日光足尾山塊 
宿堂沢〜大岩沢
〜山人&モコモコ隊の夏休み〜
平成18年8月18日〜8月20日

前回の和賀山塊の沢が雨の為短縮ルートとなってしまい、今回こそはと4日の予定でどっぷりと沢に入ろうと企んでいたが、直前になって台風発生!!
モコモコさんが台風がこないように呪いをかけていたが、それが効きすぎたか呪い返しにあったか台風は確かに遠征方面の東日本には来ないが日本に居座るようになってしまった。
仕方なしに代替プランを検討するが、4日もあるのでなかなかまとまらない。
結局行程は短いが、アプローチが不便なためなかなか行く機会がもてない日光足尾山塊になる。
以前アプローチ&下山(林道と車道歩き)の余りの長さにうんざりして途中敗退した大岩沢を中心に泙川上流域を遡下降して一気にやっつけてしまおうとこれまた企んだのである。

アプローチ
中禅寺温泉7:47〜赤沼8:03/赤沼車庫8:45〜林道入口9:05

地形図
中禅寺湖、男体山、丸沼、皇海山

コースタイム
8月18日
林道入口彷徨約2時間30分〜本当の林道入口12:00〜柳沢渡渉点13:00〜ネギト沢入渓13:55〜稜線15:30
8月19日
B.P.6:45〜大岩沢10:30〜ニグラ尾根14:17〜稜線15:10〜下降点15:30〜林道16:20〜ネギト沢渡渉点16:45




8月17日

初日は泙川湯ノ沢を遡行する予定だ。
これは奈良から入ったほうがアプローチが良いため朝一番の新幹線で高崎まで向うことにする。
ところが大宮を過ぎた辺りから結構な雨降りだ。
モコモコさんは既にあきらめモードに入り「今日は沢に入るのやめたほうがいいんじゃない?湯ノ沢流域はカットして日光側から入って三俣沢流域からやったほうがいいよ。」と誘惑し、決断を迫ってくる。

ということで軟弱山人&モコモコ隊は本日の入渓をあきらめ高崎から行き先を変更し、両毛線で栃木へ向い東武日光へと入ったのでした。

日光に着くとまたもや本降りの雨。これまたちょっと入った人のいないところでビバークの予定だったが、ゆっくり宿に泊ろうといって、さっさとモコモコさんが宿探しと手配に走る。
山に登るには遅い時間だが、宿に入るには早すぎる時間なので、世界遺産めぐりの観光をしてから中禅寺温泉に向う。
その晩雨は降り止まず、時々雷をともなった強い降りとなった。

一日棒に振ったような気がしたが、「なにもしないでいられるなんて幸せー、夏休みだー」と喜ぶモコモコさんと、外の雨の様子を見ておとなしく入山日を遅らせて正解だと思われた。



8月18日

コースタイム
林道入口彷徨約2時間30分〜本当の林道入口12:00〜柳沢渡渉点13:00〜ネギト沢入渓13:55〜稜線15:30



朝起きると雨はすっかりやんで、山も少し見えるようになっていた。
中禅寺温泉から赤沼まで路線バスでいき、ここから低公害バス(1回300円、国道以外ならフリー乗降可能)で林道入口まで向う。
乗車前に運転手さんに確認していたので運転手さんに「ここです」といわれたところでなんの疑問ももたずに降りてしまう。

すたすた歩き始めるモコモコさんに体操したらと声を掛けるが、林道のうちはいいよといわれてそのまま進む。進むこと約小1時間巨大堰堤が行く手を阻む。
堰堤を越えると忽然と林道が姿を消す。どこかで林道からはずれたか?堰堤工事でいままでの林道が破壊されたか?と周辺を探すがみつからない。それでは対岸に渡って探してみようということになるがそれらしきものも全く見当たらない。

仕方がないのでネギト沢出合いを探そうということになり、そのまま下降をはじめる。いくつもの堰堤をまき降りていくが、全然沢の出合いがない。地図をみても林道側(左岸)は合っているが、下ってきた対岸(右岸)をみるとつじつまが合わない。
さすがにこれはおかしいと思い、林道に戻る。林道に戻り地図をみるがどうもしっくりこない。「うーん、もしかして」とモコモコさんが言い出す。(モコモコさんがこれをいうときは悪いことが多い)
予想通り「ここは一本手前の林道じゃない?林道側(左岸)の地形は柳沢にそっくりだけど、対岸(右岸)をみると一本手前の林道とぴったり合うよ。」といいだす。
なんたることだ。やはり最初に体操をしておけばそのとき地図を見てもっと早くに間違いに気づいたはずだ。
とにかくバス通りまで戻って西ノ湖方面へ歩いてみると地図とぴったり合う。
こんなことをして2時間半もロスしてしまい、本来の林道入口に着いたときにはお昼になっていた。
間違えずに行っていたら今頃は稜線についていたかもしれない時間だ。

一気にやる気がなくなるどころがもう行動するのがいやになってしまった。
このときばかりはモコモコさんも「どうする?いくのやめる?」ではなく「去年の今頃も全く同じようなことしてたね。まだ時間と日数はあるんだからとにかく先に行こう。」と声をかけてきた。もし、いくのやめるかと聞かれていたら即座に「やめる!!!!!」と答えていただろう。そのくらいこの彷徨は疲れた。また、本来ならばこの休みは朝日連峰の沢の予定だったが数日前に悪天が予想された為、取りやめにした。当日携帯で朝日の天気を見てみると皮肉なことによさげな模様。朝日にも行けず、入渓もできず気持ちは落ち込む一向だ。

やる気のない足取りでタラタラ歩いていく。林道は概ね日陰でありがたい。冷たい水が湧き出る岩清水でのどを潤すとすぐに巨大な二段堰堤が現れる。林道は巨大二段堰堤の下流を渡渉して対岸に渡ったところについている。
渡渉点からの林道はガレでうまっていたりするが、慎重にいけば問題なく通行できる。
ネギト沢を橋で渡り、ますますガレで埋まった林道を登り進むことわずかで林道はネギト沢を渡り返す。
ここからようやく入渓だ。トンネルような穴があり、覗いてみると鍋釜などがあった。

ネギト沢は小ぶりでちょっと暗いが、簡単でなかなかきれいな沢だ。
快適に登っていくと、途中からモコモコさんのペースがガクンと落ちる。
どうやら最初の彷徨の影響で体がオーバーヒートして頭痛と軽い吐き気がするらしい。
変更後の予定では今日のうちに大岩沢出合い付近まで下るものだったが、この調子では無理っぽい。
自分自身もやる気は戻ってきたものの最初のショックがあまりにも大きかったので今日はもういいやという気になっていたので「今日は稜線で泊ってもいいよ焚火はできないと思うけど。それよりも手前でいいところがあったら泊ってもいいし。」と提案すると、そうさせてもらうよとモコモコさんは稜線まで頑張ると歩き始める。

間もなくで三俣。なんだか見覚えがあると思ったら、以前白根山から皇海山を縦走したときに水を汲みにきたところだった。ということは稜線は間近だ。水を汲んで稜線に上がる。そこは縦走時に泊ったところだった。
稜線から少し離れたところにいい場所があったので、そこに泊ることにし、できるかどうかわからないが焚き木を集める。
意外と苦労することなく着火したささやかな焚火にあたり、その晩は雨に降られることもなく、キツネが現れたり、時折鹿の鳴き声が聞こえるだけの静かで快適な夜を過ごした。



8月19日
コースタイム
B.P.6:45〜大岩沢10:30〜ニグラ尾根14:17〜稜線15:10〜下降点15:30〜林道16:20〜ネギト沢渡渉点16:45




今日は宿堂沢を下降して大岩沢を登り返し、さらに三重泉沢上部へ入る予定だ。
傾斜のある笹と樹林のなかを下るとやがて窪がはっきりしてくる。
窪になってからも傾斜は急で、沢というよりはルンゼ状のところを降りる。このような状態がかなり続くが、傾斜が急でもフリクションが抜群に効き、水もチョロチョロとしか流れていないので問題なく降りられる。
傾斜が緩むと、左岸から入る小沢というよりもガレから水も流れ込み急に沢の状態になる。
平凡なところをやり過ごすと、だんだん小滝やナメが現れるようになる。
特に難しいところや、巻き下りるところもなく楽しく下れる。
やがて沢が蛇行を始めると、急に足元がスパッと切れたところに出る。
そーっと覗き込むと20mはありそうなほぼ垂直なのではと思うような滝だ。
降りるのは不可能なので、巻き降りることにする。

ガイドなどをみると登ってくるときは左岸を巻いてくるらしいが、少し戻った右岸に取り付きやすそうなところがあったのでそこを登り、どうせなので、そのまま尾根を乗り越して大岩沢に入ってしまおうという魂胆だ。
念のためザイルを出して巻き始める。
最初は快適に階段状の岩を登ると思ったが、予想に反して岩が脆く落石もひどい。上部は潅木も乏しく、地面もざれているような感じで潅木もあまり頼ってはいけないような気がする。
そんなこともあり、尾根にあがるのに結構時間がかかってしまった。
尾根上から大岩沢への下降はザイルは不要であるが、下降ルートがガレ場となっているので一人ずつそろそろと降りる。それでも一歩動くとガラガラと崩れていった。
落石に気を使った巻きで結構気疲れしたので少し長めに休憩をとる。
先を見ると大岩沢はナメや小滝が続いているきれいな沢だ。
次々と現れる滝やナメを快適に越えていく。
階段状の30m多段滝の先に25m滝が現れる。
25m滝は階段状になっているが、流水中を登ることになるのでザイルを出す。
今回で唯一シャワーを浴びたところとなった。
滝上のちょっとした連瀑をこれまた快適に越えると、沢は一気に開ける。

開けた先は見事なガレだった。
ガレの脇や中を申し訳なさそうに水が流れる。時折小滝になって復活したりするがすぐにガレになる。
二俣でモコモコさんと作戦会議をする。
予定通りにいくと翌日の登り返しがいやなのでこのまま稜線にあがり、三重泉沢上部もカットし、柳沢へ下ろうと提案する。
とりあえずニグラ尾根に上がった時点で考えるということになり、左俣へ入る。
左俣に入るとガレはなくなり滝で高度を上げていく。
ここのうちの10mほどの滝で、いけそうだと取り付いて登ってみたところ上部がツルツルで行き詰まりセミになってしまう。
仕方なしにモコモコさんに巻いてきてもらい上からロープを垂らしてもらって脱出した。
この滝上はまた快適に登ってくと、すぐに水が枯れガレ沢になる。水を汲んでガレの中をニグラ尾根を目指して登る。
ニグラ尾根へ着くと下降予定のところ(崩壊地となっている)が見える。眺めが良くて気持ちがいいのでのんびり休憩しつつ再び作戦会議。

やっぱり登り返すのは大変だということでそのままニグラ尾根を登り稜線へ上がることにする。
崩壊地に落ちないよう、さらに崩壊して転落しないように気をつけて登ると樹林となる。藪がほとんどないので意外と楽だ。稜線近くなると石楠花などがでてくる。途中、石楠花の枝を鋸で切った跡もあった。
以前登山道として切り開いた名残らしい。
標高差たった150mなのにへろへろになって稜線に到着。
この時間では柳沢に下降して泊り場をさがすのは無理そうだということになり、ネギト沢に支流に泊り場を求めることにする。

1991mピークとの鞍部まで移動してから下降を開始する。
地図から見てしばらくは沢状にならないだろうなとは思っていたが、案の定でその代わりケモノ道に辿りついた。これは歩きやすくていいやと辿っていく内に方向がずれてしまっていたらしい。修正しながら行くがやがて背丈ほどの笹薮になってしまう。がさがさ言わせながら進むとケモノ道がまた現れる。ケモノ道を使って進むがいい加減沢になってもよさそうなのに一向に水が現れない。
思ったよりも左にずれているようだ。
思い切って右寄りに進むとようやく窪状になる。これでようやく沢にでられると思ったら沢に出たのは出たが、沢のすぐ横で林道にポンとでてしまった。

「あっっ・・・、」ということでなんだか最初も最後もだめだめになってしまったが無事林道に出てすぐ先の沢はどうやら目的としていた沢らしいということでよしとする。
沢はあまりいい泊り場はなさそうなので泊り場を求めて林道を下る。最悪いいところがなかったら最初に入渓した周辺は悪くなかったのでそこで泊ればいい。
山人、モコモコそれぞれ一箇所ずつ候補地を見つけたが決断しないままとうとう入渓点までもどってしまった。

周辺を検討した結果少し戻った林道上で泊ることにする。
実際泊ったところなかなか快適なところだった。

翌日のんびりと過ごしたところに別れを告げ往路を戻り、中禅寺温泉で臭い体を清めてから帰宅し夏休が終了した。


宿堂沢下降開始 3段滝。巻くことなく降りられる
階段状ナメ 大岩沢は明るくてきれいな沢だ
25m滝。水流を登った ニグラ尾根から崩壊地を眺める

総括

この山塊は車を持たない者にとっては特に行きづらいところであるが、日光側からであると思ったよりも楽に入れるような気がする。
頑張れば一日でこなせる行程をのんびりと泊りで歩いたので、初日の悪天や、入渓当日のトラブルがあってもゆったりした気分で過ごせた。
川は釣り人のほうが多いらしいが、その分上流部は静かなのではと思われる。
予想以上にきれいなところだったので、秋とかにもう一度来て見たいが、いろは坂の渋滞やバスの混雑(いろは坂の区間はカーブが多いためバスは定員までしか乗せないらしい)が問題になりそうだ。電車派にはちょっとつらいところだ。


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