DIARY 39
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♪2004年11月6(土) 晴れ

たまにはちょっと真面目な日記を書いてみようと思う。
先日、あるライヴハウスのパーティーに出掛けた。
お客様、オーナーのお知り合い、ミュージシャンなどがたくさん来ていて、私も1曲歌った。
パーティーが終わってテーブルでくつろいでいる時、あるお客様に話しかけられた。
実は私、ここだけの話(ぜんぜんここだけの話になって無いけど、笑)、どこにでも1人くらいは居る「俺はジャズには詳しいぜ」みたいな事をいうオジサマ系のお客様は大の苦手。
はっきり云うと嫌いなのだ。
このお客様もそのタイプ。以前に1度だけ会った事があるけど、また会ってしまった。
そのお客様のご意見は・・・
 「君はねぇ〜、せっかくいい物を持っているんだから、もっと話をうまくなりなさい。そしたらもっと売れるのに。」
私、ムッとした気持ちを抑えながら、
 「私はそういうスタイルじゃないので〜。(一応、笑顔)」
そのお客様は更に、
 「いや、そうじゃない。話がもっとうまくなったら売れるよ」
私は更に笑顔をキープしたまま、
 「お気持ちはありがたいですけど、私はそういうスタイルでは無いので、そういう事はそういうスタイルのヴォーカリストのかたに求めて下さい。」
更に、「それに、アメリカのミュージシャンなんかは時々何か話はするけど、ほとんど話しはしないですよ。日本だけですよ。(一応、笑顔)」と云うと、そのお客様は、「あ、そう。じゃ、また来るよ」、と云って帰って行った。(え?また来るの?)
確かにMCが上手なミュージシャンもたくさんいる。
私も、「こんなふうに話せて、じょうずだな〜」って思ったライヴは何回か見て来た。
私の好みだけれど、私は演奏する前に次の曲の歌詞がどういう意味なのかを説明する事があまり好きではない。
たまには、こんな意味です、って前もって説明する事もあるけど、それは例外だ。
なぜ説明するのが好きではないかというと、理由は大きく分けると2つだ。
1つは、前もって意味を説明されちゃうと、「あ、そう」という気持ちになっちゃって、「これから聴く曲はどんな曲なんだろう」という想像力の大半をその時点で失ってしまうからだ。
もちろん歌詞の意味を聞いたあとで歌を聴く方が良い場合もあるけど、私の好みでは、毎曲毎曲、歌詞の説明は要らないと思っているし、やりたくない。
例えば、ビリー・ホリーデー、特に、末期のビリー・ホリデーの歌の表現の中には、たとえどんなに「恋に落ちて幸せ」みたいな歌詞の曲を歌っていても、どうしようもない悲しさと淋しさとそれ以上の何かが私には聴こえて来る。私はそういう事を大切にしたいのだ。
英語を母国語としている人の場合、いちいち歌詞の説明を受けなくても意味が解るから説明しなくても大丈夫なのだ、とも思う。
日本人でも英語がペラペラな人はたくさんいるけど、そうじゃない人もたくさんいる。
英語・・・つまり歌詞の意味が解らないからこそ、「どんな歌なんだろう」って、その人その人のいろんな想いが浮かんで来るという利点も有ると思う。
外国のミュージシャンが何かMCを入れる時って、そのミュージシャンのその曲に対する想い出や、どんな気持ちやきっかけでその曲を作ったか、などの話が多い。
私はそれで充分だと思う。
それに、ヴォーカリストではない楽器奏者の場合はどうしろと云うのだ。
もう1つの理由は、上に書いたお客様が云っている「話」というのは、曲の説明だけではなく、例えば、お客様にうける話、又はお天気お姉さんのような、爽やかかつ流暢な話し方、という意味も含んでいるのではないかと思う。
上にも書いたけど、確かに上手な人もいるけど、この際はっきり言っちゃうけど気持ち悪くなる人もいる。
なぜ日本のジャズシーン、特に女性ヴォーカリストに対してそのような事が求められるのか不思議だし、なぜそういう女性ヴォーカリストもいるのか不思議だけど、思い当たる点が1つだけ有る。
「俺はジャズには詳しいぜ」、みたいな事をいうオジサマ系のお客様の場合、女性ヴォーカリストに対してミュージシャン以外の事も求めている人もいる。
それは「一緒に飲みませんか?」、という事だ。
善意でそう云ってくれるお客様ももちろんたくさんいるけれど、残念ながらそうじゃないお客様もいる。
「俺はジャズには詳しいぜ」、みたいな事をいうオジサマ系のお客様の場合、綺麗な女性ヴォーカリストがそのお客様の青春時代のスタン
ダードナンバーを歌ってくれて、お天気お姉さんのような美しい話し方、そして、休憩時間には自分の横に座ってお酒の相手をしてくれる...という事を求めている人もいるのだ。
私はそういうお客様への対応は出来ないし、やりたくも無い。
それが私が「オジサマウケ」しない原因の1つでは有るんだけど(笑)。
でも、そのお客様が云っている「話がもっとうまくなったら売れるよ」って何それ?って感じだ。
話で売れるんだったらミュージシャンじゃ無いし、そんな事で売れたくない。
ま、こういう人は相手にしないのが1番なんだけど、今夜出演して来たライヴハウスでこの話をチラッと冗談ぽく話した後で、お天気お姉さんのような話し方で「それでは次の曲は〜(思いっきり笑顔)」って話し始めたら別の意味でウケちゃって「そんな話し方したら、ユカピー大丈夫?何か有ったの?って云っちゃうヨ、(笑)」って云われた。
ライヴ終了後も、ある女性のお客様が「そのまま今のままで行って下さい!」って云ってくれた。
これが今の私だしネ。これから何がどう変わるのかは誰にも解らないけど、いつも嘘のない私でいたいナ。