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03.1.9
回想エッセー
[3] 

「7回目の正月」

がんになって7回目の正月を迎えた。
「がんになって良かった」という心境には、まだ達することはできないが、「なんと変化に富んだ面白い人生を送っていることか」と感慨無量なものはある。
これを「お天道様が授けてくれた人生」と思うことにした。
「こういう人生の流れにしたいがために、がんを選んだんだ」と。
この人生の流れの良し悪しは別として、この流れは「自分的には面白く、気にいっている」。

思えば6年前、がんになって初めて迎えた平成9年(1997)の正月は、治療を全て終え、退院を待つばかりとなり、自宅で過ごした。
副作用と後遺症が最高潮に達していて、身体はとにかくつらかったが、それでも一口飲んだビールは、口の刺激痛を万遍に増幅して「生きてること」を実感させながら、体の中に溶け込んでいった。
「とにかく、やることはやった。あとは(天に)任せる」。
「いつどうなるか分からないんだから、その日その日を大事に使っていこう」。
「自分が生きた証にできるものがあったら、何でもやってみよう」。
そんなことを考えた正月だったような気がする。

それから6年。「もしがんになっていなかったら」と考えると、「なんとありきたりな平凡な人生を送っていたのでは」と思う。
それが悪いという意味ではない。ただ「もっと平べったい自分」になっていたことは確かだ。
もちろん6年前の正月に、6年後はどうなってるか想像もつかなかった。がんがなかったら、それなりに想像は出来たと思う。今でも想像できる。「もしがんになっていない自分だったら今頃は…」と。
それは今にして分かることだが、決して褒められた姿でないものも多い。

そんなことを思うと「ぁああー、がんになったことに感謝しよう」という気持ちになる。
がんになったことで、いろんなことが見えた。苦しんで悩んだ中から生まれたものだが。
失ったものも有形、無形いろいろある。しかし失った分、得たものも多い。
また、「風が吹くと桶屋がもうかる」の理屈ではないが、少なくとも子供たちの進路にも影響を与えたと思う。

さて、これからどんな流れになっていくのか楽しみだ。
いろんな「希望」を胸に、2003年を歩いていこう。