平ヶ岳
大白沢クロウ沢キノクラ沢
〜平が岳周辺の沢はやはり美渓であった〜
2007年8月4日〜8月6日

いよいよ梅雨明け。
山人&モコモコも夏休みだ。
行き先は大白沢のキノクラ沢だ。以前、平が岳周辺の沢を何本か遡行したが、いずれも美渓であった。
例によって、以前からモコモコさんによって立てられていた計画であるが、今回は山人も乗り気だ。
心配は、週末を狙ったかのように接近している台風だ。モコモコさんが、台風が寄ってこないように呪い(本人曰く、のろいではなくおまじない)をかけていたがどうなることやら・・・・

アプローチ

8月3日
東京駅20:24〜浦佐駅22:03/22:16〜小出駅22:25/シルバーライン入口

コースタイム

8月4日
 シルバーライン入口6:30−奥只見ダム7:00/船7:50−尾瀬口8:30/8:40-小沢平(砂子平)8:48
入渓9:20〜シロウ沢出合12:45〜クロウ沢出合15:05(雨の為30分ほど休む)〜キノクラ沢出合手前15:50(BP)

8月5日
 BP6:15〜キノクラ沢出合6:20〜1750m付近三俣12:40〜稜線15:00〜平ヶ岳16:55〜池の岳

8月6日
 池の岳5:00〜バス停9:30



一日目

8月4日
コースタイム; シルバーライン入口6:30−奥只見ダム7:00/船7:50−尾瀬口8:30/8:40-小沢平(砂子平)8:48
入渓9:20〜シロウ沢出合12:45〜クロウ沢出合15:05(雨の為30分ほど休む)〜キノクラ沢出合手前15:50(BP)


 夏休みに臨時で運行される早朝の船とバスに乗るため、前夜のうちに平が岳周辺の沢へ行くときは恒例となったシルバーライン入口まで入っておく。
ここでは比較的快適に眠れた印象があるが、真夏のこの時期は蚊が大活躍しており、ほとんど眠れなかった。
タクシーの予約時間は6:30だったが、眠れないため5:30には起きる羽目になってしまった。

起きたときは雨は降っていなかったが、夜中は小雨がしばらくふっていて、雨が止んでいる今も空は厚い雲で覆われている。

タクシーが着てくれたときにはとうとう雨が降り出す。
折角久しぶりの山なのに何たることだ。
ほとんどトンネルのシルバーラインを奥へ奥へと進むと雨も止んできた。「いいぞこのままもってくれー。」と祈る我々をタクシーは奥只見ダムへと運んでくれた。

船着場へのんびり歩いていき、船の時間まで缶コーヒーを飲んだりして時間を潰す。
いよいよ船の時間だ。乗客は結構いて10人余りだ。
40分かけて尾瀬口へ到着。すぐに乗り継ぎのバスに乗り換える。
平が岳登山口で降りると、入渓点まで結構歩くことになるので、小沢平の手前の砂子平で降ろしてもらう。

装備を付けて準備体操をしたあと入渓点へ向かう。
只見川を渡渉してから大白沢を遡行しようとすると、モコモコさんが「森の中を行ったほうが時間が短縮できるからいいよー」というので、森の中を行くとすぐに踏み跡に出る。
踏み跡は明瞭で歩きやすい。
魚留沢までこの踏み跡を辿る。

魚留沢までくると、踏み跡がわからなくなったので、沢に下りる。
このころから時々日差しがでてくるようになる。
途中、釣り人に会う。挨拶をし、先に行かせてもらう。
踏み跡がありそうなところは樹林に入ったりして更に先に進むと、更にもう一人の釣り人らしき人に出会う。
その先から広い大白沢も岩盤が発達してきて、ナメ状になってくる。とても綺麗だ。
ここを通るのは初めてではないが、全く記憶にないのでなんだか感動した。

快適に歩いていくと、ゴルジュ状になる。
はっきりした踏み跡を使って巻く。
威圧感はないが、このあたりからは側壁が立ってくるところもでてくる。
池の沢手前のゴルジュを突破するのにゴルジュ入口で少し泳ぐ。その先の小滝が水量が多く越えられそうにないので、右岸を小さく巻く。「そういえば前もこんなことしたかも」と言っては見たものの、全く記憶がないのが情けない。

滝で出合う池ノ沢の先の2段6m滝まできてやっと思い出す。
そうだこのすぐ先がシロウ沢との出合いで、前は出合のところで泊ったのだった。
テン場は相変わらず快適なところだった。わずかその先にあるテン場も快適であるが、シートや古びた鍋が放置されていて、残念だ。
ここで軽く行動食をつまむ。

わずかに川原歩きをすると7m2段滝となる。
滝上は再び岩盤が発達した渓相となり、岩盤をぺたぺた歩いたり、水に浸かったり、へつったり、小滝を快適に登ったりと、とても美しく飽きさせない遡行が続き楽しい。
この辺りはシロウ沢よりもきれいかもしれない。

川原はほとんどないが、樹林がすぐそばまで下りてきているので、困難なところもなく快適に進む。
ところがなんだかモコモコさんのペースがあがらずなんでもないところでもてこずっていることがある。夕べの睡眠不足が応えているようだ。
モコモコさんの体調不良に比例するかのように空が曇りだして、雨がぱらつくようになる。幸いにしてすぐに止んでくれるが、早くテン場につきたいものだ。

右岸から沢が出合ったのでとうとうクロウ沢出合いまできたかと思ったが、それにしては時間が早いような気がする。
しばらく遡行を続けると、本当のクロウ沢出合いとなる。本当のクロウ沢はちょっと暗いところだ。
ここで雨がまたもや降り始めた。今までとは違って割りとしっかりした降りだ。
雨の様子を見ることにするが、これはしばらく止まないかもしれない。そこで快適ではないが、出合いの対岸になんとか泊れる所があるので、ここでのビバークを視野に入れて整地をしながら様子を見ることにする。
整地が済んでタープを張ろうとして荷物を広げると、ガーン!!!!なんとビール缶が一つ破裂していた。どうりでビールの匂いがした訳だ。
しかしこれが山の神様への御神酒となったのか、15分ほどで雨はやんだ。
モコモコさんにどうするか聞くと、この先予定のBPまでそう距離もないし、ゴーロ状のはずで、頑張れるというので再出発する。

ゴーロは比較的大きな岩が多くよいしょよいしょという感じだが、モコモコさんが「テン場の匂いがする。」といい始める。そうかなあと思ったが本当にわずかな距離で沢が開け、「ここに泊らなけりゃ嘘だろ」というほどの快適で流木が豊富な絶好のB.P.に着いた。
念の為、荷物を置いて現在地を確認するため先に進んでみる。
右に緩くカーブした先がどうやらキノクラ沢の出合いらしい。
出合いまであと1〜2分というところで、モコモコさんが「なんだか背中と腰が異常にだるいよ、ここで待ってる」と言
って岩の上に座ったまま動かなくなってしまった。
すぐそこなので一人で出合へいくと、確かにアサユウ沢とキノクラ沢の出合いであった。

荷物のところへ戻り、整地不要なので、周りの草だけ軽くかってタープを張る。
流木が豊富なのでいい薪がすぐに集まったところで焚火の焚き付けをモコモコさんに任せて、着替えを済ませて夕食の準備にかかる。
モコモコさんも着替えてカップめんをすする。
焚火も安定してきて、楽しい夕食となる。夕食前に「だるいよー」と横になっていたモコモコさんも少し元気になったようで焚火の近くで服を乾かしたりする。
台風の影響か、気温もさほど下がらず焚火も良く燃えるので暑いくらいだ。
そこそこ服も乾いたところでタープの下に戻り、お酒を楽しもうと思ったら雨が降り始めた。
モコモコさんも風邪がぶり返したか「熱でてきたみたい」といい始めるのでいつもと比べては時間が早いがシュラフに包まることにする。


大白沢出合 池の沢出合前のちょっとしたゴルジュ
クロウ沢とシロウ沢出合 クロウ沢に変化が出始める
これといった滝はないが飽きさせない 雲が厚いのが残念だが楽しい。
水が澄んできれい まだまだ楽しませてくれる


二日目
8月5日
コースタイム; BP6:15〜キノクラ沢出合6:20〜1750m付近三俣12:40〜稜線(1936mピーク)15:00〜平ヶ岳16:55〜池の岳

夜中結構長い間降っていた雨は止んでいるが、今朝も空は厚い雲で覆われている。
今日はゴルジュの中遡行となるので気が重くなる。モコモコさんも昨晩同様調子が悪そうだ。
モコモコさんに先にいけるか聞くと、頑張れるようなので朝食を摂り準備体操をして出発。

BPから5分ほどでキノクラ沢出合いだ。
アサユウ沢は登れない滝を掛けているが、キノクラ沢はゴーロと倒木で埋まった滝で出合う。
滝上は左岸が大きく崩壊していた。
崩壊地の先で沢が左に曲がると、両壁がV字状で草つきとなってくる。ゴルジュの始まりだ。

ゴルジュの中は、定期的に小滝がかかる。
難しいものはなく、滝を越えること自体は面白いが、日差しがないので、水に浸かったり、冷たいシャワーを浴びたりしながら越える滝がほとんどでちょっと辛い。気温が高くカンカン照りならとても楽しいところだったろう。
ちょっとしたナメ滝の釜をへつってから水流沿いを登るときにドボンという音がするので、後を見ると、モコモコさんが足を滑らせて落ちたらしい。そのまま取り付こうとしているが無理らしく最初からやり直し。
本調子でなく冷えたらしいので、ザックの荷揚げをして空身で無事クリア。本人も「ちゃんと足置いたはずなのになあ」といってなぜ落ちたのか不明らしい。今日は(いつもか?)集中力を欠いて危ないようだ。

そんなこんなで滝をクリアしていくと、沢が少し開ける。
再びゴルジュが始まると、今度は10mCS滝だ。最初水流をモロに浴びながらCSの隙間を登ろうとするが無理で、巻きは結構高く追い上げられて降りるのも大変そうなので、右壁のバンドをトラバースして登るルートで行くしかなさそうだ。

取り付いてみたものの、最初2〜3のところでちょっとした岩が突き出していてバンドを塞ぎかけている。
空身で行ったほうがよさそうだ。
バンドには上がれるが、やはり岩の突き出ているところで行き詰まってしまう。
そこでハーケンを2枚程打つがやはり躊躇していると、いいところに残置ハーケンがあり、岩の向こうのバンドへ回り込むのに成功する。しかしここで荷揚げは大変そうなので、そのまま滝上までランニングをとりながら滝上へ出る。
滝上には適当な支点がないので、大きな流木を利用する。
モコモコさんには自分の荷物だけ背負ってあがってきてもらう。
モコモコさんが登りきったところで、自分の荷物をとりに戻ることになるが、モコモコさんとの意思疎通がうまくいかず時間をかなり無駄にしてしまい、この滝にかれこれ1時間近く費やしてしまった。

そのあと10m滝が二つ出てくる。
最初のCS滝から数えて二つ目の10m滝はスダレ状のきれいな滝だ。
このあたりから日差しがでてくるようになっていたので、シャワークライムとなったが快適に登る。

三つ目の10m滝は落ち口の辺りがちょっと悪そうなので、ザイルを出す。
落ち口の2〜3m下くらいまでは非常に簡単。途中ランニングをとったが流れが悪く、滝上まで登って確保を取ってからザイルの流れを邪魔するところを外しに戻ったりして少し時間がかかる。
続いてモコモコさんの番だ。落ち口の辺りで時間がかかっている。
確保地点からは岩が邪魔してモコモコさんの様子がほとんど見えないのだ。
ようやく到着したところで、時間がかかった理由を聞くと「登るルートを間違えて戻ったら草にザイルがからまって外すのに時間がかかった。」とのこと。

こんな調子で大丈夫か?と思ったが、どうやら核心部は無事突破したようで、少し沢が穏やかになる。
綺麗なナメやナメ滝を明るい日差しの中バシャバシャ行けてとても爽快だ。
本当に飽きさせない美渓だ。

快適に小滝などを越えていくと、スノーブリッジが崩れてからあまり日数が経っていなさそうなブロックが沢を埋めている場所となる。
少し乗ってみると、崩れたなりにも安定していたので、モコモコさんと間隔をあけてそうっとブロックの上を歩いてこの場所を通過した。
ブロック地帯の先の沢の水がやたらに温かく感じる。どうやらこの上にはもう雪渓はなさそうだ。

やがて沢が三俣になると、沢は一気に滝をかけて高度を上げる。
それぞれが10m〜15mほどの滝の連続というか、合わせて大滝80mとでもいうようなところだ。大抵が階段状となっており、樹林もそばまできているのと高度感があまりないので、一、二箇所モコモコさんにお助けを出したくらいでどんどん登っていける。太陽もでていてとてもきれいだ。

大滝を登りきったところで少し休憩。とても気分がいい。
大滝上は源流の趣だが、相変わらず小滝やナメ、発達した岩盤上の歩きで快適この上ない。
標高1750m付近の二俣は両俣とも滝をかけて入る。
この二俣は左に入りたいが、左俣の滝は登れないので、一度右俣の滝を登ってから左俣の滝を巻きに入る。
樹林があるので難なく左俣の窪へ入ることができた。
滝上はそれまでの明るい感じが一転して、時折ヤブが被るようになる。
それでもナメや、途中あった6mほどの滝は右から巻いた他には難なく小滝を越えてぐんぐん標高を稼いでいける。

標高が上がるにつれて雲行きが怪しくなってきた。
水も心細くなってきたので水を汲んで詰にかかる。
幾度も現われる分岐を慎重に選んでいくと、稜線が見えるようになる。1936mのピークに早く出るために草原を左に見ながら上がる窪を選んでいくのがよさそうだ。
モコモコさんと相談しているうちに雨がとうとう降り始める。雨具を着て雨が止むのを待とうとしたが今日の雨はしつこそうなので、先に進むことにする。

ヤブの薄そうなところを選んでいくと、稜線にたどり着き、平が岳へコンパスを合わせる。
平が岳へ向かうとすぐに湿原に飛び出る。
生憎のガスの中だが、感動的だ。湿原にはかすかながら踏み跡がついていてそれを辿る。
点在する湿原をつなぎながら歩く。バカ虫が近づいてくるようになったが湿原に癒される。
しかしそれも長くは続かなかった。小雨ではあるが止まない雨と大量のバカ虫がまとわり付いてくるのでゆっくり湿原をながめてという状況ではないのだ。

平が岳まであと半分という距離になると藪がでてくる。それに伴い踏み跡も分からなくなってしまう。
尾根を外さないようにヤブをこいでいく。
もうやだ!といいながら結構進んだ頃、右下に踏み跡発見。
迷わず踏み跡へと下降する。踏み跡に乗ってからはほとんど藪コギはなく、湿原や草原の中を歩く。
バカ虫は相変わらず耳を狙ってくる。
ヤブとバカ虫と生憎の天気で山頂までずーっと草原(湿原)が続いているが感動がなくなってしまった。
今思うととても残念だ。もっと満喫すればよかった。

ガスの中、ぼうっと平が岳の山頂付近にあるポールが見えて本当は感動的なフィナーレとなるはずであったが、雨はやんでいるものの、ガスと遠くで響く雷鳴のため直ちに池の岳へ向かう。
本当は恋ノ岐川に下降して泊り場を見つける予定であったが、時間も時間だし、これから雨が降ることが予想されるので、池の岳で泊ることにする。
途中平が岳山頂で泊ってもいいなと思ったが、モコモコさんにそれを言わないで池の岳へと向かう。
このころになると、風もあるのでバカ虫も退散していた。
水場への分岐で直接池の岳へ行くか水場経由で行くか悩むが、水場経由でいくことにする。
水場にはテントが1つ張られていた。
結局我々は池の岳で泊ることにする。
テントでないため、冷たい風が通り抜けて寒くなるが、モコモコさんがブルーシートでなんとか風の入口を塞いでくれたので、寒さに震えることもなく、また幸い雨も降らなかったので朝までぐっすり寝られた。



三日日
8月6日
コースタイム; 池の岳5:00〜バス停9:30


3日目は下山するだけ。
バスは午後の予約を取っているが、早起き(我々にしては)をして午前のバスで帰ることにする。
台倉清水までは、涼しかったのとほとんど樹林なので捗ったが、樹林から抜け出ると昨日の夕方あれほど欲しかった太陽が輝き始めた。
ぐんぐん気温があがり、途端にペースダウン。
何組かの登りの方とそれぞれ「暑いですね〜」と挨拶をしながらふらふらと下っていくとやっと林道だ。長かった。この暑さの中、これを登るなんて皆さん凄い体力で感心してしまった。
バス停に着く前に林道を横切る沢で顔を洗ってやっと生き返る。

バスに乗る前に着替えを済ませ、バスの予約の変更を伝えて一安心。
ダム行きの船は我々だけの貸切。船室に入らず、甲板に置かれたベンチで横になり、涼しい風の中居眠りをした。さらにバスの待ち時間を利用してダムのレストハウスでそばとビールで乾杯して夏休み第一弾は最高の状態で幕を下ろした。


アサユウ沢出合(アサユウ沢の滝) キノクラ沢ゴルジュの始まり
水に浸かったり・・・ トイ状の滝(晴れていれば楽しいところ)
10mCS滝 シャワーを浴びて快適に登る
落ち口がちょっと微妙 雪渓がでてきた
これからはぐいぐい登り高度を上げる 湿原をつないで平が岳へ


活動記録に戻る

トップへ戻る