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BOMB JAPAN !


20XX年、地球温暖化により人類は絶滅の危機に陥った。
20世紀末より警告された環境問題に対して、世界中の国々は必死に取り組んだが、成果は小さなものであった。
土地は砂漠化が進み、植林しても追いつかなかった。
二酸化炭素の排出を押さえる努力も、人間の欲望の前には、無意味であった。
北極、南極の氷は全て溶けて無くなり、海面は上昇し、多数の国が水没した。
世界の平均気温は、40度を超え、体の弱い者は死んでいった。
食料も不足し、まともな食材を手にするのは、一部の富裕層のみとなった。
食料不足による死者は、貧困層から増えていった。

世界各国の首脳は集まり、会議を行った。
人類の絶滅を防ぐには、地球を冷却しなければならない。
大胆な意見が出された。
地球を人工的に氷河期にするのだ。
具体的な方法は、火山を噴火させ、火山灰に地球の大気をおおわせ、太陽の光を防ぎ、地球の表面温度を下げるというものだ。
氷河期の発生は、人類を寒さによる絶滅の危機にも追いやる。
しかし、何もしなければ、人類は熱射によって絶滅する。
会議は中断された。

会議が再開された。
今回の会議は、核兵器所有国の首脳が秘密に行った。
地球氷河期化に向けての具体的な検討だ。
火山を爆破し、火山活動を起こすためには、全世界の核を一極集中で爆発させなければ効果がない。
さらに火山の噴火活動が起こりやすい地域を選ばなければならない。
会議は続いた。

安定した経済成長をとげる日本は、世界中から評価された。
世界中の国々では、日本の文化を賞賛し、日本の文化遺産は海外に持ち出された。
日本の工業技術も評価が高く、海外の企業は、日本の技術者を高額で引き抜いた。
技術者が引き抜けない場合は、会社ごと買収された。
日本国内は浮かれていた。
世界から尊敬される国は、空前の好景気となり、金銭に満たされていた。
国民は働かなくなった。
努力もせず、堕落した。

20XX年の夏、日本の近海に世界中の艦隊が集結した。
朝鮮半島からは爆撃機の大編隊が飛び立つ。
そしてXX時XX分、爆撃が開始された。
日本国中の火山に向けてあらゆる核ミサイルが発射された。
爆撃機は大気圏の彼方から核爆弾が落とした。
地上では爆風による無数のドームが重なり合った。
空に向けても無数のキノコ雲が立ち上った。
日本全体が核の雲でおおわれた。
しばらくすると裂かれた地表からはマグマが吹き上げた。
火山は噴火し始めた。火山の噴煙が核の雲を吹き飛ばした。
日本人は核攻撃と火山の噴火により死滅した。

作戦は成功した。
火山は噴火し、その灰により、地表は冷却された。
地球の温暖化は押さえられた。
人類は、絶滅の危機から救われた。
今後は、放射能汚染の対策に知恵を絞らなければならない。
地球上から日本という国は無くなったが、評価すべき文化、技術は全て引き抜き済みだ。
土地はなくとも、日本人が生きた証は残った。



2007年8月


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