goodthing2






続・良いこと
GOOD THING 2
古原麻衣子 作





 私はとても良いことを思いつきました。 

 それは永遠の生命を手にいれる方法です。でも、そのためには広い心、愛ある心が必要です。皆さんは生まれ変わりを信じますか? そのことについて説明していきます。  

 まず前世はあるのでしょうか? 自分は過去に存在した誰かの生まれ変わりであると感じますか?よく霊能者が「あなたの前世は00です。」などと歴史上の有名人の名を挙げることがありますが、これは全くのインチキでしょう。単なる金儲け目当てです。

 しかし、皆さん! 自分の身体について良く考えてください。身体は、親が与えてくれたものと考えるのは当然ですが、父は精子を、母は卵子を、合わせて数グラムを与えただけです。残りの数十キログラムは何処から来たのでしょうか? 当然、他の動物や植物を食べたことによる、栄養の蓄積なのです。自分の身体は、自分のものであっても、自分で作り出したものではないのです。

 自然界の生物は死を迎えると、その体は他の生物に食われたり、腐って土になったりします。植物は、土から栄養をとって成長し、その実は何物かに食われてゆく。地球の歴史数億年をたどってゆくと、栄養の源は、いろいろな生物の死骸から成り立っています。 その中には、過去の人間の死骸も、含まれるはずです。つまり、人間の身体は過去のあらゆる生物の死体で出来ているのです。

 ですから、前世はあるのです。過去一人の人間が、現在一人の人間に、生まれ変わっているのではありません。過去の複数の生物が現在の一人の人間に、生まれ変わっているのです。このことを勘違いしてはいけません。

 次に来世はどうでしょう。自分が死んだら別の人間として生まれ変わることはあるのでしょうか? 宗教屋は、現在のおこないを良くすれば、来世も良くなるなどと言いますが、これも金儲け、騙しのテクニックでしょう。

 科学的に考えて、来世は絶対にあります。エネルギー保存の法則というのを知っていますか?無から有は生じない。有は、無にならないというものです。人間がたとえ死んでも数十キログラム分のタンパク質やカルシウムなどは、形を変えたり、バラバラになったり分子、原子、電子など細かくなっても、この世の中から消えてしまうことはないのです。前世と同じように考えてみると、今の自分は未来の生物の栄養となり、体の一部分として生まれ変わるのです。          

 ですから来世はあるのです。現在の一人の人間が、未来の一人の人間になるのではありません。現在の一人の人間は、未来の複数の生物に、生まれ変わるです。

 しかし、現在の日本の状況において、来世などありえません。大きな問題があるのです。それは人の死を利用し、言葉巧みに金儲けをするシステム、そう、墓システムがあるからです。

 本来の墓は良いことです。人間をそのまま土に埋めて、腐らせて、土中の養分にする。これなら来世はあるでしょう。未来の植物になり、動物になり、魚になり、生まれ変われます。しかし、現在の墓システムでは、火葬から骨壷へ、というのが一般的です。これはとても良くないです。

 火葬はいけません。第一に、燃えるということは、二酸化炭素を大量に発生し、地球を温暖化して、全生物の命を脅かすことにつながります。第二に、有機質を無機質に変えてしまいます。有機質の食物連鎖は考えやすいですが、灰が他の生物の栄養になるとは考え難いです。第三に、人間の姿、形を早く消してしまえという根性が気に入りません。早く処理しよう、無かったことにしよう、というやり方は、それまで数十年間生きてきた人間を大切に考えてないように思えます。火葬というやり方は、平気で神、仏、イエスを往来出来る、信仰心の無い日本人には、ピッタリですね。最近では何処かの馬鹿が死体を巨大電子レンジでチンする方法を実行しました。とても失礼なことです。

 骨壷は、さらにいけません。故人を愛した人にとって、いつまでも死体を保管したいと思うのは、当然です。その欲求に付け込んだビジネスが納骨です。墓地を手にいれるのに数百万円、格好いい墓石も数百万円、管理費として年間数十万円。とてもイイ儲けですね。そう!戒名というものにも金はかかります。戒名とは、死後に付けられるホーリーネームです。金額が高いほど、長たらしく有り難い名が付くそうです。ちなみに部落出身者には難しい漢字で、動物の名を含ませて、差別に役立てていたそうです。坊主の知恵も大したものです。

 金をかけた供養は故人を成仏させるなどといいますが、本当でしょうか? 死体が骨壷や墓から出られないということは、他の生物へ生まれ変われないということです。これでは本当の意味での成仏などありえません。

 日本人は愚かです。自分は永遠だと信じてわざわざ墓、骨壷に入り、残された者は金を巻き上げられる。この墓システムは、誰が、いつ、制度化したのでしょうか?当時の役人達は仏教屋から多額のワイロを貰ったことでしょう。

 これまでの話で、人は自然界の法則に身をゆだねることが素晴らしく、生まれ変わりという永遠の命が得られることがわかってもらえたと思います。では、理想的な死体処理はどうすれば良いのでしょうか? 具体的に考えましょう。

 まずは場所です。地方ならともかく、都会であれば、もはや人間を埋める土地などなく本来の墓は作れません。しかし、現在、都会にも未使用の霊験あらたかな広い場所があります。それはビルの屋上です。どんなに多くのビルが建ち並ぼうと、屋上というのは必ず存在します。しかも、高層になればなるほど屋上は人の出入りが禁止され、未使用の状態です。古代の国王は、ピラミッドや塔を建てて、太陽と神に近づこうと努力しました。高い所はそれほど価値があるのです。現代人にとって、高い所は容易に使える聖地です。この神聖なるビルの屋上を、死体処理に使わない手はありません。

 次に方法です。火葬はダメです。水葬など出来るわけありません。土葬も難しいです。よって、鳥葬がベストでしょう。鳥に死体を食べさせる方法は国によって実際にあります。日本人の目から見ると、とても気持ちが悪いことです。しかし、これほどまでに、直接的生まれ変わりが出来る方法はありません。自分の身体が、鳥の身体に含まれ、空を飛んでゆく。なんと素晴らしいことでしょう。

 鳥の種類はどうしましょう?まさか都会にハゲタカはいません。カラスが、最もふさわしいですね。何と言っても、常に黒い礼服を着ているのですから、葬式でも、結婚式でも黒の同じ服を着る人間の常識にピッタリ一致します。カラスは、街中の残飯も処理してくれる愛すべき鳥なのです。

 現代人が気にする臭いはどうしましょう? ほったらかしの死体は、きっとクサイです。でも最近、寝たきり老人の大便の臭いを消す飲み薬が実用化しましたので、きっと優秀な製薬会社が、死体の臭い消しくらい開発してくれます。問題はすぐに解決されるでしょう。

 かなり、話が長くなってしまったけれど、皆さんは、どのように死んで、処理されて、永遠の命を手に入れたらよいか解りましたね。私の考えた良いことによって、残りの人生をエンジョイしてね。
 じゃあまた!バイバイ!



この作品は、以前、同人誌に載せたものです。
事実のつみかさねにより、ゆがんだ論理を作っています。
全5作のシリーズになる予定です。
第1作目「良いこと GOOD THING 1」は、漫画でした。
第2作目「続・良いこと GOOD THING 2」は、これ。
第3作目「新・良いこと GOOD THING 3」も、漫画でした。
第4作目「良いこと・征服 GOOD THING 4」は、文章になる予定。
第5作目「最後の良いこと GOOD THING 5」は、詩とイラストになる予定です。 

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