塩の道(其の六 千国街道 大町〜白馬)


2005年7月29日(金)

三泊四日のキャンピング。
キャンプ場をベースにツーリングしようという夏合宿企画である。

滞在地は白馬。
相棒にキャンプ道具一式を括りつけて・・・ではなく、移動は車。 
昨日、6時間以上もかけて太平洋側からひたすら北上してきたのだ。
A3大の日本全図を見ると飛騨山脈の北端に位置する白馬岳。
日本海はもう目と鼻の先にある。

三泊四日といっても両端二日はどうしても移動日になる。
中二日間でたっぷりとツーリングを楽しむ計画だ。

早朝、不気味に響く爆音に起こされた。
雷鳴のようにも聞こえるが正体はわからない。
モーニングコーヒーの湯が沸くのを待ちながらのんびりしていると、
音が一段と激しく響き、続いて空にぽっかりと熱気球が浮いてきた。
あれはバーナーの音だったのだ。
キャンプ場で熱気球を見ながら飲むコーヒーはまた格別。

 熱気球 バーナーは意外とうるさい

私達のテントサイトは松林の中。
学校が夏休みなので、混雑を心配していたが、意外なほど空いている。
デジカメや携帯電話の充電のために電源付きサイトを選択。
これだけで1,000円アップである。
 我らの基地

食事は、キャンプだから一応自炊。
今朝のメニューはパスタとサラダ。
だが、手間隙かけて作ったりしないのが、我ら流。
陽が長い季節でもあるし、少しでも走る時間に充てたいのだ。

出かけるとき、テントやタープはそのまま。
こまごましたものは車に積んでおく。
食器などの洗い物をすませて9時走行開始。
午前中に林道経由で大町まで移動する予定だ。

キャンプ場から、ものの数分。
早速、塩の道、千国街道の道標を発見。
千国(ちくに)街道は松本から糸魚川までおよそ120キロを結ぶ街道。
塩の道、北塩ルートのほとんどを占める。

歴史遺産の広報にどの程度力を入れているかで、
その地に対する好感度も違ってくるのだが、ここは点数が高い。
自転車が乗った白馬小径の印がかわいらしい。
 田園風景のなかにぽつり

水の豊かな所に田んぼあり。
ここ白馬も稲作が盛んのようだ。
歴史的に見れば、登山やスキーといったレジャー産業による発展以前は
典型的な農村だった白馬村。
庚申塚や馬頭観音など街道筋の名残も多い。
 バックは白馬五竜スキー場

大糸線、簗場駅前の電話ボックスは階段の上にあった。
そう。 ここは雪国なのだ。
雪が降ればこの階段は埋もれてしまうに違いない。
 階段を上って電話をかける

簗場駅から塩の道を離れて林道へと入る。
途中にあるのはサンアルピナ鹿島槍スキー場。
標高はおよそ1100メートルである。
中綱湖がおよそ820メートルだから標高差はさほどでもないが、
立ち上がりの急な斜面を、這い上がって行くようでかなりきつい。
45分ほどで到着した。
夏のスキー場

夏のスキー場は冬本番に向けての改修・整備作業中だった。
最近はスキー人気もかげり気味。
『昔ほど人は来ないね』とは現場で働くおじさんの声。

ここから南下するように林道を進む。
アップダウンを繰り返しながらも登り気味。
最高点1320メートルあたりを通過する。

スキー場から1時間あまり。 突然に視界が開けた。
パラグライダーのテイクオフポイントになっているらしい。
眼下に広がる木崎湖から大町にかけての景色がいい。
 木崎湖から大町の街並みが広がる

切り立つ崖の上、おそるおそる前に出てみると、湖畔に×印が見える。
そこがランディングポイントらしい。
吹き上げてくる風が強い。
絶景をしばし楽しむ。
 ×印がランディングポイント

パラグライダー場をすぎても林道はアップダウンを繰り返す。
小熊山を巻くように走ってから、ようやく下り一方になった。
 いいね、このゆらぎが

パラグライダー場から40分ほどで林道終点。
木崎湖畔である。
 林道終点

ここからまた塩の道をひろいつつ、信濃大町に向かう。
大糸線沿いには田んぼが広がり、よく見るとすでに花が咲いているものがある。
広い広い田んぼは、いわゆる里山での田園風景とはまた違う。
どこか西洋的である。
 緑の絨毯

大町はちょうど夏祭りの日だった。
若一王子神社の例大祭。
有名な流鏑馬神事の的がドンと置いてある。

車が通行止めになった道路に子供達が色とりどりのチョークで落書きをしている。
公認の落書き広場になっている。
 流鏑馬の的

商売よりも祭りが大事。
商店街の店も多くが休業している。
町をあげてのお祭りなのだ。
数少ない営業中の店を探して遅い昼食。
もう15時を過ぎている。

ところで信濃大町は富山へと抜けるアルペンルートの入口でもある。
途中輪行すれば富山まで抜けられるのだろうか。
黒部で有名なのは黒部ダム。
アルペンルートの象徴とも言える、通称黒四ダムだが、
私は『高熱隧道(吉村昭著)』で描かれた黒部第三発電所にまつわるものを見てみたいのだ。

頼んだものが出てくるまで、このあとのルートを検討
朝出る時には、大町のあと嶺方峠を越えようと予定していたのだが、
すでに時間と脚に余裕が無い。
ここまでで48キロの走行だ。
塩の道をたどりながら、白馬のキャンプ場へと戻ることにした。
 中綱湖畔にて

木崎湖、中綱湖、青木湖と、仁科三湖の湖畔を気持ちよく走りながらの帰り道。
姫川の源流にちょっと寄り道する。
 姫川源流の碑

説明板によれば新潟糸魚川まで全長58キロ
平均勾配は1000分の13とある。
鉄道的に表現すれば13パーミル。きつめの勾配である。
夕方になって気温が下がっているからだろう
水面から川霧が立ち昇っている。
 源流付近の流れ

流れの中には梅花藻。
清流の証である。
 梅花藻

姫川源流を後にしたのがもう18時近かった。
キャンプ場に戻ったらすっかり陽も落ちて真っ暗。
近くの温泉で汗を流し、焚き火を見ながら夕食だ。

本日の走行距離:78キロ

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