谷川連峰
宝川温泉〜ウツボギ沢出合
〜今年にしては珍しく厳しい気象条件〜
2007年3月17日〜18日

昨シーズン天候にも恵まれ、素晴らしい展望と楽しかった滑りをもう一度ということで、ナルミズ沢へ。さらに欲を出して、ついでにウツボギ沢も滑ることができたらいいな。
今回は、車を出してくれるという同行者のSさんの好意に甘え宝川温泉から往復することにした。
天気予報は最初はさほど悪くなかったが、出発の日が近づいてくるにつれて、今更といった冬型の気圧配置の最中のツアーとなりそうな予報に。
あの素晴らしい斜面に再び巡り会えるのか?

アプローチ

今回は同行者のSさんが車をだしてくれ、公共の交通機関を使わなかったので省略

コースタイム

3月17日
宝川温泉7:25〜林業試験地8:45〜林道終点10:20〜尾根乗越13:20〜ウツボギ沢出合14:00〜途中引き返し14:40〜ウツボギ沢出合周辺15:20(イグルー泊)
3月18日
イグルー発8:40〜尾根下降開始11:35〜林道終点付近13:56〜宝川温泉15:45


一日目(3月17日)
コースタイム
宝川温泉7:25〜林業試験地8:45〜林道終点10:20〜尾根乗越13:20〜ウツボギ沢出合14:00〜途中引き返し14:40〜ウツボギ沢出合周辺15:20(イグルー泊)


 車を出してくれたSさんのお陰で余裕で前夜の内に水上入り。
水上IC付近は見事に雪がなく、先行きが不安になる。

宝川温泉に向かいにつれ少しずつ雪が出てくる。
宝川温泉の駐車場には2台ほどの車が泊っている。
我々もここに車を駐車して板をつけて林道を歩き始める。

林道の雪は数日前に降った雪が昨日の好天気でモナカになっている。歩くには楽だ。
途中にある小さな隧道は、出入り口に数センチくらいしか雪が無く、隧道の中に雪が軽く吹き込んでいる程度だ。昨年は入口付近に背の高さくらいまで雪があったというから、いかに積雪量の違いがあるかがわかる。
出発当初ちらほら降り始めた雪がだんだん本格的に降ってくる。
そして林業試験地観測所あたりになるとちょっとしたラッセルになる。

林道歩きの大抵をSさんがラッセルしてくれ林道終点に到着。
ここから夏道通りにいければウツボギ沢出合いも近いが、小雪の今年は宝川が埋まっていないかもしれず、夏道にある途中の小沢を横切る辺りを通りたくないので、八宝滝横の崖を思い切って巻いてしまうことにする。
そこで林道終点からは少し夏道を離れて、ヤブ沢横の小尾根を登り、ある程度登ったところからひたすらトラバース気味に登る。

この辺りは小沢があちらこちらから派生していて何度も尾根の乗り換えをしながら高度を稼ぐ。
途中からは膝までのラッセルだ。トップを交代しながら進む。
モコモコさんはこのあたりでやる気がダウン。すぐに大石沢に向かう気でいるが、せめて白毛門だけでも行こうと頑張る。
さらに交代でラッセルしながら登っていlき、布引山から南に伸びている尾根の末端にたどり着く。
この時点で既にお昼だ。
白毛門は無理だ。結局モコモコさんの希望通り白毛門はあきらめだ。

尾根の末端からは少し真北にトラバースしてウツボギ沢出合で宝川に入り込む小沢へ入り、この小沢を下降する。
風が強く視界が悪いが、すぐに樹林となり小沢めざしてトラバースする。
トラバース中はガリガリだったりヤブが煩わしかったりするが、すぐに下降する沢へたどり着く。
この沢はモコモコさんの読み通りで、短いが素晴らしかった。
距離が短いのでシールをつけたままの下降であるが、傾斜は適度に緩く、ここ最近降った雪のボウルとなっていて、沢なので日が当たらずフカフカの粉雪のままだ。
それぞれが歓声を上げて楽しいひと時を過ごす。
皆交代でフカフカ雪に一度は突っ込んだり倒れこんだりして笑いを取ったりしているうちに、ウツボギ沢出合いにあっという間に到着。
短いがとても楽しいところだった。

昨年は青空の下絶好の休憩場所だったウツボギ沢出合も、強風が吹き荒れている。
少し休憩をとった後、大石沢へと向かう。
宝川はウツボギ沢出合あたりは問題なく渡れるが、その上流はぽこぽこと穴が開いて水が見えている。
右岸を進む。
途中水を汲みやすそうなところがあったので、近づいてみると問題なく水が汲めることが分かり、ここで水を確保していくことにする。
沢の源頭から集めてきた風が一気に吹き降ろしてくるなか水を汲む。これで水作りに費やす時間を節約できる。
ますます強くなる風と降雪で時折ホワイトアウトになる中、大石沢を目指す。

昨年も滝つぼがでていた辺りにくると、左岸にちょっとした雪庇ができている。
水流がでている滝の右岸をそのまま小さく巻き登ろうとするが、モコモコさんから危険だからもう少し戻ったところから越えるように言われる。
そのままいけそうだったが、モコモコさんの助言に従い少し戻って高めに巻くことにする。
滝の落ち口の高さあたりはちょっとした壁になっているのでストックで少し雪を削ってから一歩踏み込むと足元から厚さ10cmでスパッと雪の層が切れ落ちた。
そのまま行こうとすると、後からモコモコさんとSさんが必死に「危ないから戻れー!!」と叫んでくる。
ここまで来ると戻るのも結構大変だが、なんとか二人の下へ戻る。
戻ると「見ているほうが怖かったよ。」といわれる。
その後「そういえば去年ここは左岸を巻き降りたところだよ。今頃になって思い出した。」とモコモコさんがいいだした。

さらに「引き返してウツボギ沢出合辺りに泊ろう。」とモコモコさんから提案。Sさんは「お二人の判断に任せます」とのことだ。
これからこの滝を越えて行くには時間が掛かりすぎており、何よりもますます風がひどくなるので引き返すことに決定。
帰りは追い風なので比較的早くにウツボギ沢出合辺りまで戻ることが出来る。
出合い付近でなかなかよさそうなところを見つけたので泊り場に決定する。
問題はテントを張るかどうかだ。
今回Sさんが重い思いをして3人用テントを担いで来てくれたので最初はテントで泊る予定だったが、この強風と一向にやまない雪に「lこの風じゃかなり防風ブロック積まないといけないよ。それだけのブロック積むのだったらイグルーできるよ。なによりもこのまま雪が降り続いたらテントだと夜中除雪しないといけなくなるのがやだな。」とSさんがいて3人になっても、モコモコさんの鶴の一声でイグルーで泊ることになる。(実はモコモコさんはイグルーの中にテントを張ることを企んでいたらしい。)

モコモコさんが積雪量を測ると、少なくとも2mはある。人手もあるし十分な積雪量なので、3人分の大きさでもいつも通りの時間で出来るだろう。
まずは3人で踏み固める。上越の雪なので底がある感じだ。
最初ブロックの切り出し方をSさんに実際にやって見せる。
何個かブロックを切り出してからは、モコモコさんがいつも通り積み上げ職人となる。
切り出し職人は山人とSさんの2人。今回は切り出し職人が複数なので、モコモコさんは現場監督も兼任する。

起用なSさんはすぐに切り出し技術を会得してどんどんブロックを切り出していく。
お陰で今回はいままでで一番大きく最初の円形を設定していたが、一段目をすぐに積み終わる。
次ぎは二段目だ。
二段目からはモコモコさんがスノーソーを必要とするので、モコモコさん専用に1本渡して、残りの1本はブロック切り出し職人が交代で使って休みながら切り出す。
それでも切り出すのが二人いるので、モコモコさんの積み上げがときどき間に合わなくなるくらいのペースとなる。
2段目も積み上げ終り、3段目ともなると凝り性のSさんは美しいブロックを切り出している。
モコモコさんからも「美しいブロックだー。」と賞賛の声が上がる。

だんだんドームが出来上がるにつれ、「直方体にして。分かる?レンガの形、ティッシュの箱の形だよ。」「薄めのブロックちょうだい。」と注文が入る。
そしてとうとう「もう作業できない。天井塞ぐのよろしく。」との声がかかる。やったね。
天井部分へブロックを載せる位置をモコモコさんがスノーソーを使って指し示してくるので、それに従いブロックを積んでいく。
天井ができたところで入口の掘り出しだ。

入口が開いたところで中からモコモコさんが掘った雪を出してくるので除雪をする。
拡張工事をモコモコさんと交代する。
前回同様スノーソーを使ってブロック状に切り出してどんどん外へ出す。
外ではモコモコさんとSさんが除雪する。
3人寝られるだろうといった大きさまで掘ったところでイグルーの外へでる。
モコモコさんとSさんが中へ入り中を整えて終わったところで3人で入ってみる。試しに3人で横になったところ十分な広さであることが確認できたので、イグルー作りを終了とする。3人いたので今までで最大の大きさであるが、作成時間は一番短くて済んだ。

最初に山人がイグルーに入り、靴を脱ぐ。
次にSさんが入るが、初めてなのでなかなか落ち着くことができないらしい。
外で待っているモコモコさんにはイグルーの隙間の穴埋めをしていてもらう。
そとの風が強いのでかなりの隙間を念入りに埋める。
モコモコさんが靴を脱いで、脱いだ靴はザックにしまって外に出すことにする。

3人がやっと落ち着いたところでお湯を沸かしてラーメンを作る。
今回は珍しく豚骨味のラーメンだ。
3人で回し食べる。第一声は「こんなうまいラーメン食べたことない」だった。結構今日の天気が身に応えていたのと、イグルー作成で体力を使ったのでかなりお腹が空いていたらしい。
お次はSさんも楽しみにしていてくれる焼肉だ。

早速焼いて食したところ、これもこの上なくおいしくちょっと多いかな?というくらい持ってきたが完食する。
さらに白菜汁だ。いつもはどちらか一品だが、今回はベースを設けて滑る予定でいるので奮発して担ぎ上げてきているのだ。
いつも通りの食欲の我々はもちろんのこと、最初は「いや、もう結構お腹にきているから。」と言っていたSさんも、お腹が空いていたせいか白菜汁も一通り食べて大満足だ。
外は相変わらずの悪天で時折ゴーっと音とをたてて強い風が吹いているようだがイグルーの中は至って静かでピクリとも言わない。
今日ほどイグルーのありがたさを実感したことはない。

寝る前にもう一度隙間を埋めるため外にでる。
モコモコさんも歯磨きとトイレの為に一度外に出る。
モコモコさんがイグルーに戻るときに「スコップ入れておいたほうがいいね。」といってスコップを1本中に持ち込んだ。
そのせいかコップと歯ブラシを外に置き忘れたと騒ぎ始める。結局明日までそのままでいいやといってシュラフにもぐりこんでいった。
それぞれがシュラフに包まり落ち着いたところで、明日も天気が回復しないようだったらこのまま撤収することに決めて就寝。


だんだん雪が降ってくる。 冬に逆戻りした林業試験地観測所
林道終点から小尾根に取り付く(写真提供Sさん) 小沢を利用して下降する。
強風の中大石沢を目指す この先に出てくる滝で引き返す



二日目(3月18日)
コースタイム
イグルー発8:40〜尾根下降開始11:35〜林道終点付近13:56〜宝川温泉15:45

イグルーの中はとても静かで、皆ぐっすり眠れたようだ。
外の様子をみようと入口に張ったツエルトをめくってみると「うあー」っと言うくらい見事に入口は雪で埋まっていた。
ちょっとつついたぐらいでは穴も開かないのでずいぶんと積もったようだ。
昨夜の白菜汁の残りで作ったうどんでの朝食を取りながらラジオの天気予報を聞くと今日も一日冬型が強く、雪が降るらしい。
だめだこりゃということで撤収することを即決する。
戻るだけと考えるとついのんびりしてしまう。

外にコップを置き忘れたくせにちゃっかりとスコップだけは持ち込んでいたモコモコさんのお手柄で、スコップで入口を軽く掘って穴を開けると外が妙に明るい。
一瞬予報に反して天気が良くなったのかと思った。
実際は昨日と変わらぬ悪天候だ。
それぞれパッキングを済ませてスキーをつける。
雪が積もってすっかり丸くなった、一晩我々を守ってくれたイグルーに別れを告げる。

復路は、昨日下降した小沢の右岸にある尾根を登りにとる。
早速膝までのラッセルだ。
布引山から南に伸びる尾根を越えることは、昨日と変わらないが、今日はひたすら尾根伝いにいく。
交代でラッセルをしていく。特にSさんが力強くグイグイトップで進んでくれたお陰で重い雪のラッセルである割には意外と早く高度を稼ぐことができる。
標高1400m付近からは風の影響を強く受ける尾根となり、アイスバーン、シュカブラ、ラッセルとめまぐるしく変わる雪質の斜面を登ると下降に使う尾根に到着する。

ここで方向を右に変えるところをなにを勘違いしたかモコモコさんは、そのまま登って行ってしまう。
モコモコさんを呼びとめ、目印となるピョコが見えたので間違いを指摘して尾根の分岐まで戻る。
現在地を確認して予定の尾根へと入る。
尾根へ入って少しのところでシールをはずす。
最初は尾根が二俣に分かれるので、予定の尾根に入るまで慎重に立ち止まり確認しながら滑る。
やがて予定通りの尾根に乗ると、木も混んでいなく雪質がいいのでとても楽しい。

途中モコモコさんが転倒したときにストックが行方不明となり、探すの手間取ったことはあったものの順調に進む。
わずかながら少しだけ開けた斜面があり、斜面を大きく使って降りようと思ったところ、「あまりそっちに行ったら尾根に戻れなくなるよ」とモコモコさんにドヤされてあまり滑った気がしなかったのが残念だ。
モコモコさん、Sさんは楽しめたらしい。
この斜面を降りたところで雪が重くなってきたので、このままでいいというSさん以外はスキーにワックスを塗る。

ワックスを塗った後も樹林が比較的疎らでとても楽しい。
標高が下がるにつれ、だんだん雪が重くなり、膝の辺りで雪がモコモコして、滑っているとどんどん板が埋もれてやがて止まってしまう。が、それでも楽しく滑っていける。
標高1150mくらいになると多少樹林間隔も狭くなってくる。また、沢というほどまでにはならないが、ヤブがでてあまり埋まっていない窪があちこちに出てくるようになる。
窪やヤブを避けながら徐々に降りるといきなり緩やかな斜面となる。
ここで一度休憩を取り、林道の方向へ進むことわずかで林道に出る。
行くときは、この辺りの林道は滑って早く進めるだろうと期待していたが、昨日からの降雪でラッセルとなる。
それでもラストは結構滑るようだ。

林道に少し傾斜がでてきてやっと滑るようになってきたが、途中から最後尾になったSさんがなかんかやってこない。
モコモコさんと少し待ってみると、ラストでも全くスキーが滑らず山人&モコモコが滑ったところもひたすら歩くことになったらしい。そこで休憩も兼ねて、ワックスを塗ることを勧める。この辺りではそのときがちょうど強く雪が降ったようであっというまに下ろしていたザックに雪が積もっていく。
これで板が滑らないのは大変だ。
ワックスを塗り終わったところでモコモコさん先頭に再出発。
今度はいくらか滑るようだ。
板幽沢橋まできたところでモコモコさんから「あっ、トレース(後にこのトレースの持ち主はリンク先の方であることが判明)だ。」とうれしそうな声に一同「やったー。」と反応する。
これでラッセルせずに済む。

トレースに乗ると期待通り滑る滑る。
「うきゃー、ひゃっほー」と嬉声(奇声?)を挙げながら距離を稼ぐ。
あっという間に林業試験地だ。
ここからはほとんど平坦なのでトレースがあっても板は滑らない。
Sさんは早速かかとを解放して歩く。
一気にスピードが落ちるが、トレースとSさんが先頭で更に道を固めてくれるので歩きやすい。
現在地を確かめるために一度休憩をとってからは、トップを交代で歩く。すると思ったよりも早く宝川温泉の建物が見えてきた。
長い林道歩きも終わってしまえば楽しい思い出。
相変わらずやまぬ雪のなか荷物をしまって、宝川温泉の駐車場を後にした。


一晩守ってくれたイグルーに別れを告げる 膝までのラッセルで尾根を登る
ここから下降開始(Sさん写真提供) ちょっと開けたところ(Sさん写真提供)
疎らな樹林帯を快適に滑る 雪が重いが楽しい



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