projectz






「プロジェクトZ」
 戦後、日本の発展に大きく関わった人々の努力と成功の話には、感動的でタメになるものが多いです。しかし、失敗例のなかにも、タメになるものが多いでしょう。

 ここは、有名百貨店、8階の食堂街、創立50周年を迎えるにあたって、3代目の経営者は考えた。
「これまでとは違う新しいサービスをお客様に提供しなくては・・・・・。そうだ、ウマイモノを作れ! ウマイモノを作るんだ!!」
 経営者は全食堂の職人を集め、方針を語った。
「全食堂は、これまで作ってきた料理数を半分にする。店舗の面積も半分とする。そして新たに全職人でウマイモノ屋を開店する。」
 寿司職人が質問した。
「うちは今でも充分に儲かっています。なぜこれまでの儲けを半分に減らすのですか?」
「究極のウマイモノが出来れば、これまで以上に儲かるはずだ!」
 中華料理の職人が質問した。
「ウマイモノとは何なのですか?」
「生きる喜びだ!」
「具体的に教えてください。」
「それは君たちが考えることだよ。研修したまえ。ウマイモノ屋の開店までは半年だ!」
 職人達は呆然とした。
 数日後、イタリア料理店の職人が経営者に提案した。
「うちとしては、これまでにないピザ定食をウマイモノとして作ろうと思います。」
「ふざけるな! これは単なるピザだ! このようなもので新しい味だとは思うな!」
 天ぷら屋とうなぎ屋の職人が提案した。
「うなぎの蒲焼きにころもをつけて揚げただけではないか!」
 経営者は激怒した。彼は裕福な家庭で育ったために舌がこえていた。
 職人達は話し合った。
「究極のウマイモノとは何だろう?」
 一人の職人が提案した。
「宇宙食はどうだろう?」
 早速、NASAより取り寄せた。単なるフリーズドライだった。・・・とてもまずかった。
 職人達は、連日ウマイモノの開発をおこなった。しかし、経営者はそのすべてを否定した。職人達は、自分の得意な料理を作ることが出来ずに困り果てた。開店の日が迫ってきた。しかし、ウマイモノは開発されなかった。 さすがの経営者もあせり始めた。
「そうだ! 定食は否定したが、弁当なら許可しよう!」
 経営者は職人達を集め、弁当の開発を命令した。職人達はやる気を無くしていた。そしてウマイモノ屋は開店した。

 しかし、客は集まらなかった。理由は明確だった。これまでに人気のあったメニューがなくなり、中途半端なメニューばかりになったからだった。さらに、他の階からも客は減った。
 こうして、50年続いた有名百貨店から人の姿は消えた。
 経営は破綻した・・・。

    エンディング・テーマ 中島みゆき 「うらみます」 
by 古原

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