朝日連峰 八久和川 その2
8月18日
コースタイム;芝倉沢出合5:50〜小国沢出合8:00/8:20まで休憩〜茶畑沢出合9:25〜平七沢出合12:25〜岩屋沢出合13:50〜天狗小屋16:40

早くも3日目。
本来の予定なら中俣沢へ足を踏み入れているはずだったが・・・。

昨日一日停滞したのでやる気十分。昨日の夕方からどんどん減水していっていたので、あと心配なのは水の濁りだけだ。
明るくなると同時に様子を見に行くと、濁りはとれており、本流遡行の続行決定。
焚火を軽く起こして朝食と着替えを済ませ、出発の準備にかかる。

芝倉沢出合いからは、少しゴルジュっぽくなり、早速腰まで水に浸かったりする。
一昨日のような気温や天候と違い、早朝で気温さほど高くなく、雨で増水したせいか水温も低くなったような感じなため、水に浸かるのはちょっとつらい。
水量も減水はしているが、平水+10〜20cmといったところか。

芝倉沢から先にみえていた三百間沢出合で大きく右に曲がると、緑色のちょっとした瀞となる。
左岸の岩棚を利用し、最初の淵を軽く巻くような感じで突破。
この辺りはなんでもないようなところでも、腰までの深さがあったりといろいろルート取りを考えながら進む必要があるが、それがまた楽しくなってくる。

また瀞やゴルジュ状になっていても沢幅が広く、両岸は樹林となっており、圧迫感はない。
そんなとき、モコモコさんが「あっ、クワガタだ。」というのでてっきりクワガタ君がどこかに泊っていたのかと思ったら、「上、上」とモコモコさんが更に言うので上をみると、クワガタ君が“ぶーん”と飛んでいる。
鳥のように早くなく、蝶のように軽やかでなく、とにかく飛ぶのがやっとという感じで、怒ったときに立ち上がったときと同じような角度で、力強いがノロノロと飛んでいく姿に心が和む。
飛行速度がやたらに遅いクワガタくんであるが、やはり飛べるということは凄い。
我々が眺めている内に、クワガタくんはどんどん先に進み見えなくなってしまった。

右に左に渡渉を繰り返し、へつりを多用していくと、栃の木沢出合手前のちょっとしたプールとなる。
天気予報では夕方以降また雨が降るらしいので、早めに核心を抜けておくために巻いて突破することにした。
栃の木沢の出合いはその他にも小沢が入っているので、それらを横断してから下降した。

それからも渡渉、へつりの繰り返し。
うれしくも太陽が顔を出してくれるようになった。
思ったよりも時間がかかってようやく小国沢出合に到着。
出合いは釜となっている。ここは予め右岸に渡っておき、小国沢を横断して通過するのが楽だ。

出合いで休憩とする。
小国沢出合いの奥に泊場があるとの情報があったので、少し奥へ様子を見にいくと絶好の泊場があった。

小国沢からはそれまでのようにルート取りを気にすることもなく、歩けるところをそのまま行けばよく、開けているところも多く開放感がある。
太陽が出てきてからは、体温を上げに沢山のケロンパが出てきた。緑、赤、茶色、珍しく黄色といった色々なケロンパだ。
ところが、ケロンパがいるということは、ニョロニョロしたものもいるわけで・・・。
なんでもないところでモコモコさんが「うぎゃー!!!」と悲鳴をあげた。慌てて振り返ると「ヘビをざわっでじまっだ(触ってしまった)・・・」とのこと。
なんでもちょっと岩に指をついたらムニュっといったあとニョロニョロと動くモノがあったので見るとヘビだったとのこと。幸いにもまだ体温が上がらず動きが鈍かったのでヘビに反撃されるようなこともなかったようだ。

気を取り直して進む。
沢床は穏やかだが、それを取り巻く両岸が見事だ。
のんびりいくと茶畑沢出合。
茶畑沢は出合の辺りでちょっとした小滝を持っている。

茶畑沢を過ぎると沢はまたゴルジュ状になってくる。
またへつりや渡渉の繰り返しで進むと、大ハグラ石滝と思われるようなところがでてきた。
いろいろな記録を読むと手前で右岸に移っておき、巻くことが多いようだ。
今日は水量が多く渡渉は大変そうだ。
とりあえずそのまま左岸の岩棚を進む。
左に曲がった先に滝というよりも、水量が豊富な落ち込みがあり、落ち込みの左岸は大きく岩がかぶさるような感じで張り出している。
岩棚はその手前で終り、そのままかぶさった岩の下をくぐり、滝の上で飛び石伝いに渡渉してここを通過した。
思ったよりもあっけなかったような気がした。

ここよりも、すぐ先にあるS字のゴルジュのほうが時間がかかった。
S字のゴルジュは最初深い瀞だ。
これも岩棚上を歩けたので難なく通過。
瀞がいったん落ち着いた先が落差はないが、小滝をかけながらカーブをしている。
右岸の大岩に残置ハーケンとそれに複数の残置スリングがかかっている。
ここから5mほど下降して小滝を登るのがルートらしいが、懸垂しないといけないのでこれを避けて、そのまま小さく巻けそうだったので、さらに大岩を登ることにする。
すると落石がひどく、こちらのほうが苦労しそうだったので岩から降りることにする。

下降距離はわずかであるが、空中懸垂となった。
小滝の横は大きな岩があり、どうやら取り付けそうだ。腰まで浸かって岩に取り付き突破した。
要所要所に現れるこんなところがスパイスとなって面白い。

沢はゴルジュ状が続くが、流れ自体は穏やかだ。
やがて深い瀞がまた現れた。
先がわからないので、まず左岸の大岩に登って進む。
すると先がスパッと切れていて進めなくなってしまったので、戻って大岩の手前のルンゼから巻き上がる。
少し登ると緩やかな台地となっており、歩きやすい。
すぐ降りたかったが、下降点が見つからず少し先まで進み樹林が下まで降りているところから下降した。

次なるイベントは、ガイドに「歩いて行けた」とある平七沢出合の前にある自然プールだ。
水は澄んでいて流れも穏やかだ。
モコモコさんが最初突入するが、すぐに足がつかなくなり戻ってきた。
そこで左から行ったほうがいいのではと声を掛けると、右岸のへつりで進み始めた。
調子よくいくモコモコさんの後を追う。
最初はいいが、だんだん流れが強くなり、先に進むのが辛くなる。モコモコさんも辛そうにしているので、てっきり戻るのかと思ったら、意外にもかなり先まで突破して、立てる場所があるらしく、水から上がっている。

モコモコさんのところまではと思うが、とうとう手が岩から離れ、流れに乗ってしまった。
そのまま対岸へラッコ泳ぎで渡り、へつって突破する。
結局は最初モコモコさんが進もうとしていた方が正しかったらしい。
対岸のモコモコさんにはお助け紐を投げてから引っ張り寄せる。
こんな感じでちょっと遊んでしまった。

自然プールが終わるとすぐに平七沢出合が見える。
平七沢出合手間の右岸には、絶好のBPがあり、お盆(といっても2〜3日前)には多くの遡行者やや釣り人でにぎわった様子が伺えた。

平七沢からは時折淵や瀞が現れるが、川原歩きが主になる。
登山道が横切る岩屋沢出合への目途もたったので、長めの休憩をとる。
再び出発すると、雨がぱらついてくる。天気予報では、今日は昼過ぎからまた雨が降るところがあるといっていたのでこれまで雨に降られずにラッキーだ。
雨具を着るほどでもなく、やがて雨も止み、休憩場所から.30分ほどで岩屋沢出合い着いた。

登山道の横断点(取り付き)にはテープで印がつけてあるが、ボーっとしてると通り過ぎてしまうような感じだ。
少し登山道を上がると、ビバーク適地がある。
ここから天狗小屋へ今日中に上がるかどうか16:00を時間制限として設けていたが、まだ14:00だ。
誰もいないし、最後の夜を焚火をして過ごすのもいいかなとも思ったが、天気が下り坂だし、明るい内に小屋につけるので、もう一頑張りする。

のっけから急登だ。
強烈な前線の置き土産の寒気のお陰で暑くないのが幸いだが、いままで標高差はあまりない行動だったにも関わらず、水に浸かってきたせいか、この急登が応える。
また、最近沢では飲んだくれているのでめっきり登山力(?)が落ちた我々はヒーヒーいいながら登り続けることとなった。
それでも見晴らしが良くなる標高1200m付近までたどり着く。ここまでくれば急登はほぼ終りだ。

山頂を通過し、小屋が見えると元気が戻ってきて、モコモコさんと「てんぐ、てんぐ」と掛け声をだしながらペースを上げ、無事天狗小屋に到着。

小屋に入ると管理人さんがでてきて、2階へ上がるように指示をうける。
小屋の外で靴を脱いだりと装備を解いていると、その間に管理人さんが2階の様子を見てくれていたようで、外にでてきて、先に到着しておりそのとき水場にいたパーティに場所を空けるように水場まで言いに行ってくれた。
小屋に入り、お店を広げ始めてからもいろいろと管理人さんは面倒をみてくれ、我々が八久和を遡行してきたことを知ると、今日も1パーティ八久和川上流(このあたりは出谷川という)へ降りていったことを教えてくれた。
同宿となった先着パーティーは釣り人だったので、お互い気が緩む(沢に用事があるものは大抵夜更かしだから)。
予想通り、18:00頃から宴会が始まり、その内管理人さんも交えていろいろ楽しい話を聞いたりしているうちにあっという間に夜が更けていった。
八久和の最後の夜焚火を囲むのもよかったかもしれないが、今日は小屋まで上がってきてよかった。
雨が降っても心配なく快適な夜を過ごせた。


8月19日
天狗小屋〜大井沢

とうとう楽しかった朝日での夏休みも最終日。
管理人さんも今日は下山日だそうだ。
出発は、我々、釣り人、管理人さんの順。

途中、セミの抜け殻を見つけて「セミバッジだ」とシャツに付けたりして遊びながら下る。
登山口に着くと待ってましたとばかりにアブがたかってくる。
小一時間アブと格闘しながら歩いて大井沢の「湯ったり館」へ向かう。
靴を脱いで温泉に入る準備をしていると管理人さんが到着した。さすがに管理人さんは早い。
管理人さんと一緒に汗を流して、モコモコ祭り「八久和の旅」のフィナーレとなった。


水量多めだが十分遡行可能 モコモコ祭りを演出する日差し
三百間沢先の瀞 渡渉するモコモコさん
この辺りはへつりの繰り返しだ 名もなき場所。八久和川は雄大だ
大ハグラ石滝 水量豊かな流れ
大岩沢出合からの瀞 自然プールで泳ぐ
モコモコ祭り最高の日 雲が広がってきたが、楽しいとき


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8月18日
 芝倉沢出合5:50〜小国沢出合8:00/8:20まで休憩〜茶畑沢出合9:25〜平七沢出合12:25〜岩屋沢出合13:50〜天狗小屋16:40

8月19
天狗小屋〜大井沢