山域 吾妻連峰
コース 吾妻スキー場〜家形山〜霧ノ平〜滑川温泉〜峠駅
〜吾妻から課せられた修行〜
日程 平成18年3月18日

今回は日帰りツアーだ。吾妻スキー場が今シーズン限りということでスキー場が営業していないと日帰りはできなくなるであろうコースをとることにする。
検討する間もなく、モコモコさんから「滑川温泉へのコースを行くのだ。」と宣言されコースは早々と決定した。
このコースはある意味有名だ。1997年2月に痛ましい遭難事故があったルートとほぼ同じだ。私は当時福島県の高校生だった。山岳部に所属していたのでこの事故は強烈に印象に残っていた。記事は「死者は還らず」山と渓谷社 丸山直樹著に詳しく書かれている。 ある意味、一度は行かねばならないルートに思えた。
さらに今回はMINMINさんも一緒だ。
MINMINさんには「今回はすべりの要素はありません。」ということを伝える前に地形様子や記録のなさに「山スキーというよりも登山のつもりでいます。」といわれ既に我々の行動パターンを読まれてのスタートだ。
データ 地形図:板谷、土湯温泉、天元台、吾妻山

コースタイム
3月18日(土)

東京駅6:04〜福島駅7:38/タクシー吾妻スキー場8:30〜リフトトップ9:36〜家形山分岐11:55〜家形山付近13:00〜下降点13:35〜白浜14:46〜霧の平分岐着15:33/発16:00〜高倉新道口16:43/16:6:55〜滑川温泉16:57〜萱峠17:51〜除雪終了点18:03〜峠駅18:15


東京駅発の新幹線内でMINMINさんと待ち合わせ。
今回一緒するMINMINさんと並びで座席指定がとれた幸先のいいスタート。
福島駅に降り立つと、山がくっきり見える。早速タクシーに乗り込み吾妻スキー場へ向う。登山届を提出し山の準備を進める。いつもの如く体操係りのモコモコさんの音頭で準備体操をする。

リフト1本目を降りるときに「第三リフトはまだ動いていません。しかし間もなく動く予定です。」といわれる。
「まあ、動くまで待てばいいよね。」ということで第二リフトへ乗り次ぐ。第三リフトはちゃんと動いていた。リフトトップに降り立つ。このスキー場も天元台スキー場と同じでザックを背負った登山者が乗るときは速度を落としてくれる親切なスキー場だ。
リフトトップでシールを張る。先に10人くらい入っているような感じだ。
シールを貼っているときに単独のテレマーカーが颯爽とやってきた。この方はずいぶんと山慣れている様子で足も早く、途中追い越されてから二度と会うことはなかった。

登り始めてすぐに雪質がいいのに気づく。昨日の悪天で降雪があったようだ。天気がいいので、しばらく歩くと暑くなってジャケットをザックに仕舞う。
このあいだに二人組に追い越される。このお二人はスキー場で見かけた方で、モコモコ情報によると五色温泉に降りるようで、しかも五色温泉に予約を入れていた様子だったとのこと(以降、このお二人を五色温泉組(ミニスキー使用)、我々全員を指すときは滑川温泉組という)。
先行者にバッチリ踏み固められたトレースのお陰でスイスイ進む。
慶応山荘手前で二人の登山者に合う。なんでもお仲間10人ほどが吾妻小舎に向っているとのこと。いつもの休憩場所の慶応山荘の分岐は混んでいるかもしれないということでその手前で休憩をとる。
少し雲が広がってきているがこれから登るルートはよく見える。

慶応山荘先の急な登りになるところからは、モコモコさんにトップを譲り山人はカメラマンに転じる。
大岩が出迎えてくる稜線に上がると真っ白な五色沼と一切経山がよく見える。今回は晴れていても風が吹きぬけるいつも通りの様子だ。
ここからコルまでは短い距離だが強風のため雪が付いていないので板をはずして歩く。スキーを再びつけて五色沼を眺めながらトラバースする。
大きく回りこみ始めるところから浄土平へ向うルートと離れて家形山への登りにかかる。
この登りで五色温泉組に追いつく。
単独のかたの見事なトレースのお陰で難なく家形山の稜線に到着。
相変わらず風が強いが、樹林に入ると風が避けられてほっとする。
ここで先着していた五色温泉組が休憩をとっていた。

滑川温泉への下降点へと移動する。MINMINさんから「少し休もう」という声が掛かったがもう少しで下降点だろうといこうことで引っ張ることにした。これが失敗。すぐに着くと考えていたが、彷徨ってしまい、体力消耗してしまった。
 MINMINさんがGPSを持ってきてくれているのが心強い。あとはルートを修正しながらようやく下降点に到着。お疲れ様でした。お腹がかなり空いていた。五色温泉組も到着した。

下降する尾根を覗き込むとなんともいえない尾根だ。無理やり表現するとすれば「もちゃくちゃ」という感じだ。
これまた無理やり報告すると、傾斜がやたらに急で、潅木やら針葉樹がびっしりついていてその周りを雪が覆っていて滑るどころか歩いていくにしてもどこをいくのか?と頭をひねっても答えがでてこないような尾根だ。

このように尾根通しは無理なので、偵察の結果比較的樹林が空いている尾根の右側の斜面を使って下降を始めることにする。
滑川温泉組は下降前に休憩をとっていたので五色温泉組が先行してルートをみつけてくれた。
シールをつけたままの滑川温泉組も続いて下降開始する。
下降を開始してすぐにいつも通りMINMINさんはシールを外して滑ることにし、我々はこれまたいつも通りそのままシールをつけて行く。
もちゃくちゃ部分をやりすごして尾根に戻る。戻った尾根は傾斜がまだ急で見ると滑落したら樹林まで止まらなさそうだ。ガイドにもやせ尾根滑落注意と書かれているところだ。

ここはカニさん歩きで降りる。
最初にMINMINさんが降りる。山人&モコモコは上で待機。もう少しでカニさん歩きから脱出というところでMINMINさんが少し滑ったようだ。木の枝を掴んでいるのが見えた。といっても下はほとんど見えないので木を掴んでいる手だけが見えるだけだ。
どうやら脱出成功のようだ。
次に山人が下降してなんかとか無事脱出。と思ったら上からモコモコんが「どいてー!!」と叫んで板を谷側に向けてスライディングのように滑落してくる。
モコモコさんを止めようとしたため滑落に巻き込まれかけたが、奇跡的に細い空き缶ほどの太さの木に股がり、滑落していくモコモコさんに巻き込まれずに済んだ。モコモコさんは2mほど下にあった木の枝が棚のようにしっかりと張り出していてそこにザックから落ちてなんとか止まった。5mほどは滑落しただろうか。

あとでモコモコさんから状況を説明される。山人がカニさん歩きから脱出したのを見て下降しようとしたところ滑ったとのこと。(この斜面は最初柔らかいが、途中から雪面が硬くなっているのでその境目あたりで下降に失敗したらしい)さらに、下に山人がいるのをみて巻き込むのを避けるためによけようとして体を変な方向に変えたため足からではなく背中から落ちたらしい。そのときに背中を打ったようで帰りの新幹線の中で背中が痛いと訴えていた。

そんなこんなで状況は違うが、滑川温泉組は全員このやせ尾根の洗礼を受けてしまった。
この急なやせ尾根をやり過ごせばあとは快適に尾根を下降できると期待したが、その期待は見事に裏切られた。
波打ったやせ尾根が延々と続いているのが先に見える。
例えるなら天元台〜若女平下りにでてくるやせ尾根や神楽スキー場から雁が峰への波打つ雪面の尾根の傾斜をもっと強くして波も全て自分の身長の倍近くありそうなのが延々と続く感じだ。
この波打った尾根を五色温泉組はしばらく先行してくれる。

しばらく進むと右にとても快適そうな斜面が見える。五色温泉組はこの斜面を降りてとても満足そうだ。
滑川温泉組はというと、ここを降りると反対方向になるので涙をのんで波打つ尾根を進む。
ひたすら修行のように波打つ雪面を延々と乗り越してやっと尾根が緩やかに広がるところに出る。
少しの間だが思い思いに滑る。といっても我々はシールをつけたままだが。
しかし、このようなところも白浜までのあっという間の区間だ。

白浜周辺は地面がでているので少し板をはずして歩く。板を再びつけてからはまた修行の開始。
尾根は広くなったが相変わらずの波打つ雪面を越えて1403mのピョコを軽く登ると霧の平は間もなく。
ピョコの直下は急でわずかにカニさんで降りてから一気に霧の平へ向う。
霧の平では標識のほかにお地蔵さんが迎えてくれた。
この時点で既に16:00近く。
本当なら今頃は滑川温泉のお風呂で汗を流しているはずだったが、それどころか峠駅18:03発の福島駅行きの電車に間に合うかどうかも危ない。

休憩した後、我々はシールに(これまたバカの一つ覚えのようにシールをつけたまま稲妻ターンで降りるためまだシールを外さない)MINMINさんは板にワックスを塗ってから下降開始。我々もシールにワックスを塗る。
ここからは滑川温泉へ一気に下降するつもりでいたがいきなり周りは濃いヤブ。
登山道らしくヤブが切り開かれているところを、またもやカニさんで下降。
ずっとこれだったらもう板を担ぐしかないと思ったら案外早くに樹林の間隔が広がりなんとか滑っていけそうだ。

樹林の間を縫うようにして稲妻ターンで降りる。
高倉沢(登山標識にそうかかれてあるだけで地形図には沢名はかかれていない)に出合うとすぐに堰堤ばかりある大きめの沢に合流する。
堰堤がなければ簡単に側面を下降しながらトラバースできるのだが、堰堤がそれを邪魔する。滑落すると堰堤下の水たまりにダイブしてしまいそうなところを何度かやり過ごすと、再び大きな沢の出合い。ここは林道が通っているところだ。
ようやく林道に降り立った。
林道は片斜面となっているが、広く切り開かれているので非常に快適だ。
すぐに高倉新道口に着く。

すでに17:00近く。
本気で18:03に間に合わなくなるどころかヘッドランプのお世話になりそうな予感。
とにかく先に進まなければということで、さすがに山人モコモコもシールをはずして板にワックスを塗る。
出発するとあまりにもよく滑るので「軽いー!♪」と声が出てしまった。
快適な乗り物と化したスキーのお陰で数分ほどで滑川温泉上まできてしまった。

大滝沢を渡る橋からは長い林道歩きだ。このツアーの最後の修行、萱峠の登りだ。余談だが、この峠の名前を誰も憶えておらず最後まで滑川温泉組の間ではこの峠の名前が「なんとか峠」となってしまった。
山スキーのMINMINさん、モコモコさんは林道歩きが大変そうでここも山人が先頭で進む。
似たような景色でウンザリする歩きが続く。唯一の救いがGPSで居場所を確認して峠までの距離が縮まったことを実感できることだ。

黙々と進むとようやくなんとか峠に到着。滑川温泉組全員万歳をして通過。
ここからは早かった。
ひたすら立っているだけで体を運んでくれる。
足に疲れが溜まりそうになるころ除雪終了点に到着。「峠の茶屋」と「峠駅まで300m」という看板があるところだ。
到着した時間はなんと予定の電車が峠駅を出発する時間の18:03だった。
次の電車は19:03で時間がたくさんあるので、記念撮影をしてから板を担いでえっちらおっちらとゆっくり歩いて峠駅に到着。

峠駅の旧駅跡には車が2台ほど駐車されていた。運がいいと登山犬が同伴してくれる栂森へ行った人のかな?と楽しい想像を膨らませてホームへ向う。
ホームにある小さな箱状の待合室でパッキングしながら電車を待つ。
パッキングを済ませた後は、トイレに行ったり峠の茶屋の犬が吠えにきた(駅の線路やホームには入ってこない賢い犬のようだ)のを見に出たりして退屈することなく過ごす。

福島駅に着くと東京行きの新幹線がすぐにあることが分かり、最後に一頑張りして無事乗車。
お弁当は完売でおつまみと缶ビールだけでお腹は空いたままだったが、妙な充実感に満たされて今回のMINMINさんとの合同ツアーは幕を下ろした。

これから向う方向を見るMINMINさん 強風地帯を行く
家形山へ登る五色温泉組 もちゃくちゃ部分を避けて下降開始
滑川温泉組全員が洗礼を受けたところ 五色温泉組は右下の素晴らしい斜面を降りた
滑川温泉組はこのようなところを延々と行く ボディーブローをうけているような感じの尾根の下降
白浜へ向かって 白浜をすぎて初めてほっとする風景のところにでた
白浜を進むモコモコさん
(写真はMINMINさん提供)
白浜より霧の平、高倉山方面
(写真はMINMINさん提供)
お地蔵様が出迎えてくれる霧の平 滑川温泉へ
高倉新道口にやっと到着 越冬中の滑川温泉。目覚めの日も近い
なんとか峠まで最後の修行 「は〜、やっとついたよ〜」のMINMINさんとモコモコさん


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