでポットと同じ形の穴を掘り、苗を穴に差し込んでかん水しておいた
定植後15日目
定植後15日目。敷きワラ代わりと追肥を兼ねて、全面に牛糞堆肥マルチして乾燥防止。地温の上昇を防ぐ

 ウネは不耕起層をなるべく損なわないよう注意しながら、最終的にウネ表面の耕起層が5〜10cmの深さになるように仕上げます。元肥はゼロ、追肥は尿素・硝酸カリを水に溶いて液肥をつくり、手かん水で与えます(詳しい施肥の仕方は206ページ参照)。

 なお、A・Bパターンともに、ウネづくりの作業を定植10日以上前に終わらせ、十分なかん水をしておくと、一週間後には雑草が生え揃います。この雑草を除草剤で枯らすか、三角ガマで削り落としてすぐに播種・定植すれば、その後冬の間の雑草はほとんど生えません。冬作物は極端に密植するので、邪魔になる草マルチはできないし、作物定植後の除草もほとんど不可能なので、定植までの間に生えきらせて完全に除草しておくのです。

密植しない果菜類は完全不耕起で

▼ウネを踏み固めてさらに水はけをよく

 図C、Dは冬作から夏作への切り替え時のおもな作業パターンです。夏作は基本的に植栽本数の少ない果菜類が主力で、定植に手間がかからないので、完全不耕起でスタートします。

 やり方は図のとおりですが、Cの場合は夏に向けてウネを固めるため、作業時には通路を避けてウネの上を歩き回るようにします。踏み固めたウネのほうが地下水が地表面まで上がってきやすくなり、水分が安定して、夏場、頻繁に水やりしなくてよくなるからです。いっぽう、歩かない通路は排水用の溝として使います。

▼元肥ゼロ、追肥は液肥を手かん水で

 施肥は冬作と同様、元肥ゼロスタート。追肥は尿素・硫酸カリを水で溶いて液肥をつくり、手かん水で与えます。作の切り替えに伴う作業がとくにないので、前作物の収穫が終了しだい、徐々に後作に切り替えることができ、省力的で効率的です。

▼雑草マルチで地温低下、乾燥防止

 雑草は、株回りに生えてきたものだけを手取り除草し、残りは邪魔になると草刈り機で刈り倒してマルチの追加にします。多少の雑草は、ウネ上面の地温を下げ、乾燥防止に役立つので放置してOKです。

露地畑も、もちろん不耕起

 5年間ほど耕作を放棄していた畑を、ウメ・カキ・ミカン等の家庭用果樹園にしました。まだ樹が小さく空間が大きく空いていて、草だけを生やしておくのはもったいないので、カボチャとスイカも植えました。不耕起のスイカは、耕した畑のスイカが枯れてしまった後も元気に成り続けました。この後、ツルや葉は果樹のためのマルチとなり、土に還っていきます。

 私のところのような重粘土地帯では、ダイコンやゴボウなどの根菜類・イモ類のように地中で作られる野菜だけは不耕起に向きませんが、その他の野菜はほとんどが不耕起を嫌わないと思います。皆さんの土地ではどうでしょう? 皆さんも自分の畑と自分のやり方に合わせた「不耕起栽培」に挑戦してみてください。

(三重県松阪市)

*私のイネ・花・野菜の作付け記録は、わが家のホームページで紹介しています。この記事の詳細や質問などについてもお答えできると思いますのでぜひお越しください。




 検証のページ

 2005及び2006年度の 現代農業 誌に掲載された私の記事について
 今年1年間、実際の圃場で検証してみようと思います。

 
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 2005/7月号  への字稲作    元肥ゼロ・坪40株植えのコシヒカリ

 2005/10月号 不耕起栽培    上記記事

 2006/5月号  ブロッコリー1条2本植え  上記記事