人 間 万 事 塞 翁 が 馬
  (中国の故事「淮南子」より)
上咽頭がんを治療し終えて、娑婆に戻ったときに感じたことは「さて、こんな身体で先行きも分からず、これから自分はどうなるんだろう」という情けなさと不安でした。
そんな時に出会ったというか、思い出した言葉が「人間万事塞翁が馬」でした。
「この状態がきっと何かの役にたつ時がくるはずだ」と自分に言い聞かせることによって、気持ちを鼓舞させるための「言葉」でした。
また、自分の気持ちひとつで「幸」にも「不幸」にもなれると体感することもできました。
そんなことで40歳の折に「二回目の成人式」があり、決意発表をする機会に恵まれ、「まだ40歳、失敗を糧にし、成功してもおごらず、目的に向かい夢と希望を持って人生を歩んで行きたい・・・」という言葉をしみじみと語ることができました。
これからも、自分はそんな「心」で生きて行ければと思っています。              (02.11.12)


【ことわざのあらすじ】

昔、中国の北方の国境城塞付近に、占術などに通ずる老翁が住んでいました。
ある時、その老翁の馬がなぜか、隣の胡の国に逃げてしまいました。
近所の人たちが気の毒に思い、慰めに来てくれましたが、老翁は
「そのうちに良いこともあるさ」
と言って、一向に気にする様子ではありませんでした。

果たして数カ月も経つと、逃げ出した馬はどうしたわけか隣の胡の国の駿馬を伴って帰ってきました。
近所の人たちが早速お祝いの言葉を言いに訪れると、老翁は
「いやいや、これが禍(わざわい)に転じないとも限らない」
と言って、うれしそうな様子は見せませんでした。
 
やがて息子が、その駿馬に乗って落馬し、股の骨を折ってびっこになってしまいました。
可哀そうに思った近所の人たちが、また慰めに来ると、老翁は
「この禍が幸いになるかもしれない」
といって、今度も一向に気にする様子を見せませんでした。
 
それから1年後、隣国と戦争になり、胡人が大挙して城塞に押し寄せてきました。
村の若者という若者は皆召集されて戦い、そのほとんどが亡くなってしまいました。
しかし、老翁の息子は不具者であったために、徴兵をまぬがれて戦死することなく、生きのびることが出来ました。

老翁は、良いことや悪いことに何度出会っても、決してそのことにいちいち喜んだり、悲しんだりしなかったということです。
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