塩の道(其の四 高遠から塩尻まで)


2004年11月23日(火)

ツアー最終日
まだ今日は始まったばかりなのに、なぜか気持ちは浮かない。

 南アルプスを望む

宿の食堂が開くまで、ロビーで朝刊に目を通してみる。
目当ては昨日の飯田市役所訪問の記事。
地方版に写真つきで載っていた。 かなり大きく出ている。
今は地方版もカラーの時代だ。 これはお土産になる。

 信濃毎日新聞に載りました

また今日も大盛りご飯の朝食。
気のせいか体が重くなった。

9時、杖突峠に向けて出発。
太陽はかなり高いが、気温はかなり低い。
ひなたを走っていても、流れる風はひんやりする。

 ひなたは暖かいけれど

山陰に入ると道端の草は白く霜をかぶっている。
グローブを通して寒気を感じるほどだ。

 日陰は寒い

いくつかの集落を抜けて四日市場付近を通る。
街道沿いの小さな集落には、なまこ壁の蔵が目に付く。

 四日市場付近

荒町で小休止。 ここまで40分あまり。
この小休止のとき、昨日の林檎をまたかじってみた。
明らかに味が違う。 まるで気が抜けたように味気がない。
もぎたてのときとは明らかに違って皆一様に驚く。
いつも食べているのはこの味なのだろうか。
食べ物の本当の味を知らないことが、なぜだか恥ずかしく思えた。

ちょっと脇道を行ってみると、神社がある。
小さな神社だが、ぴりっとした威厳を感じる。

 荒町 貴布禰神社(きふね)

さらに先へ行くと道しるべを見つけた。
左江戸道とは、中山道経由か東海道経由か。
どうもこの脇道は旧街道筋のようである。

 左 江戸道  右 山道 と読める

そのまま旧街道筋を抜けて国道に戻る。
峠に向けていよいよ上りもきつくなってくる。

荒町から約30分、松尾峠への分岐点にかかったが、
この林道(日影入林道)は通行止めになっていた。
地図をみると道はくねり、峠へと続き下っている。
走ってみたい気がする。

 松尾峠へ向かう林道入り口

息をととのえて走行開始。
勾配はますますきつく、1:1ギアでも音をあげそうだ。
旅も4日目になり、脚にネバリがない。

 杖突峠に向けてペダルをこぐ

松尾峠への分岐点から約30分。
杖突峠に到達した。 標高1147メートル。
ここまでの距離は宿から約20キロである。

戦国時代、武田信玄の軍勢は、ここ杖突峠を通って
昨日訪れた高遠城を攻め落としたのである。

 杖突峠

ピークでいったん全員集合し、少し下ったところにある展望台に立ち寄った。

 杖突峠の展望台

テラスに出てみて、その絶景に皆息をのんだ。
眼下に広がる大パノラマに、まるで鳥になって
飛んでいるかのようなムズムズした気持ちになる。
来てよかった、とつくづく思う。

杖突峠からのパノラマ写真はこちら

ここからの下りは山陰になって、路面凍結のおそれもある。
ゆっくりと慎重に下っていくが、案の定ところどころに凍結があった。
だが下るにつれ、確実に気温は上がっていく。
諏訪湖が海抜760メートルほどだから、ざっと400メートル近くを
駆け下りることになる。

峠を下りて、諏訪大社上社近くで昼食だ。 時刻は11時50分。
昼食のあと、ここまでの旅の安全への感謝と、残る旅の安全を祈願するために
上社本宮へお参りする。
諏訪神社は信濃国の一之宮。 そしてあまりにも有名な御柱祭。

御柱とは、上社の本宮、前宮と、下社の秋宮、春宮。 
それぞれの四隅に立てられるので全部で16本もあるのだった。
そんなこととは知らない私、2本の御柱を拝めただけで満足してしまった。

本宮一之御柱 諏訪大社 上社本宮 本宮二之御柱

本宮を後にして諏訪湖へ。
湖畔のサイクリングロードに乗り、ポタリングスピードでゆっくり走る。

諏訪湖畔を快走する 旧釜口水門工事に使われた
ガソリン機関車
釜口水門から諏訪湖を望む

諏訪湖の西端が釜口水門。
ここから天竜川が始まるのだが、水門の幅がいきなり天竜川の川幅になる。
水量はかなり豊かだ。

この釜口水門、天竜川と諏訪湖の間を船が行き来できるように、
舟通しと呼ばれる水路が設けられていた。
小船が通れるほどの幅しかないが、それはパナマ運河と同じ閘門式だ

 釜口水門から始まる天竜川

 穏やかな諏訪湖

14時15分、釜口水門から塩尻峠へ向けて出発する。
国道20号を走るこのルートは、交通量も多く自転車向きではない。
おまけに工事中で道幅が狭くなっているところもあって、いっそう走りにくい。

 塩尻峠への国道(大型車多し)

釜口水門から約40分で塩尻峠に到着。
朝から46キロあまりの走行だ。
峠の標高は999メートル。 わずかに1000メートルに達しない。

 塩尻峠

 塩尻峠で小休止

最後の峠に達し、ここまで走ってこれたという達成感の一方で、
峠を下れば旅も終わりかと思うと、いっそう気持ちが沈んできた。
ボトルに残った酒を、まだ半分あると考えるか、もう半分しかないと考えるか。
だが、真壁仁の『峠』にはこうある

たとえ行く手がきまっていても
 ひとはそこで
 ひとつの世界にわかれねばならぬ

峠から約45分で塩尻駅に到着。
ここが遠路運んできた、塩とお茶の最終目的地である。
この塩尻という地名、太平洋側、日本海側いずれからも塩のドンヅマリ
というところから来ているというのは本当のことだ。

駅にある観光協会の方に手渡しするのは、なんと私の役目。
観光協会の方からは、おいしい飲み物を頂いた。

 塩尻駅

輪行組はここから帰路か、と思いきや、我々の最終目的地は平出遺跡。
夕闇せまる塩尻駅から平出遺跡へと走る。
あっと言う間にあたりは暗くなっていく。
平出遺跡に到着し、無事故完走の記念撮影をして旅は終わった。

東京方面の3人は塩尻駅に戻って輪行で帰るのだが
静岡方面の参加者はサポートカーに分乗して帰る。
家に帰れる安堵感と、目的を失った一時的な戸惑いとが入り混じる。

とうとう別れの時。
挨拶の言葉と同時に、どちらからともなく、握手の手が伸びる。
ガッチリと交わす手から、長旅を共にした仲間の熱さが伝わってきた。

一緒に走った皆さん。サポートスタッフの皆さん。本当にありがとう。
この旅を一生忘れない。

 東京方面輪行組

本日の走行距離:62km

四日間の走行距離:280km

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