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「ゴジラ 対 高倉健」
 ひとり船に乗り、太平洋に向かう男、高倉健! その手には鯨漁で使われたモリが握られている。大海原で生きることは厳しい。照りつける太陽、突如の嵐、そのすべてと戦うのだ。
 航海が始まり一ヶ月後、前方に巨大な白い影が現れる。ゴジラだ。健は近づき、モリを突き刺した。暴れる巨大な体、健は海に振り落とされる。何とか漁船に這い上がる。ゴジラはモリが刺さった状態で海に消えていく。
 さらに一ヶ月後、食料も水も尽きていた。それでも雨水を飲み、魚を捕まえて、飢えをしのぐ。何が健をここまでさせるのか。健は、家族と共に過ごした暖かい生活を思い出していた。
 そのとき、ゴジラが現れた。これが最後の戦いだ。しかしモリは無い。ナイフを手にしてゴジラに飛び乗る健。振り落とされまいと、ナイフをゴジラに突き刺す。ゴジラは、巨大な叫び声とともに口から放射能を吐き出す。
 巨大な体が海中に沈むと、健も突き刺したナイフにしがみつき海中に沈む。水中での格闘が続く。ゴジラは放射能を吐き続ける。健は巨大な尻尾に弾き飛ばされる。海面に浮上する健。ゴジラの姿が見えない。次の瞬間、ゴジラが健に向かって襲いかかってくる。健にはもう武器になるものがない。このままやられてしまうのか。モリだ! モリがゴジラに刺さっている。健は以前に突き刺したままのモリにつかまり、それを引き抜く。最後の力をふりしぼり、突き刺す。海面はゴジラの血で赤く染まる。その血に導かれサメがやって来た。無数のサメがゴジラの体を食いちぎっていく。健は力の限りモリを突き刺す。ついにゴジラは絶命した。
 ゴジラの腹は海面に向いていた。健がモリでゴジラの腹を切り裂く。すると中からゴジラの体液に包まれた前田愛が出てきた。体液をぬぐい去る。
「おい! しっかりしろ! しっかりしろ!」
「お・・・お父さん・・・」
 そうなのだ。この戦いは、自分の娘、前田愛を取り戻すための戦いだったのだ。

 戦いは終わった。漁船に横たわる父と眠り続ける娘。放射能をあびた健は、もうろうとした意識の中で願った。「・・・この娘だけでも生きてほしい・・・」 大海原の向こうに陸が見える。「・・・もうすぐだ・・・やっと日本に着いた・・・」 橋が見える。「・・・あっ、あれは金門橋・・・」 たどり着いた場所は、太平洋をこえてアメリカであった。「・・・よかった・・・」 高倉健は深い眠りにつく。  

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