和賀山塊
堀内沢マンダノ沢〜上天狗沢〜部名垂沢
〜太古の息吹を感じられるような沢〜
2006年7月29〜31日

いよいよ夏休み。
今年の夏休みは、これまた前からモコモコさんが行きたいと騒いでいたが、いままで行ったことがなかった和賀山塊。予定では梅雨が明けて暑い中の涼を求めての沢旅になるはずだったが、天気は相変わらず意地悪で週末になると悪く梅雨もまだ明けていない。
 天気予報では土曜日が特に絶望的な天気。しかし切符も取ってしまったし、休みもずらせないので決行となった。
モコモコプランでは辰巳又沢を遡行してからマンダノ沢へ下降して上天狗沢から羽後朝日岳に登ることになっているが、この天気でこなせるのだろうか・・・・。

地形図1:25000 羽後朝日岳、北川舟、抱返り渓谷 

アプローチ:東京駅20:04〜大曲駅23:23

コースタイム
7月29日
大曲駅6:44〜角館駅6:55/9:30(タクシー)〜夏瀬温泉
夏瀬温泉10:00〜取水口11:00〜朝日沢出合12:30:〜シャチアシ沢出合13:30(泊)

7月30日
B.P.6:30〜マンダノ沢出合8:00〜蛇体渕11:45〜上天狗沢出合13:30〜B.P.(C1120m付近)16:00
7月31日
B.P.6:53〜羽後朝日岳7:05/7:15〜部名垂沢下降点7:45〜最上流の堰堤11:27〜夏瀬温泉14:20


7月29日
大曲駅6:44〜角館駅6:55/9:30(タクシー)〜夏瀬温泉
ルート:夏瀬温泉10:00〜取水口11:00〜朝日沢出合12:30:〜シャチアシ沢出合13:30(泊)



当日の朝は早めに出発したいので前夜のうちに秋田入り。
本来なら角館駅(理想は神代駅)なのだが、最終の新幹線は盛岡を出ると大曲駅まで止まらないので、翌朝角館駅へ戻る。8月になると早朝に角館に着く夜行バスが出ているのがまだこの時期そのバスは運行していないので、これが一番早いアプローチとなる。

夜中結構雨が降ったみたいだが、朝は小降りになっている。しかし角館に着くと雨は本降り。一気にモチベーション低下。
いつもなら早速タクシーに乗り込むところだが、二人とも「さあ、行こう。」と言い出さない。
そうこうしている内に7:00になり、駅前にあるホテル「フォルクローロ角館」で朝食をゆっくりとることにする。
ご飯を食べ終わった後も出発する気が出ない。
駅のコンビニでさらに買い物をしたりして時間を潰すと、雨もときどき弱まったりする。そこで177で天気予報を聞いて明日(日曜日)はなんとかなりそうなのでやっと出発の決心をする。

夏瀬温泉までは約30分。途中から舗装されていない林道のような道を行く。まさしく秘湯の宿という感じだ。
夏瀬温泉の宿その名も「都わすれ」はとてもきれいで雰囲気がよい。(宿泊料金もいい値がするらしい)
タクシーから降りると雨も止んでいて、よしこれならと早速出発する。

温泉の駐車場そばにある玉川を渡るつり橋からスタート。
つり橋の先はよく手入された山道だ。山道を歩いていくと夏瀬ダムの発電所が見える。ここで一度堀内沢を渡る。
その後は堀内沢沿いに林道が続く。途中、「堂田バス停」、「夏瀬温泉」の標識がでてくる。
更に先に進むと、草に埋もれた林道(ゲートあり)が分岐する。これが盗伐林道か?この林道は朝日沢出合い近くまで続いているらしいが、崩壊も進んでいてあまり快適でないらしいとの情報があったので、取水口から入渓する。

取水口より上流の堀内沢はさすがに水量が多い。広い沢幅いっぱいに水が流れている。
入渓してから雨が再びぱらついてきた。
歩きやすいところを選んでいく。途中おおきなインゼルになっている先の右岸が下草の薄い森になっていたので、森の中を行こうとすると、踏み跡があった。
踏み跡で結構距離を稼ぐ。

朝日沢出合い付近になると両岸が立ってくる。かといっても沢が広いので暗くはない。
また、運のいいことに雨がやんで、太陽は見えないが、時折明るくなったりもする。このまま天気が回復してほしいものだ
地形図で見るとおり朝日沢まで長い。やっと朝日沢出合に到着する。朝日沢出合いにはいい泊り場があった。
朝日沢出合いで長めの休憩をとる。
再出発すると、とうとうまた小雨が降ってきた。今度は今までよりも少し強めだ。巨岩が目立つようになった沢を進むとようやくシャチアシ沢出合いに到着。ここでモコモコさんが「ビバークポイントの臭いがする。」というのであたりを見るとなかなかのところがあった。

雨も降ってきたのでこの先いいところがなかったら戻ってここに泊ってもいいな。とモコモコさんと話している内に雨が本降りになってしまった。
気温が低いこともあり、あっという間に行動を切り上げる。
設営をしてから点くかどうかわからないが、焚き木集めをする。モコモコさんの傘に犠牲になってもらって焚火の着火を試みるが、どう頑張っても点かない。そのうち、モコモコさんが、「もっと焚き木を集めてくる。」と焚き木をとりに出かけた。その頃の山人はというと着替えをとっくに済ませて、時間だけはたっぷりあるので焚火に専念する。すると、一度はあきらめかけていたが執念で着火に成功。よかったよかった。これで今晩はあたたかく過ごせそうだ。

焚火は安定したが、天候は全くだめで、時折強くなる雨脚にシャチアシ沢はすぐに増水し濁流となっている。堀内沢は多少持ちこたえていたが、やがて増水し始めその晩遅くまで水が引くことはなかった。

玉川にかかるつり橋 堀内沢を渡渉する(結構水量が多い)
朝日沢出合 シャチアシ沢出合い


7月30日
ルート:B.P.6:30〜マンダノ沢出合8:00〜蛇体渕11:45〜上天狗沢出合13:30〜B.P.(C1120m付近)16:00


 雨は昨晩の内に止んでくれていた。
 今日は、本当なら辰巳又沢のどこかで泊っているはずだったが、辰巳又沢どころかマンダノ沢出合のずっと手前で泊ってしまったので、当然のことながら辰巳又沢は断念し、マンダノ沢遡行というショートカットプランに変更することとなった。
 出発すると相変わらずの巨岩が転がる(巨岩軍団)&沢幅一杯の流れだ。
堀内沢にはワニの形をしたワニ奇岩があり、そのワニの下あごにあたる部分が落ちてしまったとの情報は得ていたがワニ奇岩には気がつかなかった。「これかな?」と思うもののどう見てもカバのようにしか見えないので余計にわからなかった。
巨岩軍団をやり過ごしていくと、穏やかな流れになり堀内沢名物三角錐岩塔が現れる。
 ここではお約束の記念撮影をする。高度感にびびってに先端に立てなかったのが心残りだ。
穏やかな流れを進むと、昨日せめてここまでこられればよかったなと思わせるような(泊り場の)高級物件、優良物件が並ぶ。
 やがて沢が右に左にと蛇行始めるとオイノ沢出合いで、すぐにマンダノ沢出合いになる。マンダノ沢出合いにも泊るのにいいところがある。

 予定を変更した我々はここからマンダノ沢に入る。
マンダノ沢に入ると森が一層深くなり、苔むした大きな石が目立つようになる。太古からの森という感じだ。
長ーいゴーロ歩きをしている内に日差しが出てくる。入渓前での天気予報では雨マークがでていて晴れは期待できなかったのでうれしい限りだ。
 特徴があまりないうちに沢はゴーロで高度を上げ始める。やがて先に滝が・・・と思ったら巨岩がでたらめに積み重なっているゴーロ滝と落ち込みの連続であったが、水量が多いのと巨岩の積み重なり方が急傾斜になっているので大きな滝となっているのだ。なんだかゴーロ滝もここまでくると見事としかいいようがない。
 通過するには、パズルを解くように脇の苔むした巨岩の隙間をこつこつと登る。
その先も同じような巨岩ゴーロ連続滝といった感じが続く。唯一ちゃんとした(?)二条20m滝が出てきたが、直答はできず、右岸を巻く。ここの巻きではワンポイントで念のためザイルをだしたが、特に難しくもなく巻ける。
 そんなこんなでどんどん高度を稼いでいき、根気よく進むときれいな滝が登場する。
巻き気味に簡単に越えると急に視界が広がり、さらさらと水が流れる広川原にでる。
この川原は短いがとても気持ちのいいところだ。
川原の先にはマンダノ沢名物「蛇体淵」がある。
 ここにもいい泊り場があり、お昼時ということもあり長めの休憩を取る。

 蛇体渕には4mの滝がかかっている。これを右から巻きあがり、4m滝上の小滝もまとめて巻いたところにすんなりと降りることができる。
 蛇体渕上も巨岩やまだまだ水量が多い小滝や落ち込みが連続する。
途中で、一箇所だけだが泳いだり、今回もモコモコという巨大生物を釣り上げたり(単に横着したらこういう羽目になっただけ)と晴れた沢を満喫していくと滑床がでてくるようになり、水量も含め沢が穏やかになっていく。
 思ったよりも早く二俣に着く。ここの二俣はとてもいい泊り場だ。
 もう一日あれば絶対ここに泊るよというところだ。

 ここで最初に予定していたルートと合流し、予定通り上天狗沢に入る。
上天狗沢はナメベースのとても穏やかできれいな沢だ。
 出てくる滝はだいたい5m〜10mくらいだ。
 上天狗沢に入ってすぐにでてくる7m滝は右から巻いた。
 その後にでてくる滝も直登できそうだが、それよりも滝よこに必ずといっていいほどルンゼが滝と平行に入っていてそちらのほうが安全で簡単なので、滝は鑑賞するもの通過は脇(芝生にならぬ滝に入ってはいけませんという感じで)を登る。
 小さいながらも、もうすぐ崩れそうなスノーブリッジやスノーブロックをやり過ごし、右に同水量の沢を分けるとゴルジュっぽくなる。これを過ぎていくと最後のダメ押しの10m滝が現れる。これも例によって横のルンゼから巻こうとしたら、今までと違い落ち口へのトラバースポイントが見つからない。そこで一度滝下に戻りどうしようか見ていると、モコモコさんが「登れると思う」といって滝に取り付き始めた。「落ちたらただじゃすまないぞ、気をつけろよ」と思いながら見ていると、モコモコさんから「OK」の声。ほっとし、モコモコさんからおろしてもらったロープをつけて後に続く。思ったとおり、ホールドが小さく、ランニングをとるところがなく結構悪く感じた。
 (体の割りに)手足が小さいモコモコさんのほうが有利だったようだ。

これを越えるとあとはひたすらナメや小滝が続くまさに癒し系だ。
日も傾いてき始めたので今日中に山頂へいくのをやめにして泊るところを真剣に探しながら行く。
しかし癒し系の沢でも両岸は豪雪地特有の草つきのV字谷だ。
標高1120m付近でやっとモコモコさんが「ここいいかもしれない」と見つけたところを候補地にして、先に進む。
10分ほど進むとますます沢は傾斜を増し、どうやらこの先に適地をみつけることはできないようだ。さきほどの候補地に決定し、戻る。
 選んだところはすかんぽ(いたどり)が茂っているところなのでまずは草刈からはじめる。草をしいてふかふかにしたところでタープを張るが、笹と草しかないので設営に時間がかかってしまった。
ささやかながら焚火ができるといいなと思い、焚き木を集めたが、焚き付けに失敗しているうちに冷たい風が吹き始めたので焚火はあきらめ着替えて、お決まりの宴会へと突入する。

 ラジオの天気予報で、明日もまずまずの天気のようだ。
焚火もないので、めずらしく早めの就寝。

ワニ奇岩か? 堀内沢でのお約束、三角錐岩塔に登る
マンダノ沢の様子 巨岩ゴーロ連瀑滝の始まり
気持ちのいい広川原、この先に・・・ 蛇体渕
上天狗沢は癒し系 上天狗沢に唯一残っていたスノーブリッジ


7月31日
ルート:B.P.6:53〜羽後朝日岳7:05/7:15〜部名垂沢下降点7:45〜最上流の堰堤11:27〜夏瀬温泉14:20


 夜中と明け方に結構強い風が吹いていたが、寝るときにタープを低く張っておいたのでさほど気にならずに寝られた。
 天気は曇りで山頂や稜線はガスに包まれているようだ。
体操をして出発。
 出発して10分ほどで小さな二俣となる。右に入ってすぐに行き止りのようになるので一応水を汲んでおく。しかしこれは、泥や雨が降ったときに流されてきた枝が詰まって埋まっているだけで、上部はまたはっきりした沢型が出てきて水も復活する。

 水が涸れてからは、分岐する窪を慎重に選んでいくとやぶに突入する。
最初は背丈以上の笹と潅木の藪だ。藪の背が低くなってもガスで周りがなにも見えないのでとにかく上へ上へと向かい、遅れるモコモコさんを待ったりしながら進むこと約30分、ガスの中からいきなりお花畑が目に飛び込んできた。
お花畑をそーとわずかに登ると羽後朝日岳山頂に着く。
山頂は冷たい風が吹いているが、笹藪の蔭で少し休んで下降を開始する。
山頂からは、はっきりした踏み跡が続いている。最初はとても滑りやすい道の急下降で一気に下ると、トラバースするような感じで踏み跡がついている。

結構歩いてきたぞという頃に踏み跡は、左に直角に曲がり(赤布あり)急に下降している。
踏み跡に従いどんどん下降すると、水がでてくる。部名垂沢の下降ルートに入ったらしい。
この沢は水が流れていてもガレガレで気を使う。しかしちょっとした滝などはしっかりと巻き道がついていてトラロープが張ってあったりする。
どんどん降りていくと、二俣のところで休憩している単独に人に会う。その方の話によると、この先もう少しいくと少し歩きやすくなるとのことだ。さらにモコモコさんが林道のことを聞いてくれたので夏瀬温泉へも迷うことなく行けそうだ。

右俣出合いには小さなスノーブロックが残っていた。右俣はツルツルの滝が連続していて大変そうだ。
広くなった沢を降りるとガレ沢に出会う。ここで休憩するが、晴れているのに風が吹いていて日陰にいると肌寒い。明日から8月なのだがとてもそんな感じがせずとても爽やかだ。
あとはとにかく沢を降りていくと堰堤に着く。堰堤は最初に連続して3つ続いている。
堰堤からは沢沿いに林道跡のようなところを歩ける。
その先にある堰堤を一つだけ巻き降りると林道跡は完全に沢の中から上がるので沢の装備を解く。

踏み跡が沢を横断するとやっと林道終点だ。
林道を黙々と進むとT字路になる。ここが部名垂沢で聞いた分岐らしい。標識も立っている。ここで標識を見てモコモコさんが「この林道って、最初の日に分岐があった林道につながってるんじゃない?」というが、地形図にはこの林道が書かれていないので答えはそこについてからのお楽しみとなる。
朝の寒いくらいの気温とは打って変わり、梅雨明けのような暑さとなったなか夏瀬ダムのダム湖をみながらひたすら歩く。
発電所が見えてくるようになり、林道の合流点となる。モコモコさんの予想通りだった。ここまでくればあともう少しだ。
後もう少しというところで、モコモコさんがなんでもないとろこでつまずいて転倒。休んでいるモコモコさんにアブが近づいてきた。みるとメジロアブだった。もうすぐ梅雨明けなんだなと思う。メジロの効果は大きく「もう大丈夫。」と歩き始めると間もなく玉川のつり橋だ。

事前に夏瀬温泉で入浴できることを問い合わせておいたので、3日分の汚れを落としに行く。
気になる「都わすれ」は落ち着いたいいところだった。
ゆっくりお風呂に入り、タクシーを待つ間休憩専用の別棟で休む。休憩施設といっても座布団もふかふかでとてもきれいだ。、モコモコさんも食事も布団もいらないからここに泊りたいよと言っていた。
迎えにきてくれたタクシーに乗り込み角館駅へ。駅の観光案内所で聞いたお勧めの食事処へ行きおいしい食事と地酒で打ち上げをした。

藪こぎ後お花畑 羽後朝日岳から部名垂沢へ向け踏み跡を行く
部名垂沢には巻き道やロープがついている 右俣は困難そうだ


今回の短縮ルートは偶然にも山渓8月号に高桑氏によって紹介されていたものと同じものになった。
ガイドに載ってしまったので、沢山の人が入ってしまい亀ペースの我々が泊り場に着くころは満員かもしれないと少し心配していた。
切符を取ってしまった後なので実行したが、実際はそんな心配はいらないほど堀内沢は懐が大きく人がいない(悪天候が一番の原因だと思うが)静かなところだった。
今度は四日間くらいとって和賀山塊を遡下降してみたいと思うようなところだった。
なによりも森が美しかったのが印象的だ。


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