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03.9.6
回想エッセー
[6] 

五能線と西海岸オフ会

【あぴさん秋田へ里帰り】

8月19日。あぴさん夫妻と、深浦で西海岸オフ会をすることになった。
ご主人のやっちゃんは昨年、会社勤務をしながら上咽頭がんを放射線で治療したというつわもの。
そのあぴさんとwebで知り合ったのは、ちょうどその治療が始まったころ。

あぴさんは、秋田県北部の西海岸に実家がある。青森県境も近く、白神山地も目と鼻の先。
「実家に帰ったらオフ会しようね」という約束が、今夏のお盆に実現することになった。
場所は特に夕日がきれいに見られるという深浦のウェスパ椿山。あぴさんの実家から車で1時間ちょっとだ。
参加者はあぴさん夫妻に、奥津軽からポンコさんも来てくれることになった。


【五能線各駅停車の旅】


車で行くことも考えたのだが、日帰りだとビールをやれない。
そこで、五能線の列車で行くことにした。
朝、長男に送られて家から一番近い弘前から2つ目の川部駅へ。
なんと五能線に乗るのは初めて。新鮮な気分でホームに立った。
五能線は弘前から奥津軽の田園地帯を駆け抜け、さらに海に出て海岸線を走り秋田・能代へ行き着く。

午前9時半過ぎ、各駅停車の列車に乗った。
ウェスパ椿山までは深浦の乗り換えも入れて25駅の旅になる。
夏休み中ということで、帰省する年寄り夫妻と孫たち、リュックを背負った若者、ビーチサンダルを履いたような女子高生のグループも乗り込み、列車内も賑やかだ。
とにかく天気が良く、澄み渡るような青空が車窓から広がり、気分も爽快。
冷夏で生育が遅れているものの、青々とした田園地帯を駆けた。

五所川原を過ぎ、港町・鯵ケ沢にはいると海が見えた。真っ青な海だ。

   

列車は今度は、海を右手に見て海岸線をひた走る。
8年ほど前に、この地域で仕事をしていたこともあり、懐かしい風景が目に飛び込んでくる。
しかし1年ちょっといたが、こんないい日は記憶にない。
その澄みわたった雲ひとつないスカイブルーと、海のコバルトブルー。接点が地平線となり、180度のパノラマが広がる。地球がまるいのを見たような気がした。


【ウェスパ椿山にてご対面】

深浦駅で乗り換えて、2駅目がウェスパつばきやま。
12時20分ホームに降りると、目の前に北欧風の景色が広がる。そして、ポンコさんが待っていた。
「やぁーどうもどうも」とあいさつ。待ち合わせの物産館ってどこだろうと思ったら、立っていた目の前だった。

さて、あぴさん夫妻はと思っていると、長い金髪でふくよかな女性と男性がベンチに……もしかして。
事前に情報を仕入れていたこともあり後ろからそっと「あぴさんですか」と声を掛けたら、「ハーイ、yoshiさんですか」と返ってきた。ぴったしカンカンだった。
とりあえず、外に置かれたテーブルでひと休み。とにかく最高のオフ会日和。
皆さんジュースで、自分はビールで早速乾杯。

 

まずは、日本海が一望できるドーム型開閉式露天風呂へ。もちろんドームは開いていて、解放気分も充分。眼下には広大な海原が穏やかに広がる。
そんなロケーションに、やっちゃんとたった2人で浸る。
自分は補聴器を外してるので、会話はちょっとと思ったら、なんとやっちゃんの低音の声がすんなり入ってくる。そんなんで話しも弾んだ。

ちょうどお腹も空きだし、風呂のあとは腹ごしらえ。レストラン「カミリア」へ入った。
順番待ちだったが、ほどなくテーブルに着けた。やっちゃんと自分はピッッチャーで生ビールを頼み、あぴさん、ポンコさんは運転があるのでジュースで乾杯。「プファー! 旨い」。
なんだかんだと食欲も話しも弾む。特に、あぴさん夫妻のなれそめは面白かった。
ポンコさん後でいわく「あぴさんは可愛い奥さんで、やっちゃんは岸谷五郎さん似のかっこよさで、仲のよいステキなご夫婦でした〜♪」。
時間はあっという間に過ぎ、もう夕方5時近く。
名残惜しくも、あぴさん夫妻と再開を約してウェスパをあとにした。

  


【列車に遅れたけど】

帰りの列車はつながりが悪いこともあり、鯵ヶ沢駅までポンコさんに乗せてもらい、午後5時56分の列車に乗るとにした。
この地で仕事をしてた時は1週間の半分以上も走った道路。1時間あれば大丈夫、目をつむっていても着く―と、自分の酔った頭がそろばんをはじいた。
結果は、道路を行きすぎ、列車にも大きく遅れるという大失態。
よくに考えると1時間半は見なければならない距離だった。
さらに道路はなんとバイパスがつながり、町内を通らなくてもよくなったと後から聞く。

次の電車は1時間半待ちの夜7時29分。
街をぶらぶらして、酒屋で缶ビールを買って駅へ。
まだ1時間ほどあるが、駅で飲むのもいいかと、待合室で缶のフタを開ける。
つまみはポンコさんからいただいだ、イカの生干しがある。
誰もいない待合室でちびちび始めると、まもなく家族連れや老夫婦が入ってきた。
ホントに田舎の人は早いんだからと思いながら、ゆったりほのぼのしていてなんかいい感じ。
もう外は真っ暗で、待合室の蛍光灯がその下の人々を照らしている。その雰囲気の中に身を浸し、こちらもゆっくりビールを傾ける。

間もなく、列車がホームに滑り込んできた。
今度は列車でビールのフタを開ける。火照った顔が映る窓ガラスを見ながら、気分良く家路に着いた。

《写真一部ポンコさん提供》
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