会越
室谷川小久蔵沢(下降)
〜静かなブナの中の宴会沢旅〜
2006年9月16〜17日

9月の3連休だ。
しかし今回はモコモコさんと休みが合うのは2日間しかなく、天気も台風と秋雨前線の影響で全国的によくない。なんだか今年はこんなのばっかりだ。
いい加減そんな意地悪にも慣れてきたので、欲張らずにのんびりと深い森のなかをゆったり流れるようなところに行くことにする。ところが、そういった所はアプローチに時間がとられる電車派にとっては2日間ではなかなか難しい。
モコモコさんと二人「う〜ん」とうなって決まった場所が狢ヶ森山周辺の沢だ。
天気は一日目のほうがいいという予報のため、前夜のうちに新潟入りをして初日にできるだけ距離を稼いでおこうという計画だ。
地形図1:25000 室谷、駒形山、狢ケ森山 

アプローチ
新潟駅5:18〜新津駅5:36/6:06〜津川駅7:02(タクシー)〜峰越林道(大久蔵沢通過8:03、工事現場まで8:30)

コースタイム
9月16日
 出発8:45〜大久蔵沢林道横断点9:27〜狢ヶ森分岐9:40〜街道分岐9:56/10:05〜日尊の倉山10:58〜下降地点11:05〜二俣12:22〜三段大滝15:40〜B.P.(標高580m付近)16:00

9月17日
 出発8:54〜堰堤11:40〜林道横断点11:45/11:55〜室谷(神谷分校)13:10〜室谷バス停13:36〜津川駅14:26



前日の上越新幹線は連休直前のためか指定席は完売なため、山人が先行出発して弁当と席の確保をしに東京駅へ。モコモコさんも山人に遅れること20分ほどで東京駅に到着。
早速お弁当を食べる。いつもシューマイを買って食べるのだが今日は売り切れ、残念。「じゃあ、お弁当を頂きます」と開けるとモコモコさんが「はしがない!!!」と騒ぎ出した。しかも持参のはしはザックの底に入れてしまったので取り出すのが困難だ。「信じられん!!!駅弁ではしを入れ忘れるかー?!抗議の電話をしてやるのだー!!!!」と空腹の極限にあるモコモコさんが凶暴化している。とりあえずモコモコさんを黙らせるため、「ご飯最初に食べないからこれ使いなよ」と自分のはしをモコモコさんに貸してあげた。お腹が満たされてくるに従ってモコモコさんもおとなしくなっていつも通りのアプローチとなる。

翌日、新潟駅から新津駅へ移動し、朝一番の磐越西線で津川駅へ向う。
津川駅に着くと似たような格好をした3・4人?パーティがやはり津川駅で降りた。駅員さんの他に誰もいないとても小さな駅なのに結局一言も声を交わすことはなかった。

3・4人パーティーがタクシーで出発してから約10分ほど後我々もタクシーを呼んで出発する。
室谷集落を過ぎて帰りのタクシーの予約をしようとすると、運転手さんも林道の様子がわからないとのこと。
先にいった人たちはどこへいったのかさりげなく尋ねると大久蔵沢(我々の入る沢より一本奥の沢)らしい。先行パーティーのタクシーがそこまで入っていれば確実に通れるがその先はわからないようなーなどと問答している内に小久蔵沢の横断地点に到着。(ここまででタクシーメーター7630円)
結局どこまでタクシーが入れるか、翌日の待ち合わせ地点確認のためにも行けるところまで進んでもらうことにする。
先に進むことわずかで先行の3・4人パーティーがタクシーから降りていた。こんなところでだめなのか?と思ったがまだ行けそうだ。

止まっている先のタクシーに道を譲ってもらって悪い道をガタガタいわせながら進んでいく。
途中無線で先のタクシーから連絡が入る。それによると、道が悪いので人数と荷物が多い(大久蔵沢のほうが難しいため装備も多く2泊のような感じなので重量がありそうだった)ため先に進むのが無理だったらしい。
少人数だとタクシー代が割高になるが意外な利点もあるようだ。
待ち合わせの目印として茶箋荘(何て読むのかな?)というものがあるらしいので探しながら行くが見落としたらしく、その内、前を走っているダンプカーに追いつき、その後ろをのろのろ付いていく。道はさらに悪くなり、タクシーもときどき、車体の底をこするような「ごり、がり。」というような嫌な音をたてている。「あの、その、もうこの辺で」とつぶやき始めた頃ダンプカーも止まり、どうやら資材置き場のようなところまできたらしい。「ここまでですね。さてどうしますか?」ときかれ、思った以上に奥まできたのと、タクシーのメーターや時計を見ていまさら戻るのもいやになったので計画の逆コースを辿ることにした。もともと癒し系の沢なので下降でも問題なしだ。翌日の迎えを頼んでタクシーを降りる。(11060円)

靴を履いて体操してから地形図をみる。タクシーに乗っているときにモコモコさんが地形図を辿ってくれていたお陰でおおよその地点はつかめている。
出発してすぐに工事現場にでる。そこは林道が大きく崩壊していてその復旧工事をしているところだった。現場の人に通れるか尋ねると今の内なら大丈夫だと快く通してくれた。
どうやらタクシーは無理をしてかなり奥まで入ってくれたらしい。
1時間も歩かないないうちに大久蔵沢上部を林道が横断するところに着いた。この手前で水を汲むことができたので水を汲んで少し休憩する。

林道はここから先は歩くには問題ないが、車はまず無理だろうというほど深い溝や段差ができている。
さらに20分ほど歩くと左側に広場があり、結構藪に埋もれている狢ヶ森山への登山口に着く。予定では山頂を往復してくるはずだったが、例のモコモコさんの「私別に山頂に行かなくてもいいや」宣言がでて登らずに先に進むこと15分。
峠に到着。この峠には立派な街道開通記念碑が建っていた。またかわいい祠があり、この祠で今回の安全を祈願して日尊の倉山へと向う。ここでは携帯が通じた。
日尊の倉山へは踏み跡がついていて、涼しいブナ林のなかを結構快適に進む。途中何回か休憩をいれたが、55分ほどで三角点への踏み跡の分岐に到着。

三角点を確認したあと分岐に戻り少し先に下ったところから適当に沢に向かって下降を開始する。
最初は傾斜が比較的ゆるい藪を下る。すぐに出てくる窪に入るところが少し急だが問題なく窪に入れた。
地形図通り最初は急だ。
さすがブナの森の中の沢ですぐに水がでてくる。
窪をどんどん下降する。途中小滝を1つ小さく巻き降りたのと、別の小滝でモコモコさんが軽く滑落したので先に下りた山人が止めたところ意外は問題なく下降し、小さな二俣になる。ここからはナメが多く続くようになる。
ナメや小滝を快適に下降していくと5mほどの垂直の滝が出てきたので右岸を巻きおり、標高960m付近の二俣にかかる滝は登るにはいいが下降するにはびしょびしょになりそうなのとちょっと厳しそうな為ここも左岸を小さく巻いておりた。

二俣より下も沢は相変わらずナメや幅の広い3m〜5mほどの滝を掛けて「いいねー、晴れてたらなー。」といいながらどんどん快適に下降していける。思ったよりも行程がはかどり標高650mほどまで降りてきた。ここまでくれば明日の予約した時間まで余裕だろうということで泊り場所を探しながら進む。
今晩は確実に雨が降ることが分かっているのと、気温が低いので絶対焚火がしたい何よりも宴会沢旅なため快適なところと思って探すと満足するようなところが見つからない。そうこうする内に3段の高さ15mほどの大滝(この沢で一番大きな滝)に出る。上2段は降りられるが一番下は垂直で降りられそうもないので3段まとめて巻き降りることにする。

ここで滝の上で泊るか下に泊るか検討するが、先に進むことにする。
左岸からずるずるのドロ壁を潅木を使って5mほど登ってからトラバースし、滝下へ潅木を使って下降する。沢床の直前がかなり急で潅木もないので注意して降りた。
滝からわずかに進むとモコモコさんがこの辺りがいいんじゃないといってくるので候補地にして先へ行くが、沢はゴルジュ状になってきて先ほどのところがよさそうだ。

戻って候補地を見てみるといいところだ。右岸の樹林の中だ。
平坦で藪もほとんどないので整地の必要がなく、小さいながらも川原があるので焚火もそこでできる。
早速タープを張り雨にそなえて焚火場所にもシートを張る。
手分けして薪を集める。
気温は低いままだが、風もなく宴会に相応しいように担ぎ上げた豪華な食材に舌鼓を打って雨に降られることもなく夜が更けていった。

峰越林道の峠 日尊の倉山へ踏み跡をたどる
ナメやナメ小滝が続く 二俣付近の滝
幅広5m滝 幅広4m滝
快適なナメ かわいいトイ状の滝
開けたナメ(晴れていたらな〜) 三段大滝の上部2段



9月17日
コースタイム
出発8:54〜堰堤11:40〜林道横断点11:45/11:55〜室谷(神谷分校)13:10〜室谷バス停13:36〜津川駅14:26



夜中雨がしっかりと降ったようだがあまり気にならずに寝られた。
昨晩の豪勢な食事とお酒に焚火で温まった体は温かいを通り越して暑いくらいになった。
しかし、朝寝坊して7時頃にようやく起きる。シュラフカバーに入りこんだ蚊に手と顔をぼこぼこにされてしまった。
予報では今日の天気は曇り時々雨。今のところ雨は止んでいるが、いまにも降り出しそうな空だ。
ゆっくりとご飯を食べて撤収を始めると、雨が降り始めた。
結構な降りで憂鬱になる。
それでも出発する頃には小降りになってくれた。

出発してからはナメや小滝が連続する。この沢は不思議とガタンと落ちてステージ状になっている幅広の滝が多い。やがて赤い岩に囲まれたS字のゴルジュとなる。ゴルジュと言っても緩やかなナメで美しいところだ。
そこを過ぎると倒木がうるさくなる。
倒木を越えながらのゴーロ歩きが始まる。ゴーロの中にも時折ナメや小滝があったりするのでそれほど退屈でもない。
雨もぱらぱらといった程度になり時折止むのでさほど気にならない。
このころになると沢にゴミが目立ち始める。林道からこの辺りまでは簡単に日帰りで入ってこられるので、マナーの悪い人が多く入ってくるのだろう。
巨岩が目立つようになるとこんなところにこんな滝がというような2段8m滝がでてきたりする。
いずれも問題なくやり過ごしていくとひょっこり堰堤にでる。左岸から巻き始めると、しっかりと踏み跡がついていた。
堰堤からは5分で林道だ。林道に出るとこいつらまだいたのかという感じでアブがでてくる。集団でなく数匹であるが次々とやってくるので、やっつけながらここでモコモコさんと作戦会議。林道到着時刻は11:45。タクシーの予約時刻は15:00。早めに迎えに来るだろうがそれでも14:30くらいだろう。室谷までは一本道で距離は6kmくらい。おそらく1時間半くらいで着くだろうということでとりあえず室谷まで出ようということになる。

涼しくて林道もこの辺りはよく手入されているので歩きやすい。
時折携帯電話をチェックするがやはり圏外だ。
室谷まであとどのくらいかなと話しながらいくと、「あっ、室谷洞窟だ。もうすぐで室谷だ。」とうれしくなる地点に着く。案内板には縄文時代の人々が住んでいたと書かれてあった。太古に夢を馳せる。

室谷部落に近づくと太鼓のような音が聞こえる。最初はお祭りでもあるのかな?と思っていたらなんと分校(神谷分校)の運動会が開かれていて応援合戦の真っ最中だった。
なんだかとても美しい光景で思わず写真を撮ってしまった。
さてここまできたが携帯は相変わらず圏外だ。公衆電話がないか探したがみつからない。人に聞こうと思ったが、部落の方皆がこぞって運動会へ出かけてしまって誰も歩いていない。そこで分校へいって尋ねてみると「公衆電話はないです」とのこと。
まあ、山から下りてくるとここは町だが、日常生活に戻ってみると分校があるところだ。居住者やその縁者以外はめったに訪れないだろうから公衆電話も必要ないのだろう。

さらに歩くかタクシーが来るのを待つかどうしようかということになり、念のためバスの時刻を見てみようかとバス停へ行くと、なんと10分後にバスがあるではないか。しかも朝昼晩に1本ずつ1日3本しかないうちの貴重な1本だ。なんて我々はついているのだ。
よしこれで帰ろうということになり、大急ぎで着替える。
自動販売機で缶ジュースを仕入れたらちょうどバスがやってきた。
バスでゆっくり津川駅へ向いバスの中でタクシー会社へキャンセルの連絡がとれて津川温泉にも入ることができた。温泉から駅への帰りのタクシーを頼んで迎えに来てもらったらなんと入山のときの運転手さんだった。車は無事だったらしい。よかったよかった。
このあと新潟でおいしいごはんと、電車派の醍醐味、これまたおいしい地酒を味わい大満足で帰宅した。

翌日もこういった小滝が続く この小滝もステージのようだ
予想に反して側壁にこんなのが現れたりする ゴーロの中にもナメが現れる
応援合戦中の赤組(まだ小学校入学前と思われる子も一緒にやっているのがかわいい) 懐かしい感じのする校舎。「分校たましい いつまでも」と掲げられていた


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