Caresheets




基本編
コーンスネークやコモンキング等の地上棲で比較的飼育の容易な種について

※飼育用品
・ケージ

 ヘビを中に収めて飼育するための器のことです。 キングもコーンも地上性のヘビですので高さのあるケージは必ずしも必要ではありません。 平べったい弁当箱のような形状のもので十分です。 これならケージが増えてきたときには積み上げることでスペースをあまりとらずにコンパクトに まとめることができますし。但し、コーンなどは枝を入れてやると登ったりすることも少なから ずありますので、お好み次第でケージの形状を選んで下さい。 広さはトグロを巻いた面積の3倍もあれば飼育は可能ですが、余裕があればもう少し広くしてあげて 下さい。
 年中鑑賞していたい、或いはインテリアの一部としてケージを置きたいという方はガラス製の ケージを使って中をレイアウトしてみたりするのも良いと思いますが、別に年中見えていなくても 結構という人は衣装ケースのような半透明の材質のものを使っても十分です。 どちらにしてもメンテナンス性が高いほうが飼育者も飼育される側も快適と思われます。
 ひとつのケージには1個体を収容するのが管理の面から言って適当だと個人的には思いますが、 諸処の事情によって複数飼育(同居)をされる方もいらっしゃると思いますのでその場合は十分全て の個体に気を配ってやっていただきたいと思います。 キングは言うまでも無く原則的に単独飼育です。必ずしも食われるわけでは有りませんがリスクは 事前に回避しておくべきです。
 ヘビを飼育した経験の有る方であれば、恐らく一度は脱走された経験があると思います。 兎に角やつらは脱走名人ですので、キチンと蓋のできる容器に収容するようにして下さい。 成体はその体の大きさから脱走後、割と早く確保することができますがベビーが逃げた場合には 探しても探しても見つからなくて途方に暮れるなんてことになりかねません。 こんな所からと思われるようなところから逃げたりするので事前に十分チェックを。

ベビーのケージ例 ベビーのケージ例 アダルトのケージ例


・水容器

 飼育個体の全身が浸かれて、安定性の高いものであれば何でもかまいません。 小さい個体にはジャムやインスタントコーヒーの空き瓶を利用したり、鳥飼育用の陶器の水入れ なんかも使用できます。大きい個体にはその大きさに合ったタッパーを使用するのが便利です。 タッパーの蓋に餌を飲んだ状態でも通れる程度の穴を開けて、蓋を付けたままケージ内に収容します。 ひっくり返されにくく、床材が水容器内に入りにくくなります。 重量が軽いこともメリットのひとつです。タッパーを購入してきて初めて使用するときは表面の ヌルヌルが完全になくなるまで水洗いしてから使用してください。 購入時のタッパーの表面には型抜き剤と思われる薬品がついています。

・床材

 最も経済的なのは新聞紙です。汚れたらこまめに替えてやりましょう。 昔は新聞紙に使われていたインクに生体に影響を与える物質が含まれていたようですが、 現在では大丈夫だと個人的には思っています。生体への影響が心配な方や新聞を定期購読されてい ない方はキッチンペーパーやウッドシェイプ、ウッドチップを使用されても良いと思います。 ウッドチップやウッドシェイプを使用する場合は杉(シーダー)を使用しているものは避けてください。 含有物質により生体が中毒症状を起こすことがあります。

・シェルター

 新規に入手した個体やベビーが新しい環境に慣れるまでの間の使用は効果があると思われますが、 慣れてしまえば不要です。私は特に必要性を感じません。 使用する場合は素焼きの植木鉢や岩を模した市販品がありますが、べつにお金をかけなくても菓子 の空き箱なんかでも十分です。

・ヒーター

 もともとが温帯性種であるために特別に寒い地域でなければ、通年無加温での飼育が可能です (冬季は冬眠させてしまう)が、人工的に加温してやったほうがコントロールはしやすいので ヒーターを使った飼育が一般的です。ヒーターはフィルム式の遠赤外線ヒーターが使い勝手が 良いのでお勧め。ケージの中は一定の温度ではなく場所によって温度勾配がついていることが理想 であり、生体が好きな温度環境を選べるようにしておくことが大事です。 そのためフィルムヒーターはケージ底面全体に敷かず、1/2から2/3を目安に敷くようにします。 が、ベビーのケージが多数ある場合などヒーターの上に半分ずつ乗せるなどしていたらスペース的 に非効率的なので、底面全体がヒーターに乗っている状態にしてコンパクトにまとめてしまっても 特に問題は無いようです。この場合生体は平面的に逃げるのではなく垂直方向に逃げて温度調節を します。
 東京あたりであれば、フィルムヒーターだけで越冬は可能です。

・照明

 必ずしも必要ではありません。鑑賞用に欲しい方は設置して下さい。蛍光灯で十分です。
昼夜の区別がつくようにはしてやりましょう。

・温度計、湿度計

 温度計はデジタル式のコンパクトなタイプが使いやすいと思います。 特別に温度環境にうるさいわけではありませんが、温度くらいは状態をモニターしておきましょう。 最高、最低温度が記録できるモノがお勧めです。
 湿度計は無くてもOKです。デジタル式の温度計では湿度もモニターできるものがありますので、 そのようなものが1台あればより良いのではないでしょうか。

デジタル温度計 湿度計付きのもの


・その他の道具

 給餌したり掃除したりとピンセットは大活躍してくれますので、購入しておきましょう。長めのもの が使用し易いです。先端があまり鋭利でないものを選びましょう。 生体を傷つけてしまう恐れがあります。
 スネークフックは必ずしも必要ではありませんが、気の荒い個体等には便利です。 特にキングスネークはハンドリングした際に糞を撒き散らす傾向が強く周囲1mくらいに飛び散ること があります。そんな個体でもスネークフックですとおとなしく移動できますので私は尻癖の悪い個体 に使用して重宝しています。

※飼育概論
・飼育環境

 冬眠を考えずに通年加温して飼育するつもりであれば、常に25〜27℃くらいに保ってやればOKです 。夏場の高温にも強く33℃くらいでもへっちゃらです(コーンやコモンキングは)。 必ずしもクーラー等を利用して温度を下げてやる必要は無いと思います(クーラーを使用できる環境に あるなら、気温を下げてやれれば尚良いですが)。但し、直射日光の当たるところ にケージを設置するのは避けましょう。
 ケージの数が増えてきたらまとめて観葉植物用のガラス温室などに収容すると寒冷期の保温では 経済的に有利です。この場合は植物温室用ヒーターやヒヨコ電球等で温室内の空気全体を暖めてやり ます。温室内で温度差が生じることもありますので、複数のポイントで温度をモニターしておいて下 さい。又、ヒヨコ電球を代表する保温電球類は表面が非常に高温となりますので可燃物のそばには 設置しないことはもちろん生体が巻きついて火傷を負うことがありますので十分注意してください。

・メンテナンス

 通常のメンテナンスは掃除と給餌だけです。糞をしたら掃除することと定期的な給餌。 これだけです。

・給餌

 餌は基本的に各サイズのマウスを使用します。栄養的にはこれで十分と思われます。 特にカルシウムや各種ビタミン等の添加は必要ありません。マウスのみで累代飼育が可能です。 ヘビ飼育の上でハードルになるのがヘビそのものへの恐怖の次に餌の問題が大きいと感じています。 マウスを餌としてやることに抵抗を感じる人が多いようです。マウスを使わなくて良いヘビはいま せんかとは良くある質問ですが、マウス食以外のヘビは(特に初心者の)飼育には不向きだと言って 過言ではありません。
 マウスは冷凍のものを数量まとめて購入するとランニングコストを抑制することができますので 小型の冷凍庫等を購入することをお勧めします。私はネットオークションで中古品を安価で入手 しました。これは家族と同居されている方には特に言えることなのですが冷凍マウスをヒトの食料品 を入れる冷凍庫に一緒に入れることを拒絶されることが少なくありません。家族の怒りを買って 冷凍マウスを顔面に投げつけられて出血したなんて話も聞きますので対応には十分注意しましょう。 同様に電子レンジでの解凍も避けたほうが無難です。当然冷凍マウスは給餌前には解凍しておきます。
 さて給餌間隔ですが、ベビーやイヤーリングサイズには食べられる大きさのものを1〜2匹を一度 に与え、糞をしたらまた給餌というパターンで良いと思います。これでたぶん2回/週くらいのペース になると思います。成体サイズになったらメスは1回/週、オスは1回/10日〜2週間で大丈夫です。 一度にアダルトマウス1〜2匹を与えます。
 マウスのサイズの切り替えですが、今与えているサイズを楽に飲めるようになったらサイズアップ していきます。案外大きな餌を飲み込みます。私のところでは全長が60cmになったらホッパーを 給餌というのがひとつの目安になっています。
 給餌は一般的にピンセットで餌を目の前に持っていってやるか、神経質な個体では置き餌にします。 すぐに食べない場合もありますのでそういう時は餌を持って追い回さないようにして置き餌にして 静かに様子をみましょう。

・脱皮

 ヘビはご存知のように成長する過程で脱皮をする生物です。健康な個体であれば20日周期くらいで 脱皮します。全身の色がくすんできて目が青白くなり、また澄んできたら2,3日後に脱皮します。 脱皮は通常吻端からめくれ始めて靴下を脱ぐように裏返しになりながら尾の先端まで1枚で脱げます。 コーンスネークやキングスネークは極端な乾燥状態にでもならない限り脱皮不全になったりはしない と思いますが、もしきれいに剥けずに残ってしまった場合にはぬるま湯などに浸けたあとで手で剥い てやってください。よくケージの中に脱皮の取っ掛かりになるザラザラした表面のものをいれておけ という話を聞きますが特に必要ありません。何も無くてもキレイに脱げるものです。ちなみに脱皮殻 は伸びてしまっていますので、この長さを計測してもヘビの全長には相当しません。
腹板が白くなる澄んできた 色が澄んだ目が青白くなる 目の色が澄んだ


・冬眠

 コーンスネークの場合、繁殖には必ずしも冬眠は必要ではないようですが計画的な繁殖や冬場の 経費節減を考えると冬眠させる技術を習得しておくことは無駄ではありません。
 まず前提として常日頃からしっかりと餌を与えて健康な状態であることが大切です。 不適切な処置により命を落としてしまう可能性も有りますので、日頃の管理が重要です。 準備としては秋の訪れと共に給餌をストップさせて通常の温度で2週間程度飼育して糞を排泄させます。 次に少しずつ温度を下げていき無加温の状態にします。18℃程度まで下げて60日間薄暗くしておけば 繁殖準備としての冬眠には十分ですが、私の場合は気温(室温)にまかせて春先までその状態で 放置しておきます。10℃を切るくらいの温度でもまったく問題はありません。 逆に温度が中途半端に高いと却って体力を消耗してしまうと考えます。
 春になったら逆に今度は少しずつ温度を上げていきます。私のところでは20℃くらいまで温度を 上げたら給餌を開始します。この程度の温度でも摂食しますが、量はまだ少なめにして様子を見ます。 通常の温度に戻したら日頃と同等に給餌を行います。
 冬眠中は常に水を切らさないようにして、水が汚れていたら替えてやりましょう。 ヘビは冬眠中にも脱皮をすることがありますので、それを見て「温度が高すぎるのかな」とか心配 しなくても大丈夫です。冬眠中のヘビは動きが非常に緩慢になり舌の出し入れもスローモーションを 見ているかのようなスピードになっています。
 ところで幼蛇の冬眠についてですが、冬季も引き続き給餌して成長を促進させる意味で加温して 越冬が一般的です。もちろん成体と同じように冬眠させることも可能です。

・繁殖

 前述したように必ずしも繁殖に冬眠が必要ない場合もありますが、ここでは計画的に繁殖させる 進め方を述べます。
 冬眠から起こしたあとメスが脱皮したらオスと交配させます。中には脱皮前でも交尾するものも いますが、概ね脱皮後のほうが成功する確率が高いです。交配させる時にはオスをメスのケージに入 れても、メスをオスのケージに入れても、又、オスメス一緒に別のケージに入れても問題無く交尾は します。この時、メスが尻尾を震わせてビチビチ音を出している場合は望み薄です。しばらく様子を 見たら2匹を分けてもう少し日数が経ってから改めて一緒にしてみて下さい。 交尾するまでこれを繰り返します。交尾する場合はメスがオスと一緒にビクッビクッと独特の動きを しますので初めてでもわかると思います。交尾の時間はコーンスネークの場合は30分くらい、キング スネークの場合は30分〜一晩かかることもあります。特にカリフォルニアキングスネークは長い傾向 がありますので、交尾を始めたら放っておくことをお勧めします。この場合交尾が終わっても食われ ることは無い(絶対とは言い切れませんが)と思います。キングスネークでは交尾の際にオスがメス の背中や頚のあたりに噛み付くことがありますが、これは相手の動きを抑えるためのようですので 心配しなくても大丈夫です。逆に一緒にした途端に頭に素早く噛み付く場合は食いにいっていますので ヘビを傷つけないように注意して口をはずしてやります。その日は交配を見合わせたほうが良いで しょう。 交尾は1度でも受精には十分だと思います。

コーンスネークの交尾 カリキンの交尾 メキシカンブラックの交尾
結合部 メキシカンブラックのヘミペニス

 交尾後1ヶ月くらいするとメスの腹はパンパンに膨らんできて摂食しなくなります。その状態で脱皮 をしたら約一週間で産卵ですので水容器を撤去して(または小さな物に替えて)産卵床を用意して やります。産卵床はタッパーに穴を開けて中に湿らせたバーミキュライトやミズゴケを入れてやります 。個人的には湿り具合が把握しやすいのでミズゴケを使用しています。ミズゴケを水に漬けギュッと しぼった状態でOKです。産卵床の大きさはメスが中で動けるくらいの大きさにしてください。 産卵数は数個〜20数個くらいです。産み落とされてすぐの場合は1個1個をわけられますが、時間が経 つと離れ難くなりますのでその場合は無理に離すことはありません。卵は上下を変えないようにして 孵卵します。温度は26〜27℃くらいで生体の飼育温度と同等でかまいません。たいていの場合孵卵す る時期は気温が高いと思いますので温度変化の少ないところに置いておくだけで孵化します。 乾燥しすぎも湿りすぎも良くありませんので注意してください。孵化までの日数はコーンスネークで 60日、キングスネークで50日くらいです。ヒョウモントカゲモドキのように孵卵温度によっては 雌雄決定することはありません。健康な卵はシッカリした感じで表面が乾いています。逆に未受精卵 は黄色っぽく濡れた感じです。ヘビの場合、産卵直後でも検卵すれば胚とそこから伸びる血管が確認 できます。卵の表面にカビが生えることもありますが卵自体が潰れたりしないでしっかりしている 場合にはそのまま様子を見ていて問題ありません。たぶん無事に仔ヘビが生まれてくると思います。

コーンスネークの卵 キングスネークの卵 卵の大きさ比較
正常な卵とダメ卵(右) 表面にカビが生えた卵 でも無事に孵化

 卵に亀裂(というより切れ目)が入ったら、2日くらいの間にすべての卵からベビーが顔を出すはず です。卵から全身が出てくるにはもう少し時間がかかりますが自分で出てくるまでそっとしておきま しょう。うまれたベビーは1週間くらいで脱皮をしますが、それまでの間は乾燥させないように気を つけてください。
 脱皮したら初めての給餌を行います。ピンクマウスのSSサイズくらいならそのまま飲めます。 大きいサイズのピンクマウスは切ってやってください。

コーンの孵化 カリキンの孵化 メキブラの孵化





mail to : zakizaki@mtf.biglobe.ne.jp

Back