200311月10日更新

取材・文 松田 茜


がんになった人 ひとりで悩まないで

がん・難聴「わいはまーる」

http://www5e.biglobe.ne.jp/~yoshi-s/

 1996年、よしさん37歳の夏、左耳に水がたまったような違和感を覚え耳鼻科を受診しました。そこから大学病院を紹介され、そこで上咽頭がん、ステージVの告知を受け、放射線治療を受けました。基本スケジュールは週5日午前午後それぞれ1回ずつ1・1グレイ照射し、最終的には上咽頭に74グレイ、鎖骨に40グレイ、頸部に34グレイを照射しました。照射台の上で聞く「ジー」という音には滅入りましたが、「放射線ががんをやっつける」とポジティブな連想で耐えました。
 照射中も副作用に悩まされたよしさんでしたが、それ以上に遅発性の後遺症に苦しみました。
 照射3日目から唾液の減少による口内乾燥が起こり、3年を経ても通常の半分くらいのだ液しか分泌されず、7年を経た現在も食事のときはみそ汁、スープなど水分は欠かせないということです。味覚障害では、治療中ご飯は砂を噛むようにしか感じられず、りんごなどは苦く感じました。その後改善されましたが、現在もりんご、トマトの酸味だけは異常に強く感じられ、たまらないということです。また治療後に虫歯だった奥歯が抜けたときも、放射線の影響で歯肉が再生せず穴がふさがらなかったため全身麻酔による手術を2回してようやく治まりました。年を経るごとに口の開きが悪くなり、現在はお寿司をひと口で食べることができなくなってしまったそうです。さらに治療後2年目に、左腕が上がらなくなりステロイドを1年ほど服用し、ある程度回復しましたが、やはり腕は上がりにくく、力も入りにくいということです。
 そして2年後、遅発性の後遺症のなかでも、いちばんよしさんを苦しめたのは左耳の鼓膜に穴が開いて難聴になったことでしょう。現在は補聴器を付けて生活しています。
 後遺症のつらさ、将来への不安からよしさんを救ってくれたのはネットを通しての応援メッセージと、同病の人との出会いだったと言います。がん告知後7年を経て放射線の過剰照射のニュースが気になるよしさんですが、ひとりで悩んでいるがんの患者さん、難聴の方に応援メッセージを発信しています。


上咽頭がんの放射線治療と副作用に関する情報は治療を受けている人、これから受ける人には参考になることでしょう