DIARY 19
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♪2003年1月28日(火) 晴れ

このホームページが立ち上がった時、日記には、音楽には関係の無い日頃の出来事、しかも、なるべく楽しい事を書こうと思っていた。
ずーっとそうして来た。
でも、今日は、思い切って、本音を書いてみようと思う。

数日前、某ライヴハウスをやめてきた。
理由は、一言で云ってしまえば、店長との考え方の違いだけど、こんなに頭に来た事は無いくらい頭に来た。

その日、休憩時間に50代サラリーマン男性が3人が入って来た。内2人は常識の有る人だったけど、1人が非常識な人で、いつまでもうるさかった。
他のお客様はみんな聴いて下さっているのに、その人だけがずーっと喋っていた。ここまでは、今回に限らず、他のライヴハウスでもたまに有る事だ。
途中で私も「今日は、ここでは初めてのデュオなので、お客様の声も良く聞こえますヨ」と冗談ぽく云ったんだけど、ぜんぜんダメであきらめていた。
それに、一緒に来ている他2人の人もその人を静かにさせようとしてくれていたので、「これ以上云うと、その2人のお客様にも申し訳ないな。」とも思っていた。

そのうち、最初からカウンターで聴いて下さっていたお客様が、そのうるさいお客様に注意に行った。
その人がカウンターの席へ戻ると、そのうるさかったお客様がカウンターのお客様の席までやって来て、逆に文句を云い出した。
普通は、こんな事になる前に、お店側がなんとかしてくれるのに、このライヴハウスは何もしてくれなかった。
そして遂には、その聴いて下さっていたお客様が帰ってしまった!!
その後、2曲程で演奏は終ったが、「聴いていた人を帰した」という事実に本当に腹が立ってしまい、
「あなたのせいで、聴いて下さっていたお客様が帰ってしまいました。他のお客様だって皆さん聴いて下さっていたのに、あなたたった1人のために
みんなが迷惑してました。お店と他のお客様の皆さんに謝って下さい」と、私はその人に云った。

(※ここでことわってておきたい事:赤坂由香利はお客様をどなったり、ケンカしたり、お店とケンカしたりする、という風に思っている方がいらっしゃるそうだけれど、そんな事は1度も無い。普通の声で「もう少し静かにして下さいネ」と云っているのだが、こんな事を云うミュージシャンは少ないらしく、私の話が人づてに伝わって行くうちに、赤坂由香利はお客様をどなる、という風に話が変えられているらしい。)

もしも、カウンターで聴いていたお客様が帰らなければ、私もそんな事を云わなかったかもしれないが、「聴いていた人を帰した」という事に本当に本当に腹が立った。
店長に「赤坂さん、もうやめて下さい」と言われたし、そのうるさかった人と一緒に来ていた他2人のお客様が常識の有る人だったので、とりあえず丸く収った。
そのあと、店長と長々と話をした。そして、私のいかりは、そのうるさかった人に対してはもちろんだが、店長に対して腹が立って来た。

私が感じた事は、「たてまえではいろいろと云っているけど、結局、音楽は、2の次、3の次の人なんだ」という事だ。
店長は、「僕が何も云ってないのに、赤坂さんが云う必要は無いです」と云うので、その点については謝ったが、私は、「なぜ今日、あんな事態になる前に、店長が注意に行かなかったのですか?」
と尋ねると、カウンターで一生懸命聴いて下さっていた人は、以前、某ミュージシャンが出演していた日に、演奏が気に入らないと云って、酔っ払って騒いでいたそうで、店長は、「どっちもどっちだな、と思って放っておいた」、と云うのだ。
そんな事を私は知らないし、そういう事が有ったとしても、私のライヴの日に聴いて下さっていた他のお客様には関係の無い事だ。
店長は、やたらと「うちはお酒を出しているし、いろんなお客様が来るんですよ」って言っていたが、お酒を出していて、いろんなお客様が来る事については、どこのライヴハウスも一緒だし、店長の言葉のはしはしから、「売り上げが大事」という感じが、言葉には出さないけれど、そういうニュアンスが聞き取れるので、「店長にとって、音楽ってどういう位置に有るんですか?
店長が、うちはお酒が売りです、って思っているのと同じように、私達ミュージシャンは、音楽が商品なんですよ、商品っていう言葉は使いたくないけど。」と云ったけど、店長からは、たてまえみたいな言葉しか帰って来なくて、やっぱり、汚い言葉になってしまうけれど、「お金を使ってくれれば何でもいいんだな」という感じを受けた。
いっそのこと、「いや〜、ちょっと不景気だから、やっぱり売り上げが大事なんですヨー」とか、「本音」を云ってくれた方がよっぽどすっきりした。
店長とはケンカになった訳ではないけど、店長の言葉の「どっちもどっちだな、と思って放っておいた」は、他のお客様の事を全く考えていないし納得出来ない。
それに、聴いてくださっているお客さまがそういう流れで帰ってしまっても平気でいられるお店では、私は演奏出来ない。
結局、お互い合意の上で、今後は出演しない事にした。

更に数日前の出来事。
この日も、1組だけ迷惑なお客様が居た。
私は、「他のお客様に申し訳無いので、もう少し静かにして下さいね」とお願いした。
声のトーンは少しだけ下がったけど、ピアノのすぐ横に居たので、話の内容は聞こえて来ていた。
「ジャズってぇもんは、BGMなんだよ。何で静かにしなきゃならねぇんだ、フザケンナ!」という言葉が横から聞こえて来る中で、私は「他のお客様は聴いて下さっているんだ」と自分に言い聞かせながら演奏していた。
演奏が終わると、そのお客様は声のトーンを少し上げ、私達に聞こえるように「ジャズはBGMだ」とブツブツ云っていたけど私は無視した。
しかし、ここからが、さっき書いた某ライヴハウスとは全く違う。
マスターがそのお客様を送り出した後、マスターが「うちは、あの客は要りませんから。ジャズはBGMだって思い込んでるんですよ。うちは、ライヴをやってるんだから!」と云うのだ。

私は、本当に嬉しかった。このお店のマスターは、音楽を愛しているのだ。

続けて起きた、この2つの出来事。
私が最終的に思った事は、お店が音楽を愛していないと、そこでは演奏出来ない、という事だ。
もちろん、今回の事で、お客様にも頭に来た。
でも、ライヴハウスって知らなくて、たまたま入って来てしまったのかもしれない。
常識の有る大人だったら、例え、今やっている演奏が好きじゃなかったとしても、回りの状況を解ってくれて、他の人の迷惑になるような事はやめるのが当然だと思う。
でも、回りの状況を理解出来ないで、平気で他の人に迷惑をかけている人も残念ながら居るのだ。
そういう時に、「今は、こういう状況ですよ」ってそっと教えてあげるのが、お店側の役目だと思う。
先に書いたお店のように、聴いて下さっている人が帰ってしまっても平気でいられるお店が、聴いて下さっているお客様からミュージックチャージを頂くなんて、とんでもない事だと思う!。

先に書いたライヴハウスで、その50代サラリーマンが入って来た後(前だったかもしれない)、20代サラリーマン男性3人が入って来た。
ライヴが終わったあと、その中の1人が、「僕達も最初、喋ってました、ゴメンナサイ。でも僕、ジャズ、好きなんですよ。また聴きにきます」と、わざわざ席を立って、私が居た所まで云いに来てくれた。私はとっても嬉しかった。

私は、音楽が大事だし、聴いてくれるお客様、そして、わざわざライヴハウスに足を運んで聴きに来てくれるお客様は、私の宝だ。
この考えは、一生変わらない。