吾妻連峰
天元台〜継森〜谷地平〜東吾妻山〜蒲谷地〜高森 
〜厳冬期初の東吾妻山〜
2007年2月24日〜2月25日

バカの一つ覚えで毎年複数回吾妻連峰に訪れているのに、冬期に東吾妻山に登ったことがない。
今年は、吾妻スキー場が営業していないため吾妻小舎に行かない(注1)ので東吾妻山へ登り、蒲谷地に下りてみようということになった
 (注1;吾妻小舎から登るのが一番近くて早いが、小舎のあまりの居心地の良さについ出発が遅くなり、今までいつも東吾妻山はカットしていた。)

コースタイム

2月24日
 リフトトップ10:10〜人形石11:00〜藤十郎と東大巓の鞍部(トラバース開始)12:00〜東大巓と継森のコル(トラバース終了)13:30〜継森14:35〜谷地平16:15〜谷地平避難小屋16:25

2月25日
谷地平避難小屋6:15〜東吾妻山10:10〜展望台からの下降開始10:50〜林道12:45〜ゲート13:10〜蒲谷地部落13:40〜高森15:50


 いつも通り前夜のうちに米沢に入り、米沢発朝一番のバスに乗り込む。
最初は比較的すいていたが、途中からポツポツと山スキーへ向かう格好の人が乗ってくる。皆さんお仲間のようで、荷物の多さからみて山中泊のようだ。

駅周辺は天気はまずまずだったが、スキー場ではあまり天候がよくない。
天元台のロープウエイ駅で板を出したりしながら、バスで一緒だった方とお互い挨拶を交わし、行き先を知らせあう。バスで一緒だった方々は、なんと地元の山岳会の方で大平の小屋の雪下ろしに向かうとのことだ。

リフトトップに着くと、風が強く気温も低い。モコモコさんから「オーバーグローブの中にしてある(肌に直接付けている)腕時計でさえ、気温5℃だよ」と報告される。
会の方々は一足先に準備を済ませて出発するところだった。
我々もシールを張り体操をしてから出発。
会の方のトレースをありがたく使わせていただき、今回も楽に稜線に立たせてもらう。

稜線は、一層強い風で視界も全くきかない。
風に耐えながら歩くと人形石の手前で会の人達に追いついた。
人形石にようやくたどり着くと会の人達はその場で立ち止まっている。
モコモコさんが代表で再度挨拶をして、我々は人形石を後にする。
視界があり、風がもう少し弱ければ、わずかであるが人形石から滑りを楽しめるが、今日は絶えず強風が吹いて視界が悪いので、バランスを崩さないようソロソロと慎重に藤十郎との鞍部へと下る。

鞍部からはときどき現れるルート標とコンパス、GPSを頼りに、強風に踏ん張りながらホワイトアウトの中、藤十郎を目指す。
見覚えのあるピョコを見ることが出来た。ピョコを右から軽く巻いていくといつの間にかトラバース開始地点となる東大巓と藤十郎との鞍部(昭文社登山地図で湿原のあるところ)に着いていた。
時間短縮の為、東大巓に寄らず直接継森手前の1807のピョコとの鞍部へトラバースする予定である。
トラバース中は樹林の中を通り、また尾根の陰で風も少し弱いので今日のような悪天では正解だと思われる。
早速トラバース開始。樹林帯に入ってようやく休憩をとることができた。
鞍部に向かうにつれ風が時折弱くなることがあり、周りが見えるときがあるようになる。

鞍部からは中津川へ落ちる小沢の源頭を迂回するような感じで、源頭を過ぎたあたりから1807mのピョコと継森の鞍部を目指して登りを開始する。
ここからはモコモコさんにトップを交代する。
2004年にここを通ったときに、モコモコさんが「メルヘンチックだねー。」喜んでいたところだが、今回も全く同じ台詞を言いながら嬉々として登っていく。確かにとても静かでいいところだ。
浮かれ気分のモコモコさんのお陰で思ったよりも早くに鞍部に到着。
このころになると、高気圧がようやく姿をみせてきたのか風が強い中でも雲に切れ間がでてきている。
周りの視界もきくようになってきた。

継森まではもう少し進まないといけない。
ここからは最初樹林の中を登り、吾妻にしては珍しく尾根状の形態を表してくる辺りからは、小さいながらも雪堤状になり樹林が疎らな大倉川側をルートにしていく。
2004年にはこのあたりは大きく波打つ雪面に苦労した覚えがあるが、今回はさほど苦労することもなく継森直下までたどり着く。
ここまできたらもう下降を開始してもよいところだが、折角周りがよく見えるようになったので継森の山頂を踏むことにする。
山頂に立つとさすがに物凄い風だ。ゆっくり周りの景色を堪能したいところだが一通りの記念撮影を済ませてさっさと撤収にかかる。

気温が非常に低く、シールが張り付かなくなると困るのでシールをつけたまま下降する。
今回の下降ルートは中吾妻山との間にある斜面を降りるものではなく、地形図の継森の継の字の真横にある小さい尾根にとり、最終的に東大巓からの登山道がかすめていく秘密の湿原にでるものである。
コンパスを合わせて最初は緩やかだがカリカリの開けた斜面を慎重に進む。
樹林に入るとガリガリ斜面は終り標高1800mくらいから雪質が良くなる。
1800を越えると樹林が混んでいるし、1600mを下回ると雪が重くなるので、吾妻のよさは標高1800〜1600mくらいの樹林帯にあるのではないかと思う。

思ったとおり、雪質がよくなってからはシールを付けながらも楽しい滑りだ。
今シーズンにしては珍しく気温が相変わらず低いままで、途中、栂の木が「ミシミシミシ」と音を立ててひび割れるのを何回か目撃したりする。時折雪がモサモサ降ってくるが、GPSも活用しながらでほぼ予定通りに順調に進む。
秘密の湿原にいくには1550mあたりの小沢が沢の形を一時的になくす感じのところで進路を少し左に向けて沢の左岸に入っておくのが予定のルートである。しかし、快適に下りすぎたか少し標高を落としすぎてしまい、完全に沢型を取り戻した辺りに出てしまう。
このまま進んでもいいが、小沢が入り組んでいて面倒になるので予定通りのルートへ一度沢へ降りて向かう。
沢に下りたはいいが、少雪のせいか沢が埋まっていない。
なんとか渡れるスノーブリッジを見つけて対岸へ渡るとすぐに予定していた秘密の湿原に出る。

ここからはモコモコナビの出番だ。
モコモコさんの先導で進むと、大倉深沢と東大巓からの沢との出合いで、夏道の指導標が見えるところに出る。
昨年同様、ここでは渡らず大倉川沿いに下流へと移動し、スノーブリッジを探して渡ることにするが昨年大きく埋まっていたところでも今年は埋まるどころかブリッジもかかっていない。
そこで完全ではないが、流れが浅く30cmほどを凌げば渡れるところがあったので、そお〜っと渡る。

無事渡ったところで、谷地平に上がり小屋へと歩みを進め、無事今日の行程を終了する。
谷地平避難小屋到着後は、お決まりの@入口の除雪、A水汲み、Bツエルト張りの作業をこなし宴会へと突入した。


ようやく冬山らしい感じに 人形石に佇む山岳会の方々
トラバース終了。視界がきいてきた メルヘンチックな登り
1807mピョコと継森との鞍部。青空が見える 継森が見える
継森山頂へ向かう(風が強い) ヤケノママ(白い崖の真下にある)
これから降りる尾根と谷地平 標高1700m付近は吾妻で一番いいところだ
標高を下げすぎてしまった 秘密の湿原はこの沢の対岸にある
渡渉することなく、なんとか渡れた 予定通りに着いた



2日目(2月25日)
コースタイム
谷地平避難小屋6:15〜東吾妻山10:10〜展望台からの下降開始10:50〜林道12:45〜ゲート〜蒲谷地部落〜高森



 ツエルトの中は暖かく、モコモコさんにいたっては夜中に暑くて目が覚めるくらいとなった。
昨晩寝る前に外に出ると月明かりで明るかったが、今朝もきれいな星空だ。今日は天気予報通り天気がよさそうだ。
最近定番になりつつある焼きそばでの朝食をとり、準備を進める。小屋の掃除を済ませ、体操をしてから出発。
今日は冬期の東吾妻山と、初めて下る蒲谷地への斜面だ。
中吾妻のときは林道へ出るまで激ヤブで苦労し、林道に出たら平坦で滑らず延々と歩いたが、こちらは林道にでるところが標高1340mと高く、時期からみても中吾妻のときよりは条件がよさそうだ。また、林道も傾斜がありよく滑りそうだ。

昨晩のうちに合わせておいたコンパスとGPSを頼りに、朝日が当たってきれいな中吾妻山を背にして東吾妻山へ向かう。
気温は昨日同様低いが、その御蔭か雪がしまって歩きやすい。
姥沢をわずかに進んで傾斜が少し緩んでいる適当なところから左岸の段丘に上がる。

段丘上は地形図通り緩やかで、時々ヤブが煩わしいが快適に登れる。
この登りは小屋から山頂へ向けてほぼ一直線に登ればいいのでコンパスに従って歩きやすいところをいけばいい。しばらく歩くと、日が昇り、太陽が顔を照らすようになってくる。
日焼け止めを塗って登り続ける。日が当たっても気温が低いので暑くなることはない。むしろ歩いていないとちょっと立ち止まっただけでも寒いくらいだ。

標高1750mを越えたあたりになると中吾妻〜東大巓方向が一気に見渡せるようになる。
さらにここからは樹林の背も低くなり少し歩きにくくなるが、苦労することもなく山頂直下(標高1950m付近)に着く。
重荷でも予定よりもペースが速い。モコモコさんからも「なんでこの前(中吾妻)はあんなに時間がかかったんだろう。標高差も距離もほとんど同じなのに。」との言葉が出たので、「ラッセルがほとんどなかったからだよ。」と答えた。
山頂直下は無木立のクラストしたなかに時折シュカブラが出来ていたりする斜面だ。
登るにつれ、吾妻小富士や吾妻スキー場からくるときに酸ヶ平へと滑り降りる斜面が見えるようになり、山頂へと到着する。

山頂で一通り記念撮影をし下降にかかる。
余談だが、モコモコさんが撮った数少ない山人の写真には全てモコモコさんの指が写っていた(悲しい・・・)。
展望台まではシールをつけて方向を定めてからシールを外すことにし、展望台へと向かう。
展望台で林道が駕篭山稲荷神社方面からくる登山道と合流するあたりにコンパスを合わせる。
いよいよここからシールを・・と思ったら、これから進むであろう斜面は、去年の霧ノ平の家形山からの最初の尾根を思わせるような樹林がもちゃくちゃ(注2)しているところだった。

(注2;我が家でよく使われる表現で、もじゃもじゃくしゃくしゃぐちゃぐちゃしているような感じ。クワガタ虫が足にひっかかったわたぼこりを取ろうと足をもちゃくちゃしている様子を土合駅で目撃したときにでた表現。(ちゃんとクワガタ君を救助しましたよ。))

二人とも「・・・・・・。」となるが、モコモコさんの「吾妻の特徴で1800くらいまでは樹林が濃いのは仕方ないよ。少し降りれば樹林の間も開けてよくなるよ。」の声に「それまでシールつけて降りるか。」と答える。
地形図と見える地形とを照らし合わせてから下降開始。
樹林の枝にひっかかったりしながらもちゃくちゃ斜面をノロノロと進み高度を下げる。
予想通り標高1800mくらいから木の間隔が開いてきたのでシールを外し、ワックスを塗る。

やはりシールをはずすと軽くて快適だ。なんといっても早い。
コンパスに従い進み、GPSで時折位置を確認すると予定のルートにぴったり乗っている。
さらにコンパスの指す方向にどんどん進むと、標高1600〜1500mの間の2回に分けて傾斜が強まるところに着く。
ここは樹林が濃いので、日陰でガリガリの斜面を横滑りで通過する。
標高差はあまりなく比較的楽に第一の急斜面は終了する。
わずかの間傾斜が緩まるところで休憩を入れる。この辺りからは、木の間から大倉川の対岸にある中吾妻山の斜面を見ることができる。

一息いれた後すぐに第2の急斜面になる。
ここは第1ほど傾斜はなく、雪も緩んでいるので少し横滑りで降りた後は普通に降りて通過することができてとても楽しい。更に急斜面が終わると同時に、走って逃げていくウサギも見られた。真っ白で足の早いかわいいウサギだった。
ここまでくれば後は緩やかな斜面を降りてもうすぐ林道のはずだ。
緩やかな快適斜面をワハハハと滑っていくと木に赤ペンキで印がついているのを発見する。地形的にみても林道は目前だ。
思ったとおりわずかな滑りで林道到達。滑りやすいところをきたので少しずれたがほぼ予定していたポイントのところだ。

後は蒲谷地に向かってこの林道を行けばいい。
林道には日が当たっているが、雪は腐っておらず、期待通り滑ってくれそうだ。
思った以上に林道はよく滑る。
最中だったり、アイスバーンだったりザラメだったりとめまぐるしく変わる雪質であるが、重力に任せてグイグイ進める。
やがて井戸尻川へ向けてヘアピンカーブで高度を下げ、ヘアピンカーブが終り林道は井戸尻川に沿っていくようになるが、それからもよく滑ってくれ、早々とゲート通過。
さらにあっという間に、井戸尻川が小倉川と出合辺りにある林道の合流点に到着。

ここからは除雪されている。
道にはまだ雪がついているが、板を担いでいく。
蒲谷地はとても小さい部落なので公衆電話はもちろんない。携帯が通じたらタクシーを呼んでしまおうと思っていたが、山に囲まれた谷あいにあるので恐らく携帯電話も通じないだろうとの予想的中でやはり通じなかった。


部落の入口までくると、 わずかにアンテナ1本立ったところもあったが、通話はできなかった。
高森方面への県道(福島吾妻裏磐梯線)が見えるが、登山地図の情報は確かでちゃんと?冬期通行止めとなって雪がついているのでスキーを履いていける。
これは予定通り高森へ向かえということだ。
安達太良の沼の平周辺の岩場がきれいに見える。
養魚場の先から通行止めとなっており、スキーをつける。モコモコさんはさらにシールを貼る。
最初山人はそのままシールなしで行くが登りになってきたのでシールを張る。

途中の4つほどあるヘアピンカーブをショートカットしながら登る。
このあたりは猿の楽園のようで、足跡が沢山あり、猿達も出没した。
この道の峠であるみのわ茶屋に着くと人の足跡がでてきた。高森から歩いて登ってきているらしい。
ここからは下る一方なのでシールを外す。
高森までのタイムは、山人は5分、モコモコさんは10分であるとみてスタート。
夕方になりボコボコガリガリであるが、何もせずに進むのでとても楽だ。
あっという間に高森に着く。結果のタイムは8分だった。どちらもハズレ。

予定よりもずいぶんと早く着いた。まだ16:00前
バスは17:10までないのでタクシーを呼ぶことにする。
タクシーを待つ間にブーツや板をしまったりしていると、近所のおばちゃんが出てきて「安達太良から来たのかい?」と聞いてきたので、東吾妻から蒲谷地を通ってきたことを伝えると、東吾妻からというよりも一度蒲谷地におりてからまた山に入ってここまで来たことに驚いていたようだ。
一度人里に下りたのにわざわざ峠越えをしてくるアホはやはり滅多にいないらしい。

日が翳って寒くなってきた頃タクシーがやってきた。
猪苗代方面へのバスが通っていてここから一番近い中ノ沢温泉で入浴できるところへ連れて行ってもらう。
着いたところの入浴時間は16:00までらしい。ただいま16:10である。運転手さんに入浴できるか確認してきたいと告げると、運転手さんはこれからすぐに予約が入っているらしい。そんなやりとりをしていると宿の方が「宿泊ですか?」と声を掛けてきた。
入浴であると答えると、タクシー運転手さんが後押ししてくれたこともあり、“時間が過ぎているが折角きたからどうぞ”とありがたいことにお風呂に入れることになった。

他の従業員の方もとても親切で、お風呂も気持ちが良かった。
ここからバスはあるが今度も1時間以上待つことになるのでお金はかかるがタクシーで駅まで向かうことにする。親切な宿の方に重ね重ねお願いしてタクシーをよんでもらう。

遅れることは想定していたが、早く着きすぎることは想定外だったので行き当たりばったりで、散財することになったが予想以上に楽しめ、満足いくツアーとなった。
機会があったらまた行ってみたい。今度は早く着くことも考えておいてちょーだい、モコモコさん(今回も全てモコモコ計画でした)。


好天気が予想される中の出発 中吾妻山をバックに東吾妻山を登る
登りの途中から駕篭山稲荷と中吾妻山 東吾妻山直下
東吾妻山頂から磐梯山をバックに 蒲谷地へ向けて快適に滑る
もうすぐ林道だ 林道に飛び出たところで中吾妻山を見る
東吾妻をバックに吠える蒲谷地の犬 みのわ茶屋は安達太良の展望台


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